2025/11/03

Japan Team Chess Championship 2025 Day2

優勝したThe Vibrantsのメンバーたち

60近いチームが参加し、過去最大級の規模で開催されたチーム選手権は、無事に2日間に日程を終えました。優勝したのは平均10代のチーム、The Vibrantsです。最終戦で5連勝していたHongo Chess no Kaiを下し、逆転での優勝を決めました。私たちOsaka Tigersは、5RでHongo Chess no Kaiにストレート負けを喫して優勝の目はなくなりましたが、最後はしっかりKeio OBを破って3位に滑り込んでいます。Aクラスも含め、入賞チームメンバーの皆さん、おめでとうございます!

1st Place The Vibrants 11/12
2nd Place Hongo Chess no Kai 10/12
3rd Place Osaka Tigers 10/12
4th Place Azabu OB 9/12
5th Place Tokyo Check Mates Kuro 9/12

Japan Team Chess Championship 2025 Final Standings


私は2日目、弘平くん、南條くんと同級生たちに敗れ意気消沈でしたが、最後までなんとかチームのために自分のプレーをしなければいけません。最後は優勝した2年前同様、Keio OBチームを相手に引き、後輩たちを中心としたチームと相対することになります。2年前の私の相手は古谷くんでしたが、今年はボード順を入れ替えてきたため、勝田くんとの試合になりました。

Katsuta, Y - Kojima, S
Japan Team Chess Championship 2025 (6)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. Bf4 c5 4. e3 Nc6 5. c3 Bg4 6. Nbd2 e6 7. Qa4!?

2RのNguyenさんとの試合では7. Qb3 Qc8 8. Nh4!? と進行しました。7. Qa4も指された経験はありましたが、その際とは違う手をやってみました。

7... cxd4?


7... Bxf3! 8. Nxf3 cxd4 9. exd4 Bd6= このポーンストラクチャーでは白マスビショップを諦めても黒はさほど悪くないと知っていましたが、残しておいてもさほど悪影響はないと思って本譜を試します。以前の試合では7... Nd7とナイトを退き、ピンを外すことで白のクイーンに対抗しました。こちらも悪くない選択です。

8. Nxd4 Qd7 9. Bb5 Rc8 10. Nxc6 bxc6 11. Ba6 Rd8 12. Nb3! Bd6 13. Bg5?

試合でも検討でもしっかり理解してなかったのですが、13. Bxd6! Qxd6 14. Na5! とすれば次にb7でのフォークとc6取りの両方の狙いがあり、白は安全に駒得できそうです。本譜はクイーンの横利きを開いてg4のビショップをターゲットにする手ですが、黒は落ち着いて対応することで悪くない局面を迎えます。

13... Bh5! 14. Na5? Rb8!


冷静になればこのオンリームーブに気づけるはずですが、Nd2-Nb3-Na5の構想が見えた段階では分かっていなかったので、実際にa5にナイトが到達した時点で落ち着いて考えられたのは良かったです。c6は受けられないため、取らせてもb2に反撃を作ることで逆に黒にとって有利なポーン交換になります。そしてc6を取れないとなると、a5に跳んだナイトが目的を失うことになります。

15. Qh4 Bg6 16. Bxf6 gxf6 17. Qxf6 Rg8!

h5にビショップを退いた時点で、f6での交換でポーンが落ちることは分かっていましたが、あえてそれに乗ります。黒はポーンを失っても黒マスビショップを自分だけ持っているので、黒マスでの強烈な反撃に期待できます。17手目も最初はキャスリングのつもりでしたが、黒キングは初期位置のままでさほど危険ではないので、Bg6-Be4を見据えてgファイルにルークを置くことにします。

18. b4 Qc7! 19. f4? Qb6!


黒マスで揺さぶりをかけ、白の悪手を誘って黒はポーンを取り返すチャンスを得ました。これが駒損を解消するだけでなく、白キングに対する決定的なアタックが決まるのはありがたかったです。

20. Be2 Qxe3 21. Kf1 Bd3! 22. Re1 Bc5! 23. Qh4

白マス、黒マス両ビショップを跳びこみ、メイトチャンスが生まれるのを見つけられたのは、今大会の自分の試合で一番満足している点です。23. bxc5 Bxe2+ 24. Rxe2 Rb1+ 25. Re1 Rxe1# がメイトなため、白はクイーンでf2を受けるしかないように見えますが...

23... Rg4! 0-1


e2のビショップはピン、h4のクイーンはf2のディフェンスから離れられないため、これで綺麗に決まっています。黒は全てのピースがメイトに不可欠で、協力し合っている状況が作れました。国内大会で負け越し、3連敗はかなり珍しい苦戦でしたが、最後にこうしたゲームができたことがせめてもの救いでした。
私たちOsaka Tigersはお揃いのOSAKAパーカーと、阪神タイガースのキャップでした。
一夜明けた今日は馬車道チェスの日でした。チェスを始めてやるお客さんも多く足を運んでくれたようで、嬉しい限りです。

2025/11/01

Japan Team Chess Championship 2025 Day1

今日から2日間、東京の大井町でJapan Team Chess Championship 2025が開催されています。日本一のチームを決めるこの大会は、私が中学生の頃から存在していますが、今年はオープンとAの2セクションで59チーム、250人を超えるプレーヤーが参加し、過去最大級となっています。私は一昨年優勝した大阪のメンバーに誘われ、Osaka Tigersの1Bとして今年はプレーしています。初日は1勝1敗1ドローと振るいませんでしたが、チームメイトの活躍でチームは3連勝。1Rの試合を簡単に振り返りましょう。

Kojima, S - Yokota, Y
Japan Team Chess Championship 2025 (1)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 c5 4. e3 Nc6

Semi-Tarraschですが、早めにc6の位置にナイトを決めてくれたため、1手早いNimzo-Indianになりました。4... Nf6 5. Nc3 a6!? はBf1-Bb5を警戒する知られた手順です。

5. cxd5 exd5 6. Bb5 Nf6 7. O-O Be7 8. dxc5 O-O 9. b3 Bxc5 10. Bb2 Bg4 11. Bxc6 bxc6 12. Nbd2


白はナイトをd2,c3のどちらに出すか保留していましたが、ここでd2に決めます。白マスビショップを手放しても、残ったマイナーピースのコーディネーションが良く、c6にバックワードポーンの弱点を持たせていれば黒は満足です。

12... Qe7?!

のちの流れを考えると不正確でした。12... Bd6! と早めにターゲットになるビショップを退き、e5のマスも受けておくのが正解です。

13. Qc2! Rac8 14. Ng5! g6


シンプルながら今日ろくなh7のメイトの狙いに、すでに黒は困っています。14... Rfe8 15. Bxf6 Qxf6 16. Qxh7+ Kf8 17. Qh4 でもh7を掠めとった黒は勝勢でしょう。

15. Bxf6 Qxf6 16. Nxh7! Qe7!?

16... Kxh7 17. Qxc5+-のほうが自然に見えますが、黒マスを奪い返す算段が無ければ白勝ちに変わりはありません。あえてエクスチェンジを捨てて勝負は、実戦的な判断だと思います。

17. Nxf8 Rxf8 18. Rac1 Bb4 19. Nb1 Rc8 20. Nc3 Bf5 21. Qd2 Rd8 22. Rfd1 Qg5 23. e4!


クイーンを交換して黒の反撃チャンスを消せば、ゲームの終わりが見えてきます。

23... Qxd2 24. Rxd2 Be6 25. Rdd1 Ba3 26. Rc2 d4 27. Na4 Rd6 28. Nc5 Bc8 29. h3 f5 30. e5 Rd5 31. Nd3 c5 32. b4 Bd7 33. Rxc5 Be6 34. Nf4 Rxc5 35. bxc5 Bxa2 36. Ra1 1-0

駒得した後、反撃を許さずの丁寧に指せたと思います。ここで良いスタートを切れたものの、午後の試合は個人でポイントを落としてしっくりきません。明日気を取り直して頑張りたいと思います。

Japan Team Chess Championship 2025 R4 Pairings
【日本代表応援】FIDE World Cup 2025 Round 1 Day 1

またチーム選手権の裏では、インドのゴアでWorld Cupが始まっています。今夜は南條くん、明日は私が解説予定ですので、こちらもお楽しみに!

2025/10/24

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第47回予告

10月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、10/26(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『Japan Open 2025』です。9月に開催されたジャパンオープンは、マスターセクションに海外からGM4人を含む多数のマスター参加があり、過去例にないほどのハイレベルな国内大会になりました。レイティング2000以下のチャレンジャーセクションも、140名以上の参加があって盛り上がりました。今回はそんなジャパンオープンを振り返りつつ、マスターセクション150試合から選りすぐりのゲームをご紹介しようと思います。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第47回『Japan Open 2025』|2025.10.26

2025/10/13

Nagoya Open 2025 Day2

今年も名古屋最大の大会、名古屋オープンが無事に閉幕しました。東海オープン、中部快速オープンに続いて名古屋3大会連続優勝を目指した私でしたが、2日目は2つのドローでトータル4勝2ドローとなり、2位でのフィニッシュとなっています。優勝は最終戦で山田くんを下した大塚くんです。オリンピアード代表2人に勝っての優勝は価値のあるものだと思いますが、意外なことにこの規模の国内大会優勝は初めてとのことです。優勝した大塚くんを始め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Otsuka, S 5.5/6
2nd Place Kojima, S 5/6
3rd Place Scott, T 5/6

Nagoya Open 2025 Final Standings


Tuさん、青嶋くん、南條くんの3人にいずれも土がつき、誰も入賞圏内にいないというのは珍しい大会です。私からは上手く指せた最終戦の東芝さんとの試合をご紹介します。

Higashishiba, T - Kojima, S
Nagoya Open 2025 (6)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 c5 6. dxc5 Bxc5 7. Nxc5 Qa5+ 8. c3 Qxc5 9. Nf3 Qc7 10. Be2

前回対戦の中部快速オープン同様、Caro-Kann Advance 4. Nd2 変化でした。試合中は忘れていましたが、10. Bf4 Nc6 11. Nd4 Nxd4 12. cxd4 Ne7 13. Bb5+ Nc6 14. O-O Qb6 15. Bxc6+ Qxc6 16. Rc1 Qa6= これが私の研究手順でした。これを黒側でつまらないと思うのであれば、どこかで変化をつけなければいけません。

10... Nc6 11. O-O Nge7 12. Re1 O-O 13. Bg5 h6! 14. Bh4 Bg4!


Ne7-Nf5は白にとって嫌なナイトのジャンプで、白は駒を自分から交換にいかざるをえません。

15. Bxe7 Qxe7 16. Nd4 Nxd4 17. Qxd4

ここはポーンで取られた場合、ほぼ互角かと思っていました。17. cxd4 Bxe2 18. Rxe2 Rfc8 19. Rc2 Qb4 20. Rac1 Rc4!?=/+ これで黒やや優勢はコンピュータの評価です。確かに黒は少しアイディアをひねり、d4にプレッシャーをかけるしか勝負にいく方法はありません。

17... Bxe2 18. Rxe2 Rfc8!


私がイメージしていたのは1927年のNimzowitch - Capablancaのゲームで、黒はc4のマスからの4段目侵入と、白陣に弱点を作るマイノリティアタックでチャンスをつかみます。

19. Rd1 Rc4 20. Qe3 b5 21. a3 a5 22. Rd4 Rac8! 23. Rxc4 Rxc4!

23... bxc4も考えましたが、b2だけが弱点だと黒は勝ちに不十分だと考えました。そこで1つポーンを捨ててでも、白に弱点となるポーンが多い形を目指します。

24. Qb6 b4! 25. Qxa5 bxc3 26. bxc3 Qb7! 27. h3?


バックランクを受けるのにgとh、どちらのポーンを突くか悩むところではありますが、ここはgが正解でした。27. g3 Qc6=/+ でも黒はチャンスですが、クイーンが7段目を離れるとf7への反撃を気にしなければいけません。本譜ではf7をクイーンでしっかり守ることができ、狙われるポーンがない点でかなり気楽に指すことができました。

27... Qb1+ 28. Kh2 Qf5!?

次にf4でのチェックを狙いながら、f7を守っておきます。私としてはクイーンのベストのマスだと思いましたが、28... Qf1 29. Ra2 Qe1!-+ として、ルークを追い出したうえでe5を狙いにいくべきだというのがコンピュータの指摘です。

29. Re3


29. Kg1 Qb1+ 30. Kh2 Qf1!-+ キングに戻られた場合、Qf1の位置を見つけないと黒は有利にならないようなので、こうされていたら試合中は自信がありませんでした。

29... Qxf2 30. Rf3 Qe1! 31. Qd8+ Kh7 32. Qb8

e5取りがチェックになるため、白はf7を取っている暇がありません。白がe5を守ってきた際、次にc3を取れるように30手目に黒クイーンの位置を決めました。

32... Rxc3 33. Rxc3 Qxc3 34. Qb1+ g6 35. a4 d4


1ポーンアップになり、e5を狙いながら早いパスポーンを進められる黒は、残りは難しくありません。

36. a5 Qxa5 37. Qe4 Qd8 38. h4 d3 0-1

最後は白の時間が落ちましたが、局面でも黒の勝ちになっています。今年も名古屋での大会を存分に楽しませていただきました。また来年、名古屋に戻ってこられる日を楽しみにしています!
夕飯は優勝した大塚くん、Aクラス入賞の2人と名古屋駅のお店へ。いつも味噌カツにするところ、今日は珍しくトンテキにしました。

2025/10/12

Nagoya Open 2025 Day1

松本でのレクチャーの様子

この週末は松本、名古屋と遠征をしています。昨日の土曜日は松本チェスクラブの例会でレクチャーをさせていただき、終了後、夜のうちに初めての乗車となる特急しなので名古屋へ移動しました。今年の名古屋の大会参加は、1月の東海オープン、6月の中部快速オープンに続き、3回目となります。初日の今日は良い内容で3連勝することができましたので、3Rの山道さんとの試合をご紹介します。

Kojima, S - Yamamichi, A
Nagoya Open 2025 (3)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 c5 7. dxc5 Bxc5 8. a3 Nc6 9. Qc2 Qa5 10. Rd1 Be7 11. Be2 Ne4 12. cxd5 Nxc3 13. Qxc3 Qxc3+ 14. bxc3 exd5 15. Rxd5 Bxa3 16. Nd4 Nxd4

ここまではブダペストオリンピアードの最終戦と同じ流れです。数日前にこの変化を調べ直した際にはすぐナイト交換をせず、16... a6! 17. Kd2 Nxd4 18. exd4 b5! とするのが黒は良いのではないかと発見しています。

17. exd4 b6 18. Kd2 Be6


自然な手に見えますが、白はb5のマスを使えるのはありがたいです。少しポーンの弱さは気になりますが、18... a6としてb5のマスを先に抑えておく手はあったでしょう。

19. Rb5 Rfd8 20. Ra1! Bc5

20... Bd6 21. Bxd6 Rxd6 22. Bf3 a6 23. Rxb6! (検討では23. Rba5!? という手を発見し、どちらも白勝勢です。) 23... Rxb6 24. Bxa8+- このポーンアップは白にとって楽な展開です。

21. Bf3?!


21. Bc7 Rd7 22. Bxb6+- こうしてb6を掠めとるアイディアを試合中に見落としたのは反省です。

21... Rac8?


21... a6 22. Rb2 Ra7 23. Ke3! でも白勝勢ですが、a7を空けてルークを逃がすアイディアは試すべきでした。

22. Bb7 Bc4 23. Rbb1 Bxd4 24. cxd4 Rxd4+ 25. Ke1+-

c8のルークが当たっているため、f4のビショップを気にせず、白キングは安全な初期位置に逃げて勝負ありです。

25... Rcd8 26. Be3 R4d7 27. Rxa7 b5 28. Bc6 1-0


3連勝は5人いるので、勝負の2日目で抜け出せるよう頑張ります! 4Rのペアリングは以下のように発表されています。

Nagoya Open 2025 R4 Pairings
Nagoya Open 2025 Live

トップボードのみですが、中継もあるのでよろしければご覧ください。明日もよろしくお願いいたします。

2025/10/04

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.8


去年のジャパンチェスクラシックは、ブダペストオリンピアード前、最後の大きな国内公式戦ということで大きな意味を持っていました。台湾のLiu Yeh Yangさんに負けたのは痛かったですが、他の試合は満足な内容で指せたと記憶しています。中国の少年、Li Yanくんと指した4Rのゲームもそうでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2296) - Li, Y (CHN, 1752)
Japan Chess Classic 2024 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 dxc4!?

こうした早いタイミングで取る手は意外で、あまり見たことがありませんでした。白からf1のビショップが1手でポーンを取り返せるため、白に得をさせてしまうように思えますが、黒に唯一プラスがあるとすればd5のマスを活用できることです。

6. e3 Nd5 7. Bxc4! Nxf4 8. exf4 O-O 9. O-O c6


白は黒マスビショップを諦めましたが、その代わりにポーン2つでe5のマスをがっちり抑えており、黒からのe6-e5のブレイクを防いでいます。加えて、黒は手数をかけてf6のナイトを自ら消してしまったがゆえ、d5,e4のコントロールが弱く、h7を気を付けて守られなければいけないという気がかりもあります。

10. Qc2 Nd7 11. a3 b6 12. Rad1 Bb7 13. Rfe1 Re8?

黒は次の手に備え、13... g6!を指してf4-f5を止めておくべきでした。白もf7が弱くなることを確認せず、早めに13.f5!でも良かったでしょう。

14. f5! exf5 15. Qxf5 Bf6


白はh7を攻めるつもりが、意図せずf7への絶好の攻撃チャンスを貰いました。ここでは黒には満足なディフェンスがありません。15... Rf8 16. Ne5!+-, 15... Nf6 16. Bxf7+! Kxf7 17. Ng5+ Kg8 18. Qe6+ Kh8 19. Nf7+ Kg8 20. Nh6+ Kh8 21. Qg8+ Rxg8 22. Nf7# 後者のメイトになる手筋は覚えておきたいものです。

16. Ne5! Re7 17. Nxf7!

この手が成立することで、15... Bf6もディフェンスとして成立しないと読んでいました。一時的にf7のルークがピンの状態になるため、白は駒を回収して勝勢です。

17... Rxf7 18. Qe6! Kh8


18... Qf8 19. Qxd7!+- が成立します。本譜で大きく駒得になった白は、残り気を付けながらピース交換を進めて勝ちのエンドゲームにします。

19. Qxf7 h6 20. Ne4 Qe8 21. Qxe8+ Rxe8 22. Nxf6 Nxf6 23. Rxe8+ Nxe8 24. Re1 Nd6 25. Bd3 Bc8 26. Re7 Bf5 27. Bxf5 Nxf5 28. Rxa7 Nxd4 29. a4 Nb3 30. Rb7 Nc5 31. Rb8+ Kh7 32. b3 Nxb3 33. Rxb6 Nc5 34. a5 1-0

QGD Bf4 variationは、私の白番の武器としてオリンピアードでも活躍してくれました。また紹介できる面白い試合ができるよう、引き続き頑張ります。

2025/09/26

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第46回予告

9月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、9/28(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『ブランダー』です。チェスの試合では大なり小なり悪い手が出るものであり、その中でも特に大きく、結果を決定づけるような悪い手をブランダーと呼びます。ブランダーはビギナーから、有名な強豪GMまで誰でも指すことはありえます。今回はそんなブランダーにスポットを当て、どういった局面でどのようなブランダーが登場したかを見ていきましょう。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第46回『ブランダー』|2025.09.28

2025/09/23

Japan Open 2025 Day5

Japan Oepn 2025 入賞者たち

5日間で9試合、マスター、チャレンジャー両カテゴリーに175名を超えるプレーヤーが集まった過去最大のジャパンオープンも、今日無事に閉幕を迎えました。マスターカテゴリーでは4人のGMを抑え、彼らに3勝1ドローというとてつもない戦績を残したインドネシアのHafiz, Arif Abdulさんが優勝しました。昨年のジャパンオープンでは、青嶋くん、私とのタイブレークで3位に終わりましたが、また力をつけて日本に戻ってきてくれたこと、とても嬉しく思います。チャレンジャーカテゴリーも含め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Hafiz, Arif Abdul (IM, INA, 2386)
2nd Place Ter-Sahakyan, Samvel (GM, ARM, 2611)
3rd Place Kwon, Sehyun (FM, KOR, 2253)
4th Place Lee, Junhyeok (IM, KOR, 2435)
5th Place Velten, Paul (GM, FRA, 2536)
6th Place Megaranto, Susanto (GM, INA, 2483)
7th Place Swayams, Mishra (GM, IND, 2446)
8th Place Tran, Thanh Tu (IM, JPN, 2412)
9th Place Aoshima, Mirai (FM, JPN, 2354)
10th Place Otsuka, Shou (FM, JPN, 2329)

Japan Open 2025 Final Standings

優勝したHafizさんは日本語も堪能で、大会中もよく話をさせてもらいました。最終日はバティックシャツと呼ぶのでしょうかね。インドネシアの素敵な衣装で優勝の表彰をされ、スピーチまでこなされました。

私は最終戦、フランスのMartinさんに白を引きました。最後に2連続白はラッキーでしたが、対戦相手の彼が7,8R連続で白だったためです。レイティングは2000と少しですが、直前のラウンドでは2300弱のFMを破り、レイティングも大きく稼いでいるため、油断は決してできない相手です。

Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Martin, A (FRA, 2020)
Ja9an Open 2025 (9)

1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. e3 Nf6 4. Bxc4 a6 5. Nf3 b5 6. Bd3

c7-c5の前にb7-b5を指す、Queen's Gambit Acceptedのマイナーラインです。この場合は白はビショップをd3に退き、e3-e4の突き直しをメインに狙います。

6... Bb7 7. O-O e6 8. a4 b4 9. Nbd2


QGAではあまりNb1-Nc3を早めに決めません、その理由はd5にターゲットとなるポーンがすでにいないことに加え、b5ポーンを狙ってc4にマスを作った際に、Nb1-Nd2のほうがナイトの好位置になりやすいためです。

9... Nbd7 10. Qe2 Be7 11. e4 c5 12. a5!?

ここはすぐに12. e5と突く手が多いようですが、私はa6をターゲットとして固定しておくことを優先しました。一時的に取られるd4ポーンはいつでも取り返すことはでき、問題ありません。

12... cxd4 13. e5 Nd5 14. Nb3! Nc5 15. Nxc5 Bxc5


ナイトはc5で捌いてしまい、e5へのプレッシャーを緩和しておくと同時に、c5のビショップもターゲットにします。

16. Bd2 h6 17. Rfc1 Qe7 18. Rc4 Nc3!?

白は次にNf3-Nxd4,Nd4-Nb3,Rc4-Rg4のような攻めを見せるつもりでした。白にはQe2-Qe4のような直接的な狙いもあり、黒はキャスリングでしにくい状況です。そこでMartinさんはd4をただ取り返されるのを待つのではなく、ナイトを捨てて2コネクテッドパスポーンを作りにきました。事前にはやりすぎだと思っていましたが、実際にやられてみると嫌なもので、実戦的な判断です。

19. bxc3 dxc3 20. Be3 Bxe3 21. Qxe3 Bd5 22. Qb6!?


ルークをどこに避けるかと考えるのが自然ですが、c5あたりに避けてもキャスリングからcファイルでルークをぶつけられ、4段目で避けるとb4-b3がすぐ来ることを警戒しました。そこで少しひねり、ルークの取り合いをして勝負することにします。

23... Bxc4 23. Qc6+ Qd7 24. Qxa8+ Ke7 25. Qxh8 Qxd3 26. Qc8?!

ここはどこにクイーンを置いても同じだと思ったのですが、b8が正確でした。Nf3-Nd4を上手く持ってくることはイメージしていたのですが、クイーンのチェックはc5よりもa7がベターです。26. Qb8! b3 27. Qa7+ Kf8 28. Nd4! g5 29. Nxb3 c2 30. Qa8+ Kg7 31. Qf3 Qxf3 32. gxf3 Bxb3+/= しかし黒もクイーン交換後にナイトを取り返して、c2にパスポーンを残すことで戦いを続けます。

26... b3 27. Qc5+ Ke8??


これは黒がキングを避けてはいけない唯一のマスでした。27... Kd8! 28. Nd4 b2= 白からはパペチュアルチェックしかありません。27... Kd7! 28. Nd4 b2 29. Qc6+ Kd8 30. Qa8+ Kc7!= これを試合中は見落としていて、d8が黒キングが選ぶべき唯一のマスだと思っていました。

28. Nd4! Bb5

28... b2 29. Qc8+ Ke7 30. Nc6# このメイトが私が狙っていたものです。本譜はメイトこそ防ぎますが、b3が落ちては勝負になりません。

29. Nxb3 c2 30. Qc8+ Ke7 31. Qb7+ Ke8 32. Qb8+ 1-0


ラッキーもありましたが、最終戦を勝って最後3連勝で締めくくれて良かったです。大会参加者、運営の皆さん、5日間お疲れ様でした。また別の場所でもレポートを書こうと思うので、こちらはここまでにさせていただきます。

2025/09/22

Japan Open 2025 Day4


Japan Open 4日目は待望の連勝でした。午前中は初対戦となる松永くんに準備が当たり、Caro-Kann Exchangeを受けて黒で勝ち。続く午後の試合は、同じく初対戦となるカナダのSong Samuelさんを引くことになりました。こうした大会ですので、初対戦のプレーヤーを多く迎えられると嬉しいです。

Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Song, S (CAN, 2175)
Japan Open 2025 (8)

1. d4 Nf6 2. c4 c6 3. Nc3 d5 4. e3 e6 5. Nf3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O dxc4 9. Bxc4 a6 10. Rd1 b5 11. Bd3 Qc7 12. Bd2 c5 13. Ne4

2010年代に流行したこの変化は、調べていたものの指す機会はついぞありませんでした。それがこの大舞台の大事なラウンドで巡ってくるとは分からないものです。白は2ビショップを得ますが、代わりにe4,d5のコントロールを失い、黒にクイーンサイドのポーンマジョリティを作らせます。

13... c4 14. Nxd6 Qxd6 15. Be2 Bb7 16. b3 Bd5


ここで相手からドローオファーがありました。ここまでノータイムで、事前研究がしっかりしていることは窺えましたが、自信があるならドローオファーはしないでしょう。自信の無さの裏返しと受け取り、当然試合は続行です。

17. Qb2 Ne4 18. Ba5 f5 19. Rdc1 Rfc8 20. Ne1 Rc6?!

このルークはNe1-Nc2-Nb4とマヌーバリングした際にターゲットになるため、はっきり良くない手だと感じました。代わりに20... Rab8くらいが、白からポーンを取りづらくする堅い手だったと思います。

21. f3 Nef6 22. Nc2! cxb3 23. axb3 Re8 24. Be1!?


b4にナイトを運ぶと同時に、このビショップの切り替えも白の重要な構想でした。24. Nb4 Rxc1+ 25. Rxc1 e5が反撃になるならば、先にBe1-Bg3を準備してe6-e5を指しづらくしておきます。

24... Rcc8 25. Nb4 Bb7 26. Nd3 Rxc1 27. Rxc1 Rc8 28. Bg3

ここ早めにビショップを切り替えましたが、28. Rxc8+ Bxc8 29. b4+/-とする手もありました。b3-b4はクイーンサイドを止める手として常に頭にありながら、b4自体がターゲットになりうること、c4のマスを明け渡すことでかなり躊躇いました。

28... Rxc1+ 29. Qxc1 Qc6 30. Qd2 Nd5 31. Be1 h6 32. h3 N5f6 33. Bd1! Qc7 34. Nf4 Bd5!? 35. Nxd5


ここはビショップを差し出してくるのが意外で、ありがたくダブルビショップvs.ダブルナイトの構図にさせてもらいます。

35... exd5?

e6のポーンはさほど弱点になっていないため、ナイトで取るほうが明らかに良かったでしょう。f5が新たな弱点になり、白は目標を持ってプレーできます。

36. Be2 Kf7 37. Bd3 g6 38. g4! Ke6


キングで守ってくるとは思いませんでした。38... fxg4 39. hxg4ならば新たにg6をターゲットにして白が大きく優勢です。

39. gxf5+ gxf5 40. Kf1!!

この試合の中でもかなり気に入っている手です。g3,h2へのクイーンの侵入は警戒しつつ、c1に入られてもe1のビショップが取られないよう、事前に守っておきます。

40... Qc8 41. Qh2! Qc1 42. Qf4! Ke7 43. Bxf5 a5


f5を落とし、黒キングも危険な状態にしたので勝勢だとは感じていましたが、黒のクイーンサイドのパスポーン進撃は軽視していました。

44. Qxh6 a4 45. bxa4

コンピュータは45. Kf2 Qb2+ 46. Kg3 Qxb3 47. Ba5+- としてb3を捨てる代わりに黒マスビショップを使うことを提案しますが、人間的な判断ではありません。

45... bxa4 46. Qg7+ Kd8 47. Bxd7 Nxd7 48. Qg8+ Kc7 49. Qxd5


時間切迫の中、悩んだ末に白マスビショップを消し、d5を取りました。aポーンはクイーンとピンの黒マスビショップでも、十分に止めるのが間に合います。

49... a3 50. Qa5+ Kb7 51. Qc3 Qb2 52. d5

このクイーンがぶつかりあった状態で膠着になるため、その間に白はパスポーンを進めます。

52... Nb6 53. e4 Ka6 54. d6 Kb5 55. e5 Nd5 56. Qd3+ Kc6 57. Qc4+ Kb6 58. Qxd5 1-0


ナイトを取って白の勝ちを決めました。黒のプロモーションに対して、白もdポーンのプロモーションがあるため、白クイーンはc3から離れても大丈夫でした。大会最終盤でようやくエンジンがかかってきたような、上出来のゲームでした。

Japan Open 2025 R9 Pairings
Japan Open 2025 R9 Youtube解説

最終戦はトップ2ボードで、日本の大塚くんと青嶋くんが海外のマスターに挑むことになります。私も最後までしっかり指しきって大会を締めくくりたいですね。皆さん、最後までよろしくお願いいたします。

2025/09/21

Japan Open 2025 Day3


Japan Open 3日目です。今日は1勝1敗でした。黒番で午前中に指したJiangさんとの試合をご紹介します。
Jiang, L (JPN, 2030) - Kojima, S (IM, JPN, 2318)
Japan Open 2025 (5)
Position After 20. Bd4

20... Qh5! 21. Kh2?


Caro-Kann Advanceで迎えたのがこちらのIQPポジションでした。e5に反撃したい私は、f5にナイトのマスを空けておくことにしますが、それに対してJiangさんが指した手が奇妙で、白キングは自ら危険なb8-h2ダイアゴナルに入ってしまいます。代わりに21. Bc3 Rcd8ならば白やや優勢ながら、互いに楽しみのある局面でした。

21... Nf5 22. g4 Nh4! 23. Nxh4 Qxh4 24. f4 g5!

このポーンブレイクが白のポーンチェーンを崩し、e5を落とすポイントになる手です。d5よりもe5が先に落ちるようであれば、黒は勝ちを望める展開になります。

25. Kg2 gxf4 26. Qxf4 g5?!


しかし、時間切迫で指した2回目のg5は少しやりすぎでした。26... Qe7!くらいで手堅くe5を攻めるのが良かったでしょう。

27. Qf5?!

27. Qf6! Re6 28. Bf2! Rxf6 29. Bxh4 Bxe5 30. Bxg5= 2R同様、クイーンが逃げ惑うのではなく、相手のクイーンを当て返すのが妙手で、白は互角に戦えました。

27... Ne7! 28. Qf2 Ng6! 29. Qxh4 gxh4!?


いかにもナイトで取りそうですが、ここはあえてポーンで取ることで、e5を取る速度を重視しました。

30. Bc3 Bxe5 31. Bxe5 Rc2+!

このIntermediate Moveが重要で、黒はd5を取られても素早くb2を新たに取ることができます。

32. Kf1 Rxe5 33. Rxe5 Nxe5 34. Rxd5 Nc4! 35. Kg1 Rxb2 36. Nd4 Rxa2-+


2ポーンアップとなり、あとはa,bポーンを押すだけなのですが、最後まで油断は禁物です。

37. Nf5 b5 38. Rc5 Rb2 39. Rc8+ Kh7 40. Rc7 a5 41. Rxf7+ Kg6 42. Ra7 a4 43. Nxh4+ Kg5 44. Nf3+ Kf4 45. Ne1 Kg3

f7とh4を取らせても、黒キングがとことん上がることでメイトスレットを作り、黒のディフェンスを難しくします。

46. g5 Ne3?


しかし白キングがf1に逃げるのを防ごうと先に抑えたこのナイトの手がひどい間違いでした。46... Re2! 47. Nd3 Nd2! 48. g6 Rg2+ 49. Kh1 Nf3-+ でメイトです。

47. Re7??

私もこのディフェンスだと思いましたが、1マスずれていました。47. Rf7! Re2 48. Rf3+ Kh4 49. g6 Rxe1+ 50. Kf2 Rf1+ 51. Kxe3 Rg1 52. Rf4+ Kxh3 53. Rf3+ Kh2 54. Rf5 Rxg6 55. Rxb5= 早いと思っていた黒のパスポーンは止まり、ドローに落ち着きます。

47... Re2! 48. Nd3 a3! 49. g6 a2 50. Ra7 Rd2! 51. Nf2 Rxf2 0-1


時間の無い中、エンドゲームは正確に指したと思っていただけに、評価を見てひっくり返りました。チェスは最後まで気を緩めてはいけませんね。続く6Rは韓国のプレーヤーに優勢を活かせず逆転される悔しい負けでしたが、残り3試合しっかり指してきたいと思います。

Japan Open 2025 R7 Pairings
Japan Open 2025 R7 Youtube解説

去年のJapan Openで青嶋くん、私とともに優勝を争ったインドネシアのArifは、GM戦2勝1ドローでGMノーム獲得の大きなチャンスを迎えています。
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