1日遅れですが、ジャパンオープン最終日のレポートです。最終戦の中継トップ4ボードは全て決着がつきました。1Bは黒の青嶋くんが南條くんに勝ち、2Bは白のHafizさんがLiuさんに勝ち、3Bは黒の私が奥野くんに勝ち、4Bは黒の中原くんがFengさんに勝ちました。単独トップだった南條くんが陥落し、6Pが4人並ぶ混戦となりましたが、細かなタイブレーク争いを制したのは青嶋くんでした。入賞者の皆さん、おめでとうございます! (6Pで上位3人と並んでいた中原くんは、2byeで入賞から外れており、Chess Resultsの発表と異なっています。 )
最終戦、私は奥野くんと2年ぶりの対戦になりました。奥野くんは現在パナマ籍ではありますが、岡部くん、松村くんと並び、日本人のジュニアとしてトップクラスの力を持つプレーヤーです。6RではインドネシアのIM Hafizさんとタフなゲームの末にドローを取っており、私も気合を入れて試合に臨みます。
1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2372) 6/7
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2320) 6/7
3rd Place Hafiz Arif Abdul (IM, INA, 2376) 6/7
4th Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2361) 5.5/7
5th Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2189) 5.5/7
Japan Open 2024 Final Standings
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2320) 6/7
3rd Place Hafiz Arif Abdul (IM, INA, 2376) 6/7
4th Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2361) 5.5/7
5th Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2189) 5.5/7
Japan Open 2024 Final Standings
最終戦、私は奥野くんと2年ぶりの対戦になりました。奥野くんは現在パナマ籍ではありますが、岡部くん、松村くんと並び、日本人のジュニアとしてトップクラスの力を持つプレーヤーです。6RではインドネシアのIM Hafizさんとタフなゲームの末にドローを取っており、私も気合を入れて試合に臨みます。
Okuno, R (PAN, 2007) - Kojima, S (IM, JPN, 2320)
Japan Open 2024 (7)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 a6!?
オリンピアード用に調べていたのは、Tal Variationに対してa7-a6と指すアイディアです。4... h5が圧倒的人気でどこでも勧められおり、私も何度か指していますが、4...h6、4...Qc7のような手も試してきました。黒は白がg2-g4と指してきた際にd7にビショップを退き、c6-c5から反撃を試みます。
5. c4 dxc4 6. Bxc4 e6 7. Nc3 h6
このアイディアを試してきたということは、奥野くんのメインの準備は4... h5 5. c4 e6 6. Nc3 dxc4だったのではないかと予想います。本譜もこれに似ていますが、h6でポーンを止めている分、g5のマスを白に使われる心配がありません。
8. Nge2 Ne7 9. Ng3 Bh7 10. a3 Nd7 11. Nce4 Nf5 12. Nxf5 Bxf5 13. Ng3 Bh7 14. Qg4 Nb6 15. Be2
ビショップの退くマスは少し意外でした。黒のビショップがBh7-Bd3と来てキャスリングを妨害することを嫌ったようですが、d3の位置のビショップは浮いていて狙われやすく、私はこう指す気はありませんでした。白としては白マスビショップがd5の利きから完全に外れ、d5のアウトポストを黒に使われやすくなるほうが気になります。15. Ba2と指して何も問題無いと思います。
15... Nd5 16. O-O Qb6 17. Bc4 O-O-O 18. Bxd5?
d5のナイトは強いですが、これを焦ってビショップで交換するのは戦略上正しくありません。g3のナイトでd5のマスをコントロールするのは手間がかかるため、白はd5の利きを一時的にでも0にしてしまうと、黒がこの重要なマスを使ったプレーをしやすくなってしまいます。18. h5 Rg8くらいが自然な流れだと考えていました。
18... Rxd5 19. Be3 Qxb2! 20. Qf3 Rd7 21. Ne4 Bxe4
21... Bxa3とさらにポーンを取る手もあったようですが、私は白マスビショップでナイトを早めに消すのが分かりやすいと考えました。b1のマスを抑える利きが消えることで、白ルークがb1にきて黒キングへの攻撃チャンスが生まれますが、それを守り切る時間は十分にあります。
22. Qxe4 Qb5 23. Rfb1 Qd5 24. Qd3 Be7
h4を当てるテンポはありがたいと思いましたが、ピンを利用して24... Bc5! 25. Rd1 Ba7-+と指す手がビショップが攻守に利き、最もシンプルだと指した後にすぐ気づきました。とは言え、本譜も十分強い手です。
25. Rb3 Kb8?
ここでキングをどう守るか、方向性を間違えました。a7にキングを置くプランは黒マスビショップの利きに入って危なそうですが、クイーンがしばらくd5を抑えていれば大丈夫で、キングがa6を直接守ることで、Rb3-Rb6-Rxa6のようなルークサクリファイスのアイディアを止めやすいと考えました。しかし、実際には2手かけてしまうのは勿体なく、もっとシンプルな手がありました。25... Bxh4 26. Rab1 c5! 27. Rc1 Be7!-+ c6-c5はキングがc8にいる状況では指しづらいと思っていましたが、d3のクイーンの存在でピンになっているため、問題ないようです。
26. Rab1 Ka7 27. Qc3 Bxh4?!
ポーンを取る余裕はあると思ったのですが、c5の利きを外すのは少し危険でした。27... f5! 28. Qb2 b5として守るか、b7-b5と崩さずに済む選択肢を探すべきでした。
28. a4
28. Qb2! Rb8 (28... b5 29. Rc1! Be7 30. Rxc6!) 29. Rb6 Bd8 30. Rxc6 b6 31. Rbc1と進んだ場合、白に余計なチャンスを与えてしまっています。
28... Rc8?
これでc6-c5をゆっくり準備しつつ、次にBh4-Bd8と退いた際に万全のディフェンスができると考えていました。28... Rb8!-+が正しいルーク位置で、早めにb7を守ることで白にチャンスを与えません。
29. Qb2! b5 30. Qc3 Kb7?
白のクイーンがb2に下がって巨大な砲台を作るアイディアを見落としていました。さらにここはルークの正面にキングを置くアイディアがおかしく、30... Rb8! 31. Rc1 Be7 32. Qxc6 bxa4 33. Rxb8 Qxc6 34. d5+ Kxb8 35. dxc6 Rd5-+とするくらいで十分でした。
31. axb5 cxb5 32. Qa5 Ra8!
ここは正確なディフェンスが求められます。クイーンが落ちそうな黒は2ルークvs.クイーンの構図で勝負したくもありますが、32... Rcc7? 33. Rxb5+ axb5 34. Rxb5+ Qxb5 35. Qxb5+ Kc8 36. Qa4+/-と進んだ際、クイーンの8段目から潜り込みからf7,g7あたりを狙われるのが厄介です。
33. Rxb5+ axb5 34. Rxb5+ Kc8 35. Rc5+ Kb8 36. Rxd5 Rxa5 37. Rxd7 Ra7 38. Rd8+??
ドローのエンドゲームを覚悟した直後に白がひどい見落としをしました。38. Rxa7 Kxa7 39. d5+ Kb7 40. dxe6 fxe6=ならばドローです。
38... Bxd8 0-1
なかなか珍しいただ取りで決着がつきました。たまたまではありますが、昨年のジャパンオープンでは中原くん、今年の全日本では米満くん、ジャパンチェスクラシックスではCharronくん、そしてこのジャパンオープンでは奥野くんと、ここ最近の大きなトーナメント最終戦では、力をつけてきた若いプレーヤーと対戦が続いています。そしてその全てで黒番を引き、Caro-Kannを使って全勝しています。少しCaro-Kannで悩んでいた時期もありますが、今はこの頼りになる武器を、多少のラインのマイナーチェンジのみでさらに磨いていければと思っています。
最後になりましたが、今回の大会もお疲れ様でした。名古屋の地で150名近い参加者を20か国以上から集め、大会を成功させた連盟の運営スタッフ、名古屋チェスクラブ、スポンサーの皆様に感謝いたします。次は今月末の祇園オープンに参加しますので、今大会に参加されなかったプレーヤーとの交流も楽しみにしています。
名古屋チェスクラブが用意してくれた名古屋お土産セットは豪華すぎです! ゆっくりいただこうと思います。
Japan Open 2024 (7)