2022/01/30

Italian quick d7- d5 line


久々にlichess で指したゲームから、オープニング分析を含めて解説を書こうと思います。

mASLOVSKIy (2350) - imsk (2593)
lichess blitz

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 O-O 6. O-O d5!?

黒から早くd7-d5 と仕掛ける変化は面白いと思います。しかし、6. Nbd2 のように待たれた場合、早いNd2-Ne4 からの反撃が厄介であるため、d7-d5 のセットアップはリスクがあり、d7-d6 も黒は勉強しておくべきです。白側でもこのd7-d5 を許すか、6. Nbd2 のような手で待って避けるかは、プレーヤーの好みが分かれそうです。

7. exd5 Nxd5 8. Re1 Bg4 9. a4!?


9. h3 Bh5 10. Nbd2 Nb6 11. Bb3!? Qxd3 12. Nxe5! が2018年に発見された変化で、今夜が最終戦のTata Steel 2022 でも、8R のEsipenko - Giri のゲームで登場しています。この試合は3ポーンvs. ビショップの勝負に持ち込み、3ポーンを持つ黒側が勝利を収めました。本譜のa2-a4 が入ると何が違うかよく分かっていませんでしたが、ひとまずビショップトラップを防ぐために黒もaポーンを伸ばしておきます。

9... a5 10. Nbd2 Bb6!?

b6 に退くのは上記のようにナイトであるべきか、それともビショップか、判断の難しいところです。d5 のナイトはアクティブな位置なので、わざわざb6 に退きたくないという考えもあるでしょうし、ターゲットになるならば早めに逃げてビショップに反撃という考えもあります。私は個人的に多少のリスクを承知で、ナイトをd5 に残しておくのが好みです。

11. Ne4 f5?


e4 のナイトは取られても、白がdxe4 と取り返すことでd5 のピンのナイトを落とすことができるので、f7-f5 はすぐスレットになっていません。それでもポーンを突いておくべきだと考えたのですが、11... Kh8!? 12. h3 Bf5 13. Ng3 Be6 14. Qb3 (14. Nxe5? Nxe5 15. Rxe5 Bxf2+!-+) 14... f6 15. d4?! Bg8! 16. dxe5 Nxe5 17. Nxe5 fxe5 18. Ne4 c6-/+ このように進めたほうが良かったようです。e5 のポーンは孤立して弱いですが、その代わりにfファイルからの反撃に期待でき、黒は十分なポジションです。では本譜は何がいけないでしょうか。

12. Ng3?


この手は黒の望む流れになることはゲーム中に気づいていましたが、他に厳しい手があることは分かりませんでした。12. Bg5! Qd7 13. Ned2!+- このビショップを展開してからナイトを退く手が絶妙で、f3 のナイトをサポートしてビショップナイト交換の際にナイトを入れ替える準備をするとともに、Qd1-Qb3 からピンのナイトを狙います。d5 のナイト、e5 のポーンを両方満足に受ける方法が黒には無く、予想していたよりも白の優勢が大きい局面でした。ちなみに上記の変化のようなQd1-Qb3 の際、黒からのNc6-Na5 を気にしなくて良いのが、互いにaポーンを付き合った白のメリットとして考えられそうです。

12... Kh8! 13. h3 Bxf3! 14. Qxf3 e4!

こうしてeポーンでの仕掛けができるならば、黒はビショップを諦めても十分にお釣りが来ます。黒はe4 でポーンを取られても、f2 を落とすことができて勝勢です。

15. Qe2 e3! 16. fxe3?


本譜のように素直にポーンを取る手は黒の手が分かりやすいですが、16. d4 f4! 17. Nh1 f3! 18. gxf3 Bxd4! と積極的に仕掛けても黒は優位に立てそうです。

16... f4!

一時的にポーンを捨てた黒ですが、ピンを利用してポーンを押し進め、白の陣形を崩します。

17. Nf1 Ne5


17... f3! 18. gxf3 Nf4! 19. Qh2 Ne5-+ も綺麗にナイトが2つ白に襲い掛かり、黒の勝勢です。

18. Bxd5 Qxd5 19. Nh2 Nxd3 0-1

最後は少し迷いましたが、Ra8-Rd8 もあるのでd3 ポーンを取り返すくらいで十分だと考えました。ここで白の時間が落ちてゲームは終わりましたが、続けていても白は形が悪く、厳しい状況です。Italian におけるd7-d5 の仕掛けはリスクもありますが、成功すれば展開の早さで白にプレッシャーをかけることができます。新しいアイディアもまだまだトップクラスの試合で出てきそうなので、今後も注目したい変化です。

2022/01/24

Western Tokyo Chess Championship 2022 Tournament Information


月が空けて2月になると、ゴールデンウイークに開催される全日本選手権の予選が各地で始まります。その皮切りとなるのが、来週末の2/6 に立川で開催される西東京選手権です。立川チェスクラブが主催する地方予選は今回が初めてで、関東近郊で全日本予選が増えることを嬉しく思っています。私も今年最初の国内公式戦の場として、これに参加しようと思っています。西東京選手権の情報は以下の通りです。

【日時】 2022年2月6日(日)
【会場】 立川女性総合センターアイム(立川駅徒歩5分)
【形式】 4R スイス、持ち時間30分+30秒/手 スタンダードNCS公式戦
【参加費】 4500円、U23 – 3500円
【大会要項】 Western Tokyo Chess Championship 2022

申し込みは普段の立川チェスクラブの連絡先ではなく、大会要項にある申し込みページからです。エントリーリストを見るとまだ10名ほどしか名前が無いため、定員の30名までもう少し増えることを期待しています。それでは皆さん、来週末に立川でお会いできることを楽しみにしています。またNCS には他の地方予選の情報もまとめられていますので、ぜひ参加できそうな大会をチェックしてみてください。

全日本チェス選手権地区予選 2022

2022/01/20

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第3回予告

12月は私のハンガリー遠征でお休みをいただいたOPENREC の講座ですが、1月から再開させていただきます。今月の「プロプレーヤー小島慎也のチェス講座」 は、1月30日(日)20時から放送開始です。

2022年最初の講座のテーマは「c8ビショップの使い方!」 にさせていただきました。黒のクイーンサイドのビショップは、多くのオープニングにおいて最も使いづらいピースになりがちです。そこで今回は主に黒視点で、このピースの使い方や考え方を解説していこうと思います。この講座単発でも楽しんでいただけるようにするつもりですが、10月、11月の講座を事前にご覧いただくと、理解も深めやすいと思いますので、以前の放送もよろしければチェックしてみてください。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第3回『意外と難しい?c8ビショップの使い方!』 | 2022.01.30

2022/01/09

Instructive Games and Positions from Hungary

1月7日朝にハンガリーから帰国し、現在は都内のホテルで3日間の隔離生活を送っています。遠征前、帰国時には公共交通機関を使わないことを条件に帰宅でき、自宅での14日間の隔離生活に入る予定でしたが、12月24日から3日間の検疫所指定施設での隔離が義務付けられました。自宅に戻れるのは明日夜の予定です。

思いがけず時間ができたので、ハンガリー遠征中に参加した大会から面白かったゲームと局面をご紹介しようと思います。

Pasti, A (HUN, 2377) - Aditya, V P (IND, 2281)
Vezerkepzo GM December 2021 (1)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Nd5 Nxd5 8. exd5 Nb8 9. a4 Be7 10. Be2 O-O 11. O-O f5 12. Bd2 a6 13. Na3 a5 14. Nc4 Nd7 15. b4 axb4 16. Bxb4 Qc7 17. a5 Nc5 18. Qc1 Bd7 19. Qa3 Bb5 20. Bxc5 dxc5 21. Rfb1 Bxc4 22. Bxc4 Bd6 23. Rb6 e4 24. Rab1 Ra7 25. Qb3 Rf7 26. a6 bxa6
27. Rxd6! Qxd6 28. Qb8+ Qf8 29. d6 Rad7 30. Qxf8+ 1-0


白がエクスチェンジダウンのまま、黒キングをメイトするのが印象的でした。

Girinath, P.D.S (IM, IND, 2335) - Ajay K (IM, IND, 2401)
Vezerkepzo GM December 2021 (4)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Nc6 4. O-O Bd7 5. c3 Nf6 6. d4 Nxe4 7. d5 Ne5 8. Bxd7+ Nxd7 9. Re1 Nef6 10. Na3 Nb6 11. c4 g6 12. Rb1 Bg7 13. Qe2 Nc8 14. b4 cxb4 15. Rxb4 Qd7 16. Be3 O-O 17. Bd4 Nh5 18. Bxg7 Nxg7 19. Nb5 Re8 20. Nc3 Nb6 21. Ne4 Qc7 22. Nd4 Nd7 23. Qe3 a6 24. Reb1 Rab8 25. Qh6 Nf6 26. Nxf6+ exf6 27. Qf4 f5 28. h3 Re4 29. Qd2 Rbe8 30. Nf3 Qc5 31. Rxb7 Re2 32. Qd4 Qxd4 33. Nxd4 Rxa2 34. Rd7 Nh5 35. Rxd6 Re4
36. Ne6! fxe6 37. Rb7 1-0


黒もバックランクの弱さは警戒していたでしょうが、こうした意外な一撃で勝負は決することもありますね。

Avinash, R (IND, 2391) - Aditya, V P (IND, 2281)
Vezerkepzo GM December 2021 (8)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 g6 4. O-O Bg7 5. c3 e5 6. d4 cxd4 7. cxd4 exd4 8. Bf4 a6 9. Ba4 Nge7 10. Bd6 b5 11. Bb3 Bb7 12. Re1 Nc8 13. e5 Nxd6 14. exd6+ Kf8 15. Nbd2 Bf6 16. Bd5 Na5 17. Bxb7 Nxb7 18. Ne4 Kg7 19. g4 h6 20. h4 Kh7 21. Qb3 Rf8 22. Qd5 Na5 23. g5 hxg5 24. hxg5 Bg7 25. Ne5 Nc4 26. Ng4 Qb6
27. Nef6+! Bxf6 28. Qh1+ 1-0


シンプルなメイトではありますが、Qd5-Qh1+ は見落としやすい動きで、面白いフィニッシュでした。

Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Ajay K (IM, IND, 2401)
Vezerkepzo GM Christmas (5)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bg5 e6 7. f4 h6 8. Bh4 Qb6 9. Qd2 Qxb2 10. Rb1 Qa3 11. f5 Be7 12. fxe6 fxe6 13. Bc4 Nxe4 14. Nxe4 Bxh4+ 15. g3 Bg5 16. Nxg5 hxg5 17. Rb3 Qc5 18. Rc3 Nc6 19. Nxe6 Bxe6 20. Bxe6
20... Rxh2! 21. Qxh2 Qxc3+ 22. Kd1 Ke7 23. Bb3 Rf8 24. Re1+ Kd8 25. Qg1 Nd4 0-1


ちょうど20手目を黒が指した局面を会場で目撃し、とても驚かされました。クイーンが当てられているのを無視して相手のルークを狙い返す、強力なディフレクションです。

今回、意識したわけではないのですが、全て選んだゲームはインドのプレーヤーのものでした。今後もハンガリー、セルビア近辺のGMトーナメントにはインドからノームを求める強豪がインドからどんどん来ると思います。次の遠征では彼らに負けない力強いプレーが必要ですね。

2022/01/06

Vezerkepzo GM Christmas 2021 R9


1月4日の午前中に9試合目を終え、12月頭からの久々の海外遠征は予定していた全試合を終了しました。最後まで戦績は振るいませんでしたが、また今回の経験を糧にステップアップを目指していきたいと思います。それでは最終戦、インドのAvinash とのゲームです。

Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 (9)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. Nc3 d5 5. Bg5!?

12月からAvinash との対戦も3回目ですので、Fianchetto Variation ではない新しいラインもGrunfeld に対して使ってみました。

5... dxc4 6. e4 c5 7. Bxc4 Qa5?!


おそらくAvinash はあまりこのラインを深く知らず、早々に良くない手を指してきました。とは言え、私も研究の浅いところでベストの咎め方がよく分かっていません。

8. O-O


8. e5! Ne4 (8... Ng4 9. O-O! cxd4 10. Nd5! Nc6 11. Nxd4 Ngxe5 12. Nxc6 bxc6 13. b4! Qd8 14. Bxe7+-) 9. O-O! Nxg5 10. Nxg5 O-O 11. Bxf7+! Rxf7 12. Nxf7 Kxf7 13. Qf3+ Kg8 14. e6 Qd8 15. Qf7+ Kh8 16. d5+-
Analysis Diagram

こうして2ピース vs. ルークでも黒のクイーンサイドのピースを抑え込んでしまえば白が勝勢とはいうのは分かりませんでした。本譜でも白は多少の展開の早さと、e7 へのプレッシャーを活かしてプレーします。

8... cxd4 9. Bb5+

本譜も悪くないですが、9. e5! dxc3 10. exf6 Bxf6 11. Bxf6 exf6 12. Re1+ Kf8 13. Qd6+ Kg7 14. Re7 Rf8 15. b4 Qb6 16. Qd5+/- 上記の変化同様、e4-e5 と押し込んで展開の早さで押すのが白としては良い作戦でした。

9... Nc6 10. Qxd4 O-O 11. Bxc6 bxc6 12. e5! Nd7 13. Bxe7


私は思い描いていた局面があり、すぐにe5 を取りましたが、13. Rfe1 Re8 14. b4 Qc7 15. Rac1 とポーンを取り合わず、黒の悪いポーンストラクチャーを突いてゆっくり戦う作戦もありました。

13... Re8 14. Qh4!? Nxe5 15. Nxe5 Qxe5 16. Rfe1 Qh5(=) 17. Bf6!

相手のドローオファーを蹴って戦うことを決めました。どこまでリスクを取るか悩みましたが、本譜は割と白が安全でありつつ、実戦的には勝負にいける変化です。17. Qxh5 gxh5 18. Na4 Be6 19. Ba3 Bxa2!-/+ のように黒のポーンストラクチャーを乱しても、ポーンを取られてしまう変化はだめでしょう。

17... Rxe1+ 18. Rxe1 Qxh4 19. Re8+ Bf8 20. Bxh4 Bb7 21. Rxa8 Bxa8 22. Bg5?!


しかし、ここは何がベストか分かりませんでした。黒のa、cポーンを狙いつつ抑え込むのであれば、g1-a7 のダイアゴナルにビショップを切り替えるのが良いと考えました。Avinash は22. Bf6 で黒キングを抑え込むアイディアを試合後に伝えてくれましたが、22. f3! Bb7 23. Bf2+/= のほうがわずかに良いかもしれません。f2-f3 は本譜でも後に指す手ですが、この時点ではg2-g3 も考えており、早い段階で突くポーンを決めるのをためらってしまいました。

22... Bb7 23. Be3 a6 24. Kf1 f5 25. Ke2 Kf7 26. Na4 Bc8 27. Kd3 Be6 28. b3 Bd5 29. f3 Bd6 30. h3 Ke6 31. Bc5 Bh2

黒マスビショップを交換してc5 のマスを抑え、グッドナイトvs. バッドビショップの構図にすれば白は俄然やる気が出てきます。黒も当然それは避けるので、黒マスビショップの交換をいかに目指すかがこの辺りでの白の作戦の中心となります。

32. Bd4 Bd6 33. Bc5 Bh2 34. Bb4 Bg1 35. Bd2 c5 36. Be3 Bxe3 37. Kxe3


黒マスビショップは交換できましたが、c6-c5 を許してしまったためにc5 のマスを抑えられなくなりました。これだとグッドナイトvs. バッドビショップと呼べるかは疑問です。

37... Kd6 38. Nb2 a5 39. h4 Ke5 40. Nd3+ Kd6 41. Nb2 Ke5 42. f4+ Kd6 43. g3 Kc6

キングサイドのポーンを全て黒マスに移し、黒のビショップに狙われないようにしましたが、代わりにe4 のマスを明け渡してしまいます。

44. Kd2 Kd6 45. Kc3 Kc7 46. Nd3 Kd6 47. Ne5 Kc7 48. Nd3


48. Nc4 Bxc4 49. Kxc4 Kc6! 50. a3 h6 51. a4 h5 52. Kc3 Kd5 53. Kd3 Kd6 54. Kc4 Kc6= c4 のマスでピースを交換したポーンエンディングは、黒のポーンでの手待ちがぴったりで白キングは侵入するルートを確保できず、ドローになります。

48... Kd6 49. Nf2 Be6 50. Nh3 Kc6 51. Ng5 Bg8 52. Nf3 Kd6 53. Ne5 Be6 54. Nf3 Bd5 55. Nd2 Be6 56. Nf3 1/2-1/2

ナイトが侵入するルートやターゲットが不十分であるため、この時点でドローを受け入れました。早々にドローにせず、ある程度進めたことで勉強になったので、ゲームを続けてみて良かったと思います。

12/26 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Aditya, V P (IND, 2281) 0-1
12/27 15:00 Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/28 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Ajay, K (IM, IND, 2401) 1/2-1/2
12/29 15:00 Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/30 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271) 1/2-1/2
12/31 11:00 Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
01/01 Rest Day
01/02 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi, V (WFM, IND, 2216) 1-0
01/03 15:00 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
01/04 10:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391) 1/2-1/2

Vezerkepzo GM Christmas 2021 Standings

+7 Pechac
+4 Nagy
+3 Ajay
+2 Mihok
+-0 Aditya
-2 Kojima、Avinash
-3 Trost、Sahithi
-6 Leszko

結局スロバキアのPechac が2人のGM以外との試合を全て勝ち、7つ勝ち越しの8/9 で大会は終わりました。4連勝のち4連敗のAditya は最終戦のみドローでイーブン。Ajay が最終戦でGM Mihok に勝ったのは印象的で、この3大会で2500クラスのGM に土がついたのはこの試合のみです。日本に帰国後、紹介していなかった他のプレーヤーの面白いゲームやポジションなど、余裕があれば紹介していこうと思います。皆さん、また日本の大会、イベントでお会いしましょう!
ブダペスト最後の晩餐は、現地に住む友人とお寿司屋さんへ。こちらも10年前からお世話になっている店なので、2024年のオリンピアードではチームメイトとまた訪れたいですね。

2022/01/05

Vezerkepzo GM Christmas 2021 R8


昨日、ハンガリーでの最終戦を終えて今回の遠征の全試合を終了しました。4日の試合開始時間が早く、ブログ更新が遅れててしまいましたが、3日に指したGM Nagy とのゲーム解説を先にして、最終戦はまた次の更新でご紹介したいと思います。

Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 (8)

1. c4 c6 2. d4 d5 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bg4

特に準備していたわけではないのですが、こちらのラインを復活させることにしました。白のダブルビショップをどう抑え込むかが序盤のカギです。

5. h3 Bxf3 6. Qxf3 e6 7. Bd3 Nbd7 8. O-O Bd6 9. Nc3 O-O 10. Bd2 Re8 11. Rad1


黒はe6-e5 からのセンターブレイクを狙いますが、そのためにはある程度準備が必要です。d5 を孤立ポーンとして残すこともなるべく避けたいです。

11... Qe7 12. Qe2 dxc4! 13. Bxc4 Nb6?!

ここはc6 を孤立ポーンにすることを恐れず、すぐにeポーンを突くべきでした。13... e5! 14. dxe5 (14. d5 e4! 15. dxc6 bxc6 と進んだ局面は、e5 のマスを使ったアクティブなプレーで、ポーンストラクチャーの悪さを十分に補えます。) 14... Bxe5 15. Rfe1 Rad8= これくらいで黒は満足でした。本譜と違い、ナイトはNd7-Nc5 と跳ぶ楽しみがあります。

14. Bd3 e5 15. dxe5 Bxe5 16. Rfe1 Nbd5 17. Nxd5 Nxd5 18. Bc1!+/=


ナイトを捌くのは良い作戦だと思っていましたが、徐々に白のビショップペアが力を発揮するようになってきます。

18... g6 19. a3 Bc7 20. g3! Bb6 21. Kg2 h5 22. h4 Nf6 23. f3 Kg7?!

これは完全に無駄な手でした。本譜のナイトの組み替えを1手早くやっておくべきでしょう。

24. e4 Nd7 25. b4 Ne5 26. Bb2 Kg8 27. Bc2 Rad8


Bc1-Bg5 を警戒してd8 にルークを置くことをためらっていましたが、ここでようやく出番だと思いました。しかし、実際にはクイーンサイドで反撃するほうが良く、27... a5 28. b5 Red8 くらいで粘るべきでした。

28. Bb3 Rxd1 29. Rxd1 Rd8 30. Rxd8+ Bxd8 31. Qe3!

a7 のポーンを狙いつつ、d4 にクイーンを運んでビショップと並べる狙いです。黒には満足なディフェンスがありません。

31... Qd6 32. Qd4!


32. Qc3 Qd3! 33. Qxe5? Qe2+= ならばドローに逃げられます。白は本譜のようにクイーンを交換しても確実な1ポーンアップを目指すべきです。

32... Bc7 33. f4 Qxd4 34. Bxd4 Nd7 35. Bxa7 Bb6 36. Bxb6 Nxb6 37. Kf3+-

ビショップは交換したものの、ポーンは全て白マスに固定され、白のセンターのポーンマジョリティに押し込まれるだけの流れになってしまいました。

37... Kg7 38. Ke3 Nd7 39. e5 Kf8 40. Ke4 Ke7 41. f5 Nf8 42. Bd1 Nd7 43. Kf4 Kf8 44. Bb3 f6 45. exf6 Nxf6 46. fxg6 Kg7 47. Bc2 Kh6 48. Ke5 Nd5 49. Kd6 Kg7 50. Be4 Nc3 51. Bd3 Nd5 52. b5 1-0


久々に指す割には序盤が上手くいったと思っていたのですが、ナイトを捌く判断が良くないものだとは試合中分かりませんでした。またこのラインも調べなおして本格的に使うかもしれません。

12/26 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Aditya, V P (IND, 2281) 0-1
12/27 15:00 Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/28 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Ajay, K (IM, IND, 2401) 1/2-1/2
12/29 15:00 Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/30 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271) 1/2-1/2
12/31 11:00 Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
01/01 Rest Day
01/02 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi, V (WFM, IND, 2216) 1-0
01/03 15:00 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
01/04 10:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391) 1/2-1/2

Vezerkepzo GM Christmas 2021 Standings

+7 Pechac
+4 Nagy
+3 Ajay
+2 Mihok
+-0 Aditya
-2 Kojima、Avinash
-3 Trost、Sahithi
-6 Leszko

2022/01/03

Vezerkepzo GM Christmas 2021 R7

Espresso Embassy のチェスボード机もようやく使うことができました。駒は持参した妻のものです。

年が明け、最初の試合がやってきました。相手はインドの女子プレーヤー、14歳のSahithi Varshini です。11月はIMセクションで大きく勝ちこし、レイティングを2200に乗せて上のGMセクションに初チャレンジのようでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi Varshini (WFM, IND, 2216)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 (7)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3!? Bb4 4. Bd2!?

この遠征では3. Nf3 をメインに準備していましたが、一昨年から少し指していたNimzo-Indian 4. Bd2 Variation を元日に調べ直し、このゲームに投入しました。局面は早々に、Semi-Slav Anti-Meran のようになります。

4... O-O 5. Nf3 d5 6. e3 Nbd7 7. Rc1 Re8 8. Qc2 9. Be2 h6 10. O-O Bd6 11. Rfd1 Qe7


正直に言えば、クイーンを上がってくれることを期待して11. Rfd1 を指しました。個人的にはd2 のビショップがdファイルをブロックしているため、d1 のルークを気にせずにすぐにe6-e5 のアクションを起こされるほうが嫌でした。11... dxc4! 12. Bxc4 e5 13. dxe5 Nxe5 14. Nxe5 Bxe5 15. Ne2 Qc7= これくらいで黒は不満がありません。黒マスビショップはBf8-Bb4-Bd6 と組みなおしてテンポロスしていますが、白もd2 のビショップの位置が理想的か疑問です。

12. h3 dxc4 13. Bxc4 e5 14. Nh4! Nb6?!

これは指したくなるのが分かりますが、ナイトが跳ぶのは別のマスのほうが良かったでしょう。14... Nf8! 15. dxe5 (15. Nf5 Bxf5 16. Qxf5 e4= これは使いづらい白マスビショップを捌いて黒は問題ありません。) 15... Qxe5 16. Nf3 Qh5= 白がアドバンテージを取るにはもう一工夫必要です。

15. Ng6! Qc7?!


自然なクイーンの避け場所に見えますが、ビショップを互いに取り合うのが黒のベストでした。15... Qd8! 16. Nxe5 Bxe5 17. dxe5 Nxc4! 18. exf6 Qxf6 (ここでポーンをクイーンで取り返せるのが、d8 に退くポイントです。) 19. Be1+/=

16. Nxe5 Nxc4?!

16... Bxe5 17. dxe5 Qxe5 18. Bd3+/- 黒は自分だけビショップを失う少し嫌な展開ですが、これで耐えるほうが良かったでしょう。本譜もやりたいことは分かりますが、こちらもきちんと読んでおり、相手の読み抜けに気づいています。

17. Nxc4 Bh2+ 18. Kh1 b5 19. Na5!


おそらく相手はここにナイトの逃げ場があることを見落としていたのでしょう。ナイトとビショップの取り合いであれば、1ポーンアップの白は満足です。黒がポーンを失った代償を伴って戦うには、ダブルビショップをキープしたまま、特に白マスを上手く活用するほかありません。

19... b4 20. Na4?!

しかし、私もこれが試合で唯一と言って良い緩手でした。黒が弱めたクイーンサイドを利用するには、c5 のマスを抑えておいたほうが良いと思ってa4 にナイトを跳ばしましたが、白のキングサイドも手薄なので、g3 のマスをカバーするために20. Ne2! と下がるほうが良かったでしょう。20. Ne2! Ne4 21. Be1 Bg3!? (21... Qxa5 22. Kxh2 Qxa2 23. Qxc6+- 試合中はa2 との取り合いを気にしましたが、問題無いようです。) 22. f3!? Bxe1 23. fxe4+/- こうしたピースの取り合いは考えていませんでした。多少キング前を弱めても、ピースを減らしていけば1ポーンアップの白は満足です。

20... Ne4 21. Bxb4 Bf5 22. Qe2 Bg3! 23. Rxc6!


23手目で何を指すか、最も慎重に考えました。23. Be1?! Bxf2! 24. Bxf2 Qxa5 25. b3 Qd5! と進めば、黒は1ポーンダウンながらe4 のマスとe3 のポーンを抑え込んで戦えそうです。

23... Bxf2

23... Nxf2+ 24. Qxf2 (24. Kg1? Qf4! 25. exf4 Rxe2 26. Rf1? Nxh3+ 27. gxh3 Be4!-+ は大逆転で白キングがメイトされます。) 24... Qxc6 25. Nxc6 Bxf2 26. Ne7+ Rxe7 27. Bxe7 Bxe3 28. d5+/= 黒の23手目も難しい選択肢が多く、白も間違えると大変な状況になります。本譜はクイーンを交換して大きな脅威は去ったように見えますが、リードしているポーンを守り切るのが意外と難しい局面でした。

24. Rxc7 Ng3+ 25. Kh2 Nxe2 26. Bd6!?


ルークでビショップを当てられる手は大丈夫だと判断して指した手ですが、この時点の予想よりも実際の局面が複雑で、もう少し慎重に読んで指すべきだったと反省しています。26. Rc5 Bg3+ 27. Kh1 Bf2 28. Bd2 Ng3+ 29. Kh2 Bd3! 30. Nc3 ももう1つの選択肢で、形勢は不明です。

26... Rad8 27. Rf1!

この手は26手目を指した時点で第1候補でしたが、g1 でチェックされる可能性があることに気づいて読みなおしました。この手が成立しないと26手目が間違いになってしまうので、かなり焦りました。白は常にBf2-Bg3+ を警戒していないといけません。

27... Bxe3


27... Bg1+? 28. Rxg1 Nxg1 29. Nb7! Rd7 30. Rxd7 Bxd7 31. Nac5!+- がナイトを逃がしつつビショップを攻撃し、g1 のナイト取りとのダブルスレットを作るぴったりのアイディアでした。

28. Nb7 Bd3?


上記の変化同様、b7 にナイトが入る手がルークを当てつつビショップを守る素晴らしい手で、d6 でルークを切られてもNa5-Nb7-Nd6 と移動したナイトがルークとビショップをフォークする最高の位置にいます。これで26... Rad8 に完全に対応して勝ったと思ったのですが、それは相手のミスに助けられた結果でした。ここは28... Rc8! 29. Rxf5 Rxc7 30. Bxc7 Re7! (この手が7段目で串刺しになっていることに気づいていませんでした。) 31. Nc3 Nxd4 32. Nd5 Rxc7 33. Nxc7 Nxf5= こうしてピースの数も同じにされたうえ、e3、d4 と連続でポーンを取られてしまえば形勢は互角でしょう。

29. Rfxf7 Bxd4 30. Nxd8 Rxd8 31. Rfd7+-

こうしてルークを貰ったうえで、ビショップも守り切ってb8-h2 のダイアゴナルを抑え続けられれば白の勝勢です。それでも最後まで気を抜かずに指しました。

31... Ra8 32. Nc3 Nxc3 33. bxc3 Bf6 34. Rxa7 Re8 35. Be7!


ルークも交換してしまえば、あとはパスポーンを進めるだけです。

35... Be5+ 36. Kh1 Be4 37. Rd8 Rxd8 38. Bxd8 Bxc3 39. Bb6 Kh7 40. a4 1-0

この大会待望の初勝利でありながら、2022年の公式戦初白星となりました。思い切って序盤から変えてみて良かったと思います。次は3大会連続となるGM Nagy との試合です。前回は最終戦だったこともあり、あっさりドローになりましたが、今日はどうでしょうか。勉強させてもらおうと思います。

12/26 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Aditya, V P (IND, 2281) 0-1
12/27 15:00 Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/28 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Ajay, K (IM, IND, 2401) 1/2-1/2
12/29 15:00 Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/30 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271) 1/2-1/2
12/31 11:00 Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
01/01 Rest Day
01/02 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi, V (WFM, IND, 2216) 1-0
01/03 15:00 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
01/04 10:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391)

Vezerkepzo GM Christmas 2021 Standings

+5 Pechac
+2 Mihok、Nagy
+1 Ajay、Aditya
-1 Kojima、Avinash、Trost
-4 Leszko、Sahithi

Pechac はGM 以外との試合を、色に関係なく全て勝ちそうな勢いです。5つ勝ち越すには、これくらいのプレーが必要なのだといみじみ思います。

2022/01/02

2021 公式戦戦績

12月後半からはこんな場所で試合をしています。

毎年年末に記事を書いているその年の公式戦戦績の集計ですが、昨年は大晦日まで試合があったため、年明けにこの記事をお届けまします。2021年は東京での大会がかなり中止になったうえ、東京チェス選手権は自分の都合で参加を取りやめたため、試合数は2020年同様かなり少なかったです。それでも、神戸、名古屋などの地方遠征もあり、年末にはハンガリーにも来ることができました。NCS 公式戦はラピッドレイティングが導入されたため、クラシカルと分けています。

NCS クラシカル公式戦


兵庫選手権 4勝
千葉チェスクラブ例会 2勝
名古屋オープン 3勝1敗(Alexさんに負け)
Japan Open 5勝2ドロー

トータル 14勝1敗2ドロー、勝率 88%
NCS クラシカルレイティング増減 2496→2499

NCS ラピッド公式戦


NCC Super Rapid 4勝
中部快速オープン 5勝
NCS Online Autumn Chess 4勝1敗(南條くんに負け)

トータル 13勝1敗、勝率93%
NCS ラピッドレイティング2500を獲得

FIDE 公式戦


Japan Open 5勝2ドロー
First Saturday GM December 2021 2敗7ドロー (Avinash、GM Nagy に負け)
Vezerkepzo GM December 2021 1勝5敗3ドロー(IM Girinath、IM Ajay、Aditya、FM Pasti、GM Mirzoev に負け)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 2敗4ドロー (Aditya、GM Pechac に負け)

トータル 6勝9敗16ドロー、勝率45%
FIDE レイティング増減 2389→2364


国内戦績はさておき、最後の遠征で戦績が振るわず、FIDEレイティングをだいぶ落としてしまいました。今年はこれを戻すことは当然考えますが、新しいプレーにも挑戦してみようと思います。2022年も多くの場所の大会、イベントで皆さんと交流できることを楽しみにしています。

2022/01/01

Vezerkepzo GM Christmas 2021 R5 & R6

大晦日に間近で見上げる国会議事堂です。

明けましておめでとうございます。ハンガリーでも無事に新年を迎えました。2022年もどうぞよろしくお願い致します。

R6 が午前中のスタートだったため、今夜は2つの試合をまとめてご紹介します。どちらも苦しいゲーム展開にしてしまいましたが、相手のミスからドローチャンスが生まれました。まずはスウェーデンのジュニア、Trost とのゲームです。

Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271)
Vezerkepzo GM Christmas 2021
Position after 59... Kc6

途中、ドローで満足すべきところで無理をして大きな駒損になってしまいました。しかし、ここからでもまだ黒のミスで挽回がありえます。

60. Re7 Rxb7?


このポーンを急いで取ったのが失敗で、60... a5! と先にポーンを伸ばしておけば黒勝ちでした。黒はいつでもb7 を取ることができ、白のプロモーションも恐れる必要はありません。

61. Rxe6+ Kb5 62. Rh6 Rd7

dファイルでのカットオフは自然に見えますが、少し白にとっては分かりやすくなったかもしれません。62... a5 63. Rxh4 Rd7 64. Rh1 a4 65. Rh8 a3 66. Ra8 Kb4 67. Rb8+ Kc3 68. Rc8+ (68. Ra8? Rd3+ 69. Ke2 Kc2-+) 68... Kb2 69. Rb8+ Ka1 70. Ke2 a2 71. Rb6 Rh7 72. Kd2 Rh1 73. Kc2 Rb1 74. Rf6= これも有名なドローのパターンですが、短時間で正確にドロー変化だと気づけたかは分かりません。

63. Rh5+


63. Rxh4 a5 64. Rh8 のように、上の変化を見れば黒にaポーンを進められてもドローであることは分かりますが、本譜のほうが分かりやすいでしょう。

63... Kc6 64. Rxh4 a5 65. Rd4=

これでぐっと指し方が分かりやすくなりました。dファイルのカットオフを解いて白キングを寄せていけばドローです。

65... Rb7 66. Kd3 Kb5 67. Kc3 Ka6 68. Rd6+ Kb5 69. Rd4 Rb6 70. Rh4 Ka6 71. Rh2 a4 72. Rb2 Rg6 73. Kb4 Rg4+ 74. Ka3 Ka5 75. Rb8 Rg3+ 76. Ka2 Rg2+ 77. Ka3 Rg3+ 78. Ka2 Rb3 79. Rxb3 axb3+ 80. Kxb3 1/2-1/2


続けてハンガリーのGM Mihok Oliver とのゲームです。レイティングも低い小さな頃からFirst Saturday に参加している、 First Saturday で育ったと言っても過言ではないマスターです。
Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 (6)
Position after 40... Rb7

40手目までなんとか到達しましたが、黒はhファイルから突破されそうなうえ、パスポーンを止めていないといけない負担もあります。なんとかクイーンサイドからの反撃でバランスを取ろうとします。

41. Be7! a4 42. gxh5 b3


キングサイドでポーンが落ちるのはどうしようもないので、bファイルのパスポーンに望みを託します。42... gxh5 43. Rf6+ Rg6 44. Bf8+!+- は白勝ちです。

43. hxg6+ Kg7 44. axb3 axb3 45. Rh7+ Kxg6 46. Rh2?

試合後、スロバキアのPechac が私たちのボードに来て、46. Rh1! なら白勝ちだったと教えてくれました。46. Rh1! Rg7 47. Rf6+ Kg5 48. Rxe6++- これならば本譜と違い、黒はビショップを逃がす暇がないために白の勝勢です。

46... Bd5 47. Rh3 Rg7 48. Rf6+?


白は最後のチャンスを逃しましたが、ここも正解を見つけるのは難しいと思います。48. Rg4+ Kf5 (48... Kf7? 49. e6+! Bxe6 50. Rf3+ Kg8 51. Rf8+ Kh7 52. Rh4+ Kg6 53. Rf6+ Kg5 54. Rxe6++-) 49. Rxb3! Bxb3 50. Rxg7 Be6+/- 黒もパスポーンをブロックして粘りますが、ドローを確実に取るにはまだ一苦労です。

48... Kg5 49. Rg3+ Kh5 50. Rxg7 b2 51. Rh7+ Kg4!?

キングをどちらに逃がすのが確実にドローなのか、よくわかりませんでした。51... Kg5 52. Rg7+ (52. Rff7+ Rxe7 53. Rhg7+ Kh6 54. Rh7+ Kg5 55. Rhg7+=) 52... Kh5= ならば本譜と同じです。

52. Rg7+


試合後、Mihok からはf4 でチェックしたらどうするかと聞かれました。私は意味がよく分からなかったのですが、Pechac を交えて3人で盤上に並べると、とても面白い変化が見えてきました。52. Rf4+!? Kxf4 53. Bg5+ Kf3! 54. Rxb7 Bc4+ 55. Kg1 Bb5 56. Rf7+ Kg3 57. Bh4+ Kg4 58. d7 b1=Q+ 59. Kh2 Qb2+ 60. Rf2 Qxe5+ 61. Kg1 Qa1+ 62. Kh2 Qe5+= こんなアイディアがあったとは欠片も考えませんでした。いずれにせよドローですが、51手目のキングを逃がすマスは大きな差がありました。

52... Kh5 53. Rh7+ Kg4 54. Rg7+ 1/2-1/2

互いにミスも多かったですが、2021年最後のゲームをこうして面白いGM との試合で締めくくれたことを嬉しく思います。

12/26 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Aditya, V P (IND, 2281) 0-1
12/27 15:00 Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/28 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Ajay, K (IM, IND, 2401) 1/2-1/2
12/29 15:00 Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/30 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271) 1/2-1/2
12/31 11:00 Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
01/01 Rest Day
01/02 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi, V (WFM, IND, 2216)
01/03 15:00 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
01/04 10:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391)

Vezerkepzo GM Christmas 2021 Standings

+4 Pechac
+2 Ajay、Aditya +1 Mihok、Nagy
-1 Avinash
-2 Kojima、Trost、Sahithi
-3 Leszko

この2試合でPechac とAjay が連勝しており、Aditya は連敗です。Pechac は本当に強く、危なげないプレーを見せてくれています。
2021年最後の食事はランゴーシュ(ハンガリーの揚げパン) でバーベキューパークを挟んだものでした。チーズもふんだんに乗せられて、凄いボリュームです。
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