2025/10/13

Nagoya Open 2025 Day2

今年も名古屋最大の大会、名古屋オープンが無事に閉幕しました。東海オープン、中部快速オープンに続いて名古屋3大会連続優勝を目指した私でしたが、2日目は2つのドローでトータル4勝2ドローとなり、2位でのフィニッシュとなっています。優勝は最終戦で山田くんを下した大塚くんです。オリンピアード代表2人に勝っての優勝は価値のあるものだと思いますが、意外なことにこの規模の国内大会優勝は初めてとのことです。優勝した大塚くんを始め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Otsuka, S 5.5/6
2nd Place Kojima, S 5/6
3rd Place Scott, T 5/6

Nagoya Open 2025 Final Standings


Tuさん、青嶋くん、南條くんの3人にいずれも土がつき、誰も入賞圏内にいないというのは珍しい大会です。私からは上手く指せた最終戦の東芝さんとの試合をご紹介します。

Higashishiba, T - Kojima, S
Nagoya Open 2025 (6)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 c5 6. dxc5 Bxc5 7. Nxc5 Qa5+ 8. c3 Qxc5 9. Nf3 Qc7 10. Be2

前回対戦の中部快速オープン同様、Caro-Kann Advance 4. Nd2 変化でした。試合中は忘れていましたが、10. Bf4 Nc6 11. Nd4 Nxd4 12. cxd4 Ne7 13. Bb5+ Nc6 14. O-O Qb6 15. Bxc6+ Qxc6 16. Rc1 Qa6= これが私の研究手順でした。これを黒側でつまらないと思うのであれば、どこかで変化をつけなければいけません。

10... Nc6 11. O-O Nge7 12. Re1 O-O 13. Bg5 h6! 14. Bh4 Bg4!


Ne7-Nf5は白にとって嫌なナイトのジャンプで、白は駒を自分から交換にいかざるをえません。

15. Bxe7 Qxe7 16. Nd4 Nxd4 17. Qxd4

ここはポーンで取られた場合、ほぼ互角かと思っていました。17. cxd4 Bxe2 18. Rxe2 Rfc8 19. Rc2 Qb4 20. Rac1 Rc4!?=/+ これで黒やや優勢はコンピュータの評価です。確かに黒は少しアイディアをひねり、d4にプレッシャーをかけるしか勝負にいく方法はありません。

17... Bxe2 18. Rxe2 Rfc8!


私がイメージしていたのは1927年のNimzowitch - Capablancaのゲームで、黒はc4のマスからの4段目侵入と、白陣に弱点を作るマイノリティアタックでチャンスをつかみます。

19. Rd1 Rc4 20. Qe3 b5 21. a3 a5 22. Rd4 Rac8! 23. Rxc4 Rxc4!

23... bxc4も考えましたが、b2だけが弱点だと黒は勝ちに不十分だと考えました。そこで1つポーンを捨ててでも、白に弱点となるポーンが多い形を目指します。

24. Qb6 b4! 25. Qxa5 bxc3 26. bxc3 Qb7! 27. h3?


バックランクを受けるのにgとh、どちらのポーンを突くか悩むところではありますが、ここはgが正解でした。27. g3 Qc6=/+ でも黒はチャンスですが、クイーンが7段目を離れるとf7への反撃を気にしなければいけません。本譜ではf7をクイーンでしっかり守ることができ、狙われるポーンがない点でかなり気楽に指すことができました。

27... Qb1+ 28. Kh2 Qf5!?

次にf4でのチェックを狙いながら、f7を守っておきます。私としてはクイーンのベストのマスだと思いましたが、28... Qf1 29. Ra2 Qe1!-+ として、ルークを追い出したうえでe5を狙いにいくべきだというのがコンピュータの指摘です。

29. Re3


29. Kg1 Qb1+ 30. Kh2 Qf1!-+ キングに戻られた場合、Qf1の位置を見つけないと黒は有利にならないようなので、こうされていたら試合中は自信がありませんでした。

29... Qxf2 30. Rf3 Qe1! 31. Qd8+ Kh7 32. Qb8

e5取りがチェックになるため、白はf7を取っている暇がありません。白がe5を守ってきた際、次にc3を取れるように30手目に黒クイーンの位置を決めました。

32... Rxc3 33. Rxc3 Qxc3 34. Qb1+ g6 35. a4 d4


1ポーンアップになり、e5を狙いながら早いパスポーンを進められる黒は、残りは難しくありません。

36. a5 Qxa5 37. Qe4 Qd8 38. h4 d3 0-1

最後は白の時間が落ちましたが、局面でも黒の勝ちになっています。今年も名古屋での大会を存分に楽しませていただきました。また来年、名古屋に戻ってこられる日を楽しみにしています!
夕飯は優勝した大塚くん、Aクラス入賞の2人と名古屋駅のお店へ。いつも味噌カツにするところ、今日は珍しくトンテキにしました。

2025/10/12

Nagoya Open 2025 Day1

松本でのレクチャーの様子

この週末は松本、名古屋と遠征をしています。昨日の土曜日は松本チェスクラブの例会でレクチャーをさせていただき、終了後、夜のうちに初めての乗車となる特急しなので名古屋へ移動しました。今年の名古屋の大会参加は、1月の東海オープン、6月の中部快速オープンに続き、3回目となります。初日の今日は良い内容で3連勝することができましたので、3Rの山道さんとの試合をご紹介します。

Kojima, S - Yamamichi, A
Nagoya Open 2025 (3)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 c5 7. dxc5 Bxc5 8. a3 Nc6 9. Qc2 Qa5 10. Rd1 Be7 11. Be2 Ne4 12. cxd5 Nxc3 13. Qxc3 Qxc3+ 14. bxc3 exd5 15. Rxd5 Bxa3 16. Nd4 Nxd4

ここまではブダペストオリンピアードの最終戦と同じ流れです。数日前にこの変化を調べ直した際にはすぐナイト交換をせず、16... a6! 17. Kd2 Nxd4 18. exd4 b5! とするのが黒は良いのではないかと発見しています。

17. exd4 b6 18. Kd2 Be6


自然な手に見えますが、白はb5のマスを使えるのはありがたいです。少しポーンの弱さは気になりますが、18... a6としてb5のマスを先に抑えておく手はあったでしょう。

19. Rb5 Rfd8 20. Ra1! Bc5

20... Bd6 21. Bxd6 Rxd6 22. Bf3 a6 23. Rxb6! (検討では23. Rba5!? という手を発見し、どちらも白勝勢です。) 23... Rxb6 24. Bxa8+- このポーンアップは白にとって楽な展開です。

21. Bf3?!


21. Bc7 Rd7 22. Bxb6+- こうしてb6を掠めとるアイディアを試合中に見落としたのは反省です。

21... Rac8?


21... a6 22. Rb2 Ra7 23. Ke3! でも白勝勢ですが、a7を空けてルークを逃がすアイディアは試すべきでした。

22. Bb7 Bc4 23. Rbb1 Bxd4 24. cxd4 Rxd4+ 25. Ke1+-

c8のルークが当たっているため、f4のビショップを気にせず、白キングは安全な初期位置に逃げて勝負ありです。

25... Rcd8 26. Be3 R4d7 27. Rxa7 b5 28. Bc6 1-0


3連勝は5人いるので、勝負の2日目で抜け出せるよう頑張ります! 4Rのペアリングは以下のように発表されています。

Nagoya Open 2025 R4 Pairings
Nagoya Open 2025 Live

トップボードのみですが、中継もあるのでよろしければご覧ください。明日もよろしくお願いいたします。

2025/10/04

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.8


去年のジャパンチェスクラシックは、ブダペストオリンピアード前、最後の大きな国内公式戦ということで大きな意味を持っていました。台湾のLiu Yeh Yangさんに負けたのは痛かったですが、他の試合は満足な内容で指せたと記憶しています。中国の少年、Li Yanくんと指した4Rのゲームもそうでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2296) - Li, Y (CHN, 1752)
Japan Chess Classic 2024 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 dxc4!?

こうした早いタイミングで取る手は意外で、あまり見たことがありませんでした。白からf1のビショップが1手でポーンを取り返せるため、白に得をさせてしまうように思えますが、黒に唯一プラスがあるとすればd5のマスを活用できることです。

6. e3 Nd5 7. Bxc4! Nxf4 8. exf4 O-O 9. O-O c6


白は黒マスビショップを諦めましたが、その代わりにポーン2つでe5のマスをがっちり抑えており、黒からのe6-e5のブレイクを防いでいます。加えて、黒は手数をかけてf6のナイトを自ら消してしまったがゆえ、d5,e4のコントロールが弱く、h7を気を付けて守られなければいけないという気がかりもあります。

10. Qc2 Nd7 11. a3 b6 12. Rad1 Bb7 13. Rfe1 Re8?

黒は次の手に備え、13... g6!を指してf4-f5を止めておくべきでした。白もf7が弱くなることを確認せず、早めに13.f5!でも良かったでしょう。

14. f5! exf5 15. Qxf5 Bf6


白はh7を攻めるつもりが、意図せずf7への絶好の攻撃チャンスを貰いました。ここでは黒には満足なディフェンスがありません。15... Rf8 16. Ne5!+-, 15... Nf6 16. Bxf7+! Kxf7 17. Ng5+ Kg8 18. Qe6+ Kh8 19. Nf7+ Kg8 20. Nh6+ Kh8 21. Qg8+ Rxg8 22. Nf7# 後者のメイトになる手筋は覚えておきたいものです。

16. Ne5! Re7 17. Nxf7!

この手が成立することで、15... Bf6もディフェンスとして成立しないと読んでいました。一時的にf7のルークがピンの状態になるため、白は駒を回収して勝勢です。

17... Rxf7 18. Qe6! Kh8


18... Qf8 19. Qxd7!+- が成立します。本譜で大きく駒得になった白は、残り気を付けながらピース交換を進めて勝ちのエンドゲームにします。

19. Qxf7 h6 20. Ne4 Qe8 21. Qxe8+ Rxe8 22. Nxf6 Nxf6 23. Rxe8+ Nxe8 24. Re1 Nd6 25. Bd3 Bc8 26. Re7 Bf5 27. Bxf5 Nxf5 28. Rxa7 Nxd4 29. a4 Nb3 30. Rb7 Nc5 31. Rb8+ Kh7 32. b3 Nxb3 33. Rxb6 Nc5 34. a5 1-0

QGD Bf4 variationは、私の白番の武器としてオリンピアードでも活躍してくれました。また紹介できる面白い試合ができるよう、引き続き頑張ります。