2024/09/19

Budapest Chess Olympiad R7 Sudan - Japan


ブダペストオリンピアードは昨日から後半戦に突入しました。R7はオープンがスーダンとの対戦になり、私は抜け番です。Tuさんが早々に2ポーンアップになり、手堅く勝ち。南條くんもイコールのポーンエンディングでしたが、上手く相手のミスにつけこんで勝ちをもぎ取りました。かなりレイティングの近い組み合わせもありましたが、終わってみればスーダンをストレートで破っています。

Open R7 Sudan - Japan 0-4
Women R6 Pakistan - Japan 1-2


女子は4Bで禁止されている30手以内のドローをし、両者負け扱いとなりましたが、残りのボードが2勝1敗でパキスタンを破っています。オープン、女子ともに勝ったのはこのラウンドが初めてですね。

昨日は弘平くんと初めてバスではなく、メトロ、トラムを乗り継いで会場へ。会場にあるJudit Polgarのこちらの写真はよく見ると...
細かい写真の集合であることに気づきました。上手く作るものですね~。
試合のない私は日本からのゲストに会場内、街中を案内し、最後は一緒にヨーカイ通りの人気ハンガリー料理店、Menzaへ。ここは私が12年前、初めてハンガリーに1人で来た際にアンダンテのお客さんに案内していただいた思い出の店です。

さて今日のR8はオープンがスロバキア、女子がフィジーとの対戦です。スロバキアはかつてNo.1だったGM Movsesianがアルメニアに移籍しましたが、今回彼はアルメニア代表ではなく、スロバキアのキャプテンを務めています。彼が率いるスロバキアの若手マスター集団と、どんなマッチになるか楽しみに会場へ向かおうと思います!

2024/09/18

Budapest Chess Olympiad Rest Day

オリンピアードのような大型の大会にほぼあるのが、試合のない休憩日です。16日に6試合目を終え後半戦を迎えるブダペストオリンピアードですが、17日は試合がなく、各国の選手は様々な休日を過ごしました。私たち日本チームも普段はホテルと会場の往復ばかりでしたので、気分転換のために外に出ます。西駅はハンガリー国内の各所とブダペストを繋ぐ駅で、私もかつてはここから南のケチケメートへと足を運んでいました。
ホテルからメトロ、トラム、またメトロと乗り継ぎ、広大な市民公園へとやってきました。ここには温泉チェスで有名なセーチェニ温泉だけでなく、動物園や植物園もあり、ブダペスト市民の憩いの場となっています。こちらの写真には右手にヴァイダフニャディ城が見えています。
セーチェニ温泉には45分間ビール飲み放題風呂がありました。温泉チェスより惹かれる人もいるのでは笑
この日は温泉には誰も入らず、市民公園を後にしてデアーク広場で遅めの昼食。その後はメンバーが一部で王宮のナショナルギャラリーに足を運びます。王宮にはこれまで徒歩で向かうことが多かったですが、デアーク広場から直通のバスが出ているのは知りませんでした。
オリンピアードの試合がないこの日も、チェスファンはチェスイベントを求めて集まります。ナショナルギャラリーではハンガリーで有名なPolgar3姉妹が主催する、Global Chess Festivalが開催されていました。私たちが到着したのはイベント終了の1時間前でしたが、ちょうど三女Juditの同時対局が佳境を迎えるところでした。クロックも使った8面指しで、各席にはストリーマーもついて指すと同時に配信も行っていたようです。
今回はルービックキューブとのコラボもあり、開発者の建築学者ルビクさんも来てサイン会を行ったようです。ルービックキューブも基本は6面、チェスも6種類のピースであるため、2つのゲームは相性が良いかもしれません。各面に各ピースが描かれたルービックキューブもオリンピアードの記念品としていただいています。
書籍を始めとするグッズも多く販売されています。オリンピアードの会場でも同じものが購入できますが、3姉妹が確実にいてサインをもらいやすいこのイベントで購入する人も多いようです。
会場ではIM、GMの姿も多く見かけています。Messiのユニフォームを着ていたのは、アルゼンチン代表のGM Flores Diegoです。彼はこのオリンピアードではアメリカとのマッチで、GM Dominguez Perezを下す金星を挙げています。
王宮からは対岸の国会議事堂がよく見えます。ここはブダペストでも有数の夜景スポットですので、また日が沈んだ時間帯にも足を運びたいですね。

さぁ休憩日明けの今日から後半戦のスタートです。オープンはスーダン、女子はパキスタンとの対戦です。これを今書いている私は抜け番ですので、ライブを見ながら応援をしていきたいと思います。頑張れ、日本チーム!

2024/09/17

Budapest Chess Olympiad R6 Japan - Cuba

今大会は試合をする机やこちらのルークなど、各所で段ボールが使われています。

前半戦の最終試合、R6でオープンチームはキューバとの対戦になりました。キューバは12年前のイスタンブールオリンピアードの初戦で対戦し、0-4で敗れています。その時に比べてDominguez Perez、Bruzonといったスター選手が抜け、パワーダウンしているとはいえ全員GMの強豪国です。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Berdayes Ason, D (GM, CUB, 2474)
Budapest Chess Olympiad (6)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Bb4 5. cxd5 exd5 6. Qa4+ Nc6 7. Bg5 h6 8. Bxf6 Qxf6 9. e3 O-O 10. Be2 Be6 11. a3 Bxc3+ 12. bxc3 Ne7 13. c4 c5 14. O-O Rfc8

ここで相手が準備を外してきました。単にc4とd4を捌く手を考えていましたが、本譜ではルーク交換がさらに入ります。

15. Rac1 dxc4 16. Bxc4 Bxc4 17. Rxc4 cxd4 18. Nxd4


試合後にMishaから、18. Rxc8+ Rxc8 19. Qxa7 dxe3 20. Qxe3とa7を取り、局面をさらに単純化するアイディアを提案されました。本譜でも悪くないですが、こちらの変化を欠片も考えなかったのは反省です。

18... a6 19. Rfc1 Rxc4 20. Qxc4 Rc8 21. Qf1 Rxc1 22. Qxc1 Qd6 23. h4 g6 24. Qc3 b5 25. Qa5!?

悪くなる手ではないですが、c3とセンターに近い位置に残しておくほうが自然だったかもしれません。a6を早めに当て、黒のクイーンを動けなくしようと考えました。

25... h5 26. g3 Nd5 27. Nc2 Qb6 28. Qxb6 Nxb6


ここはクイーン交換に応じます。黒はクイーンサイドにポーンマジョリティがあって有利に見えますが、白キングがセンターに寄るのが早く、問題無いと考えました。

29. Kf1 Kg7 30. Ke2 Kf6 31. Kd3 Kf5 32. f3 Nc4 33. e4+ Ke5 34. f4+

e,fポーンを伸ばしても構わないと思いましたが、g3-g4のチャンスは無くなってしまいます。33. Kd4 Nd2 34. e4+ Ke6 35. Ke3とする手もありました。

34... Kd6 35. Kd4 Nd2 36. Ne3


ここでe5までポーンを進めるかどうかを悩み、時間を使いすぎてしまいました。結論はどちらでも大丈夫なのですが、36. e5+ Ke6 37. Ne3 (37. Kc5!?) 37... Nc4 38. Nxc4 bxc4 39. Kxc4 Kf5 40. Kc5 Kg4 41. Kd6 (41. Kb6?と寄る手しか考えておらず、e4-e5を挟むのはだめだと勘違いました。) 41... Kxg3 42. Ke7 Kxf4 43. Kxf7 Kxe5 44. Kxg6 Kf4 45. Kxh5 Kf5= このポーンエンディングはドローです。

36... Nf3+ 37. Kc3 Kc5 0-1

ここでナイトの位置をd5とc2で迷い、d5を選んで指したつもりでしたが、無情にも時間が落ちました。冷静に見れば余裕のある局面で慎重になりすぎ、要所で時間を使いすぎたことを反省します。最後もナイトはどちらでも戦えたので、もったいないゲームでした。

Open R6 Japan - Cuba 0.5-3.5
Women R6 Lebanon - Japan 1-3


オープンはTuさんがドローを取ったのみで、残り3人は敗れました。女子もリスト下位のレバノンが数字以上に強かったようで、1-3で敗れています。レストデイの今日、リフレッシュしてまた後半で全力を尽くせるように頑張ります!

2024/09/16

Budapest Chess Olympiad R5 Japan - Guatemala

試合会場になっているBOK Sports Centerです。

雨が続くブダペストは、ここ数日で一気に寒く感じるようになってきました。ブダペストオリンピアード5日目のこの日は、オープンチームがグアテマラとの対戦です。グアテマラは過去の対戦では誰も勝てず、1.5-2.5で敗れて悔しい思いをしています。今回はその雪辱を晴らすべく、上位4人で試合に臨みます。

Aragon Trujillo, R (CM, GUA, 2057) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Budapest Chess Olympiad (5)

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6 5. Nxf6+ exf6 6. d4 Bd6 7. Be2 O-O 8. O-O Re8 9. Re1 Nd7 10. c4 Nf8 11. h3 Be6 12. Be3 Qd7

Caro-Kann Two Knightsに今回は4... Nf6変化を用意しています。f6のダブルポーンは形は悪く見えますが、e5の重要なマスを抑える働きがあります。白のセットアップはやや消極的で、黒はチャンスがあればh3へのサクリファイスを見せておきます。

13. Rc1 Ng6 14. Bf1 a5 15. a4 Re7


ここはd4-d5の押し込みからBf1-Bb5を避けるためにルークを上げておきます。

16. b3 Rd8 17. Bd2 Bc7 18. b4 axb4 19. Bxb4 Bd6 20. Bxd6 Qxd6 21. Rb1 Qb8 22. Qb3 Qa7

駒交換が進み、局面の特徴が変わりました。白はbファイルを開いてb7をターゲットにしますが、代わりにc4とa4を弱めています。d4も守りづらいために黒はナイトを上手くd4へのアタックに切り替えたいところです。

23. Ra1 Qa5 24. Reb1 Bf5 25. Qb6 Ra8 26. Qxa5 Rxa5 27. Rb2 h6 28. Nd2!


このナイトの切り替えはhポーンを動かした後に気づきました。Nd2-Nb3-Nc5はb7を狙ってくる、黒にとって嫌な動きです。早めにNg6-Nf4と跳びこんでおくべきだと少し後悔しました。

28... Ra7 29. Rb4 Nf4 30. a5 Ne2+ 31. Bxe2 Rxe2 32. Nf1 Be6 33. Ne3 Rd2 34. c5 f5 35. Nf1 Rc2 36. Ne3 Rd2 37. Nf1 Re2

しかし黒もe2へのナイト跳びこみからビショップナイトを交換し、ルークが2段目に潜り込む形になりました。繰り返しの手順を蹴って40手到達を目指します。

38. Ne3 f4 39. Kf1 Ra2!?


ここはアクティブなルークを残す39... Rd2が自然ではありますが、どう続けるか分からずにルーク交換に踏み切りました。aポーンとbポーンを交換し、再びアクティブなルークを得る作戦です。

40. Rxa2 Bxa2 41. Nf5 Be6 42. Nd6 Rxa5 43. Nxb7 Ra1+ 44. Ke2 Ra2+ 45. Kf1 f3

ビショップはd5の好位置を確保し、白のキングサイドも崩せそうなので満足ですが、まだ勝ちのアドバンテージには少し足りません。それでも白からf2-f3とされては何もないため、ここは仕掛ける1手だと思います。

46. gxf3 Bxh3+ 47. Kg1 Be6 48. Nd6?


48. Nd8 Bd5 49. Rb6 Ra4 50. Nxc6 Bxc6 51. Rxc6 Rxd4= ならばとことんやるつもりでしたが、hポーンがパスポーンでもこのルークエンディングは勝てないでしょう。ここですぐにc6をアタックに来ないのはラッキーでした。

48... Bd5 49. Rb6 Bxf3?

しかし、私もここは対応を間違えました。ルークが離れたのでd4を取りにいくのが素直だと最初は思いましたが、f3を守られた後のNd6-Nf5からの切り替えにどう対応するかが分かりませんでした。49... Ra4! 50. Nf5 (50. Kg2 Rxd4 51. Nf5 Rg4+! このチェックを見落としました) 50... Bxf3 51. Ne7+ Kh7 52. Nxc6 Bxc6 53. Rxc6 Rxd4-+ f3を落としたうえでのd4,c6交換であれば、黒は大いに勝つチャンスのあるルークエンディングです。

50. Rb8+ Kh7 51. Nxf7 Bd5 52. Ne5 h5 53. Rf8 h4


f7が取られるのを見落とし、また難しい状況になりますが、h4までポーンを進めればRa2-Ra1-Rh1がメイトスレットになります。これを絡めて仕掛けるのがラストチャンスだと思いました。

54. f3 Rd2 55. Rf4 g5 56. Rg4?

私もg4だと試合中に読んでいましたが、これはルークの行き場が無くて困っています。56. Rf5! Kh6 57. Rf6+ Kh5 58. Rf8= ならば白もh8でのメイトスレットを作り、キングが逃げて繰り返しのドローでした。

56... Kh6 57. Rg2 Rxd4


白はルークがどうしようもなく、d4を諦めてきましたが、これで黒はこの試合初めての駒得で安心して残りを進められます。もし白のルークが離れなくとも、Kh6-Kh5からf3を取るつもりでした。

58. Kh2 Rf4 59. Rf2 Kh5 60. Rb2 Bxf3 61. Rb6 g4 62. Nxf3 Rxf3 63. Rxc6 Rf2+ 64. Kg1 Rc2 65. Rc8 h3 0-1

白には指す手が無く、f3も落として黒の勝ちとなりました。途中、勝てないことも覚悟しましたが、エンドゲームのちょっとしたチャンスの作り方、ミスの出方は経験の差が出るものだとあらためて感じるゲームでした。他のメンバーも全員勝ち、決して弱いチームではないグアテマラを4-0で下しています。

Open R5 Japan - Guatemala 4-0
Women R5 Japan - Venezuela 0.5-3.5


女子チームはベネズエラに0.5-3.5で敗れています。ここまでどちらのチームも、格上にマッチで勝つのはできていません。どこかでリスト上にも勝ちたいですね。今日はオープンが全員GMのキューバ、女子がレバノンとの対戦です。明日は休憩日なので、力を出し切ってこようと思います!

2024/09/15

Budapest Chess Olympiad R4 Hungary B - Japan

元ハンガリー代表のGM Balogh CsabaはChess Evolutionのブースにいます。

ブダペストオリンピアード4日目、オープンチームは主催国、ハンガリーのBチームと対戦です。これまで私が参加してきたオリンピアードでは、2008年のドレスデンでドイツCチーム、2016年のバクーでアゼルバイジャンCチームと主催国チームと当たり、いずれも4-0で敗れています。主催国代表は気合の入り方も違いますので、私たちも全員GMのハンガリーBチームに全力でぶつかります。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Antal, G (GM, HUN, 2554)
Budapest Chess Olympiad (4)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 c6 5. Bg2 d5 6. cxd5 cxd5 7. Nc3 O-O 8. Ne5 Nc6 9. O-O Bf5!?

Grunfeldは予想通りでしたが、ここは9... e6を準備していました。とは言え、違う手順でBc8-Bf5も調べていたので、それに沿って指すようにします。

10. Nxc6 bxc6 11. Bf4 Nh5!?


11... Nd7 12. Na4のような進行を予想していたので、このナイト端跳びは意外でした。f7-f5がないため、e3にビショップを退きます。

12. Be3 c5 13. Bxd5!?

ここは様々な手があるようですが、13. Nxd5 e6 14. Nf4 Nxf4 15. Bxf4 cxd4 16. Bxa8 Qxa8という進行は黒に十分なエクスチェンジの代償があると考えて避けました。13. h3のような手でまずはg3-g4を見せるのもあったようです。

13... cxd4 14. Bxd4 Bxd4 15. Qxd4 e6 16. g4


ピースの取り合いになり、かなりさっぱりした局面まで進みます。キング前のポーンが無くなってもさほど問題無いとこの時点では考えていました。

16... Bxg4 17. Qxg4 Nf6 18. Qd4 Nxd5 19. Nxd5 exd5 20. Rfd1?!

ここでどちらのルークを使うか悩みました。a1のルークはc1に回して黒のルークに対抗するか、あわよくばRa1-Rc1-Rc5のようなことを考えていたのですが、ここはf2の守りのためにf1のルークはこの位置に残すほうが良かったです。20. Rad1 Qg5+ 21. Kh1 Rfe8 22. Qxd5 Qxd5+ 23. Rxd5 Rxe2 24. Rb5= と進めばエンドゲームはドローです。

20... Qg5+ 21. Kf1 Qh5 22. Qxd5 Qxh2 23. e3 Rae8!


この手は読んでおらず、指されてみるとRe8-Re5からキングサイドを攻める絶妙なアイディアであると分かります。

24. Ke2?

h1にクイーンやルークをまわして黒の攻撃力を下げようとした判断が間違いで、キングはf1に留まるべきでした。代わりに24. Qf3 Re5 25. Rd5として粘るべきです。

24... Re5 25. Qh1 Qf4 26. Rac1 Qa4


この手は考えていたつもりでしたが、b5の位置でのチェックからb2取りもあることに指されてから気づき、自分の失敗を悟りました。ポーンが落ちてからはこちらから攻めるポイントがなく、じりじりと差を広げられるのみです。

27. Rd2 Qxa2 28. Qb7 Qe6 29. Rc7 a5 30. Rdd7 Rf5 31. Re7 Qf6 32. f3 Rh5 33. b3 Qb2+ 34. Kd3 Qb1+ 35. Kc3 Qc1+ 36. Kd3 Qd1+ 37. Kc3 Rh2 38. Rxf7 Rc2# 0-1

最後はどうしようもなくメイトになりました。1Bはかなり互角に近い形勢でしたが、時間の無い中ビショップサクリファイスをしかけたTuさんが、その勢いのままGM Kozak Adamのキングを仕留め、チームで唯一のポイントをあげました! このオリンピアードで初めての格上、そしてGMからの勝利です。チームは3-1で敗れたものの、この金星はチームにとって大きいものです。

Open R4 Hungary B - Japan 3-1
Women R4 Japan - Aruba 4-0


女子チームは西インド諸島のアルバをストレートで下し、オープン、女子ともに2勝2敗で4つのマッチを終えています。休憩日に入る前の前半残り2戦、しっかりポイントを取って後半を迎えたいですね。本日のR5はオープンがグアテマラ、女子がベネズエラとともにアメリカ大陸の国との対戦です。
この日はたまたまブダペストを観光中だった知り合いが、会場まで差し入れを届けてくれました。Gerbeaudは150年以上続くブダペストの老舗カフェで、持ち帰りのチョコレートが人気です。私も昨年、初めて足を運びました。

2024/09/14

Budapest Chess Olympiad R3 Botswana - Japan


ブダペストオリンピアードR3はオープンがボツワナ、女子がルクセンブルクとの対戦でした。私は抜け番で皆さんの試合を見守っていましたが、オープンは南條くんがドローを取られたのみで、残りの3人が勝って3.5Pを取ってくれました。パーフェクトとはいきませんでしたが、これで初戦のタンザニア戦に続き2勝目です。

Open R3 Botswana - Japan 0.5-3.5
Women R3 Luxembourg - Japan 3.5-0.5


私は試合会場に足を運び、初めての観戦席で皆さんの試合を追いましたが、やはり双眼鏡が無ければ見えませんね。試合観戦はオンラインが一番です。観戦席を離れてからはイベントコーナーを見て回りました。
これまで開催されたオリンピアードのポスターです。中央にあるタツノオトシゴは、1960年ドイツのライプツィヒオリンピアード。こちらで生まれたFischerの名局は感動ものです。
最初にGMタイトルを与えられた27人の中で最年少だったBronsteinから始まり、史上最年少GM獲得者の歴史です。
本の物販も充実しています。3冊買って15%オフだと、つい買いすぎてしまいそうです。
こちらはiPhoneのアプリを紹介する企業ブースで、対局中の局面をカメラで撮影することでデジタルの盤面にそのまま映すことができるそうです。お客さんと企業側のスタッフがデモンストレーションで試合をしていましたが、スタッフの女性が強くて笑いました。
こちらは国会議事堂や聖イシュトヴァ―ン大聖堂などを駒のモチーフにしたチェスセット。自分用に欲しいです。

さて今日はオープンが開催国であるハンガリーのBチーム、女子がアルバとの試合です。私は憧れのマスターが多くいるハンガリー代表チームと思い切りぶつかってこようと思います。

2024/09/13

Budapest Chess Olympiad R2 Japan - Slovenia

この日は裏のイベントコーナーで、同時対局が行われていました。

ブダペストオリンピアード2日目、オープンチームはGM中心で構成されるヨーロッパの強豪スロベニアとの対戦です。トップGM Fedoseevを温存してきたため、私の相手は若干16歳のFM Lavrencicになりました。唯一GMタイトルを持たないながら、スロベニア代表入りを果たした実力を垣間見ることになります。

Lavrencic, M (FM, SLO, 2360) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Budapest Chess Olympiad (2)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. Nbd2 a5 7. a4 h6 8. O-O Ne7 9. Nb3 Qc7 10. Bd2 g5!?

本当は他に指したい変化があったのですが、ちょっとしたムーブオーダーからそれを封じられ、6年ほど前にメインで指していた変化を記憶を頼りながら指すことになります。黒はキングサイド、クイーンサイド両方のポーンを伸ばし、アグレッシブなセットアップですが、伸びたポーンが弱点にもなりえます。

11. Rc1 Bg7 12. c4 O-O 13. Qe1 b6


本譜でも大きな問題はありませんが、ここは13... Qb6! 14. Qd1 (14. Nxa5 Ng6!) 14... dxc4 15. Bxc4 Rfd8という進行もあったようです。

14. cxd5 Nxd5 15. h4 gxh4??

ここが勝負の分かれ目で、ポーンを突きこすか取るかで30分悩み、間違った選択をしました。15... g4! 16. Nh2 h5! 17. f3は伸ばしすぎたポーンを崩されてしまうと考えたのですが、ここで17... Nxe5!という手がありました。h2のナイトは一時的に行き場がなく困っています。すぐに17. f3が成立しないと分かっていれば、gポーン、hポーンを伸ばすことを躊躇わなかったでしょう。

16. Nxh4 Bh7 17. f4 Rae8 18. f5!


本譜の白の攻撃はあまり直線的でありながら、早く力強いものでした。f7-f6の反撃を準備はしたものの、お構いなしにfファイルから仕掛けてきます。

18... exf5 19. Nxf5 Bxf5 20. Rxf5 f6 21. Bc4!

ここで開いたcファイルも活用されてしまうのを見落としました。eポーンはさらに黒陣に刺さり、消すことができません。

21... Qd8 22. e6 Nb8 23. Qe4 Qd6 24. Re1 Ne7 25. Qg4 Nxf5 26. e7+


26. Qxf5からBc4-Bd3と切り替えてくるものだと思っていましたが、本譜のほうがすぐに決着です。

26... Rf7 27. Bxf7+ Kxf7 28. Qh5+ 1-0

恐れていたサイドからの仕掛けに対応を間違え、一気に持っていかれたゲームでした。チームメイトも全員破れ、この日はスロベニアに完敗です。私の相手だけGMではありませんでしたが、GM中心のチームがいかに強いかということを実感できた1日でした。

Open R2 Japan - Slovenia 0-4
Women R2 Eswatini - Japan 0.5-3.5


女子チームはエスワティニに勝利し、オープン、女子ともに1勝1敗となっています。3日目の今日はオープンがボツワナ、女子がルクセンブルクとの対戦と発表されています。私も2008年にボツワナと対戦しましたが、今日は私が抜け、Tu、南條、青嶋、山田というメンバー構成です。4-0での勝利を期待しているので、日本の皆さんの応援配信を私も見ながらチームを見守ろうと思います。

2024/09/12

Budapest Chess Olympiad R1 Japan - Tanzania

10日に開会式を迎えたブダペストオリンピアードは、11日から1日1試合のペースで進んでいきます。初日の昨日はオープンがアフリカのタンザニア、女子がヨーロッパの強豪フランスとの対戦でした。オープンチームは南條くんを休ませ、Tu、青嶋、小島、山田というメンバーで初戦に臨みます。私の相手は2016年、2018年のオリンピアードタンザニア代表のCMです。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Hassuji, N (CM, TAN, 1847)
Budapest Chess Olympiad (1)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 e6 5. Nf3 Bd6 6. Qc2 Nbd7 7. Bd3 a6 8. O-O O-O 9. Rd1 Re8 10. e4!

Semi-SlavのAnti-Meranから始まったゲームは、早めにこちらからe3-e4の仕掛けを行います。e4でのポーン交換が起これば、黒のa7-a6が意味を失います。

10... dxe4 11. Nxe4 Nxe4 12. Bxe4 Nf6?!


昔、Semi-Slavを学んだ際、ナイト交換後にすぐf6にナイトを補充するアイディアは不正確だと学びました。白がe3-e4からc1のビショップのダイアゴナルを開いたのであれば、黒もe6-e5からc8ビショップのダイアゴナルを開きたいものです。しかし、ナイトをf6に早く移動させてしまうと、黒はe5のコントロールを失い、e6-e5の実現が難しくなります。そのため、 12... h6とかわしてh7を受けておくほうが良かったでしょう。

13. Bg5! h6 14. Bh4 g5 15. Bg3 Nxe4 16. Qxe4 f5?

ここは代わりに16... e5!?とする手がありえました。このポーンは捨てることになりますが、それにより白マスビショップの利きを開いて勝負します。本譜はクイーンが逃げた後にノアの箱舟と呼ばれるf5-f4のビショップトラップを狙ったのだと思いますが、g6へのクイーン跳びこみがあるため成立しません。

17. Qc2 Bxg3 18. hxg3 Qf6 19. c5!?


黒からのc6-c5を止めたうえで、Nf3-Ne5の跳びこみを決行します。d5のアウトポストは黒から活用する上手いチャンスがなく、白にはNf3-Ne5-Nc4-Nd6(or Nb6) というチャンスがあるため、cポーンの押し込みは白にとって得だと考えました。

19... Bd7 20. Qb3! Rab8 21. Ne5 Re7 22. a4! Kg7 23. a5

黒のa,bポーンを完全に固定してしまったうえで、Ra1-Ra4-Rb4からb7へプレッシャーを作ります。

23... Be8 24. Ra4 Rc7 25. Rb4 Bf7 26. Rb6!


ここで黒のa7-a6が余計だったことがさらにはっきりします。b6のマスに潜り込んだルークは、ピンを利用してa6,c6どちらも取りを狙っています。黒には上手いディフェンスがありません。

26... Qd8 27. Rd3 Qd5 28. Qxd5 exd5 29. Rdb3 Be8 30. Rxa6 Kf6 31. Ra7 1-0

ここで相手の時間が落ちたのですが、それでも相手の時間は30分増えました。時間が増えるのは40手過ぎてからでは?と思い、アービタ―と協議になります。どうも今回のオリンピアードで使われている最新の時計は、既定の手数まで到達しようとしていまいと、時間が0になった時点で追加の持ち時間が足されるようです。よく見ると時計には旗のマークがでており、それが時間落ちを示しているようです。分かりづらい...

なにはともあれ、オリンピアード初戦を白星で飾ることができました。局面も1ポーンアップのうえ、次にa5-a6で完全に白勝ちです。今大会の日本チーム最初の勝利を良い形でもたらすことができ、満足しています。怪しいゲームもありましたが、残り3ボードも勝ってタンザニアには4-0での勝利でした。R1の応援配信も大いに盛り上がったようで、感謝しています。応援ありがとうございました!

Open R1 Japan - Tanzania 4-0
Women R1 Japan - France 0-4


女子チームは残念ながら強豪フランスに負けてしまいましたが、今日の2戦目を初勝利を期待します。本日のR2はオープンがハンガリーのお隣のスロベニア、女子が南アフリカのエスワティニとの対戦です。私はプレミアムから5連勝中ですので、この勢いで強豪スロベニアからもポイントを取ってきたいと思います。
ハンガリーのチェスイベントなら必ずあるのがJuditコーナーです。私はこの日、試合前にたまたま遭遇したJuditと握手、試合後にこのコーナーにいたJuditと写真を撮ることができました。

2024/09/11

Budapest Chess Olympiad Opening Ceremony

昨日、9/10にブダペストでは2年に1度のチェスの祭典、チェスオリンピアードが開幕となりました。先に現地入りし、2つのトーナメントでプレーしていた私は、チームメイトの弘平くんとこれから到着するメンバーを迎えにリスト・フィレンツェ空港へと向かいます。私も弘平くんも3番線の青いメトロ沿いに滞在していたため、メトロとバスを乗り継いで空港に向かうのはそう大変ではありませんでした。8時半過ぎには上海経由でブダペストに到着したメンバーと合流です。
その後はオリンピアード用のホテルに移動し、欧州在住の他のメンバーの到着を待ちます。チェックインまでの待ち時間、近くのスーパーに買い物に行き、昼食も済ませました。こちらはハンガリーの揚げパン、ラーンゴシュです。前日に弘平くんと中央市場で見た際は2500フォリントからと目が飛び出るような価格でしたが、ブダペスト郊外のホテル近くでは900フォリントからとお手頃でした。20代前半、ハンガリーに来たばかりの頃によく食べた懐かしの味です。
16時半前にはチームメンバーが揃い、オープニングセレモニーへとバスで移動します。オープニングセレモニーの会場はドナウ川を渡ったブダ側、王宮の少し裏にあるDr. Koltai Jano Sports Centerでした。普段はリングを作って格闘技のイベントをやりそうな会場で、ブダペストオリンピアードの開会が宣言されます。
会場にはあやしげな巨大ルービックキューブが。建築学者のルビクはハンガリー人で、このよく知られたパズルはハンガリー発祥なのです。
こちらは晴天の日の国会議事堂です。ブダペストの名所をモニターに映しながら、音楽の演奏とともにセレモニーは進みます。
日本でも7月にFIDE100周年を記念する大会が開催されましたが、この日は同時に世界各国でチェスイベントが開催されました。こちらはFIDE会長のArkady Dvorkovichです。セレモニーでも本人による挨拶がありました。
記念式典の様子だけでなく、各国のチェスを指すイベントの様子も移されました。日本のような大会形式ではなく、同時対局を行った場所も多かったようです。
ハンガリーの伝説的な女性プレーヤー、Judit Polgarによる聖火との入場もありました。
続いてJuditの姉たち、SusanとSofiaによる初戦の色決めが行われました。巨大ルービックキューブは色決めのためのアイテムだったんですね。キューブ中央から手を引き入れ、手にしたのは黒いキューブ。Sofiaも同様で、オープン、女子ともにトップシードの国が初戦は黒に決まりました。
最後にモニターで出場国が国旗とともに紹介されましたが、以前のオリンピアードであったような行進は無し。日本が呼ばれるのを確認してから、セレモニー会場を後にしてホテルに戻り、夕食を取りました。夕食は凄く品目が多いわけではありませんが、肉、魚どちらもあり、十分満足できる内容です。
21時からはオープン、女子ごとに集まり、ミーティング(オープンはそう称したエンドゲームの研究)を行いました。私が事前にMishaに送っていたゲームも取り上げられ、勝ったゲームでも相手にドローアイディアがあることを教わりました。

そして一夜明けた今日から試合が始まります。ブダペストオリンピアードの初戦、オープンはタンザニア、女子はフランスと発表されています。では試合に行ってきます!

Budapest Chess Olympiad Open R1 Pairings

Budapest Chess Olympiad Women R1 Pairings