今月は羽生さんとのトレーニングぐらいしか実戦の機会がなく、珍しく公式戦の予定はありません。試合から離れることもそうですが、棋譜の解説をあまり書かないと腕が鈍るので、先月の試合から面白かったものを1つ、今日は取り上げようと思います。
Noguchi, K - Kojima, S
5th IV League (4)
1. c4 c6 2. g3 d5 3. Bg2 Nf6 4. Nf3 dxc4 5. Qc2!?
5th IV League (4)
第5回のIV リーグから、野口さんとのゲームです。このc4 を取る変化は、一昨年のロンドンで、アメリカのIM Bartholomew に敗れました。その試合を検討した結果、やはり白が指しやすいのではと思ってしばらく封印していましたが、考えてみればオープニングでわずかに白が良いのは当然のことです。3連勝の野口さんをつかまえるため、勝たなければいけないこの試合で、復活をかけた投入です。
5... b5 6. a4 Bb7 7. b3!
この1ポーンサクリファイスが白の重要なアイディアで、c5 のマスを抑えてc6-c5 を防ぐことで、長期的にb7 のビショップを使えないままにしてポーンの代償をはかります。
7... cxb3 8. Qxb3 a6 9. Ba3 Nbd7 10. O-O e6 11. Bxf8 Kxf8!?
黒はキャスリングの権利を失いますが、キングの安全性は問題ありません。あとは白のセンターポーンに、抑え込まれたビショップでどう対抗するかという問題を解決するのみです。
12. Nc3 g6 13. d4 Kg7 14. e4 Qb6 15. Rfd1?!
私はこの手が遅いのではないかと、試合後に野口さんに指摘しました。15. e5! Ne8!? (15... Nd5 16. Nxd5 cxd5 ならば、b7 のビショップを活用するチャンスはなく、白には十分なポーンの代償があると判断できます。) と進めば、本譜に比べて黒はルークの位置が悪く、e4 にマスを作った白は十分に戦えそうです。
15... Rhd8! 16. Rab1 Rac8 17. e5 Ne8 18. Ne4 c5!
e4-e5 を数手遅らせてしまったせいで、黒の指しやすさは段違いです。こうしてポーンを伸ばして白のセンターを崩し、白マスビショップも活用できるとなれば、白がポーンの不足分を求めるのは難しくなるでしょう。
19. Nfg5 cxd4 20. axb5 Nxe5!-+
シンプルに白のセンターを消し去り、最後のアタックを捌いてしまえばゲームオーバーです。
21. Qa3 axb5 22. Nxh7 Bxe4 23. Qf8+ Kxh7 24. Bxe4 Nd6 25. Qe7 Nxe4 26. Qh4+ Kg7 27. Qxe4 f6 0-1
白はピースの代償がなく、ここで試合を諦めるのも仕方ありません。純粋なSlav でも、c4 のポーンを取ってb7-b5 と指すラインは、ポーンの代償を考えるのがなかなか難しいでしょう。それを実戦で試すことができ、良い経験になったゲームでした。
5 件のコメント:
変化の15手目 15.e5! Nd5 の変化で、黒の白マスビショップが使えなくなるから代償有り、という形成判断は凄いと思います。ただ一つ疑問なのが、それならば、白マスビショップの展開を重視したアイディアが有っても良いのではないかと思います。
例えば、本譜に戻って 12...Kg8!? という手は如何でしょうか、狙いは...b4の突き捨てからの...c5です。(h8のルックの展開は後れますが)
12...Kg8 13.d4 Rb8 14.e4 b4?! (13...c5がcomp move ですが、本意ではないので略)
15.□Qxb4 c5 15.Qc4 Nxe4 16.Nxe4 Bxe4 += comp は無常な評価を出しています。
なので、本譜(...g6-Kg7)に戻して
14.e4 b4!?(14...Rb8だと15.e5が間に合うので) 15.e5!?(15.Qxb4 Rb8 △...c5)
15...c5?! 16.exf6 Qxf6! 形勢不明。 comp によると 17.Ne2 c4でピースを取り返せる。または17.Ne5 Bxg2 18.Nd7 Qf3 19.Ne5 Qc3 とかトリッキー。
自分で並べてて思いなおした。そもそもb-pawn取られても良い、と余裕を持ち、それを活かそう。
そうすると最短は 本譜14...Qb6に代わって 14...c5! 15.axb5 axb5 16.Qxb5 Qc7! (この場合はルック交換が黒に良いので、...Qc7がRb8より勝る)更には、...cxd4が c3のナイトに当たる。
先ほどの変化といい、b-fileをOpenする事や、c3のナイトが浮くという瞬間の捕らえ方が妙。
断言するのも可笑しな話ですが、ここに来て私の意見としては、12.Nc3 が白の負担になっている(!)という結論です。マジかよ、って感じですが、12.Rc1をお薦めします。その場合、黒はb-pawnを落とされると反撃するポイントが特に無いので、守らざるを得ないのでは無いかと考えます。
それなら、本譜と同じような変化になりそうですし、互角の戦いになりそうです。
連投スイマセン
・・・それ(12.Rc1)でも ...c5 出来る orz... そうか、黒マスが争点にならないからキング逃げなくていい・・・。
有利とまで言わないですけど、黒にチャンスが有る変化かも \(^〇^)/
コメント消したくても消せない (ノдノ)...
4件の連投を見たのは初めてです。ありがとうございます(笑)
14. e4 c5!? という意見は私も面白いと思います。マテリアルをキープすべきか、不満なピースを解消するかというのは、このポジションに限らず、チェスの普遍的なテーマでしょう。
そして12.Nc3 ではなく、12.Rc1 と指すべきという意見にも同意です。調べた結果、実戦はほぼこちらでした。c6-c5 を防ぐためにはcファイルを早めにコントロールし、ナイトはNb1-Nd2 からe4 を目指すべきなのでしょうね。
そして、データベースををチェックすると、白はb7 のビショップを抑え込んでコンピュータは白優勢評価、しかし、どこかでまずいプレーが出て結果は追いつかないというのが、これまでの実戦で多いように思えます。コンピュータの評価だけでなく、プレーヤーとしての指しやすい、指しづらいという感覚を大切にしてプレーすべきなのでしょうね。
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