長い10R ダブルラウンドロビンのGM Section が、昨日終了しました。色々なやり取りがあった1日でしたので、試合前の話からお伝えしていこうと思います。前半は、すでにFacebook では告知済みの内容です。
私が会場にで試合開始を待っていると、インドネシアのSean も到着し、私に握手とノーム獲得のお祝いの言葉をくれました。私がまだ今日の最終戦でドローを取らないといけないんだと返したところ、5ポイント/9ラウンドであれば、すでにパフォーマンスは十分なのではないかと予想していなかった言葉が! 確かに大会途中であっても、ノーム獲得の最低試合数である9R 終了時点で、パフォーマンスが2450 を超えていれば、10R 以降の戦績が振るわなくともノームは達成となるのが一般的です。私もすっかりと忘れていました。
写真にある通り、9R 終了時点でのパフォーマンスは2474ですので、IM ノームの基準である2450 を超えています。それでは10R の結果にかかわらず、私はすでにノームを達成済みなのかと確認をしたところ、IA のOrso Miklos 氏は首を横に振りました。
彼の説明では、スイス形式やラウンドロビン形式では、10R 以上の場合、9R 終了時点でパフォーマンスが2450 を超えていれば(他にも細かい条件はありますが、ここでは割愛します)、ノーム獲得となるが、ダブルラウンドロビンの形式は例外だとのことです。私はイマイチ納得できませんでしたが、もともと試合をするつもりで会場に来たので、予定通り、Westerberg との対戦に向かいます。
Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Westerberg, J (FM, SWE, 2404)
First Saturday 2013 October GM (10)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Qc2!?
First Saturday 2013 October GM (10)
昨年5月にハンガリーに渡ってから、メインのNimzo-Indian を受けてきましたが、数年ぶりにこのラインを復活させます。Kramnik らが得意としたNimzo-English の変化は、複雑なラインが少なく、負けるリスクが少ないと判断したためです。
4... c5!?
4... 0-0 5. a3 Bxc3 6. Qxc3 b6 というメインラインに比べれば指される頻度は落ちますが、こちらも見かける手です。
5. g3 O-O 6. Bg2 Nc6 7. O-O d6 8. d3 h6 9. a3 Bxc3 10. Qxc3 e5
黒はビショップとナイトを交換しましたが、センターに多くポーンを置き、ピースの展開でも優っています。ここからは、白がどのようにダブルビショップを生かせる局面に導くかが、ゲームのポイントとなりそうです。
11. e3
ここは素直にクイーンサイドを伸ばしておくべきでした。11. b4! Nd4 12. Re1 Bg4!? 13. bxc5! Bxf3 14. Bxf3 dxc5 15. Bg2+/= 確かにこのように進めば、d4 に侵入されたナイトをさほど気にする必要あないでしょう。少しセンターのマスに気を遣いすぎました。
11... a5 12. b3 Be6 13. Bb2 Re8 14. Rfe1 Qd7 15. d4!?
ゆっくり指すならば、15. Nd2 がありえそうですが、私はここで黒マスビショップの利きをこじ開けに行くべきだと判断しました。
15... Bh3 16. d5?!
ビショップをキープするプランは少し危険なため、1組のビショップを交換しても、クイーンサイドのブレイク(b3-b4)と、キングサイドのブレイク(f2-f4) のチャンスを両方持つ白が優勢だと判断いましたが、これが大きな間違いでした。16. Bh1 e4 17. Nd2 Bf5=
16... Bxg2 17. Kxg2 e4!
どうしてこのシンプルな手が見えていなかったのか。黒はナイトを逃すのではなく、白のナイトをアタックし返しつつ、e5 にマスを作ることでチャンスを掴みます。
18. dxc6?!
この手はキングをセンターにとどめなければいけないため、リスクが大きいことは承知していました。しかし、18. Nd2 Ne5 19. Qc2 Qf5 20. Rf1 b6-/+ と進めば黒のイニシアチブは明らかであり、どうしてもこのポジションを持つ決断が下せませんでした。
18... exf3+ 19. Kxf3 Qxc6+ 20. Ke2 d5!
地味ですが、深い一手だと思います。d6,d5 の弱点を消しておくと同時に、クイーンを5段目で振れるようにします。
21. cxd5 Qxd5 22. Kf1!? Qh1+ 23. Ke2 Qd5 24. Kf1
やはり白はこの手を繰り返します。24. f3?1 Qf5! 25. Qc4 b5-+
24... Qh1+ 25. Ke2 Qxh2! 26. Rh1 Qg2 27. Rag1!?
私はh2 のポーンを取らせ、キングサイドを突破するプランに逆転の望みをかけました。自然に見えるh6 のポーンを取る変化は、すぐに黒勝ちとなります。27. Rxh6? Ra6! (27... Qxf2+?! 28. Kxf2 Ne4+ 29. Kf3 Nxc3 30. Rh4 Nd5 31. Rah1 f6 32. e4 Ne7-/+) 28. Rh4 Rae6-/+ 黒はダイナミックにルークを振り、e3 取りをスレットにすることで勝ちを決定づけます。ここでも、d6-d5 から6段目を空けたことが生きています。
27... Qc6 28. g4 Re6!
f6 をルークの横利きで守るのは自然な一手で、私も読みの範疇でした。しかし、それでも私はまだ白がいけると判断していました。
29. g5 hxg5 30. Rh3
恥を承知で書きますが、私はここでドローオファーしました。それはドローになったら良いなという希望的観測ではなく、g,h のオープンファイルは黒にとって非常に危険で、ポーンの代償を伴って十分に勝負できていると考えた為です。正直、白の勝ちまであるんのではないかと思っていました。(だったらオファーせずに、勝負するべきなのですが...) 今振り返れば、冷静ではないですね。
30... Rd8 31. Rxg5?!
ルークをhファイルに重ねても白の攻めは届かず、ならばg7 に圧力をかけるほうが良いだろうと考えたのが、最終的な判断ミスでした。31. Rgh1! Kf8 32. Rh8+ Ke7 33. Rxd8 Kxd8 34. Qxa5+ (試合中、aポーンが浮いていることは全く気付いていませんでした。どうかしています。) 34... Ke7 35. Rd1 Rd6-/+ 黒良しであることは疑いようがないですが、黒はダブルポーンですし、これならばまだ白もゲームを続けられそうです。
31... Red6!-+
最悪、ダブルルーク vs クイーンにしても問題ないと思い、この手はあまり深く考えていませんでした。(時間切迫だったこともありますが) しかし、c5 を無視してこうして指されてみると、全く白にうまい受けがないことがわかります。クイーンを捨て、d2 にキングが行った瞬間に、Nf6-Ne4 のナイトフォーク、Qc6-Qd7 のダブルアタックが、両方スレットとして存在するのがポイントです。
32. e4
32. Rh4 Rd2+ 33. Qxd2 Rxd2+ 34. Kxd2 Ne4+ 35. Rxe4 Qxe4 36. Rxg7+ Kf8-+ この変化でチャンスがないようであれば、他もすべてダメでしょう。
32... Rd2+ 33. Kf1 Rxf2+ 34. Kxf2 Nxe4+ 35. Kg1 Rd1+ 36. Kh2 Nxc3 37. Bxc3 Qh1+ 0-1
完全に最後は蛇足でしたが、一応続けてみました。この試合の結果を受け、スウェーデンのWesterberg は2つ目のIM ノームを獲得。今年中にもう一度良い結果を残せば、IM タイトルを取るでしょう。この試合は完全に私の力負けでした。
10/05 14:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Seres, L (GM, HUN, 2449) 1/2-1/2
10/06 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sean, W (FM, INA, 2360) 1-0
10/07 16:00 Gordon, S (GM, ENG, 2526) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1-0
10/08 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Fogarasi, T (GM, HUN, 2401) 1/2-1/2
10/09 16:00 Westerberg, J (FM, SWE, 2404) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/10 Free Day
10/11 16:00 Seres, L (GM, HUN, 2449) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/12 16:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/13 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Gordon, S (GM, ENG, 2526) 1/2-1/2
10/14 16:00 Fogarasi, T (GM, HUN, 2401) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/15 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Westerberg, J (FM, SWE, 2404) 0-1
FS 2013 October GM Final Results
試合後には、やはり私の9R 終了時でのIM ノーム獲得が認められるのか、IA のOrso Miklos 氏と、オーガナイザーのLaszlo Nagy 氏に確認をしに行きました。結論として、彼らからFIDE と交渉をするので、連絡を待っていてほしいとのことです。私は彼らの厚意をありがたく受け取り、過度な期待はせずに3日間の休みに入ろうと思います。結論はすぐに出るでしょう。
しかし、この記事を書きながら考え直すと、2つ目のノームを獲得した昨年12月も、ダブルラウンドロビンの10R で、9R 終了時点のパフォーマンスは2450 を超えていました。もしあの大会でも、すでに9R 終了時点でノーム達成だったのであれば、クリスマスイブ前日のあのCsonka との激闘はなんだったのか、ということになります。やはりダブルラウンドロビンでは、途中でのノーム達成は認められないような気がしますね。いずれにせよ、次のCAISSA でも頑張って勝ち星を積み重ねたいと思います。
少しポジティブな話もしておきましょう。今大会、レイティングだけを見れば+17 と久々に大幅上昇です。実はこの数字は、先月のFS とCAISSA で落とした合計でもあるのですが(笑) IM になるためには、2400 にレイティングを載せる必要がありますので、韓国以来落としてきた数字を、少しずつでも戻していければと思います。
そして昨日の昼には、中高の同級生が1人、ブダペストまで遊びに来てくれたので、試合後は彼とハンガリー料理を楽しんできました。これから私がケチケメートに向かうまでの3日間は、彼とブダペストでゆっくり遊ぼうと思います。(もちろん、時間を見て研究もしますよw) その間も記事は更新しますので、引き続きこちらのブログのチェックもよろしくお願いします!
6 件のコメント:
大会お疲れさまです!無事にノームが取れることを祈ってます。
休憩期間は楽しく過ごしてリフレッシュして下さいね(*^_^*)
ありがとう。こちらは休憩日1日目が終わったよ。適度にチェスもしつつ、次の大会に備えて休んでまーす。
アンパンマンの作者がお亡くなりになりました・・(T_T)
ちょっと手順は違うけど似たようなゲーム
http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1714645
匿名さん やなせさんの記事は私も見ました。保育園時代、私もアンパンマンを見ていたので寂しいですね...
匿名さん 早速拝見しました。15.d4 はこのタイミングだと思ったのですが、もう少しゆっくり行くべきでしたかね。うーむ。
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