2026/09/25

Samarkand Chess Olympiad R8 Japan - Brazil


サマルカンドオリンピアードのR8は、日本チームオープンチームはブラジルとの対戦です。私と同じ誕生日で、ブラジル国内ランキング3位のGM Mekhitarianは今回代表にいないものの、経験豊富なGM3人を擁する強豪国です。私は3Bで、GM Diamantとの試合に臨みました。マッチ3連勝で勢いに乗る日本ではありますが、このレベルの国とは厳しい戦いとなりました。

Kojima, S (IM, JPN, 2273) - Diamant, A (GM, BRA, 2504)
Samarkand Chess Olympiad (8)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. Nc3 d6 6. Nf3 Nc6 7. O-O e5 8. dxe5 dxe5 9. Bg5 Be6 10. Qc1 Qe8!?

試合前の準備でc8ではなくe8にクイーンが避ける手もあると知っていました。あまりこの先は詳しくありませんでしたが、ここから満足な形を築けたと思います。

11. Rd1 Rd8 12. Rxd8 Qxd8 13. b3 Qc8 14. Bh6 Re8 15. Bxg7 Kxg7 16. Qb2!


クイーンをフィアンケットし、a1-h8ダイアゴナルでe5ポーンと黒キングを狙います。

16... Nd7 17. Ng5 Nd8 18. Rd1 Bf5 19. Nd5 f6 20. Ne4

f5のビショップは行き場に困っていると考えれば、f3にナイトを退く手もありました。本譜は白マスビショップを得ますが、それが活きる展開を目指すのが少し大変でした。

20... Bxe4 21. Bxe4 c6 22. Ne3 Nc5 23. Bg2 a5 24. a3 Nf7 25. b4 axb4 26. axb4 Ne6 27. c5


b7,c6をビショップで将来的に狙いやすい白マスに固定しておくと同時に、c4のマスを空けてNe3-Nc4-Nd6を見据えます。

28... Rd8 28. Rxd8 Qxd8 29. Qa2 Qd7 30. h4 Nd4 31. Nc4 Qg4!

黒はf7のナイトがd6のマスを受けるのに必死で少し悪いかと思っていましたが、もう1つのナイトがd4で踏ん張り、バランスを取っています。実況中継でも言われていましたが、32. e3? Qd1+ 33. Kh2 Ne2 と進めばg1でのチェックからf2ポーンが危ないので、e2ポーンはキングで守る1手でしょう。

32. Kf1 Nb5 33. Qc2 Qd4 34. Kg1 Qa1+ 35. Bf1 Nd4 36. Qd2 g5 37. hxg5 Nxg5 38. Kg2 Qb1 39. f3


時間が増える直前、e4をポーンで受けることにしましたが、白マスビショップと白マスに多く置いたポーンは当然相性の良いものではありません。試合後にSamから39. Nd6 Ne4 40. Nxe4 Qxe4+ 41. Kh2= で問題無いと指摘されましたが、e2-e3からナイトを追い返せないのは心理的に嫌だと思い、避けてしまいました。

39... Qf5 40. g4 Qe6

40手に到達して時間が増えたものの、両者にとって難しい局面が続きます。白はキングをカバーしつつ、白マスビショップの復活を急ぎたいところです。

41. Ne3! h5 42. Qd3! hxg4 43. fxg4 Qa2 44. Nf5+ Nxf5 45. gxf5


ようやく厄介なd4のナイトを消すことができました。dファイルと7段目も空いているので、クイーンの跳びこみからパペチュアルチェックを見せれば、黒もクイーンとナイトで好き勝手はできないだろうと考えます。

45... Qf7 46. Qd8 Kh7 47. Kf2 Ne4+ 48. Ke3!?

ここは白マスビショップをg2に置いた際に邪魔にならないよう、黒マスにキングを逃がすのが自然だと考え、ナイトがg3に跳ぶ手を完全に失念していました。48. Kf3 Nc3 49. Kf2= で何もないというのがコンピュータの指摘ですが、本譜のようにf5を捨てて白マスビショップを活用するのも面白いアイディアです。

48... Ng3 49. Kf2 Nxf5 50. Qd3! Qh5 51. Qh3!


クイーンを交換すれば、h3-c8ダイアゴナルからビショップが潜り込み、b7を当てれば黒のナイトはディフェンスに縛られ、ドローになると読みました。黒は勝つためにナイトを挟んでクイーン交換を拒否しますが、そうなると今度はナイトの位置がよくありません。

51... Nh4 52. Qd7+ Kg6 53. Bh3!?

b7を取っても良いようですが、ビショップをアクティブにし、f5のマスを先に抑えておくとビショップナイトの差が浮き彫りになると考えました。

53... Qh6 54. Qe8+


54. Qg4+ Kh7 55. Qd7+ Kg6 56. Qg4+= はクイーンのチェックが止まらず、簡単にドローでした。クイーンを挟んで交換する手には、Bh3-Bc8 があって黒のクイーンサイドが崩れます。この直前までクイーンを交換してビショップでb7を狙う手を考えていたのに、ここでそのアイディアが頭から抜けたのは悔やまれます。

54... Kg5 55. Qe6 Qh5 56. Qg8+?


互いに時間がなく、どちらが間違えて負けてもおかしくない中で、私が間違えました。直前のh5にクイーンがくる手が読みぬけており、かなり動揺してしまいました。しかし、h5のクイーンはここから位置を改善できず、h4のナイトも動くとf5でのクイーンチェックがあります。黒のキング、クイーン、ナイトのいずれも動けないことに冷静になって気づければ、白はクイーン、ビショップの位置をこのままにして、適当に待てばよいことが分かります。56. Ke3=

56... Ng6-+

クイーンが理想的なh3-c8ダイアゴナルから離れてしまったことで、ナイトに戻られてしまいました。これではf5を失った代償がないだけでなく、次に黒クイーンの攻撃を許してしまいます。

57. Be6 Qh4+ 58. Kg2 Qxb4 59. Bf7 Qe4+ 60. Kf2 Kh6! 61. Bxg6 Qxg6 62. Qc8 Qe4?


しかし、まだチャンスは訪れました。この位置は黒クイーンがセンターで働くように見えますが、白から余計なチェックを許してしまいます。62... Qf7!-+ ならば何もありませんでした。

63. Qh8+ Kg6 64. Qg8+ Kh5 65. Qh8+ Kg4 66. Qg7+ Kh5 67. Qh8+ Kg5 68. Qg7+ Qg6 69. Qxb7 f5 70. Qe7+ Qf6 71. Qe8?

上手くパペチュアルチェックの狙いを入れてクイーンを退かせてからb7を落とし、1ポーンダウンに駒損を戻した直後に、またクイーンの位置を間違えました。細かな違いですが、71. Qd7!= がc6に当てているだけでなく、広くdファイルを使える好位置でした。こうなると黒はc6を守りながら局面を進展させることができません。

71... Kf4 72. Qh5 Ke4 73. Qf3+ Kd4 74. Qe3+ Kd5 75. Kf1 e4 76. Kg2 f4 77. Qa3 f3+ 0-1


クイーンを交換すれば負けのポーンエンディングだと分かったうえで、このポーンを取ろうとしたところ、時間が落ちました。かなり良いゲームを長く指していただけに、ちょっとしたミスから崩れてしまったのは残念です。この日は日本オープンチームは全員敗れ、崩壊です。

Open R8 Japan - Brazil 0-4

Women R8 Chinese Taipei - Japan 3-1


チェスオリンピアード2026 日本代表応援配信


女子も台湾に敗れ、揃って悔しい結果になってしまいました。今日は前回ブダペストオリンピアード以来となる、アイスランド戦をオープンチームは迎えます。2年前、全員GMのアイスランドに勝ったことは忘れられない出来事ですが、こんなに早く再戦の機会が訪れるとは思いませんでした。一方、女子は同じアジアのラオスとの対戦です。残り3試合、さらに上に食い込むために頑張ってきたいと思います!
帰りが遅くなりすぎたベルギー戦の夜はパスしましたが、この日はSamとのミーティングを兼ねた夜のウォーキングへ。こちらはよく見るとチェスモチーフでした。

2026/09/24

Samarkand Chess Olympiad R7 Belgium - Japan

レストデーの夜に街中で見たタンドリーサモサ

レストデーから一夜明け、サマルカンドオリンピアードは後半戦を迎えました。日本オープンチームはまたもや初対戦となる、ベルギーとのマッチが組まれています。ベルギーチームにはソ連出身で、かつてはトルコ代表、現在はベルギー代表と国を渡り歩く、GM Mikhail Gurevich がいます。彼とは2008年に北京で開催されたWorld Mind Sports Games で試合をしており、再戦を熱望していましたが、残念ながらこの日が彼の抜け番でした。67歳になる彼は、若いメンバーに出番を多く譲っているようです。私の対戦相手は私より1つ年上のIMで、2400台をキープし続ける実力者でした。

Vandenbussche, T (IM, BEL, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2273)
Samarkand Chess Olympiad (7)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. c3!?

用意は全部外れました(笑) あまり見た子のない組み合わせで、黒はc6-c5と早めに突きたくなりますが、それにはNd2-Nb3と対応するよりです。cポーンを突く手は好みですが、少しタイミングを遅らせることにします。

5... Nd7 6. h4!? h5 7. Ndf3 c5 8. Bd3 Ne7 9. Ne2 Bg4!?


f3,e2にナイトが出そろったところでビショップのダイアゴナルを切り替えます。白の出方によっては、ビショップナイトの交換をしてd4の守りを削るつもりでした。

10. Nh2 Bf5 11. Ng3 Bxd3 12. Qxd3 cxd4 13. cxd4 Nc6 14. Nf3 Qa5+ 15. Bd2 Qa6!

白のナイトがe2,f3にいったため、クイーンの交換がしやすくなります。白はキャスリングを妨害されてまでも、無理にクイーンを避けないでしょう。黒はaファイルにダブルポーンができますが、bファイルが開くことでb2が狙いやすくなるため、むしろありがたいポーンストラクチャーです。

16. Qxa6 bxa6 17. Rc1 Rc8 18. Ke2 Nb6 19. Rc2 Kd7 20. Rhc1 Be7 21. Kd3 a5!?


黒はどう動くか悩むところですが、a4までポーンを進めb2を固定し、将来的に狙いやすいようにしておきます。

22. Nf1 a4 23. Ne3 Rc7 24. Ng5 Rhc8!

f7を取られる手にはRc8-Rf8と戻れば、f2を取り返すことができます。これでc6のナイトの守りを強めれば、次にf7-f6としてg5のナイトを追い返せると考えました。

25. f4 f6 26. exf6 gxf6 27. Nf3 Bd6 28. g3 Rg8! 29. Be1 Rb8 30. Ke2 Rbc8 31. a3 Rb8 32. Rd1 Rg8


ここから仕掛け方が分からなかったのですが、c6のナイトへの負荷が減ったところで、32... Rcb7! としてbファイルにダブルルークの状態を作り、Nb6-Nc4と跳びこむのが最もチャンスがあったようです。

33. Kf2 Ne7 34. Rxc7+ Bxc7 35. Bb4 Nec8 36. Ne1 Nd6 37. Bxd6!

白はバッドビショップを解消し、ナイト2つで勝負します。ちょうどc4のマスやb2ポーンを受ける位置にナイトが来られるため、黒からの仕掛けが難しくなります。

38... Bxd6 38. Rc1 Rb8 39. Nd3 Ke7 40. Rc6 Kd7 41. Rc2 Ke7


ここから20手近く進展はないのですが、相手がルーク、キングのマスを細かく切り替えてくるので3回同じ局面が現れたか、確認が大変でした。

42. Kf3 Rg8 43. Rc6 Kd7 44. Rc1 Rb8 45. Nc5+ Ke7 46. Re1 Kf7 47. Rc1 Ke7 48. Nd3 Kd7 49. Rc2 Ke7 50. Re2 Kf7 51. Rc2 Ke7 52. Kg2 Rg8 53. Kf2 Rb8 54. Rc3 Kd7 55. Kf3 Ke7 56. Kg2 Rg8 57. Rc2 Rb8 58. Re2 Kf7 59. Rc2 Ke7 60. Kh3 Rh8 61. Rc3 Rb8 62. Rc2 Rh8 63. Kh2 Rb8 64. Kg1 Rg8 65. Kf2 Rb8 1/2-1/2

最後にRg8-Rb8と指すことをアービタ―にアピールしましたが、chess.com中継上でなぜか3回の確認ができず、終わったばかりの山田くんのボードを使い、対戦相手と1手目から並べ直しました。相手はキングの位置が違うと思っていたようですが、間違いなく41手、53手目、65手目終了時点で同じ駒の配置かつ白番なので、3回同位置局面の成立です。こんなに手数が離れた3回はなかなかないので、確認が大変でした。無事に黒番でドローを取り、仕事を成しました。

マッチはTuさんが苦しい局面を乗り切ってまずドロー。山田くんが途中勝つチャンスもありながら、相手に粘られドロー。私が3回同一のドローで、残った大塚くんに託されました。中継をご覧になっていたかたも多いかもしれませんが、大塚くんは互いに時間の無い難しいルークエンディングでしたが、負けるリスクは少ない状況でとことん指し、相手のミスから勝利をもぎ取りました! 今大会初めて格上とのマッチに勝ち、さらにオリンピアードでチームが3連勝、3つ勝ち越し状態も、日本オープンチームとして初めてのことです。

Open R7 Belgium - Japan 1.5-2.5

Women R7 Japan - Morth Macedonia 1-3


チェスオリンピアード2026 日本代表応援配信


女子は強敵北マケドニアに敗れたものの、エリザベスさんが4Bでかなり早い段階から有利になり、余裕を持った勝利だったようです。オープンチームは5勝2敗という未知の領域に突入し、次は南米の強豪、ブラジルと相対します。今大会は2BのFierが揮わないものの、GM3人を擁する強敵であるのは間違いありません。台湾と対戦する女子チームとともに、応援していただけると嬉しいです。
ベルギー戦を勝利で飾った直後の日本チーム。全員がレイティング上のチームに勝つのは、2008年のカタール戦、2024年のアイスランド戦などがありますが、やはり嬉しいものですね。

2026/09/23

Samarkand Chess Olympiad Rest Day

昨日は試合のないレストデーでした。オリンピアードでは前半6試合後、後半5試合を迎える前に1日休みを挟むのが通例です。今回のオリンピアードでは、日本チームは一部がツアーで午後の観光にいくことになり、午前は遅い朝食の後にルークエンディングの研究を少しだけ。私も5,6Rが難しいルークエンディングだったので、もっと知識と実戦経験を増やしたいと思います。
午後2時に迎えのバスが来て、サマルカンド到着日以来となる市内中心に戻ります。お出かけスタイルのTuさんを見るのは、2年前のブダペストオリンピアード以来です。
最初にバスで降りたのは、シャーヒ・ズィンダ廟群です。サマルカンドでも有名な青い廟が並ぶ場所ですね。各ホテルからオリンピアード選手がバスで何台分も到着したうえ、もともと人気の観光地ですのですごい人出でした。
廟内部の天井はこのようになっています。中央アジアでは建造物からパンまで、精巧な文様を入れますね。
シャーヒ・ズィンダ廟群では、チェコのトップGM David Navaraと会って一緒に写真を撮らせてもらいました。逆にNavaraは、チェス柄の大塚くんの服を気に入って写真を撮っていました。一緒のバスには元世界チャンピオンのDing Lirenも乗っており、著名なマスターたちもこの日は一緒にサマルカンドを観光をしています。
続いて市内中心をかなり離れてバスは北へ。イマーム・アル=ブハーリー廟はイスラム教の学者であったイマーム・アル=ブハーリーの生誕、終焉の場所とのこと。巨大な建造物が水面に映えています。
入り口をくぐると中庭のようになっており、大量の柱の回廊が続いています。ここを出たエリアのカフェで少し休憩をし、早くも時刻は17時。巡る場所はまだ多くなくとも、移動の時間が長いツアーです。
日が暮れる頃、市内中心のグーリ・アミール廟にやってきました。ちょうどライトアップされ始めだったので、良い時間帯かと思いましたが、なんと数分で辺り一帯の電気が消え、かなり驚きました。建物内部の電気も消えたので、ここを見るのは断念して徒歩圏内のレギスタン広場まで歩いていくことにします。ホテルから連れてきてくれたバスとはここでお別れです。
レギスタン広場は夜が見ものの世界遺産で、到着した19時半前には多くの人が座り込んでいました。広場の手前にはゲートが設けられ、オリンピアード関係者の証明バッヂがあれば、ゲートを超えて中に入っても良いとのこと。オリンピアード期間中は警備が強化されていたり、選手、関係者が優遇されていたり、なんだか申し訳ないです。中でお土産のショップを見て、この日はタクシーでホテルに戻ることにしました。

さぁ今日からいよいよ後半戦です。ベルギーはGM Gurevichを休ませたので、16年ぶりの対戦は実現せず残念ではありますが、2400台のIMが相手なので頑張ってこようと思います。また今夜から応援をよろしくお願いいたします。

チェスオリンピアード2026 日本代表応援配信


2026/09/22

Samarkand Chess Olympiad R6 Japan - Saudi Arabia

運営からのプレゼントを開封。キャップ、マグカップ、シャツ、ノート、水筒でした。

サマルカンドオリンピアードは早くも折り返しのR6を迎えました。オープンは初対戦となるサウジアラビアです。最近までサウジアラビアのチェスにさほど強い印象はありませんでしたが、eスポーツワールドカップが近年はサウジアラビアで開催され、Carlsenらが足を運び、Chess.comでの熱い戦いを繰り広げていました。私の相手は前日に続き20代ですが、サウジアラビア代表は皆立派なひげを蓄え、年齢は少し分かりにくかったです。(彼らからすれば、むしろ私たちのほうが分かりにくい?)

Kojima, S (IM, JPN, 2273) - Alshnaiber, Y (KSA, 1866)
Samarkand Chess Olympiad (6)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 Bb4+ 4. Bd2 a5 5. a3 Bxd2+ 6. Qxd2 d6 7. Nc3 Qe7 8. e4

このセットアップも問題無いのですが、クイーンを上がってe6-e5を突くアイディアにはg2-g3を準備していたはずで、クイーンサイドキャスリングが有効なのはNb8-Nd7に対してでした。

8... e5 9. O-O-O Bg4 10. dxe5 dxe5 11. Nd5 Nxd5 12. exd5


d4のアウトポストを使われるとやっかいなので、d5でナイト交換をしてc6のマスを抑えておきます。e5への攻撃チャンスや、Bf1-Bd3からのキングサイドへのアタックチャンスにも期待しています。

12... O-O 13. Re1 Bxf3 14. gxf3 Qf6 15. Rg1 Nd7 16. Bd3 c6

d5ポーンを崩すアイディアもありそうですが、白にとってもd5のマスやdファイルが使える可能性があり、判断の難しい手です。早めの16... g6からg7,h7両方を受ける手もありました。

17. dxc6 Qxc6 18. Kb1 Nc5?


これは単純な見落としだと思います。ビショップナイトの交換を受け入れても、ポーンをいただいておきます。

19. Rxe5 Nxd3 20. Qxd3 b6 21. Qd4 g6 22. Rd5 Rac8 23. Rc1 Rfe8 24. h4 h5 25. f4?!

ダイレクトアタックのチャンスを考えるか、ピースを交換してエンドゲームを迎えるか悩みました。f3-f4-f5は成功すれば大きいですが、クイーンを交換されてしまいます。25. Ka2! と先にキングを避けて置き、黒クイーンがe4でチェックにならないようにすべきでした。

25... Qe6 26. Re5 Qc6 27. Rd5 Qe6 28. f5 $1 Qe4+ 29. Qxe4?!


キングが避ける手も当然考えましたが、f5を取られてどうするか分かりませんでした。29. Ka2! Qxd4 30. Rxd4 gxf5 31. Kb3!+/- このキングが上がる手でc4を落ち着いて守り、ルークを自由にするアイディアは分かりませんでした。

29... Rxe4 30. fxg6 fxg6 31. Rd6

お互いにルークでフォークしあい、パスポーンを作ることを目指します。

31... Kh7 32. b3 Rxh4 33. Rxb6 a4!? 34. c5 axb3 35. Rxb3 Rf4 36. f3 Kg7 37. c6 Kf6 38. c7 Ke7 39. Re3+ Kf7 40. Rd3 Ke7


この少し前でTuさんの勝ちが決まり、南條くん、山田くんのドローもあって、私もドローでマッチに勝つことは分かっていました。しかし、1ポーンアップをキープしたままc7までポーンを進めることができ、負ける危険はほとんどないため、試合を続けることにします。

41. Re1+ Kf6 42. Rd6+ Kf5??

42... Kg7 43. Re7+ Rf7 44. Rdd7 Rxe7 45. Rxe7+ Kf6 46. Rh7 Ke6= ならば、白が勝つことは難しいと思っていたので、黒がキングの位置を間違えたのはありがたいと感じました。しかし、簡単なタクティクスをここで見落とします。

43. Rc1?


43. Rd8! Rxc7 44. Rf8+ Kg5 45. Rg1++- これで黒のルークを落として簡単に勝ちでした。13年前のノームトーナメントでも同じ見落としをしており、成長していません。

43... Ra4 44. Kb2?

チェックのタイミングは遅れてでも良いと思いましたが、すぐが良かったようです。44. Rc5+! Kf4 45. Rf6+ Ke3 46. Rc3+ Kd4 47. Kc2+- なるべく早く中央に寄り、白はまだ先は長いものの勝つチャンスがありそうです。

44... Ra7 45. Rc5+ Kf4 46. Rf6+ Ke3 47. Rf7 h4 48. Rc3+ Kf2?


このキングの潜り込みが致命的な1手だったようです。48... Kd4! 49. Rf4+ Kd5 50. Rxh4 Rcxc7= ならばポーンを取り合い、白は勝てないでしょう。

49. f4! h3 50. Rh7 Kg2 51. Rhxh3!?

g6まで取れるので、本譜のようにポーンを取り合っても勝てます。もう1つの勝ちのアイディアは黒キングを下段に追い詰めてダブルルークでメイトを狙うアイディアで、51. Rd7 Rb7+ 52. Kc1! h2 53. Rd2+ Kg1 54. Rcc2! がありました。

51... Rb7+ 52. Ka2 Rcxc7 53. Rhg3+!


このチェックのテンポでg6を落とし、a,fポーンになるので白が勝てそうです。

53... Kf2 54. Rxc7 Rxc7 55. Rxg6 Ke3

55... Rf7 56. Kb3 Rxf4 57. a4 Ke3 58. a5 Rf8 59. Kc4+- fポーンを取られても、aポーンで十分に勝つことができます。

56. Rf6 Rb7 57. a4 Rb4 58. Ka3 Rb1 59. a5 Kd4 60. a6 Kc5 61. f5 Rb5 62. Re6 Ra5+ 63. Kb3 Rb5+ 64. Kc3 Kd5 65. a7 Ra5 66. Re7 Kd6 67. f6 Ra1 68. Kb4


後はキングがaポーンのサポートをするためにゆっくり上がるだけです。

68... Rb1+ 69. Ka5 Ra1+ 70. Kb6 Rb1+ 71. Ka6 Ra1+ 72. Kb7 Rb1+ 73. Kc8 Ra1 74. Kb8 Rb1+ 75. Rb7 1-0

ルークで蓋をしてチェックを振り切り、白の勝ちとなりました。2日連続のルークエンディング、そして今大会最長ゲームで疲れましたが、前半戦を個人、マッチともに勝ちで締めくくり、良い流れで後半戦に入れそうで良かったです。

Open R6 Japan - Saudi Arabia 3-1

Women R6 Japan - Guyana 2.5-1.5


チェスオリンピアード2026 日本代表応援配信


女子もガイアナに勝って、今大会初のオープン、女子揃っての勝利でした。今日のレストデーで英気を養い、また後半戦に臨もうと思います。R7はオープンがベルギー、女子が北マケドニアとの対戦です。また明日からの応援をよろしくお願いいたします!
R6後のバミューダパーティーは参加せず、初日以来となる水辺の散策。あの光の辺りから騒がしい気配がします。

2026/09/21

Samarkand Chess Olympiad R5 Monaco - Japan

サマルカンドオリンピアード5R、日本オープンチームはモナコとの対戦です。モナコは14年前のイスタンブールオリンピアード最終戦で対戦し、敗れた因縁の相手です。その際の借りを返すため、お昼に豪華なラムチョップをいただいてから試合に臨みます。モナコは60代3人と20代、10代が1人ずつの構成で、私の相手は20代のFMでした。

Cahen, A (FM, MNC, 2078) - Kojima, S (IM, JPN, 2273)
Samarkand Chess Olympiad (5)

1. e4 c6 2. c4 d5 3. exd5 cxd5 4. cxd5 Nf6 5. Nc3 Nxd5 6. Nf3 Nc6 7. Bb5 g6

対戦相手がこの変化を指すことは事前にわかっていたので、Samとどのように戦うかを事前に話しました。選んだ変化は黒十分ながら、絶対に勝ちを狙うものではありませんが、Samの「黒はまずイコアライズでOK」という言葉を信じ、プレーをします。

8. Qa4 Nb6 9. Bxc6+ bxc6 10. Qxc6+ Bd7 11. Qe4 Bg7 12. O-O Rc8 13. d4 Bc6 14. Qe2 Bxf3 15. Qxf3 Qxd4 16. Be3 Qf6!?


一昨年のWelcome Olympiad! では、16... Qb4 17. Qb7 0-0 18. Qxa7 Qxb2と進み、短手数でドローに合意しました。f6でクイーンをぶつける手はその後の解析で見つけた手で、こちらも黒が十分に指すことができます。

17. Qxf6 Bxf6 18. Bxb6 Bxc3 19. bxc3

19. Bxa7 Bxb2 20. Rab1 Ba3もありえる変化で、白のaポーンは脅威にならず、黒は満足です。ただし本譜のように白にバラバラポーンがあるわけではなく、黒がどう勝つチャンスを作るか難しいところです。

19... axb6 20. Rfb1 Rc6 21. a4 O-O 22. Ra3 Rd8 23. Kf1 Rd2


2段目にルークを潜り込ませることができ、bポーン1つとa,cポーン2つの交換が見えてきました。

24. Rab3 Ra2 25. Rxb6 Rxc3 26. R1b2 Rxa4 27. Rb7 e6 28. g3 g5!

gポーンを早めについておくのは、4vs.3 のルークエンディングにおいて勝ちを目指す側の重要なアイディアです。白からのh2-h4を防いでおき、黒から将来的にh7-h5-h4を仕掛けるチャンスを作ります。

29. Kg2 Kg7 30. h3 Rc5 31. R2b5 Rxb5 32. Rxb5 Kg6 33. Rb7 h5 34. Re7 Re4 35. Kf3 f5 36. Kg2 Kf6 37. Rh7 h4 38. Rh8 hxg3 39. Kxg3 Re1


この後も登場しますが、39... Rf4 40. f3! が劣勢の白にとって重要なディフェンスのアイディアだと学びました。

40. Rf8+ Kg7 41. Ra8 Rb1 42. Ra3 Kf6 43. Kf3 Re1 44. Rb3 e5 45. Rb6+ Kf7 46. Kg3 Rd1 47. f3!

直感的にこのポーン突きは2段目を開いて弱めてしまうので、変なのではないかと思いました。しかし、この手無しで黒からe5-e4とされてf2でポーンが固定されると、パスポーンを作られる&キングに回り込まれて負けのようです。4vs.3 のルークエンディングを調べていて、Capablanca - Yates 1930 の実戦を見つけましたが、この試合ではまさに劣勢側がfポーンを突かなかったゆえに負けたようです。

47... Rd3 48. Kg2 f4 49. h4!?


この手でもコンピュータはドローを示しますが、人間的には難しくしています。49. Rh6! Rd7 50. h4= ならば確実にポーンを交換し、ドローになりそうです。

49... g4! 50. fxg4 Rg3+ 51. Kf2 Rxg4

51... e4 52. g5 e3+ 53. Ke2 Rg2+ 54. Ke1= では黒は勝つことができません。

52. Kf3 Rxh4 53. Ke4


黒は2つポーンリードに変わりましたが、白キングが綺麗に黒のコネクテッドパスポーンをブロックしており、勝つためのはっきりしたプランは見えません。ひとまずe5を守り、ルークを退いて6段目のカットオフを外しにいきます。

53... Rh5 54. Ra6 Rg5 55. Ra8 Rg8 56. Ra6 Rg6 57. Ra5 Re6 58. Ra8?

ここが決定的なミスでようやく黒の勝ちになりました。58. Kf5! f3 59. Ra7+ Re7 60. Ra1 e4 61. Kf4= fポーンを突ければチャンスはあるとゲーム中は考えていましたが、キングがサポートに行けなければドローのようです。

58... Kf6 59. Rf8+ Kg5 60. Rh8 Rh6 61. Rg8+ Rg6 62. Re8 Kg4!


gファイルにまわしたルークでチェックを防ぎ、黒キングがどんどん前進すれば、eポーンを見捨ててもfポーンを押し進めて黒は勝ちです。

63. Rxe5 f3 64. Ke3 Kg3 65. Kd2 f2 66. Ke2 Kg2 67. Rf5 Re6+ 0-1

直前までルークがgファイルにいたおかげで、ルセナポジションの橋を架けるアイディアを使うこともなく勝ちを決めました。隣の大塚くんが早めに負けた際は少し焦りましたが、Tuさん、山田くんの勝利でマッチ全体でも勝ちを収めています。

Open R5 Monaco - Japan 1-3

Women R5 El Saldavor - Japan 2.5-1.5


チェスオリンピアード2026 日本代表応援配信


女子チームは格上のエルサルバドル相手に、接戦でしたが敗れています。今日が前半戦最後のラウンドですので、オープン、女子互いに勝ってレストデーを迎えたいですね。オープンは初対戦となるサウジアラビア、女子はガイアナとの対戦です。
Expoにはこのオリンピアード中に行われる、FIDE会長選挙のためのブースも設けられています。こちらはカザフスタンのTimur Turlovのブースで、先日来日したドイツのWadim Rosensteinの対抗馬です。

2026/09/20

Samarkand Chess Olympiad R4 Japan - Kazakhstan

この日はオープンがカザフスタンとの対戦でした。カザフスタンと言えば、先日GM Darmen Sadvakasovが来日し、カザフスタンのチェス教育についてレクチャーをしてくれたばかりです。カザフスタンはウズベキスタンほどではないものの、アジアではレベルの高い国です。今は世代交代の時期に来ており、かつてカザフスタンを背負って代表として出場していたGMたちは軒並みナショナルチームから退き、若いプレーヤー中心のチームになっています。私たちはプレーする選手は朝食後、Samの部屋に集まって対策を行い、試合に向かっていきます。

Agmanov, Z (GM, KAZ, 2490) - Kojima, S (IM, JPN, 2273)
Samarkand Chess Olympiad (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 a6 5. h5 c5 6. dxc5 Nc6 7. Bd3 Qd7 8. Be3

ここで知識が途切れ、どうしようか悩みます。Samとの事前研究で、どこかのタイミングでBc1-Be3ならば、c4,e4のマスを明け渡しても、d5-d4と押し込むのもありだと考えていました。しかし、いざやられてみると、このタイミングでも良いのか、将来的にナイトがどう跳んでくるかを読む必要があります。f7-f6のようにポーンを取り返すよりもギャンビットで勝負するアイディアもありますが、30分以上悩み、d5-d4の作戦にすることにしました。

8... d4 9. Bf4 e6 10. Nd2 Bxc5


ポーンは取り返しましたが、d4にポーンを進めたため、a7-g1のダイアゴナルで黒マスビショップが使いづらい状況です。しかし、d3のブロッケードもいつまであるか分からないため、ビショップの働きは今後の白の動き次第でしょう。

11. a3 Nge7 12. Ngf3 Nd5 13. Bg3 O-O?!

私はひとまずキャスリングまでできて一安心だったのですが、13... Bxd3 14. cxd3 f5! がコンピュータの指摘する変化です。本譜でもfファイルを開くために後々fポーンは突きますが、このタイミングはd3にポーンを移動させてd4が狙われづらくした後、e4のマスを抑えてNd2-Ne4を止めるということですね。d3のブロッケードは外してもらったほうがありがたいので、白マスビショップはひたすら取れるのを待つばかりで考えていました。

14. Qe2 b5 15. Nb3 Bb6 16. Rd1 Rae8


f5を取られた際にeファイルを開き、e5に反撃できるようにしたのですが、16... Bxd3 17. Rxd3 h6 18. Nbxd4 Nxd4 19. Nxd4 b4! もポーンの代償ありで戦えたようです。d4をあえて取らせることで、a7-g1のダイアゴナルを開き、ビショップを使えるようにする作戦です。

17. h6 g6 18. O-O Bg4!?

ここで白マスビショップはかわし、次にfファイルを開いてf3のナイトにプレッシャーをかけにいきます。

19. Be4 f5 20. exf6 Rxf6?!


20... Nxf6!? 21. Bxc6 Qxc6 22. Nbxd4 Bxd4 23. Rxd4 e5 24. Bxe5 Bxf3 25. gxf3 Nd7 26. f4+/= は白がやや良いですが、こちらのほうが良いというのがコンピュータの指摘でした。c6のナイトの交換を許し、d4を差し出す発想は考えたものの怖かったです。本譜はなるべくポーンを守り続けます。

21. Qd2?


私もf3のナイトを白マスビショップでサポートしたので、ピンを外すこの手は自然だと思っていました。しかし、実際にはeファイルからのプレッシャーが薄まり、f3の守りも薄くなるため良くなかったようです。21. Rfe1 Ref8 22. Rd3+-

21... Ref8 22. Rde1 Bxf3! 23. Bxf3 Nf4

ここは典型的なエクスチェンジサクリファイスの機会でした。23... Rxf3! 24. gxf3 Rxf3 25. Qd1 Rf5 黒が優勢かの判断は難しいですが、代償はありそうです。ただ私としては黒マスビショップの働きがまだ定かでない状況で、駒を捨てるのは不安でした。

24. Re4 g5!


f4のナイトを支えると同時に、6段目を開いてh6を落としにいきます。

25. Bg4?! Qd5! 26. Rfe1 e5?!

e6のターゲットになるポーンをかわしつつ、f4のナイトをさらに補強して黒の問題は概ね消えたと思いました。しかし、ここはe4のルークがピンであることを利用し、26... Ne5! 27. Bxf4 Nxg4 28. Re5 Nxe5 29. Rxe5 Qc6 30. Rxg5+ Rg6-/+ と進めていれば黒がはっきり優勢でした。

27. Nc1 Rxh6 28. Nd3 Bc7 29. Bf3 Qf7 30. Nxe5!


ここでエクスチェンジを相手が切るのは気を付けていたつもりでしたが、やはり実行してきました。ルークを1つ諦めても、eファイルを突破しなければ白のルークは使えないままでじりじりと白が押されていくでしょう。例えこの結果負けるとしても、こうするしかないという実戦的な判断です。

30... Nxe5 31. Rxe5 Bxe5 32. Rxe5 Qg7 33. Qxd4 Rhf6

33... Re6 34. Bd5! Ne2+ 35. Rxe2 Qxd4 36. Bxe6+ Rf7 37. Re3 これは白がクイーンを捨てても粘れそうです。

34. Bxf4 Rxf4 35. Qd6 Qf6?


これはg5を返すつもりではなく、時間切迫による見落としでした。a6を気にして指した手ですが、代わりに35... Kh8! ならば、次のg5-g4が厳しく黒に勝ちのチャンスが残ります。

36. Qxf6 R8xf6 37. Rxg5+ Rg6 38. Bd5+ Kf8= 1/2-1/2

マッチの結果が負けになることは分かっていましたが、2ポーンを失えばルークvs.ビショップでも勝てないため、ここで私からドローオファーをしてゲームを終わらせました。私以外の3ボードは負けで、あらためてカザフスタンの層の厚さを感じることになりました。チームは2勝2敗、またここから勝ち上がっていきたいと思います。

Open R4 Japan - Kazakhstan 0.5-3.5

Women R4 Japan - Mauritius 4-0


チェスオリンピアード2026 日本代表応援配信


女子はインド洋の島国、モーリシャスをストレートで破り、こちらも2勝2敗となっています。今日はオープンがモナコ、女子がエルサルバドルとの対戦です。モナコは2012年のイスタンブールオリンピアード最終戦で敗れた相手ですので、そのリベンジを果たしてきたいと思います。
昨日はSamの誕生日ということで、ホテルにケーキを用意してもらい、チームのみんなでお祝いをしました。
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