2020/11/30

Chubu Rapid Open 2020 Tournament Report

今年の中部快速オープン入賞者たち

昨日は中部快速オープンに参加するために名古屋へと足を運んできました。今年は新型コロナの影響で、例年の6R から1R 減らされ、5R での開催です。私は3R での大多和くんとのドロー以外、4試合を勝ち切って優勝を手にすることができました。オープン、A、B各クラスの入賞者の皆さん、おめでとうございます。

1st Place Kojima, S 4.5/5
2nd Place Ogawa, T 4/5
3rd Place Otawa, Y 3.5/5
4th Place Jiang, L 3.5/5

Chubu Rapid Open 2020 Final Standings


名古屋は東京の大会とは参加メンバーが一風異なり、毎回楽しませてもらっています。今回も2位の小川さん、4位のJiang さんとは初対戦で、どちらのゲームもとても相手の強さを感じるような内容でした。特に日本での公式戦初参加となる小川さんは、多賀くん、Scottさん、大多和くんとリスト上位を次々に破り、4連勝でトップに立ちました。逆転優勝をかけた小川さんとの最終戦をご紹介します。

Kojima, S - Ogawa, T
Chubu Rapid 2020 (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 c5 4. Nc3 cxd4 5. Nxd4 Bg7 6. e4 d6 7. Be2 O-O 8. O-O a6 9. Be3 Nc6 10. f3 e5?!

d4 のナイトを追い返したい気持ちは分かりますが、g7 のビショップの利きを止めてしまうという点でこの手には疑問を感じます。d5 のマスとd6 のポーンを弱めてしまうことも気がかりでしょう。

11. Nc2 Be6 12. Qd2 Re8 13. Rfd1 Bf8 14. Rac1 Rc8 15. Bf1 Nh5


黒の作戦はKing's Indian のように、f7-f5 とキングサイドのポーンを伸ばして白キングに攻撃を仕掛けることだと予想できます。 d5 のマスが空いたままであることが、どのように影響するかがポイントです。

16. b4 f5 17. Kh1 f4 18. Bf2 Nf6 19. Nd5 Bxd5?!

このピース交換はd5 のマスを白ポーンで埋め、黒が通常のKing's Indian のように考えやすくはなりますが、c8-h3 のダイアゴナルを抑える重要な白マスビショップが消えることで、黒のキングサイドアタックの力が弱まるというデメリットがあります。d6 のバックワードポーンやd5 のアウトポストの弱点で苦しくはありますが、19... Nd7 と退いてb6 のマスをカバーし、耐える展開もありえたと思います。

20. cxd5 Ne7 21. a4 g5 22. Na3


白としてもd5 のピース交換からKing's Indian Taimanov Variation などと同じポーンストラクチャーになり、クイーンサイドからどのようなアクションを起こせばよいか分かりやすくなります。a7-a6 を突かせていることも白にとってプラスになり、Na3-Nc4-Nb6Bf2-Bb6 のようなb6 のマスを利用したアイディアも使いやすい状況です。試合後に思い付いたのは、本譜の代わりに22. h3 を突いておき、黒のg5-g4 を止めてキングサイドの攻撃を予防する手もありえたでしょう。これも黒の白マスビショップがすでにないために、h3 のポーンへのビショップサクリファイスが無いことを利用した手です。他にも22. a5 と突いて早めにb6 のマスを確保しておくアイディアや、22. b5 で早めにクイーンサイドを崩しにいくアイディアも強力です。

22... Ng6 23. Rxc8 Qxc8 24. Rc1 Qd7 25. b5 g4

互いに逆サイドのポーンを突き合い、King's Indian らしい攻め合いになってきました。直接キング前を攻めている黒のアタックのほうが強そうにも見えますが、白もcファイルからルークが侵入し、b7 を取ってプロモーションを目指せる展開になれば、黒キングへのダイレクトアタックが無くても白には大いにチャンスがある状況です。

26. Nc4 axb5 27. Nb6 Qg7 28. Bxb5 Rd8?!


ルークの逃げ場は少し悩むところですが、28... Re7 として7段目を抑えておくほうが良かったと思います。8段目が薄くなるのは不安にも思えますが、29. Rc8 Rc7 ならば黒はcファイルを取り返して十分です。

29. a5 Qh6?!

h2 を攻めるために指したくなる手ではありますが、c7 にルークが簡単には入れれば白のプレーはとても楽になります。代わりに 29... g3 30. Be1! gxh2 31. Qc3+/- としても、白は1ポーンを取らせてhファイルに蓋をし、cファイルからの侵入で優勢です。試合中はビショップをg1 に退くつもりでしたが、Bf2-Bg1-Bf2 という手損がない分、30. Be1! と退くほうが正確であることを解析で見つけ、勉強になりました。

30. Rc7 g3 31. Bg1


本譜でもなんら問題無いですが、31. Bxg3! fxg3 32. Qxh6 Bxh6 33. Rxb7+- としてビショップを捨ててもクイーン交換をして黒のアタックを消し、b7 を取ってaポーンのプロモーションを狙えば白と勝勢というのがコンピュータの指摘です。白が早めにa4-a5 とポーンを進めておいたプラスと、黒がQg7-Qh6 としてc1-h6 ダイアゴナルにクイーンを置いてしまったマイナスが、上手く噛み合った変化です。

31... gxh2 32. Bf2 Nh4 33. Bf1 Nh5??

少しだけ指してくるかなと思っていました。先に跳んだナイトをただで落としてしまう痛すぎるミスですが、これがなくても黒は苦しい状況です。 33... Rb8 34. Nd7 Nxd7 35. Rxd7+- でも7段目をルークで強力に抑え、クイーンも使ってb7 を落とせば白の勝ちでしょう。

34. Bxh4 Re8 35. Rxb7 Be7 36. Bf2


当然ながら、g3 のマスをカバーし続けるために黒マスビショップは残しておきます。残りはプロモーションを目指すだけのシンプルな流れです。

36... Bg5 37. a6 Ng3+ 38. Bxg3 fxg3 39. Qe1 Bh4 40. a7 Qf8 41. Nd7 Qe7 42. Rb8 Qxd7 43. a8=Q Rxb8 44. Qxb8+ Kg7 45. Qc1 1-0

試合後、小川さんはナイトのただ落ちを悔しんでいましたが、私はかなり早い段階の、白マスビショップを消した時点から黒のキングサイドアタックは不十分になってしまうのではないかと指摘しています。それでも普段はKing's Indian にはFianchetto Variation で、こうした逆サイドからの攻め合いを避ける展開を選んでいるため、早指しで久々にこのようなゲーム展開は緊張しました。無事に逆転優勝を手にすることができ、一安心です。

今回の遠征で、私の今年の公式戦は全て終わりの予定です。来週の大阪浪速オープンや、クリスマスの大会に参加される皆さんは、あと少し年内の公式戦を楽しんできてください。またコロナ禍でイベント運営も大変な中、東海オープンに引き続き、名古屋チェスクラブには大変お世話になりました。年明け以降も、よろしくお願い致します。
今回はトップボードのみ、こうした電子ボードでの中継がありました。最終戦はボードのエラーで中継が止まってしまうトラブルがあり、こうした問題にどう対処するかは運営としても課題でしょう。海外大会でも中継にエラーが起きることは時々あります。
今回はお土産に少し変わったエビのお菓子を選びました。エビの姿焼き、初めて見ました。

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