2022/06/08

Caro-Kann Two Knights


1. e4 に再び挑戦しようと思った際、悩んだのはCaro-Kann 対策です。2010年から私の黒番でのメインレパートリーを務め、IM タイトル獲得にも大いに貢献してくれた心強いオープニングです。白番でこれを迎え撃つにあたり、黒番でどの変化が苦手だったかを見直しました。Advance Tal Variation (1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4!?) も有力でしたが、最終的にはTwo Knights で行きつきました。

imsk (2557) - Keanu_Greaves (2459)
lichess Blitz

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6!?

Two Knights で近年流行しているラインで、私も黒番で指したことがあります。メインラインでは1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6!? 5. Nxf6+ exf6 がよく指されており、このダブルポーンは黒にとって大きな問題にならないと近年は考えられています。それをTwo Knights にも応用しており、ナイト交換の際に生まれるf6 のポーンがNf3-Ne5 を防ぎ、Nf3 の位置に対抗しやすいというアイディアです。

5. Qe2!


ナイトの交換を許しても、f6 にポーンは置かせません。

5... Nxe4 6. Qxe4 Nd7 7. d4!?

7. Bc4 Nf6 8. Ne5 e6 9. Qe2 b5 がポピュラーなラインですが、それを避けてd4 にポーンを置く、スタンダードなCaro-Kann の試合展開を目指します。

7... Nf6 8. Qf4 g6 9. Bc4


本譜の流れでも悪くないのですが、9. Bd3!?Bc8-Bf5 の展開を防ぎ、黒に白マスビショップのマスを与えない選択として、次回試してみたいと思っています。

9... Bg7 10. O-O O-O 11. Re1 Nd5 12. Qh4 Bf5

白のeポーンと黒のdポーンを交換し、黒がキングサイドにフィアンケットするのは、Alekhine Defence、Scandinavian などでも一部のラインで見ることができます。白のプランはシンプルで、開いたeファイルを抑え、e5 のマスのコントロールやe7 へのプレッシャーを武器に戦います。

13. c3 e6 14. Bg5 f6 15. Bd2 g5 16. Qg3 h5?!


ここでクイーンを追う必要はなく、かえって黒は自陣を弱めてしまいます。代わりに16... Qb8 くらいでクイーン交換を目指せば手堅いポジションです。

17. h4 g4 18. Nh2 Qe8 19. Nf1 Qg6 20. Ne3 Nxe3 21. Bxe3

2つ目のナイトを交換できたのはありがたく、白はBc1-Bg5 からfポーン突きを誘い、結果として弱くなったe6 を攻めやすくなっています。

21... Rfe8 22. Bf4 Be4 23. Re3 f5?!


黒のアイディアはe4 でがっちりブロックをしてe6 を守ることだと思いますが、このポーン突きはe5,g5 といった黒マスを弱めることにもつながります。また白が勝負に出るアイディアを軽視している可能性もあります。

24. Rae1 b5 25. Bb3 a5 26. a3

私は慎重を期しましたが、大胆に行くならばこのあたりでエクスチェンジを捨てても良かったでしょう。26. Rxe4! fxe4 27. Bc2! と進んだ場合、白はe4 でポーンを回収した後に、c6,h5 といった白マスの弱いポーン、さらには黒キングへの直接的な攻撃のチャンスで十分に代償がありそうです。

26... a4 27. Ba2 Kh7?


上記のエクスチェンジサクリファイスのチャンスを消すのであれば、27... Bd5 が唯一の手でした。しかし、白マスビショップを交換しても黒のポーンストラクチャーには弱点が多く、白を持ちたいポジションです。

28. Rxe4! fxe4 29. Bb1 Kh8 30. Bxe4 Qf7 31. Bxc6 1-0

私が仕掛けたエクスチェンジサクリファイスのタイミングだと、c6 とエクスチェンジまで取り返せることが確定しているので、2ポーンアップで白の勝勢です。シンプルかつ効率的にゲームを進められたと思う反面、チャンスを逃さないようにもう一歩早く仕掛けても良かったかと思います。いずれにせよ、勉強になるゲームでした。

2022/06/07

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第8回予告

6月のOPENRECでの講座案内です。6月は今週末の日曜日、6/12 20時からスタートです。

今月は『マスをめぐる攻防』 をテーマに講座をお届けします。チェス盤上には64個のマスが存在し、そのマスを白黒どちらが、どんなピースで抑えるかが勝負のカギとなります。シンプルなマスのコントロールの説明から重要なマスの見極め方、それをどう利用して手を作っていくのかなどを2時間弱かけて解説していく予定です。今月も多くの視聴とコメントをお待ちしております。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第8回『マスをめぐる攻防』 | 2022.06.12 (OPENREC)
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 #8「マスをめぐる攻防」【サブ配信】(Youtube)

2022/06/05

Ruy Lopez Open Variation


6月は公式戦の予定が今のところないため、オンラインで指したゲームをまた少しずつ紹介していこうと思います。今夜は色々と試している中で最近手ごたえのある、Ruy Lopez の一変化です。

Puntano (2575) - imsk (2550)
lichess Blitz21

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Nxe4!?

オリンピアードに向けた準備として、Ruy Lopez Open Variaiton を少しずつ今年の頭から試しています。1995年のKasparov - Anand などで白が勝った鮮烈なゲームのイメージからか、日本のトップクラスにはさほど人気のない変化ですが、非対称なポーンストラクチャーとダイナミックなプレーのチャンスは、黒で大いにチャレンジする価値があると思っています。

6. d4 b5 7. Bb3 d5 8. dxe5 Be6 9. c3 Be7 10. Nbd2 O-O 11. Bc2 f5 12. Nb3 Qd7 13. a4!?


Ruy Lopez においては典型的な手ですが、このタイミングでは少し珍しいでしょう。13. Nfd4 とすぐ跳んでナイト交換を目指すのが一般的です。

13... b4 14. Nbd4 Nxd4 15. cxd4 f4!?

f4 まで伸びたポーンはターゲットにもなりうるものですが、c1 ビショップの利きを止めつつ、f4-f3 とさらなる押し込みからキングサイドアタックも作り出すチャンスがあります。

16. a5 Rad8 17. Ba4 Qc8 18. Nd2 c5!


白はf3 にナイトを残したままだとBe6-Bg4 が多少気がかりですが、d4 のマスから利きを離せばこのカウンタープレーを食らいます。黒はdポーンを孤立にしようと、a7-g1 ダイアゴナルを抑えて白キングへのアタックチャンスを作りにいきます。

19. dxc5 Bxc5 20. Bb3 Kh8 21. Nf3 Bg4 22. Bxd5 Ng5 23. Qb3 Rxd5!

これは白にとっては手痛い一発で、どちらのピースを取っても嫌な展開が待ち構えています。

24. Nxg5


白はルークではなく、本譜のようにナイトを取るしかありません。24. Qxd5 Bxf3 25. gxf3 Qh3!-+ から白はディフェンスがないというのが、私のメインの読みでした。

24... Qd7 25. e6 Bxe6 26. Nxe6 Qxe6-/+

白はポーンを返しても黒のダブルビショップを消しにいきますが、局面が落ち着けば互いの黒マスビショップの働きの差は明らかです。

27. Qf3 h6


一度バックランクメイトを防ぐように端ポーンを突いておきましたが、27... Qd7 のような手からb2-b3 を牽制しておいても良かったでしょう。

28. b3 Qf5 29. Bb2 Rd3 30. Qc6 Kh7 31. Rac1 Ba7?

これは少し弱気な手でした。d3 にルークを入れて3段目をコントロールしたのであれば、31... f3! とポーンを強気に押し込むべきです。

32. Qb7 Rf7 33. Rc7 Rdd7 34. Rxd7 Rxd7 35. Qc6 Rd2 36. Bc1 Re2?


ここもルークを逃がすのであれば、36... Rc2! がクイーンに当たるテンポを得て良いマスでした。この辺りはブリッツの荒さが出ています。

37. Qf3 Qc2 38. Bxf4??

ここは期待していた一発ブランダーで決着がついてしまいました。38. h4! Rxf2 39. Rxf2 Qxc1+ 40. Kh2 Bxf2 41. Qxf2 と進んだ場合、黒は1ポーンアップながらキングの守りが薄く、パペチュアルチェックを防ぎながらパスポーンを作って局面を進展させることは、なかなか難しそうです。

38... Rxf2! 39. Qxf2 Bxf2+ 40. Rxf2 Qxb3-+


クイーンを取ってしまえばあとは時間の問題です。

41. g3 Qd1+ 42. Kg2 b3 43. h4 Qd5+ 44. Kh2 Qxa5 45. Be3 Qb4 0-1

最後は白の時間が落ちましたが、局面も厳しいでしょう。自分がRuy Lopez Open Variaiton を指すとは以前は想像もしていませんでしたが、こうして実際に試してみると今まで分からなかった変化の面白さが見えてくるものです。もう少しオンラインで指しながら、細かなラインの感触を確かめていこうと思います。

2022/06/01

Japan National Chess Team for Chennai Olympiad


6月に入り、7月末開催のチェスオリンピアードまで2か月を切りました。日本の代表チームは5月末にNCSのサイトで公開されていましたが、私も6月更新のFIDEレイティングを待ち、本日こちらのブログでもお伝えしようと思います。5月の全日本選手権の結果、およびレイティングでの選考を経て、日本のオープン、女子チームのメンバーは以下のように確定しています。

Open Team

Tran Thanh Tu (CM, JPN, 2375)
Kojima Shinya (IM, JPN, 2346)
Kobayashi Atsuhiko (JPN, 2156)
Averbukh Alex (CM, JPN, 2155)
Bibby Simon (FM, JPN, 2147)

Women's Team

Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782)
Sakai Azumi (WCM, JPN, 1759)
Misawa Yuki (JPN, 1587)
Arai Yuki (JPN, 1495)
Mitsuyama Rikka (JPN, 1157)

メンバーはレイティング順に並べましたが、オリンピアードでのボード順を示すものではありません。ボード順についてはもう少し開催が迫ってきた頃に発表したいと思います。オリンピアード日本代表の公式発表や、オリンピアードについての詳細はNCSのサイトをご参照ください。

確定した代表メンバーはトレーニングや渡航の準備を始めており、本格的にオリンピアードに向けて始動といった雰囲気です。私も4年ぶりに参加するチェスオリンピアードを楽しみにしており、私個人だけでなく、チームとしても応援をいただけると嬉しいです。チェンナイでのオリンピアードは、7月28日開幕です!

2022/05/30

A Cowboy Setup Against e6 Sicilian


久々のゲーム紹介はオンラインのブリッツからです。最近は1.e4 ばかりですが、オリンピアードに向けて最終的にどういった準備をしていくか、2か月を切ったそろそろ考え始めます。

imsk (2521) - gemivuk (2633)
lichess Blitz

1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. b3!?

e6 Sicilian に対しては今のところ、クイーンサイドにフィアンケットをするセットアップが面白いと感じています。1. b3 のコースをChessable で出しているインドのGM Adhiban は、これをCowboy のビショップと呼んでいます。黒のここからの数手で、d2-d4 とセンターを開く、いわゆるOpen型にするか、そうしないかを決めます。

3... Nc6 4. Bb2 a6 5. c4 d6 6. d4


a7-a6, Nb8-Nc6 に対しては、c2-c4 と先にcポーンを伸ばしたうえでOpen型にします。割とスタンダードなHedghogのスタイルです。

6... cxd4 7. Nxd4 Bd7 8. Bd3 Nf6 9. O-O Be7 10. Qe2 O-O 11. Nd2 Rc8 12. Kh1 Qc7 13. Rac1 Rfd8

ナイトを低く組む、少し変わった形にしてみました。d5 を抑える力はcポーンに任し、Nd2-Nf3 のタイミングを伺います。一方で黒のルークの置く位置は自分には少し不自然に見えました。b6 がビショップの跳びこむ穴になりますし、e6-e5 のブレイクを狙うならばd8 よりもe8 が良いと思います。

14. f4 Nxd4 15. Bxd4 Bc6 16. Qf2 Nd7 17. Nf3?! Bf6


少しのんびりしすぎたせいで、黒にチャンスを与えてしまいます。17... e5! 18. Be3 exf4 19. Bxf4 Nc5!=/+ だと、浮いたビショップと孤立になったe4 ポーンが困っています。

18. e5! dxe5 19. fxe5 Bxe5?

思い切ってeポーンを押し込んだのが成功しまいした。黒は本譜のビショップ取りは失敗で、19... Nxe5 20. Bxe5 Bxe5 21. Nxe5 Qxe5 22. Qxf7+ Kh8 23. Rce1+/= とf7 との取り合いを選ぶか、19... Be7 と戻るか、どちらかでした。後者はf7、h7 が同時に危なく見えますが、白に決定的なタクティクスはありません。

20. Bxh7+! Kxh7 21. Ng5+ Kh6 22. Nxf7+


理想的なタイミングでグリークギフトが決まりました。本譜も勝ちですが、分かりやすくクイーンが取れるもう1つの変化も有力です。22. Qh4+ Kg6 23. Qh7+ Kxg5 24. Be3+ Bf4 25. Bxf4+ Qxf4 26. Qxg7+ Kf5 27. Rxf4+ Kxf4 28. Qg3+ Ke4 29. Re1+ Kf5 30. Rf1+ Ke4 31. Qf4+ Kd3 32. Rd1+ Kc2 33. Qd2# クイーン取りからメイトまで一直線であることは読めませんでした。

22... Kg6 23. Nxe5+?!

試合後に思い返せば、白マスナナメからのチェックの対抗できないので、すぐにメイトでした。23. Qc2+ Kh5 24. Qh7+ Kg4 25. Qh3# もしくはe5 を取るとしても、23. Bxe5 Nxe5 24. Qg3+ Kh7 25. Qh4+ Kg6 26. Qg5+ Kh7 27. Qh5+ Kg8 28. Qh8# とすればh8 をナイトが抑えているのでメイトでした。ビショップがe5 に残る形が強いのは間違いないですが、メイトを見逃してそちらを選んだのは黒に生き残るチャンスを与えるミスです。

23... Nxe5 24. Qg3+ Kh7 25. Bxe5+-


f7、h7 を落としてピースを取り返し、勝勢であることは明らかですが、g2 への反撃にはきちんと対処しなければいけません。

25... Qe7 26. Rf4! Rd2 27. Qh3+ Kg8 28. Rg4 Rcd8 29. Rg1!

もう1つのルークがg2 のディフェンスに回れば盤石で、バックランクのメイトもなく、後はg7 を突破して勝ちが決まりです。しかし、1つだけひどい落とし穴がありました。

29... R8d7 30. Rh4??


30. Rxg7+ Qxg7 31. Bxg7 Kxg7 32. a4+- とクイーンを取っておき、何事もなく勝ちでした。

30... Qg5??

30... Qxh4! 31. Qxh4 Rxg2-+ を両者見落としています。バックランクがメイトになるため、このルークは取ることができません。この形は気を付けていたつもりなのですが、この瞬間だけ頭から抜けていたようです。

31. Qxe6+


31. Rh8+ Kf7 32. Rf1+ Ke7 33. Re8+! Kxe8 34. Qh8+ Ke7 35. Qf8# ルークのただ捨てからメイトになるこのパターンも、すぐイメージできるようにしておこうと思います。

31... Rf7 32. Rg4 Rxg2 33. R4xg2 Qe7 34. Qxe7 Rxe7 35. Bg3+-

これでクイーンを交換したうえで大きな駒得を確定させているので、後は問題ありません。ゲーム中は全体を通して問題ない指し方だと思っていましたが、負けになるブランダーが1つ、メイトの見通しが複数と、解析してみれば反省点は多いゲームでした。

35... Re2 36. h3 Rxa2 37. Kh2 Bxg2 38. Rxg2 Ra3 39. Be5 Rxb3 40. Rxg7+ Kf8 41. Rc7 Re3 42. Bd6+ Kg8 43. Rxb7 Rc3 44. c5 a5 45. Ra7 1-0


1. e4 のレパートリーも割と納得できるものが出来上がりつつありますが、自分のチェスの幅を広げるためにももう少し色々試していこうと思います。

2022/05/12

Chubu Rapid Open 2022 Tournament Preview

昨年の中部快速オープン参加者たち

今年の中部快速オープンの情報が出ましたので、こちらのブログでも告知させていただきます。中部快速オープンは名古屋チェスクラブが毎年開催している早指しの大会で、私もよく参加させていただいています。2020年、2021年はコロナ禍でもなんとか2年連続で足を運び、優勝できていますので、今年も三連覇を狙って名古屋に遠征に行く予定です。

【日時】 2022年7月10日(日)
【会場】 ウインクあいち(12階1207)
【形式】 FIDE NCS ラピッド公式戦、スイス5R、持ち時間25分+10秒/手
【参加費】 8000円
【大会要項】 ♘中部快速オープン2022♘

特筆すべき情報はNCSだけでなく、FIDE ラピッド公式戦であることです。過去の中部快速オープンも、確認できる限りの東京での快速選手権もFIDE のラピッド公式戦ではなかったため、もしかすると今大会が日本で初開催となるFIDE ラピッド公式戦かもしれません。昨年は参加者12名と少し寂しかったですが、今年は定員の24名になるべく近い人数が参加することを願っています。参加予定の皆さん、よろしくお願いいたします。

2022/05/10

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第7回予告

5月のOPENRECでの講座案内です。5月は今週末の日曜日、5/15 20時からスタートです。

5月は『三角形の破壊』をテーマに講座をお届けします。チェスではポーンが三角形、ないしは逆三角形になることが多いです。その形を崩すにはいくつかのパターンや考え方があり、それらを実戦を交えてご紹介していこうと思います。4月は冒頭部分をYoutube でも試験的に公開したところ、ご好評いただけたようで何よりです。今月以降も面白い講座をお届けできるよう頑張ります。リアルタイムでも後日の視聴でも、多くのかたに見ていただけることを楽しみにしています。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第7回『三角形の破壊』 | 2022.05.15 (OPENREC)
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 #7「三角形の破壊」【サブ配信】(Youtube)

2022/05/09

将棋を世界に 羽生善治編


中日新聞で連載中のコラム「将棋を世界に」では現在、羽生善治編と称し、羽生さんとチェスのことが綴られています。5/9の夕方にweb版が公開された5つ目の記事では、私と羽生さんの交流のことも書かれていますので、よろしければご一読ください。

将棋を世界に 羽生善治編(5)自由な交流

みすず書房でのイベントも懐かしい一面ですね。過去に公開された記事を読み返してみても、ピノーさん、森内さんといった羽生さんのチェスを語るうえで欠かせないメンバーが登場しますので、よろしければこちらも併せてご覧ください。私が記事に登場するのはおそらくこの号のみだと思いますが、続きも楽しみに公開を待とうと思います。

2022/05/07

杭州アジア大会延期


昨日の夕方、9月に開催予定だった杭州アジア大会が延期されるというニュースが飛び込んできました。以前から延期の可能性があることは示唆されていましたが、それが確定したという知らせです。中国は2月に北京冬季オリンピックの開催に踏み切ったものの、いまだに新型コロナウイルス対策として、他国よりも厳しい隔離日程を設けています。現在の状況であれば、杭州アジア大会の延期もやむを得ないでしょう。延期自体は残念ですが、考えようによってはチェンナイでのオリンピアードと日程が多少離れてくれたほうが、余裕を持って準備に臨めます。

ちなみにそのニュースが飛び込んできた時、私は国立スポーツ科学センターで杭州アジア大会に向けたメディカルチェックを受けている真っ最中でした。今のところは中止ではなく延期ですので、少し先になっても開催されることを願っています。また杭州アジア大会について追加の情報が入り次第、こちらのブログでも発信していこうと思います。杭州アジア大会の延期の延期については、以下のようなソースがありますのでこちらも併せてご覧ください。

杭州アジア大会が延期に 中国国内のコロナ感染拡大で(NHK)

2022/05/06

Japan Chess Championship 2022 Day5

今年の全日本選手権入賞者たち。左から小島、Tu、青嶋、山田、小林(敬称略)

二日ほど遅れましたが、今年の全日本選手権最終日のレポートです。7R 終了時点では6ポイントで3人が並ぶ混戦でしたが、最後の2試合で1.5ポイントを取り、単独優勝を飾ったのは青嶋くんでした。青嶋くんは2019年の全日本選手権に続き、3年ぶり2回目目の全日本選手権優勝です。青嶋くんを始め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2342) 7.5/9
2nd Place Tran Thanh Tu (CM, JPN, 2386) 7/9
3rd Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2161) 7.9
4th Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2353) 6.5/9
5th Place Kobayashi Atsuhiko (JPN, 2141) 6.5/9

Japan Chess Championship 2022 Final Standings


私は8R で青嶋くんと引き分け、首位のまま最終戦を迎えましたが、Tuさんに敗れて今年も優勝を逃しました。悔しい結果ですが、しっかりとゲーム内容を振り返ってまた次につなげようと思います。8R の青嶋くんとのゲームはすでに彼のブログで解説がありますが、私はもう少し違った点を踏まえながら自分なりの分析をお届けしようと思います。

Kojima, S (IM, JPN, 2353) - Aoshima, M (FM, JPN, 2342)
Japan Chess Championship 2022 (8)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4!?

3. Bb5 のRossolimo でも良かったのですが、少し違った変化をこの大会では用意していました。多くのBf1-Bb5 ラインと共通していますが、d2-d4 を急がないことによって、c2-c3 も含めた厚いセンター作りのチャンスを残しています。

3... g6 4. O-O Bg7 5. c3 d6 6. Re1?!


考えてみれば、あまり早くにこの手を入れる必要はありません。6. d4! とすぐにセンターを抑えていれば、少し違ったゲーム展開になっていたと思います。

6... Nf6 7. h3 O-O

7... Nxe4! 8. Rxe4 d5 は典型的な手筋ですが、白のセンターを崩している分、黒が得しています。

8. d4


ここも悩みました。本譜のd6-d5 ブレイクを防ぐのであれば、ビショップを先に退いておくべきですが、8. Bb3 Na5 9. Bc2 c4! という展開からd2-d4 を防がれることを嫌いました。

8... cxd4 9. cxd4 d5 10. exd5 Nxd5

典型的なIQPポジションですが、黒はd7-d6-d5とポーンを突きなおしているため、白はh2-h3、Rf1-Re1 と欲しい手を早く入れられています。

11. Bb3 Be6


e6 のビショップはナイト、ルークのターゲットになりえるため、少しリスクのある方針です。11... Nb6 12. d5 Na5 13. Nc3 と進む変化は、白が白マスビショップを諦めても黒のe7 ポーンを固定し、Bc1-Bg5 も使ってプレッシャーをかけられ、少し白が良いと考えていました。

12. Nc3 Qd7?! 13. Ne4! b6 14. Neg5!

クイーンの少し不用意な上がりにより、予期していたようにe6 のビショップがターゲットになりました。白はこのビショップをナイトで攻撃し、ポーンストラクチャーを崩してアドバンテージを得ます。

14... Rad8 15. Nxe6 fxe6 16. Be3


16. Re4! はコンピュータの指摘する手でとてもユニークです。e4 のマスがアウトポストになったことで、このマスになんらかのピースを置くことはイメージできていたのですが、それは本譜のようにナイトのつもりでした。e4 のルークは弱いd4 を守りつつ、将来的にeファイルにヘビーピースを重ねてe7 をアタック、場合によってはRe4-Rh4 と振ってキングへの直接攻撃と広いアイディアを持ちます。

16... Na5 17. Bc2 Nc4 18. Ng5

青嶋くんは18. Bc1 と下がる手を試合後に指摘してくれましたが、私はこの攻撃態勢が整っている状態であれば、b2 を捨ててキングサイドアタックに踏み切るべきだと考えました。もちろん、ビショップが退くのも良い手です。

18... Nxb2 19. Qg4 Rf6 20. Qh4 h6 21. Ne4 Rf5 22. Ng3 Nxe3 23. fxe3 Rg5 24. Bb3?!


試合後に悔やんだ手で、弱いa2-g8 のダイアゴナルとe6 のポーンを見据え、c4 のマスに黒ナイトを逃がさないことを目的としました。実際にはe6 よりもg6 のほうが不安定で、こちらへのプレッシャーを残したまま戦うほうが良かったです。24. Ne4 Rf5 25. Nd2! は試合中に考えなかったマヌーバリングで、黒ルークがf6 に退いた場合、e5 のマスへの利きがなくなるため、白はNd2-Nf3-Ne5 と組み替える絶好のチャンスになります。このことからも、白マスビショップはb1-h7 ダイアゴナルに残しておくほうが良かったです。

24... Nd3 25. Rf1 Nb4 26. Ne4 Rf5 27. Ng3 Rg5 28. Kh1 Nd5 29. Rf3 Rf8 30. Raf1?

それでもまだチャンスがあった白でしたが、ここでのルークの捌きを間違えていよいよ互角に近づいてきます。30. Rxf8+ Bxf8 31. e4! としてナイトを早めにどかしてけば、黒はe6 のディフェンスを気にしなければならず、白の残った攻撃への対処が大変になります。

30... Rxf3 31. Rxf3 Qc7 32. Qe4


e6 のポーンはクイーンで攻めつつ、g5 のルークをなんとか攻めるアイディアはないものか考えていました。コンピュータの指摘は32. Ne2 からナイトを組みなおすものです。f4 のマスがe6、g6 を同時に攻撃できる好位置であることは分かっていたのですが、ルークをg5 から逃がすチャンスを与えてしまうことが気がかりでした。

32... Qd6 33. Kg1 a5 34. h4?

白から進展させる手にはリスクがあるため、悩んだ末にドローでも良いと思って選んだ弱気な手が、さらに悪いものでした。ここは難しくとも34. Kf2 と上がって、ナイトを守り勝負すべきです。

34... Rxg3 35. Rxg3 Qxg3 36. Qxe6+ Kh7 37. Bxd5 Qe1+ 38. Kh2 Qxh4+ 39. Kg1 h5!


この手がQe6-Qg8 のアタックをかわしておくのに十分で、黒は自らパペチュアルチェックにしてなくても良いというのが私の読み抜けでした。局面は一転し、白がドローを目指すポジションになります。

40. a4 Kh6 41. Be4 Qg3 42. Bf3 Qe1+ 43. Kh2 Bxd4

このポーンが落ちるのは完全に予想外で、負けたと一瞬思いましたが、異色ビショップであることで希望が残っていました。

44. Qxe7 Qxe3 45. Qxe3+ Bxe3 46. Bc6 Bf2 47. g4


必要ではないかもしれませんが、白が白マスだけブロックしていればドローに十分だと分かりやすい局面にしておきます。

47... h4 48. Kh3 Kg5 49. Bb5 Kf4 50. Bc6 g5 51. Bb5 Ke3 52. Bc6 Bg3 1/2-1/2

意外とあっさりとドローになったのは幸運でした。最終戦はTuさんに知らない序盤からなんとか満足な中盤にしたものの、3つくらいの判断ミスが立て続けに起こってあっさり負け局面にしてしまいました。要所要所で正解の手を候補手にも入れなかった、反省の多いゲームです。

最終戦の内容はさておき、5日間の全日本選手権が終わりほっとしている一面もあります。全日本選手権と同時並行で開催されていたゴールデンウイークオープンはほとんど見に行く余裕はありませんでしたが、こちらも盛況だったようで何よりです。両大会を運営し、盛り上げてくださったNCS の運営スタッフの皆さんにはとても感謝しています。また次の大会で、皆さんとお会いできることを楽しみにしています!
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