2014/08/18

Tromso Olympiad 11th round Japan - Montenegro


Photo by Hasegawa

長かったトロムソオリンピアードが終わり、昨日の朝、日本に帰国しました。数日遅れですが、最終日の様子をお届けします。

男子チームは全員がGM のモンテネグロが最終戦の相手でした。棋譜や結果を見る限り、彼らもさほど調子が良くないことはわかっていましたので、なんとかポイントを取って最終順位を上げようと、格上のチームに挑みます。

Blagojevic, D (GM, MNE, 2505) - Kojima, S (FM, JPN, 2373)
Tromso Olympiad (11)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 a6 5. Qc2 e6 6. Nf3 c5 7. cxd5 exd5 8. Be2 Be6 9. O-O Nc6 10. Ne5!?



この試合のために徹底的にSemi-Slav Accelerated Meran を見直してきましたが、この手はやや意外でした。Be6, Nc6 を挟めている以上、黒はナイトを交換しても、c6 にポーンの弱点が残らず、満足な展開となるはずです。

10... Rc8 11. Rd1 cxd4


ここは試合後に、Misha から11... Bd6 のほうが良かったのではないかと指摘されました。私はdxc5 の1テンポを気にしましたが、e5 のナイトを早めに消せるほうが重要であると、今、試合を見返していて感じます。

12. exd4 Be7 13. Bg5 O-O 14. Rac1 h6 15. Be3



黒はポーンも対称形で、特に大きな不満はないはずですが、ここから駒をどう組むか、意外と迷うところです。白からはf2-f4 (f4-f5 を可能性として作りつつ、e5 のナイトをサポート)、そしてBe2-Bf3 という将来図が見えるので、これになんらかの抵抗をしようと考えますが...

15... Qa5 16. a3 Ne4?!


クイーンがc2 から逃げなかったため、黒も同様にセンターにナイト運ぶタイミングはまさにここだと、時間を使った考えた末に結論を出しました。しかし、指した直後に相手からくるまずい手が見え、背中に冷や汗が流れます。

17. Nc4!



なぜ、この手の可能性を見落としていたのか... c6 で交換するか、e5 に残り続けるか、その二択しか見えていませんでした。これで白は一気に流れを引き寄せます。

17... dxc4 18. Qxe4 Bf5 19. Qf3 Bd3


黒はここにきて、ルークがf8 に残ったままなために、白からのd4-d5 を止められないことが致命傷となります。

20. Bxd3 cxd3 21. Rxd3 Rfd8 22. Rcd1 Bf6 23. b4!



d4 にプレッシャーをかけ続ける以外に戦う方法はないと思っていましたが、この手でゲームオーバーです。

23... Qxa3 24. Nd5 Qa2 25. Nxf6+ gxf6 26. Bxh6 Kh7 27. Qf5+ Kxh6 28. Qxf6+ 1-0


ここまでのGM との試合では、黒を持っても簡単には崩れることがなく、ゲームを作ってきただけに、大事な最終戦でこうした不甲斐ない内容になってしまったことは、チームメイトにも応援してくださっていた日本のチェスファンの皆さんにも、大変申し訳ないです。私はリザインした後、早々に会場を発ちますが、隣の1B ではなかなか面白い内容でゲームが進んでいました。


Nanjo, R (CM, JPN, 2344) - Djukic, N (GM, MNE, 2521)
Tromso Olympiad (11)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Qc7 5. Nc3 e6 6. Be3 a6 7. Qd2 Nf6 8. f3 Ne5 9. O-O-O Bb4 10. Nb3 b5 11. Qe1 Be7 12. f4 Ng6 13. e5 Ng4 14. Ne4 Nxe3 15. Qxe3 O-O 16. h4 Bb7 17. Bd3 f5 18. exf6 gxf6 19. Rhf1 f5 20. Nec5 Bd5 21. g4 Bd6 22. Kb1 Bxf4 23. Qe2 Rf7 24. gxf5 exf5 25. h5 Nf8 26. Bxb5!



南條くんの試合は、私が会場を去る直前、このポジションでした。Djukic の、ここで頭を抱えて悩んでいる様子からも、このビショップでポーンを取る手を、見落としていたことが分かりました。d5 のビショップを、b3 のナイトと交換してピースを取ろうとしても、Qe2-Qg2+ が、キングとルークのダブルアタックになっているのがポイントです!

26... axb5 27. Rxd5 Qc6 28. Qf3 Be3 29. Nd3 f4 30. Rg5+ Rg7 31. Rxg7+ Kxg7 32. Qg4+ Kh8 33. Nxf4 Rc8 34. Qe2 Qc4 35. Nd3 Bh6 36. Qg2 d6 37. Na5 Qc7 38. Nb3 Qe7 39. Nd4 Nd7 40. Nf5 Qf6 41. Nxh6 Qxh6 42. Qb7 Rd8 43. Qxb5 Qg7 44. Qd5 Nf6 45. Qf3 Nd7 46. Qe3 Nf6 47. h6 Qg6 48. Qe7 1-0


こうしてカペルではドローだったモンテネグロのGM Djukic を南條くんが下し、日本対モンテネグロの最終戦マッチは、非常に面白い結果となります。

90 Japan (JPN) - 53 Montenegro (MNE) 2 : 2

37.1 CM Nanjo, Ryosuke 2344 - GM Djukic, Nikola 2521 1 - 0
37.2 FM Kojima, Shinya 2373 - GM Blagojevic, Dragisa 2505 0 - 1
37.3 FM Watanabe, Akira 2252 - GM Kosic, Dragan 2486 0 - 1
37.4 Averbukh, Alex 2183 - GM Nikcevic, Nebojsa 2427 1 - 0


南條くんだけでなく、Alex もカオスなゲームを制して勝利! IM ノームのかかった暁さんは残念ながら敗れてしまいましたが、強豪モンテネグロと2-2 で引き分けるという結果で、男子チームはトロムソオリンピアードを締めました。ちなみに南條くんはオリンピアード規定により、IM ノームを2つ分獲得です。

そして試合後に惇多くんに確認したところ、7月からFIDE レイティングの計算係数は15から20にアップされたそうで、南條くんのこのオリンピアードでの変動は、+31 となります。(ちなみに、18歳未満でレイティング2400未満のプレーヤーは、係数が驚きの40です!) トロムソからラトビアのリガに飛び、連続でトーナメントに参加中の南條くんは、ここで好成績を収めて、3つ目のIM ノームとレイティングを25 以上獲得すれば、一気にIM へと駆け上がることとなります。


118 Kenya (KEN) - 104 Japan (JPN) ½ :3½

53.1 Jumba, Gloria 1507 - Hashimoto, Azumi 1712 0 - 1
53.2 WCM Shah, Riya 1289 - WCM Hoshino, Karen 1738 ½ - ½
53.3 Winfred, Thitu 0 - Amamiya, Anna 0 0 - 1
53.4 Wabuti, Rose 0 - WCM Hasegawa, Emi 1698 0 - 1


女子チームはカレンのみドローでしたが、他の3人がゲームを制して、無事にケニアを下しています。長谷川さんは、相手がこの大会中にWFM のタイトルを取った強豪だということで、試合前に随分と心配していましたが、終わってみれば相手のピースサクリファイスを受けきり、問題ない勝利でした。女子チームは途中、苦しんだラウンドも多かったですが、最終戦をしっかりと勝ってくれて、一安心です。


この日は夕方から表彰式とクロージングセレモニーです。このトロムソでは、Ding Liren, Yu Yangyi の2人の若手の台頭が近年目立つ、中国が悲願の初優勝。Wang Hao、Bu Xiangzhi、Li Chao という、これまで代表だった3名の2700台を、自国で留守番させたうえでの優勝というのは、中国のプレーヤー層がヨーロッパの強豪国と比較しても全く劣らない程、厚くなったことを示していると思います。

2位は、私が全力で応援していたハンガリー。78年のオリンピアード優勝メンバーであるGyula Sax が今年亡くなり、36年ぶりの優勝を目指していたハンガリーは、優勝国の中国に負けただけで、スペイン、ルーマニア、イスラエルなどを下しての準優勝でした。どうせならば優勝してほしかったですが、2位でもハンガリーにとっては近年稀にみる好成績です。代表5人のうち、最もレイティングの低いBalogh が、ボード賞を取る活躍で2番ボードの抜擢に応えたのが、今回の好成績につながりましたね。ちなみに残念なことですが、このオリンピアードで20年以上女子の世界ランキング1位を守ってきたJudit Polgar が、現役引退を表明しています。


10年以上ファンだったJudit と。 Photo by Hashimoto

3位には意外なことに、Anand、Harikrishna を欠いたインドが入りました。2500台のGM を中心にしたインドが、過去最高戦績を収めることができたのは、もちろん代表たちが頑張ったからでもありますが、ロシア、アルメニア、ウクライナといった大本命たちが、大きく崩れたおかげでもあるでしょう。なにはともあれ、オリンピアードでアジア勢が2国入賞するというのは、過去になかったことだと思います。


Open Section Final Standings

1st Place China
2nd Place Hungary
3rd Place India

73rd Place Japan


もちろん、最終戦でモンテネグロとで引き分けた日本も、最終順位はスタートランクの90位から、大幅アップの73位です! 男子メンバーは全員が勝率50% 以上で、特に自覚はしていなかったのですが、過去最高に近い戦績だったのでしょうかね。オリンピアードでのIM ノームも、暁さんの2000年以来ですし、今年のチームは確かに強く、調子も良かったと思います。(全体を通してGM に4勝、全員GM のチームに引き分けといった記録も、もしかしたらオリンピアードで初かもしれません。調べてみます。)

2週間以上の長い戦いが終わり、今は選手みんなが(ラトビアにいる南條くん以外) 一息ついている頃だと思いますが、それは日本で固唾を飲んで見守ってくれていた、チェスファンや選手の家族も同じことでしょう。長い間、応援ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。トロムソオリンピアードを振り返った記事はまた別に出すつもりですので、ひとまず今日の記事については、この程度とさせていただきます。それではまた。

5 件のコメント:

ピカチュウ さんのコメント...

Riga Technical University Open 2014 のページ▼o・~・o▼1局目はGM Kulaots Kaidoに惜しくも負け

http://hunonchess.com/riga-technical-university-open-2014-15-24-aug-2014-riga-latvia/
Riga Technical University Open 2014 のページ▼o・~・o▼1局目はGM Kulaots Kaidoに惜しくも負け

http://hunonchess.com/riga-technical-university-open-2014-15-24-aug-2014-riga-latvia/

ピカチュウ さんのコメント...

間違えて2回書いてしまいました・・・▽o・~・o▽Polgarの引退は残念ですが中国のHouがすごい勢いで追いついてきているので抜かれる前にということなのかもしれません・・とかゴニョゴニョ見ていたら日本に来た女子10位のViktorija Čmilytė さんがいっしょに来てた GM Peter Heine Nielsen さんと昨年12月に結婚されたそうですよ

Shinya_Kojima さんのコメント...

リガの結果は、私もChess Results でチェックしています。
エストニアのトップGM Kulaots との試合は2R ですね。引き続き、頑張ってもらえればと思います。

いけだまきこ さんのコメント...

係数についてはこちらをどうぞ。K=40は、18歳未満かつ2300以下のようです。ご参考まで。

For events played from 1 July 2014:

8.56

K is the development coefficient.
K = 40 for a player new to the rating list until he has completed events with at least 30 games
K = 20 as long as a player's rating remains under 2400.
K = 10 once a player's published rating has reached 2400 and remains at that level subsequently, even if the rating drops below 2400.
K = 40 for all players until their 18th birthday, as long as their rating remains under 2300.

Shinya_Kojima さんのコメント...

まきこさん

情報ありがとうございます。確かにその通りのようですね。
FIDE のRating Calculators のページでは、まだ出ていないので、こちらも早く更新されると良いですね。

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