2018/10/09

First Saturday GM October 2018 R2


試合会場の様子

First Saturday の2戦目は、元ユーゴスラビア代表、現セルビアのGM Ilincic です。このハンガリーでは何度も対戦しており、私は生涯で最も勝ち星を挙げているGM です。昨日は貴重な白で負けてしまった分を、なんとかここで取りかえしておきたいラウンドでした。

Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
First Saturday GM October 2018 (2)

1. d4 d5 2. g3 Nf6 3. Nf3 c6 4. Bg2 Bf5 5. Nh4 Be4!?



Ilincic との4年前の対局では、4... Bg4 のラインを使って負けました。今回もSlav とこの2. g3 の変化を準備し、5... Be4 の面白いラインを試すことに決めていました。

6. f3 Bg6 7. a4!?


7. 0-0 Nbd7! 8. e4 dxe4 9. Nxg6 hxg6 10. fxe4 e5 11. c3 Qb6!? 12. a4 a5 が私がチェックしてきた変化で、黒は満足です。おそらくですが、Ilincic もこうしたゲーム展開を知っていて、それを避けるために早めにクイーンサイドからのアクションを起こしたのでしょう。しかし、それならば黒はクイーンサイドを気にせず、早めにセンターから仕掛けます。

7.... Nbd7 8. a5 e5 9. a6 Qb6!?



上記のラインのような駒の配置を意識してクイーンを動かします。9... exd4 10. axb7 Rb8 11. Nxg6 hxg6 12. Qxd4 Bc5 13. Qd3 Rxb7=/+ はコンピュータの指摘で、確かにこうして早めにセンター開いても良かったと振り返って思います。

10. axb7 Rb8 11. Nxg6 hxg6 12. e3 Rxb7


黒のクイーンサイドは崩れ、c6、a7 が弱くなりましたが、その代わりにピースの展開は黒が早くなっています。ポジショナルプレーを得意とする私は、普段であればこうした自陣に弱点を作るプレーを避けますが、前日のSindarov のプレーに影響されたか、この日はタクティカルなプレーでもOKだと考えていました。

13. c3 Bd6 14. O-O O-O!?



14... Kf8!? はいかにも指してみたくなる手で、hファイルにルークを残す手も確かにあったでしょう。しかし、私が思い描いた図はダブルルークeファイルという状況です。白からセンターを開く選択肢が無いのであれば、黒からセンターで仕掛けるチャンスは十分にありうると思っていました。

15. Kh1 Re8 16. b4


この手はb2の弱点を消したうえで、c6とa7を固定する良いアイディアなのですが、いかんせん白はポーンに手をかけすぎで、ここまでなんとhポーン以外の全てのポーンを動かしています! ならば黒はピースの展開の早さで、クイーンサイドの抑え込みに十分対抗できます。

16... Nf8 17. Nd2 exd4 18. exd4 Rbe7



このオープンファイルのダブルルークが私の生命線です。これと何を組み合わせるかは、この先の白の手次第でしょう。

19. Nb3 Qc7! 20. Bd2


このポジションで時間を使い、黒の作戦を考えました。1つは弱いクイーンサイドをサポートして戦うこと。具体的には、Nf8-Nd7-Nb6-Nc4 は考えられます。しかし、白はeファイルをルークで取り返してディフェンスしたうえで、Nb3-Na5, Qd1-Qa4 というアイディアがあります。やはりここまできた以上、ゆっくりとクイーンサイドをフォローするよりも、キングに対して仕掛けてスピードで勝負するしかないと思いました。

20... Bxg3!



この局面でSindarov が覗きにきたのは少し笑いました。こうしたサクリファイスは私の得意とするところではありませんが、必要に迫られればもちろん実行します!

21. hxg3 Nh5! 22. Re1?


ここは勝負の分かれ目でした。白にはいくつかの選択肢がありますが、まず22. Be1 Nxg3+ 23. Bxg3 Qxg3 24. Ra2 g5! は黒が指しやすいでしょう。2ポーンピースでも、白はeファイルのダブルルークに対抗する方法がなく、黒はゆっくりとf8 のナイトを白キングに向けることができます。22. f4!? Nxg3+ 23. Kg1 Ne2+ 24. Kh1 g5!? は黒がエクスチェンジを取りかえさずに勝負にいく面白い方法で、最後に残った22. g4 Ng3+ (22... Re2? 23. f4!+/-) 23. Kg1 Ne2+ 24. Kh1 Ng3+= こそが、白にとって最も安全にドローにする方法だったと思います。Ilincic は本譜で守り切れると思ったようですが、完全に読み抜けがあります。

22... Nxg3+ 23. Kg1 Rxe1+!



エクスチェンジを取りかえす23... Ne2+?! 24. Rxe2! Rxe2 25. Nc1!+/= は不正確で、白にディフェンスされてしまいます。まだ難しいマテリアルですが、ダブルビショップを持つ白が徐々に良くなる可能性が高いでしょう。これよりも、ルークを交換してエクスチェンジ切りからのディフェンスを許さないのが正解です。

24. Bxe1 Ne2+ 25. Kf1


おそらくですが、Ilincic は25. Kh1 Qf4! を見落としていたのではないかと思います。黒クイーンがhファイルに回ればメイトの形です。 26. Qd2 Re3!-+

25... Qh2 26. Qxe2


g1 を守ろうとしても、26. Bf2 Nf4!-+ でメイトです。

26... Rxe2 27. Kxe2 Qxg2+-+



これで勝負はつきました。黒は駒得のうえ、白キングに対してまだまだ攻撃のチャンスを持ちます。

28. Bf2 Ne6 29. Nd2 Nf4+ 30. Ke3 Qg5


これで白キングは一歩も動けず、さらなる駒損かメイトがほぼ避けられないでしょう。

31. Be1 Ng2+ 32. Kf2 Nxe1 33. Kxe1 Qe3+ 34. Kd1 Qg1+ 0-1



久々のGM戦勝利です! Ilincic との相性の良さは消えておらず、初戦の負けを帳消しにしました。オリンピアードから黒は3連勝ですので、この調子でガンガン行きたいと思います。

10/07 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500) 0-1
10/08 R2 Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/09 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350)
10/10 R4 Manush, S (FM, IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/11 R5 Czebe, A (GM, HUN, 2426) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/12 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Plat, V (GM, CZE, 2539)
10/13 R7 Tran, M T (IM, VIE, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/14 Rest Day
10/15 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376)
10/16 R9 Mirzoev, E (IM, UKR, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)

First Saturday GM October 2018 Standings

+2 Mirzoev, Plat
+1 Sindarov, Shahaliyev
+-0 Kojima, Czebe
-1 Manush, Ilincic
-2 Tran, Nguyen

6日に予定されていたCzebe との試合は、11日に指すことを決めました。延期を快諾してくれたCzebe には感謝しています。ベトナムの2人は今月は苦戦のスタートのようですので、今日はまた勝ちたいですね!


この日は2時間半で試合が終わったため、まだ明るいブダペスト市内をぶらぶら。10月に入り、ブダペストも秋の装いです。

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