2017/04/18

The Highest Level Training in Japan on 17th April 2017


今日は先月に引き続き、羽生さんとのチェストレーニングを行ってきました。いつもは2人でのトレーニングですが、今回は初めて青嶋くんも入れ、3人で集まりました。本当はもう1人声をかけていたのですが、その人がキャンセルとなったために珍しい奇数人数での集まりです。

偶数であれば対局形式がスムーズにできますが、奇数だとそうはいきません。持ち寄りのポジションを一緒に考えることをメインにするか、持ち時間のハンディキャップをつけて誰かが2面指すか、それとも交代で抜けるか。そうした形式を事前に考えていましたが、今朝集まった際に羽生さんから「3人とも2面指ししましょうか」という画期的な提案が! ボードの向きを調整しつつ、3人で3局同時進行という初めての形式でのトレーニングとなりました。普段より負担は大きいため、持ち時間もいつもの25分から、40分+1手30秒増加のフィッシャーモードにしています。

Aoshima, M (JPN, 2272) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training

1. e4 c5 2. Nf3 g6!?



Hyper Accelerated Dragon という羽生さんのチョイスは驚きです。白で指す機会も多く、1. e4 以外からでもこの形になることがあるため、勉強のために指してみたという話です。

3. d4 cxd4 4. Nxd4 Bg7 5. c4 Nc6 6. Be3 Nf6 7. Nc3 O-O 8. Be2 d6 9. O-O Bd7 10. Rc1 Nxd4 11. Bxd4 Bc6 12. Qd3


青嶋くんはf2-f3 ではなく、クイーンでe4 をサポートする形を選びました。この変化のほうが3段目でのクイーン、ルーク振りなどのアイディアがあり、攻撃的で青嶋くんらしいと感じます。

12... a5 13. b3 Nd7 14. Bxg7 Kxg7 15. Rfd1 Qb6 16. Nd5



f2-f3 と指した形では、このナイト飛び込みからのナイトビショップ交換は、白マスビショップの働きが悪い白にとって良くないとされています。ここでの判断は難しいですが、黒のナイトは十分白のビショップに対抗できそうです。

16... Bxd5 17. exd5 Nf6 18. Qc3 Rfc8 19. a3 h5?!


検討で羽生さんが悔やんでいた手で、黒はキングの周辺を自ら弱めてしまっています。黒はどこかのタイミングで、Kg7-Kg8 とキングを退く手を入れておき、ナイトをピンから外しておくべきだったでしょう。

20. h3 h4? 21. Rd4! Qc5 22. b4 axb4 23. axb4 Qa7 24. Rxh4 Qa2 25. Qe3 Qb2 26. Qh6+ 1-0



羽生さんらしくなく、ダイレクトなキングへのアタックを通してしまいました。これで3局同時並行の均衡が崩れ、私だけが2面指し状態になります(笑) しかもこの頃には、どちらのボードも形勢が悪く、残り時間も少ないという状況でした。

Habu, Y (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2401)
Training

1. Nf3 d5 2. g3 Nf6 3. Bg2 c6 4. c4 g6 5. d4 Bg7 6. cxd5 cxd5 7. Ne5 O-O 8. Nc3 Nc6 9. O-O Ng4 10. Nxc6 bxc6 11. h3 Nf6



ここは大人しくナイトを戻しましたが、11... Nh6!? という手も面白そうです。せっかくナイトをg4 に飛ばしてピース交換を進めたのであれば、ナイトを退くマスは変えて良かったですね。

12. Bf4 Nd7 13. Na4 Ba6 14. Rc1 Qa5


検討では、14... Bb5!? としてナイトを早めに捌きにいくアイディアも出ました。例えば、15. Nc5 Nxc5 16. Rxc5 Qb6 と進めば、e7-e5 のブレイクが黒の楽しみとなり、本譜よりも指しやすいでしょう。

15. b3 Rac8 16. Bd2 Qd8 17. Bb4! Re8 18. Nc5 Nxc5 19. Bxc5+/=



こうしてビショップでc5 を抑えられてしまうと、黒はc6 に弱点を抱えるだけでうまい反撃のポイントを見つけることができません。

19... Qd7 20. Re1 e5 21. dxe5 Bxe5 22. e3 h5 23. Qd2 Bd6 24. Bxd6 Qxd6 25. Qd4 Qe7 26. Rc5 Qb7 27. Rec1 Qb6 28. Bf3 Rcd8 29. Kg2 Bb7 30. g4 hxg4 31. hxg4 Qc7 32. Rxd5


ここは32. Bxd5 Rxd5 33. Qxd5+- ですぐに大きな駒得です。

32... Rxd5 33. Bxd5 Qd7 34. Bf3 Qxd4 35. exd4 Rd8 36. Bxc6 Bxc6+ 37. Rxc6 Rxd4 38. Ra6



羽生さんはg4 を捨てても2コネクテッドパスポーンを作る分かりやすいプランを選びました。38. Kf3 a5 39. Rc5 a4 40. Rc4!+- でもポーン交換を許さず、白の勝ちであることを読むには、互いの持ち時間は少なすぎました。

38... Rxg4+ 39. Kf3 Rb4 40. Rxa7+-


白の2コネクテッドパスポーンを止める方法はなく、白の勝ちです。

40... Kg7 41. Ra4 Rb5 42. Rc4 g5 43. b4 Kg6 44. a4 Rd5 45. Rc6+ f6 46. a5 Rd3+ 47. Kg2 Ra3 48. a6 Kf5 49. Rc5+ Kf4 50. Ra5 1-0



この試合は中盤からジリ貧状態が長く続き苦しい展開でした。この試合終了時には青嶋くんとのゲームも佳境を迎えます。

Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Aoshima, M (JPN, 2272)
Training

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 a6 5. cxd5 exd5 6. Bg5 Be7 7. e3 O-O 8. Qc2 h6 9. Bf4 c6 10. h3 Be6 11. Bd3 Bd6 12. Bxd6 Qxd6 13. O-O-O Nbd7 14. g4 b5 15. Kb1 Rac8 16. g5 hxg5 17. Nxg5 b4 18. Na4 c5 19. dxc5 Nxc5 20. Nxc5 Rxc5 21. Qe2 Rfc8 22. Rhg1 a5 23. Qf3 Qe5 24. h4 a4 25. Nxe6 fxe6 26. Qg3 Qxg3 27. Rxg3 R8c7 28. Rdg1 b3 29. axb3 axb3 30. Rf3 Nd7 31. Rf4 Ne5 32. Be2 Ra7 33. Rd1 Rc2 34. Bg4 Nxg4 35. Rxg4 Ra2



この試合はエンドゲームから始めます。すでに黒は7段目にルークを2つ入れて勝勢に見えますが、白もなんとか抵抗しようとします。

36. Rdg1 Raxb2+ 37. Ka1 Ra2+ 38. Kb1 Rc7?!


ここはg7 を守るよりも、7段目を抑えつつさらにポーンを取ったほうが良かったでしょう。38... Rcb2+ 39. Kc1 Rxf2! 40. Rxg7+ Kf8 41. Kb1 Rab2+ 42. Ka1 Rbe2 43. Rb7 Rxe3-+ ならば、白はメイトやパペチュアルチェックのチャンスを作ることができず、苦しい状況が続いていたでしょう。

39. Rg6 Rxf2?



このポーン交換で助かったと感じました。ポーンを交換しすぎると、白はタブルルークエンディングでも、ルークエンディングでもドローを取りやすくなります。黒が勝つためにはポーンを残しつつ、ルークを交換するのが良かったでしょう。39... Rca7! 40. Rc1 Ra1+ 41. Kb2 Rxc1 42. Kxc1 Kf7!-+ これならば白はh4 が弱く、敗色濃厚のルークエンディングです。

40. Rxe6 Re2 41. Rd6 Rxe3 42. Rxd5 Rh3 43. h5 Kh7 44. Rb5 Rf7 45. Rg2 Rhf3 46. Rbg5 Kh6 47. Rg6+ Kh7 48. Kb2 Ra7 49. Kb1 Rf5 50. Kb2


ルーク交換は受け入れ、1ポーンダウンでもドローに持ち込めるエンドゲームを目指します。

50.... Ra2+ 51. Kxb3 Rxg2 52. Rxg2 Rxh5 53. Kc4 Re5 54. Kd4 Re7 55. Kd3?!



この手でも問題ありませんが、先にルークを退いておけば、f-hファイルの連続チェックがあり、黒のg7-g5 を防いでもっと簡単だったでしょう。55. Rg1! Kh6 56. Rh1+! Kg5 57. Rg1+ Kf4 58. Rf1+ Kg3 (ここでキングがルークをアタックしておらず、もう一度チェックできることが、Rg2-Rg1 と最奥まで退いた効果です。) 59. Rg1+ Kf2 60. Rg6! こうしてgポーンをブロックしてしまえば安全です。

55... Kh6 56. Kd2 g5 57. Rg1 Re5 58. Kd3 Kh5 59. Kd4 Re2 60. Kd3 Re5 61. Kd4 Re8 62. Rh1+!


2ファイル離されてカットオフされているため、一瞬負けを覚悟しましたが、よくよく見ればファイルが足りないため、白キングはチェックをかわしつつ潜り込むことができません。

62... Kg6


62... Kg4 63. Rg1+ Kh4 64. Rh1+ Kf3 (ここでキングが右側の3段目に逃げるファイルがあれば黒勝ちです!) 65. Rf1+ これで黒キングは後退するしかなく、局面を改善できません。

63. Rg1!



g5-g4 を許してしまうと黒勝ちになるので、キングを下げさせたら正面からルークでポーンを攻撃するのが絶対です。ポーンをこれ以上前進させず、黒キングに潜り込まれることもなければドローです。

63... Re7 64. Kd3 Re5 65. Kd4 Kf6 66. Rf1+ Rf5 67. Rg1 Rf4+ 68. Ke3 Kf5 69. Rg2 Rf1


69... g4 70. Rf2 ならば、ルークを交換してドローのポーンエンディングです。

70. Ke2 Rf4 71. Ke3 Kg6 72. Rf2 Ra4 73. Kf3 Kh5 74. Kg2 Kg4 75. Rb2 Kh4 76. Rc2 g4 77. Rb2 Ra3 78. Rc2 Ra4 79. Rb2 g3 80. Rb8 Ra2+ 81. Kg1 Kh3 1/2-1/2



カットオフを外せれば、最後はフィリドールポジションに落ち着きます。白の後ろからのチェックは止まらず、白は勝つことができません。青嶋くんとの最近のゲームは、タフなエンドゲームばかりです...


大変なゲームの後、14時近くなってから沖縄料理へ。旅行の話や、最近話題の藤井聡太四段の活躍の話などを聞くことができました。青嶋くんが入るといつもと少し話題が変わり、フレッシュな雰囲気になったのが良かったですね。午後はもう1ゲームやる時間はとてもなく、残った検討と持ち寄ったポジションの研究を行いました。いつもとは違う形式も面白かったので、またこうしたトレーニングの機会を設けたいですね。2人とも、今日はありがとうございました!

2017/04/11

24th IVL Tournament Report


9日の日曜日、表参道で久々にIVL が開催されました。今回はTuさんを除き、現在日本で集まれる最高峰のメンバーが揃ったと言っても過言ではありません。タイトルホルダーが半数、平均レイティング2246 というハイレベルな大会となりました。

3R を終えた時点でのトップは、私とAnton に勝って単独3連勝となった南條くんと、羽生さんを破って上がってきた青嶋くんの争いになりました。青嶋くんからは3R の棋譜をもらっているので簡単にご紹介します。


Aoshima, M - Habu, Y
24th IVL (3)
Position After 34... Qg1

白はb4 とd6、黒はa2 とh3 にターゲットを持ち、どちらが有利なのか非常に判断の付きにくい形になりました。ここからお互いに細かいミスも出て、形勢がひっくり返り続けるシーソーゲームとなります。

35. Qc8+ Nf8 36. Qc4 Qb1


羽生さんはa2 を狙いに行きますが、ここはポーンを捨ててもナイトをアクティブにして反撃をするアイディアがありました。36... Qh2+ 37. Nf2 g5! 38. Qxb4 Ng6! 39. Qxd6 Nf4+ 40. Ke3 Qg1 41. Qb8+ Kg7 42. Qxe5+ Kf8 43. Qd6+ Kg7= こうなれば白は駒得でも、パペチュアルチェックにするしかないというのがコンピュータの判断です。実際には持ち時間の短い中、黒がd6 を捨てる決断をするのは簡単ではないでしょう。

37. Nxb4 Kg7 38. Qc2 Qh1 39. Nd3 Qxh3 40. Qc7 Qh2+ 41. Nf2 h5 42. gxh5 gxh5 43. Qxd6 Ng6



本譜でも遅ればせながら、ナイトがg6 に上がってアクティブに使えるようになりました。これでf4 にナイトが侵入すれば、白キングのポジションはやや危険になります。

44. Kf1 Qf4 45. Qc5? Qxf3?


これでも白キングは危険そうに見えますが、最も正確なのは45... Qd2! でa2 のポーンを狙いつつ、7段目を抑える手でした。これで白はパスポーンになるa3 と、キングへのメイティングアタック両方に対処しなければならず、厳しいポジションとなります。白も代わりに45. Qxa3 とポーンを先に取っておけば、多少安全でした。

46. d6 Nf4 47. Qxe5+ f6 48. Qb5?



青嶋くんは7段目にクイーンを侵入させてのパペチュアルチェックを嫌い、あくまで勝ちを目指しますがこれは危険な方針でした。

48... Kh6?


ここは羽生さんが勝つ最後のチャンスだったかもしれません。48... Qc3! 49. Kg1 Qa1+ 50. Kh2 Qxa2 (a3 をパスポーンにしつつ、f2 のナイトを取ってチェックのスレットになっていることもポイント) 51. Qd7+ Kh6 52. Qa7 Qd2-+ お互いにキングが不安定ですが、ナイトがターゲットになっているかどうかに大きな差があります。

49. d7 Nh3?


この連続ブランダーで形勢は一点、ドローから白勝ちへと結果が変わることになります。49... Qg2+ 50. Ke1 Qg1+ 51. Qf1 Ng2+ 52. Ke2 Nf4+ 53. Ke1 ならばドローにするしかありません。

50. Qe2 Qg3 51. Qd2+ Kh7 52. Nxh3?



しかし青嶋くんも勝ちを目前に焦ったでしょうか。ここは単にプロモーションすれば、ナイトを取られても簡単に勝ちになるところでしたが、ナイトを交換したことでパペチュアルチェックのチャンスを与えてしまいます。52. d8=Q+-

52... Qxh3+ 53. Ke2 Qh2+ 54. Kd1 1-0


最後はここで黒の時間が落ちてしまいましたが、54... Qg1+ 55. Kc2 Qc5+ 56. Qc3 Qf2+ 57. Kd3 Qg3+ ならば、チェックを切ることが難しくドローになってしまいました。互いに時間切迫からミスはありましたが、面白いファイティングゲームだったと思います。続く4R でも青嶋くんは南條くんを破り、0.5P リードで優勝に王手をかけました。


しかし、最終戦でスウェーデンのFM Anton が青嶋くんに立ちはだかります。青嶋くんにとっては3回目、Anton にとっては初めての優勝をかけた戦いとなります。


Kockum, A - Aoshima, M
24th IVL (5)
Position After 17... a5

18. Nc1!


白がアクションを起こすとすれば、どこかのタイミングでf2-f4 とするでしょう。Anton はその準備として、丁寧にナイトのポジションを切り替えます。

18... a4 19. Nd3 Rcb8 20. Qc1 Qe7 21. Re2 Rf8 22. Ng2 Kh7 23. f4 f6?



ポーンを交換する手は将来的にe4-e5 のブレイクを許す危険があるため多少不安ではありますが、それでもビショップの利きを開かなければ黒にチャンスはありませんでした。23... exf4 24. gxf4 Rfe8 と進み、e4 のポーンに反撃をしつつe5 のマスを抑えるのが黒のベストです。本譜のように黒マスビショップをさらに閉じ込めてしまえば、理想的なアウトポストに潜り込んでくるナイトに対抗できません。

24. h4! Rf7 25. h5 g5 26. Ne3!


黒のポーンを乱してすぐ、白のナイトはf5 へと向かいます。安定した5段目のアウトポストのグッドナイトvs. 自分のポーンに利きを遮られてしまったバッドビショップという構図は、古くから多くのゲームで見ることができます。

26... Nb6 27. Nf5 Qd7 28. Ref2 Raf8 29. Ne1 Nc8 30. Ng2 Ne7 31. Nge3 Nxf5 32. Nxf5 Bh8 33. Kg2 Bg7 34. Qd1 Rg8 35. Kh2 Bf8 36. fxe5 dxe5



白にパスポーンを作らせないように36... fxe5 と取りかえすのが自然に見えますが、いずれにせよ白はナイトの力で大きなポジショナルアドバンテージを持つでしょう。

37. d6 g4 38. Kg2 Rg5 39. Rh1 Qe8 40. Qd5 Rd7 41. Qxc5 Rxh5


駒数で言えば単にポーンの交換ですが、2コネクテッドパスポーンを止める方法がない以上、黒は負けを避けられません。

42. Rxh5 Qxh5 43. Kg1 b3 44. a3 Qe8 45. Qd5 1-0



実際の試合はもう少し続いていますが、棋譜はここまでです。羽生さんと南條くんを破り、この勢いで青嶋くんが今回は優勝かと思いましたが、勝負は最後まで分からないものですね。


Anton はこの後、南條くんとのブリッツのタイブレークも2-0 で制し、優勝を決めました。スウェーデンから2年前に来日して以来、こまめにIVL に参加してそのポテンシャルの高さを見せてきたAnton ですが、IVL での優勝は初めてです。おめでとうございます!


そして今回はハワイからゲストとして、ポール飯沼さんが参加してくれました。飯沼さんは2009年に日本に留学中、初めて参加した全日本選手権で4位に入賞し、日本のレイティングも2200近い強豪プレーヤーです。今回も初戦で羽生さんを破り、2R で青嶋くんをドローと上位からポイントを取っていきます。3R で馬場さんに敗れたことで優勝争いからは後退してしまいましたが、負けはこの1つだけで高いパフォーマンスを残しています。

ちなみに私は午前中の2試合のみの参加で、汐口くんに勝ち、南條くんに負けという冴えない結果でした... 次回のIVL では予定が合えば、5戦フル出場をして優勝を目指したいですね。次回の日程は未定ですが、また近いうちに開きたいと思いますので、メンバーの皆さんはよろしくお願いします。

2017/04/03

Fukuoka 2017 Tournament Report


4/1~3 にかけて2年ぶりとなる福岡県に足を運んできました。目的は前回同様、福岡県選手権に参加することです。以前は大会前日の早い時間に現地入りし、久留で同時対局をさせていただきましたが、今回は土曜の夜に福岡に到着したため、そうしたサブイベントも無しで、日曜日の公式戦のみです。


今年の福岡県選手権は直前のキャンセルがあり、参加者は発表されていたよりも少ない14名でのスタートです。九州も福岡だけでなく、伊万里、熊本から参加されている方が複数名ずつしましたが、私は初戦から同じ関東勢のプレーヤーと連続してヒットしました。

Kawanaka, Y - Kojima, S
Fukuoka 2017 (2)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. e3 c6 4. Nbd2 Bg4 5. h3 Bh5 6. g4 Bg6 7. Ne5 Nfd7!



Caro-Kann でも、Slav でも、白マスビショップがナイトと交換されてしまうことには慣れているので、こうした展開自体はOKです。ポイントはf6 のナイトを早めに退いておくことで、7... Nbd7?!7... e6?! ならば、h3-h4-h5 のアイディアが厄介でしょう。

8. Nxg6 hxg6 9. Bg2 e6


9... e5 と一気にポーンを進めたい気持ちもありましたが、それには10. e4! と白もポーンで対抗します。センターでポーンがぶつかり合い、開いたポジションになれば、ダブルビショップを持つ白が優位に試合を進められます。

10. Nf3?!


この手は少し妙に感じました。ナイトはe4 とc4 に利かせておき、どちらかのポーンを進める手のチャンスを残しておくべきだと思います。(もちろん、すぐにポーンを突いてもOKです。) 本譜ではe3-e4c2-c4 も怖くなくなった黒が、白のセンターポーンを簡単に崩しにいくことができます。

10... c5! 11. Bd2 Qb6 12. Bc3 Nc6 13. Qd2 Rc8 14. O-O Nf6!



ここでナイトを戻し、Nf6-Ne4 の跳び込みのチャンスを作っておきます。クイーンとビショップをd2, c3 に配置した白にとって、このナイトの跳び込みは鬱陶しいものとなります。

15. dxc5 Bxc5 16. Ng5 O-O


遅れていた展開も問題無くなれば、黒はあとはd5-d4 のタイミングを伺って有利になるでしょう。

17. a3 Rfd8 18. b4 Be7 19. Bb2 d4! 20. Bxc6 Qxc6 21. Rac1 Nxg4!?



もちろん本譜でもポーンを取って黒が有利ですが、後で考えたところ、21... dxe3! 22. Qxe3 Nd5-+ のほうが正確であることに気付きました。いずれにせよ、白はg5 に跳んだナイトが負担になってしまいます。しかし、ここでのポーンダウンを嫌って本譜のように進めれば、さらに白は絶望的な状況になります。

22. Nxf7? Kxf7 23. hxg4 Qf3! 24. Qd1 Qh3 25. f4 Qg3+ 0-1


白マスビショップが抜け、守りの薄くなった白キングを直接叩いてメイトです。Ng5-Nxf7 はポーンを取りかえしているように見えて、黒にルークを早くhファイルに回すチャンスを与えてしまう結果になっています。この後の2試合も勝ち、今年も4連勝で優勝を決めました。

1st Place Kojima Shinya 4/4
2nd Place Kawanaka Yosuke 3/4
3rd Place Kojima Natsumi 3/4
4th Place Okamura Masahiro 3/4


2位以下は3人が並びましたが、タイブレークで川中さんが2位となり、全日本の出場権を獲得しました。川中さん、おめでとうございます! 妻のなつみも格上相手に初戦から3連勝と頑張りましたが、権利まではあと半歩及ばずです。入賞者だけでなく、他の参加者の皆さんもお疲れ様でした。


Photo by Kawanaka

この日は大阪でも全日本予選が開催され、これで全ての地方予選が終わりました。全日本の出場者については未確認のところもありますので、直前まで楽しみにしておこうと思います。それでは全日本選手権参加者の皆さん、また今月末に蒲田でお会いしましょう。


福岡の試合会場はチェスの本がぎっしり詰まった本棚が! New In Chess Year Book の第1号は私の生まれる前の出版ですね。


今回の遠征でも、美味しいものをゲットしてきました。試合後の夕飯に選んだジビエの専門店では、鹿、猪、雉などの変わったお肉をたくさん堪能させていただきました。


前回は塩焼きのみだったサバですが、今回は名物のゴマサバやお寿司をチョイス。博多駅ビルの10階にある鯖萬は、長崎のサバを中心に、長崎料理を味わうことができるお店です。

2017/03/31

Saturday Lecture on 8th April 2017


Capablanca - Treybal / 1929
White to move

【日時】 2017年4月8日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 A Breakthrough in A Closed Position
【テーマ詳細】

新年度最初のレクチャーでは、ポーンが固まって閉じたポジションでの突破をテーマにしようと思います。ポーンが固まれば両者のプレーは限定されますが、それでも小さな隙をついて、どちらかがチャンスを作ることは考えられます。限られた手の中からチャンスを掴む方法と、そのために必要なアイディアを学びましょう。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2017/03/24

The Highest Level Training in Japan on 22nd March 2017 Vol.2


羽生さんとの2局目の解説です。午後は色を変えて私が白を持ちます。

Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 O-O 5. d4 d6 6. Be2 e5 7. O-O Na6!?



この日は気分を変えてKing's Indian をFianchetto ではなくメインラインで受けてみます。以前の対戦では羽生さんは7... Nc6 を指してきましたが、この日は初めて見る7... Na6 でした。この変化を指すのは久々ですが、以前の研究を思い出しながら試合を進めます。

8. Be3 Ng4 9. Bg5 Qe8 10. Re1!?


私もかつて7... Na6 を指していましたが、その10年程前はこの手はさほど注目されておらず、10. h3 h6 と進む変化がメインラインでした。

10... h6 11. Bh4 exd4 12. Nd5!



10. Re1 が注目されるようになったのは、このポーンを無視したナイトを跳び込み力が認められるようになったためでしょう。d5 のナイトはe7 に利きを持ち、Nd5-Ne7Bh4-Be7 の両方の狙いを作っています。羽生さんはこの手を警戒してh7-h6 を入れたのですが、それでもナイトの跳び込みは有効です!

12... g5 13. Bg3 c6 14. Bxd6!


この手は羽生さんが完全に軽視していたものです。ナイトを退くような選択肢はありえないため、白は2ピースとルークの交換を目指して勝負をします。私がこのアイディアを学んだオリジナルのゲームは、イスラエルのGM Huzman のものでした。少し形は違いますが、紹介しておきます。10... exd4 11. Nd5 f6 12. Bf4 c6 13. Bxd6! Huzman - MacShane 2005

14... cxd5 15. exd5 Nf6?


g4 のナイトは確かにターゲットになりそうですが、これを退くよりも優先しなければいけないのは、クイーンへのディスカバードアタックを避けることです。正しくは15... Qd8! 16. Bxf8 Qxf8 17. Bd3! (17. Nxd4? Nxf2! 18. Kxf2 Qc5-/+) 17... Nf6 18. Nxd4+/= と進めるべきでした。難しいポジションではありますが、ここで羽生さんが判断を誤ったことで、流れは一気に白に傾きます。

16. c5!



f8 の逃げられないルークを取ることは急がず、a6 のナイトを取りにいくことを優先します。このc4-c5 からのナイト取りと、Nc3-Nd5 の相性は良く、うまくこのコンビネーションが決まれば、7... Na6 のラインは黒が崩壊します。

16... Qd8?


これも決定的なミスで、2コネクテッドパスポーンを作ることを白に許してしまえば、黒はどうすることもできません。16... Nb4 17. Bc4 Qd8 18. Bxf8 Bxf8 19. d6+/- これであれば、マテリアルは本譜と同じでも、cポーンまではパスポーンになっていないため、黒は粘れる可能性があります。

17. Bxa6! bxa6 18. Bxf8 Bxf8 19. d6+-



完全に白の注文通りに試合は進みました。c,d ファイルの進んだコネクテッドパスポーンと、eファイルのコントロールがあれば、白が勝ちを決めるのも難しくはないでしょう。

19... Bg4 20. Qxd4 Bxf3 21. gxf3 Nh5 22. d7! Qc7 23. Re8


ここは少し迷いましたが、なるべくわかりやすい手を選んだつもりです。d8 のブロックを突破し、プロモーションを確定させれば白の勝ちです。

23... Rd8 24. c6 Nf4 25. Rae1 1-0



シンプルにeファイルを突破し、勝負ありです。やはりパスポーンは脅威になりますね。

この日は2試合の後、Caro-Kann, Ruy Lopez, Caro-Kann などで、お互いに研究してきた変化を持ちより、アイディアを出し合いました。いつも通りに勉強になるトレーニングになり、有意義な1日でした。羽生さん、いつもありがとうございます。また次の機会も、よろしくお願い致します。

2017/03/23

The Highest Level Training in Japan on 22nd March 2017 Vol.1


昨日は久々に、羽生さんと1対1のトレーニングをしてきました。いつも通り午前と午後で色を変え、計2局を指します。今回はどちらのゲームも面白かったため、2回に分けて解説記事を書こうと思います。まずは午前のゲームからです。

Habu, Y (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2401)
Training (1)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 c5!? 4. d5 exd5 5. cxd5 d6 6. Nc3 g6 7. Bf4!?



Benoni Defence に対して、e2-e4 を遅らせてBc1-Bf4 と指す変化は、近年トップのGM の間でも流行のラインです。白はゆっくりとした駒組みをし、黒にピースをなるべく捌かせないようにします。

7... a6


7... Bg7 8. Qa4+ Bd7 9. Qb3 b5!? というギャンビットラインも面白いですが、しっかり研究はしていなかったために今回は断念します。本譜ではa7-a6 を挟むことで、白のクイーンチェックを止めておきます。

8. a4 Bg7 9. h3 O-O 10. e3 Qe7!?



ここはどう指すか黒の作戦の分かれ目です。10... Nh5 11. Bh2 f5 がメインラインですが、あまりこうしたアクションは好きではありません。e2-e4 を将来的に許しても、よりスタンダードなベノニのポジションを目指すことにします。

11. Be2 Nbd7 12. O-O b6!?


以前の研究で、b7-b6, Bc8-Bb7 は意外と悪くなかったため、それを採用してみることにします。白の組み方によっては、Ra8-Rb8 からb6-b5 とbポーンを伸ばすことも考えられます。この際に白がa4-a5 とできないのが、黒がわざわざb7-b6 を挟んでおくメリットとなります。

13. Nd2 Ne5



13... Rb8 14. Nc4 Ne8 15. Qb3!+/- ならば、黒は2つのナイトがどちらも守りに縛られて身動きが取れなくなるため、面白くないでしょう。ここはビショップにとられることを覚悟のうえで、そうそうにセンターにナイトを運びます。

14. e4!?


ここも白はどう指すか作戦が分かれそうです。14. Bxe5!? dxe5 (14... Qxe5 15. Nc4 はb6 が落ちるのでもちろんダメ) 15... Nc4 Rb8 16. Qb3 Qc7 17. Rfd1+/= これでも少し白が指しやすそうですが、黒マスビショップを失ったダメージが後半で出てくる可能性はありえます。

14... Nfd7 15. Be3 g5!



こうしたポジションではスタンダードなポーンの突きです。f2-f4 を止め、e5 のマスにナイトを残せるようにしておくと同時に、g6 にマスを作り、タイミングを見てナイトを組み替えます。

16. Re1 Ng6 17. Nc4 Rb8 18. Qd2 h6 19. Bf1 Nde5 20. Nxe5 Bxe5


一般的にベノニではe5 のマスで1枚ナイトを捌けば、黒はぐっと楽になると考えられています。このポジションではe5 に置かれたビショップが両サイドに伸び、黒はすでに満足だと判断できそうです。

21. g3 Kh7!? 22. Bg2


f2-f4 を誘ってみましたが、羽生さんはこれには乗ってきません。22. f4 gxf4 23. gxf4 Nh4 24. Qf2 Rg8+ 25. Kh2 Bf6=/+ と進めば、白はビショップをe5 から追い返せても、自信のキングの守りを弱めてしまったデメリットのほうが大きそうです。

22... Qf6 23. Rf1 Nf4!



この手は自信をもって指すことができました。このナイトは取られてもビショップを取りかえせるため、黒は全く問題ありません。これで黒が少し有利になったと感じましたが、慣れないベノニで持ち時間がすでに残り少なかったことから、ミスをしてしまいます。

24. Ne2 Nxe2+?!


ここでさらに時間を使ったにもかかわらず、ベストの手を逃してしまいました。24... Nxg2 25. Kxg2 Bxb2 26. Rab1 Be5 27. f4 gxf4 28. Nxf4 Rg8-/+ ならば、カウンターも抑え込み、本譜よりも良いポーンアップです。他にも、24... Nxh3+ 25. Kh2 Qg6!(これが試合中見落とした手で、h3 を取ることをあきらめてしまいました。) 26. Bxh3 Qh5 27. Ng1 Bxh3 28. Nxh3 g4 29. Rh1 gxh3 30. Rhg1 Rfe8-/+ も黒良しの変化です。

25. Qxe2 Bxb2 26. Rad1 b5 27. f4?


これは黒が最も警戒すべきアイディアでしたが、タイミングが少し変でした。27. axb5 Rxb5 28. f4 gxf4 29. Bxf4 Qg6=/+ ならば、黒はやや有利ですが、fファイルからのカウンタープレーに十分気をつけないければいけません。

27... Bd4?



時間のない中での判断でしたが、これで白に逆転されてしまいました。27... bxa4! 28. fxg5 Qg6!-/+ が正解で、bファイルを開いてルークでビショップを守ることで、クイーンをa1-h8 のダイアゴナルから逸らすことができます。h6 を取られてもg3 を取れますし、a4-a3-a2-a1 という単純な狙いも強力です。

28. Bxd4 cxd4 29. e5! dxe5


ベノニでもっと警戒しなければいけないブレイクを許してしまいました。29... Qg7 30. e6+/- でも白が有利であることは疑いようがありません。

30. fxe5 Qb6 31. Qd3+ Kg7 32. Rf6 Qc5 33. axb5 axb5 34. Rc6 Qb4 35. e6!+-



強力なセンターポーンを伸ばされ、駒も取りかえされてしまうようであれば、すでに黒は敗勢です。この先は挽回が難しいと分かっていましたが、続けてみることにします。

35... Bb7 36. Rc7 Ba8 37. Qf5 Rb7 38. Qe5+ Kg8 39. Rxb7 Bxb7 40. e7 Re8 41. d6 Bxg2 42. d7 Bc6 43. d8=Q Qb2 44. Qe4 Bxe4 45. Qxe8+ Kg7 46. Qf8+ Kg6 47. Qg8+ Kf6 48. Qh8+ Kg6 49. Qg8+ Kf6 50. Rf1+


このチェックにより、黒の負けが確定しました。g2 のメイト狙いもすぐに防がれてしまいます。

50... Kxe7 51. Qxf7+ Kd6 52. Rf6+ Kc5 53. Qe7+ Kc4 54. Qxe4 Qc1+ 55. Kg2 Kb3 56. Qxd4 1-0



前日の小林くんとの試合でも、黒でチャンスを作っただけに、ベストの手が見えなかったのはもったいなかったです。それでも、久々に指したベノニで好感触だったのは嬉しかったですね。Nimzo-Indian との併用で、今後も活躍の機会があるかもしれません。午後のゲームについては、また明日以降の記事でご紹介します。


お昼はトレーニングの際によく行く焼肉屋さんでしたが、この日はすき焼きと和風ステーキで、互いに網を使わないメニューでした。お昼の話題は日露の交流会や、最近の囲碁、将棋、チェスのAI についてなど。羽生さん、専門分野以外のことも詳しくて、いつも驚かされます。

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