2019/06/12

Asian Continental Chess Championships 2019 R6


少しこの写真でも見えづらいかもしれませんが、試合開催地は中国河北省の沙河と書かれています。事前の情報では、邢台市が開催地ということでしたが、さらにこの地区を沙河と呼ぶようですね。

後半戦6Rの相手はインドのIM Vignesh です。彼も私と同じ2/5 ですが、前半は上と当たってポイントを取っているため、残りの戦績次第ではGMノームのチャンスもあるプレーヤーです。

Vignesh, N R (IM, IND, 2459) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Asian Continental 2019 (6)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Be7 5. O-O O-O 6. Re1 d6 7. a4 Na5 8. Ba2 c5 9. Nc3 Nc6 10. Nd5 Nxd5 11. Bxd5 Be6 12. c3 Qd7 13. a5!?



このラインの実戦投入は初めてです。a4-a5 と伸ばすアイディアは珍しく、a6 まできた際にどう捌くかがその後の展開を大きく左右しそうです。

13... Bd8 14. a6 Bxd5!?


14... b5!? のようにポーン交換を避ける手もありだと思いますが、私はaポーンが弱点になっても、bファイルからの反撃があれば十分だと考えました。ナイトがe7 に退けるようになったタイミングで、白マスビショップを交換しておきます。

15. exd5 Ne7 16. axb7 Qxb7 17. c4 a5



aポーンの扱いには悩みました。a7 に置いたままもありえそうですが、将来的にRa1-Ra6,Re1-Ra1 とされると、d6,a7 の両方を狙われてしまうので、思い切って伸ばしてみることにしました。この手自体は大丈夫ですが、b5 のマスが弱くなることを軽視していたのが最初の失敗でした。

18. Ng5 Qd7?!


もう一つ考えていたラインで、18... Nf5! 19. Ne4 Be7 20. Nc3 Rfb8 21. Nb5 Nd4 22. Nxd4 cxd4 ならば、黒は願った通りにナイトを捌いてd6 を守り、bファイルから反撃を作ることでaポーンの弱さを補えていました。こうした状況を見据えてaポーンを伸ばしたつもりでしたが、f5 に跳んだナイトが浮くことと、キングサイドが手薄なことから、Qd1-Qg4 のようなアイディアもあるかもしれないと、本譜は慎重になりすぎました。

19. Qa4! Qxa4?!



d7 にクイーンを動かす前、当然クイーンをぶつけてくる手もありえると予想していました。この交換のオファーに応じたのが大きなミスで、bファイルからの反撃は遅く、さらにd6 のポーンが守りづらくなってしまいます。白クイーンがg4,h5 に出られなくなったことに満足し、19... Qb7! と戻る手が正解でした。

20. Rxa4 Ng6?


さらにこの手はひどかったです。普通に考えれば、Ne7-Nf5-Nd4 と潜り込む手が最も自然です。私も当然それを考えていましたが、突如、f2-f4 を止めたほうが良いと勘違いしてしまいました。20... Nf5 21. Ne4 Bc7 22. f4 f6 23. fxe5 fxe5 24. Ng5?! Nd4! がe6 を受けていることを見落としていました。e6 もb5 も受けるという意味で、d4 へのナイト切り替えは黒にとって必要不可欠でした。

21. Ne4! Bc7 22. Nc3!



ここもBc1-Bd2 と先に上がってくるというのが大きな勘違いで、白は当然b5 にナイトを刺し、bファイルからの反撃を封じてからゆっくりa5 を攻めにきます。この時点で黒の作戦は完全に破綻したことが分かっていたので、仕方なくエクスチェンジを捨てた決死の抵抗を試みることにします。それにしても、20手付近ですでに苦しいエンドゲームに入ることが決まるのは、色々なゲームをしてきましたが、なかなか珍しい経験です。

22... Rfb8 23. Nb5 Rxb5 24. cxb5 Rb8 25. Bd2 Rxb5 26. Rea1 Rxb2 27. Bxa5 Bxa5 28. Rxa5 h5


伸ばしたhポーンが、後にルークのターゲットにもなりえますが、g2-g4 を止めて、f5 のマスをナイトのために確保しておきたいですし、ポーンをどう伸ばすかは悩むところです。

29. Ra6 Nf4 30. Rxd6 Rd2 31. Rc6 Nxd5 32. Rxc5 Rxd3 33. g3 e4?!



ここはどちらのポーンを突くか、とても悩みました。結論から言えば、どちらも負けの可能性が高いですが、おそらくディフェンスのチャンスがあるのは、fポーンだったでしょう。33... f6!? 34. Kf1 (私もfポーンを突くのが最初悩みでしたが、7段目が開き、g7 がターゲットになることを恐れました。34. Ra7 h4 35. Rb5 h3 36. f3! (試合中、恥ずかしことにキングが寄られて負けだと思っていました。36. Kf1?? Rd1+ 37. Ke2 Nc3+-+ は黒の大逆転です。 ) 36... Kh7 37. Rd7 Rd1+!? 38. Kf2 Rd2+ 39. Ke1 Rxh2 40. Rdxd5 Rg2 41. Kf1 Rxg3 42. Rd2 Rxf3+ 43. Kg1 この4ポーンvs. ルークをコンピュータは白勝ちと判断しますが、人間が指すとどうなるかまだ分からないでしょう。) 34... Kh7! 35. Ke2 Rd4 36. Rd1 Rxd1 37. Kxd1 Ne7+/- こうなると、黒はeポーンをしっかり守ったまま、ポーンが4vs.3で戦うことができます。これだとナイトでも守りきれる可能性があるでしょう。

34. Ra8+ Kh7 35. Re8!


e4-e3 を消すために、ポーンは横からではなく後ろから攻撃します。これでもe4 はぎりぎり守りきれると思っていましたが...

35... Nf6


35... e3 36. fxe3 Nxe3 37. Rxh5+ Kg6 38. Ra5 Ng4 39. Re2 こうしてポーン交換を進めておく手もあったでしょう。

36... Re7 Kg6 37. Rc6!+-



こうしてナイトがピンにされると、e4 を守りきることができません。ルークを4段目、もしくはe1 に潜り込ませて守ろうとすると、ルークを7段目に重ねられてf7 を取られ、やはり負けです。こうなるとe4 を諦めて戦うしかありませんが、ルーク交換も時間の問題ですので、黒には希望がありません。せめてe5 のまま伸ばさずに、ポーンを守りきれていたらと思いますが、先述の変化を読めなかったので仕方ないです。

37... Rd8 38. Rxe4 Rd7 39. Kg2 Ra7 40. Re5 Rb7 41. h3 Ra7 42. Rb5 Rd7 43. Ra6 Re7 44. Ra8 Kh7 45. Rba5 g6 46. R8a7 Rxa7 47. Rxa7 Kg7


h5-g6-f7 の形にはしたものの、白キングがゆっくりと上がってくる恐怖に待つしかない状況ですが。こうしたポジションでは、キングをe8 あたりまで潜り込ませて、f7 をアタックするのが原則だと知っていましたが、ナイトでの抵抗をどうかいくぐるのが知りたくて続けてみることにします。

48. Kf3 Ne8 49. Ke4 Nd6+ 50. Kd5 Nf5 51. Ke5 Nh6 52. Rb7 Ng8 53. Kd6 Nf6 54. Ke5 Ng8 55. Rb6 Ne7 56. g4!



通常はポーン交換は負けている側に嬉しいものですが、ここではg5 にポーンを刺し、ナイトの行き場を消すアイディアが黒にとって厳しいものになります。

56... hxg4 57. hxg4 Ng8 58. f3 Nh6 59. Rb7 Kf8 60. Rb8+ Kg7 61. Re8!


上手いですね。こうして手を待たれると、いよいよ黒はできることがありません。

61... g5


61... Ng8 62. g5! Kh7 63. Kd6 Kg7 64. Rc8 Kh7 65. f4 Kg7 66. Kd7 Kh7 67. Ke8 Kg7 68. Rc7 とキングに潜り込まれても、f7 を取られて負けです。

62. Ra8 f6+ 63. Ke6 Kg6 64. Rh8 1-0



ナイトvs.ルークのエンドゲーム、勉強させてもらいました。それにしても序盤が酷かった...

次はフィリピンの14歳、IM Quizon Daniel との対戦です。フィリピンの天才少年は今大会、大先輩のGM Torre を破るものの、格上4人に敗れて1.5/6 と苦しんでいます。互いにもう負けられない後半戦、最後まで気力を振り絞って戦います。

Asian Continental Chess Championships 2019 R7 Pairigs



沙河のマスコットキャラでしょうか。捻りがないですね(笑)

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