バンコクでの1週間の滞在を終え、本日帰国しました。スタンダードでは9連続ジュニアと対戦し、大苦戦の末にレイティングを大きく落とす結果でしたが、学んだものも多かったと思います。スタンダードの優勝はフィリピンのGM Quizon Danielで、7年前に中国で試合をしたときから格段に強くなっていると感じました。フィリンピン勢全体、そして試合をしたジュニアたちは、数字以上の力を持っているのは間違いありません。彼らにどう対抗するか、もっと真剣に考えていこうと思います。
さて私の最終戦は、中国のLvが相手でした。スタンダード、ラピッド、ブリッツの全てでレイティングを稼いでいるジュニアで、当たりたくないプレーヤーでした。序盤、少し予想とは外れましたが、それでもある程度準備した変化に跳びこみます。
Kojima, S (IM, JPN, 2309) - Lv, R (CHN, 1971)
2nd Bangkok Summer International Chess Open (9)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 Bf5 5. f3!?
去年の香港では5. cxd5 cxd5 6. Qb3 Nc6!と黒がポーンを捨てるGlassgow Kissの変化を指しましたが、黒番でも研究していたラインで黒はポーンを捨てる代償が十分あると思っています。そこで今回は、f2-f3からf5のビショップを狙う新しい変化を準備してきました。 2nd Bangkok Summer International Chess Open (9)
5... e6 6. g4 Bg6 7. h4 h6 8. Nge2 Bd6 9. Nf4 Bxf4 10. exf4 dxc4 11. Bxc4 h5!
Lvはかなり考えてこの手を指してきました。もし黒がこうしてこなければ、白はf4-f5、h4-h5、g4-g5と3つのポーンを組み合わせて突くつもりでした。
12. f5! exf5 13. g5 Nfd7 14. Bf4?!
黒のhポーンに対して、白が1ポーンを捨ててf5のマスを埋めさせ、g6のビショップを一時的に働かせなくするところまでは研究手順でした。しかし、すぐにf4をブロックするようにビショップを展開したのはやや不正確です。14. Qe2+! Qe7 15. Qxe7+ Kxe7 16. Bf4 であれば、白はクイーンサイドキャスリングから全てのピースを使い、d4-d5のブレイクも組み合わせて優位に試合を進められていました。14... O-O! 15. Kf2 Nb6 16. Bb3 Na6!
このナイトを位置は見落としており、b4、c7からがっちりとd5を抑えられた際、白はどう戦うのかが分からなくなってしまいました。そこで自身は無くとも、d4-d5のブレイクを敢行して弱点となる孤立ポーンを消すことにします。
17. Qd2 Qd7 18. Rad1 Rad8 19. d5! cxd5 20. Nxd5 Nxd5 21. Bxd5?
この手はすぐに負けないなるわけではないものの、白が難しい手を見つける必要があり、なおかつ面白みのない局面になってしまう手です。21. Qxd5 Qc8 22. Qc4 くらいで満足すべきでした。21... Qb5!
クイーンが動く手は多少なり考えていたものの、b2を当てられるこの手を過小評価していました。白クイーンがb2も守り続け、なおかつd5のピン状態のビショップを解決する方法が見つけられませんでした。
22. Qd3?
22. Kg3!! まずはd2でクイーンが取られた際にチェックにならないようにします。 22... Nb4 (22... Rd7 23. Bc6! Rxd2 24. Bxb5 Rxb2 25. Bxa6 bxa6 26. Rb1 Rfb8!? 27. Rxb2 Rxb2 28. Rc1 Rxa2 29. Rc8+ Kh7 30. Rc7= これはg6のビショップを復活させる方法がなく、ドローです。) 23. Bc4!
23... Rxd2 (23... Qxc4 24. Qxd8 Rxd8 25. Rxd8+ Kh7 26. Rc1 Nc2 27. Rd2= 2ルークとの交換で黒のバックランクに跳びこむ変化は考えましたが、c4でビショップを捨てても成立するのは見落としました。) 24. Bxb5 Rxb2 25. Be5 Rxa2 26. Bd6 Rd8 27. Bxb4 Rxd1 28. Rxd1 f4+ 29. Kxf4 Rb2 30. Rd4 a5 31. Bxa5 Rxb5 32. Bc7= この異色ビショップはドローにできるというのがコンピュータの評価です。
22... Qxd3 23. Rxd3 Nb4 24. Rd4 Nxd5 25. Rhd1
2ピースvs. ルークになりますが、g6のビショップはまだプレーに参加できていないため、その間にa,bポーンを狙うことでチャンスを作れないかと、この変化を選びました。25... Nxf4 26. Rxd8 Ne6 27. Rxf8+ Kxf8 28. Rd7 Nc5 29. Rc7 b6 30. Rxa7 Nd3+?!
すぐにb2を狙うよりも、g6のビショップをなるべく早くプレーに戻すほうが強力です。30... f4 $1 31. Ke2 Ke8-/+
31. Ke2 Nxb2 32. f4!
これでf5ポーンを固定すれば、白マスビショップの戻し方はf7-f6しかなくなります。これだと黒のキングサイドのポーンマジョリティは活きないため、ドローチャンスがでてきたと感じました。32... f6 33. gxf6?
しかし、このポーンを安易に取ったのがミスだと全く気付きませんでした。33. Ra6! Be8 (33... Nc4 34. Kd3 Bf7 35. Ra8+!= なんとこの時にまだ黒ポーンがg7に残っているため、黒キングはg7に逃げられません。これがf6で白がポーンを交換しないほうが良い理由でした。) 34. Rxb6 Na4 35. Rb8 fxg5 36. fxg5= これならば白はクイーンサイドにポーンを残しているため、ドローにできそうです。
33... gxf6 34. a4
34. Ra6 Nc4 35. Kd3 Bf7-/+ となった場合、今度はルークでチェックをかけても黒キングはg7まで逃げることができます。b6を取れないことに気づいた私は、2ピースを組み合わせて一方的に自分のポーンが取られる前に、クイーンサイドを全て捌いてドローを狙うことにしました。
34... Be8 35. a5 bxa5 36. Rxa5 Bd7-+
これはf4、h4をなんとか守り切ってドローにできるかと思いましたが、コンピュータ評価は無情な黒勝勢...37. Kf2 Nc4 38. Ra6 Ke7 39. Kg3 Nd6 40. Kf2 Ke6 41. Ke3 Kd5 42. Ra8 Bb5 43. Rf8 Nc4+ 4. Kf3 Kd4 45. Rd8+ Kc3 46. Rf8 Kd4
この手を指す直前、相手はドローオファーをしてきました。自分で指してからドローオファーしてくれと伝え、試合は続きますが、相手がドローにする意思があることに胸をなでおろしました。46... Ba4! 47. Ke2 Nb2 48. Rxf6 Bd1+ 49. Kf2 Bg4 50. Rd6 Nd3+ 51. Ke3 Nb4 52. Rd8 Nc2+ 53. Kf2 Nd4 54. Rd7 Nf3 55. Kg3 Kc4 56. Rd8 Nd4 57. Kf2 Kd3 58. Kg3 Bf3 59. Re8 Bc6 60. Rd8 Ke3-+
実際には手数はかかりますが、黒はキング、ナイト、ビショップの位置を少しずつ改善し、f4を落として勝てるようです。ここまでできずとも、f6を落とすこと自体にリスクはないため、黒はひとまず続ければ良いのではないかと試合後に思いました。ここは相手の経験不足に助けられた形になります。
47. Rd8+ 1/2-1/2
ありがたいことにこちらからのドロオファーを受けてもらい、ゲームは終わりました。ずっと下に当たり続け、ポイントを取るのに苦しんだトーナメントでしたが、最後は負けずにすんで良かったと思います。ジャパンチェスクラシックでは、なんとか立て直したチェスを指したいですね。
2nd Bangkok Summer International Chess Open Final Standings
最終日、スタンダード表彰式の後はDuo Blitzでした。私はなつみとペアを組み、タイ、マレーシア、フィリンピンらの計9ペアとヘロヘロになりながら指しました。8Rではタイのチェス連盟会長、Nakvanich Sahapolさんとも試合をしています。個人でもペアでも、日本でももう少し気楽なブリッツのイベントが開催されると良いですね。



















































