2022/08/10

Chennai Olympiad R11 Japan - Madagascar


10R のカタール戦で良い指し方ができ、オープン、女子ともに勝った日本チームでしたが、ホテルに戻ってから残念な知らせを受け取りました。8日午前中に受けた帰国前のPCR検査の結果、この日試合に向かった7人のうち私だけが陽性でした。いつこのことをお伝えしようかと思いましたが、最終戦のオーダーから私が抜けたことで気づいた人もいるでしょうし、昨日のNCSの放送ではっきりと私が陽性だと述べられていたので、この最終戦のブログ記事でもお伝えしようと考えました。最後まで試合に出たかっただけにとても残念です。

オーダー上は10Rまでと同じようにTuさんがトップで不戦敗となりましたが、これは私でも同じでした。Simon がこの最終戦で復帰が間に合ったのが不幸中の幸いで、10R までと同様に3人で試合に臨んでいます。3B で試合をしたAlex の試合が面白かったのでご紹介します。

Andrianiaina, H (CM, MAD, 2095) - Averbukh, A (CM, JPN, 2155)
Chennai Olympiad (11)
Position after 36... Qa7

序盤でエクスチェンジアップした黒でしたが、白にはダブルビショップがあり徐々に差を詰められました。この局面はライブを見ていて勝負所と感じたポイントです。

37. Bxh5 gxh5?


ここでh5 を失うのは致し方ないとAlex は判断したかもしれませんが、対応が違います。37... Rd4! 38. Bxd4 Rxd4 39. Re4 (39. Qf3 Qd7 40. Bg4 Nxh4! 41. gxh4 Rxg4+ 42. Kf1 Rxh4=) 39... gxh5 40. Qxf5 Rxe4 41. Qxe4 Qa1+ 42. Kg2 Qxb2 こうしてエクスチェンジを返して、1ポーンダウンのクイーンエンディングに持ち込むのが黒のベストだったのではないかと思います。しかし、Rd6-Rd4 からエクスチェンジを返すアイディアは見つけづらいでしょう。

38. Qg5+!


おそらくですが、Alex は単純にナイトを取る手をメインに考えており、こうして一度ピンを利用したチェックを入れることを見落としていたのではないでしょうか。キングをf6 から離されてしまうと、f6,h5 にバラバラに残ったポーンが弱く、白の優勢は明らかなものとなります。

38... Kf8 39. Qxf5 Re8 40. Rxe8+ Kxe8 41. Qxh5+

こうして2つのポーンを取られ、駒数は3ポーンエクスチェンジとなりました。白には弱点らしい弱点もなく、厳しい形勢になったと感じました。しかし、勝負は最後まで分かりません。

41... Qf7 42. Qf3 Qe6 43. Kg2 Kf7 44. Qh5+ Kg7 45. Qg5+ Kf7 46. Qf4 Rd1 47. Qf3 Ra1 48. Qb7+ Qe7 49. Qxe7+ Kxe7


クイーンを交換し、ルークとビショップ、そしてポーンたちが残るエンドゲームを迎えました。ここでも白はポーンの数を活かしてプロモーションのチャンスを見せ、優位に試合を進められるように見えます。

50. Kf3 Ke6 51. Kf4 Ra4+ 52. Ke3 Ra1 53. f3 Rh1 54. Kf4 Ra1 55. Kg4 Ra4+ 56. Kh3 Ra1 57. g4 Rh1+ 58. Kg3 Rg1+ 59. Kh2 Rf1 60. Kg2 Ra1 61. f4 Rd1 62. f5+ Kf7

ここまでは白のポーンの進め方は良かったと思います。f6 の黒マスに黒ポーンを固定しておき、ビショップでそれを狙い続けることで黒キングを自由に動けないようにしています。問題は次の手です。

63. g5?


NCS の公式チャンネルでは、弘平くんがすぐにこの手に反応しました。f6 の弱点を消しても2コネクテッドパスポーンを作れば白は勝てそうに見えますが、この判断が間違いです。正しい手は63. h5!+- とhポーンから進める手で、hポーンを餌にf6 を取れば、同じf,gポーンが2コネクテッドで残る形でも、g4 にポーンを待機させていることで白が勝てそうです。ちなみに他の手であれば例えば、63. Kf3? Rf1+ 64. Kg3 Rg1+ 65. Kf4 Rf1+ 66. Ke4 Rh1 67. h5 Rg1 68. Kf3 Rf1+ 69. Kg2 Rf4 70. Kg3 Rf1= といった抵抗が黒に考えられます。するとこの局面では、63. h5! 以外は白は勝てなくなってしまうかもしれません。エンドゲームのクイズになりそうな面白い局面です。

63... fxg5 64. hxg5 Rd5!


この5段目の横攻撃がポイントで、g2 にキングがいる白はチェックを絡めてポーンを取られてしまいます。

65. g6+ Kg8 66. Kf3

66. f6 Rg5+! こうしてポーンが取れるのがポイントです。f,g どちらでもポーンを取ることができれば、黒はドローに持ち込むのは難しくないでしょう。

66... Rxf5+ 67. Ke4 Rg5 68. g7 Kf7 69. Bd4 Ke6 70. Kf4 Rg6 1/2-1/2


序盤の優位を手放してしまったのは勿体なかったですし、Alex としても悔やまれるところだと思いますが、後半の苦しい局面をよく粘りました。見ている側としてはハラハラしながらも、面白いゲームだったと思います。

Open R11 Japan - Madagascar 1.5-2.5

Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) - Rakotomaharo Fy Antenaina (IM, MAD, 2490) 0-1
Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) - Andrianiaina Heritiana (CM, MAD, 2095) 1/2-1/2
Bibby, Simon (FM, JPN, 2147) - Razanadrakotoarisoa Toavina (MAD, 2039) 0-1
Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) - Rakotomaharavo Dylan (MAD, 1948) 1-0

Women R10 North Macedonia - Japan 3.5-0.5

Stojkovska Monika (WFM, MKD, 2091) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 1/2-1/2
Manova Ivana (MKD, 1849) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 1-0
Nikolovska Dragana (MKD, 1876) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 1-0
Eftovska Lea (MKD, 1634) - Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157)4500>1-0


最後はオープン、女子ともに敗れてしまい、オープンは5勝6敗で107位、女子は4勝5敗2ドローで105位という戦績でした。総括については、また別の記事で書こうと思います。まずは参加選手の皆さん、お疲れ様でした。そして日本からSNS、NCS公式チャンネル、クラウドファンディングなどを通じて応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

2022/08/09

Chennai Olympiad R10 Qatar - Japan

会場のチェスショップには、こんなスタイリッシュなチェスセットもありました。

チェンナイオリンピアードの10試合目はオープンがカタールとの対戦になりました。カタールは私が2回目に参加した2008年のドイツ、ドレスデンのオリンピアードで対戦し、GM を下した思い出があります。トップのGM たちが出てくるかどうかで、カタールのレベルは大きく上下するのですが、今年はそこまでのレベルではありません。チームの勝ちのためには、私の白番が大切だと思って試合に向かいました。

Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Al-Sulaiti, G (FM, JPN, 2183)
Chennai Olympiad (10)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 g6 4. O-O Bg7 5. c3 Nf6 6. Re1 O-O 7. d4 d5 8. e5 Ne4 9. Bxc6 bxc6 10. Be3 cxd4 11. cxd4 f6 12. Nbd2 Bg4?!

データベースでは一番多い手ですが、結論としてはあまり良くないと思います。12... Nxd2 13. Qxd2 Bg4 14. exf6 exf6 15. Bh6 がメインの用意だったため、ここで初めて時間を使って考えます。何もしなければ、次に黒からNe4-Nxd2 とナイト交換をされて困るため、何を指してそれに備えるかがポイントです。

13. Qa4!


私が調べていた変化ではa4 にクイーンがでるものは1つも無かったのですが、ここではピンを外しつつ、c6 にプレッシャーをかけるのは良いアイディアでしょう。

13... Nxd2 14. Nxd2 fxe5 15. dxe5 Bd7 16. Bc5!

4段目が開き、ビショップが下がっていきました。これは白にとって望む展開です。そこですかさずc5 にビショップを置き、e7 にプレッシャーをかけると同時に白マスで黒ポーンを固定し、黒マスをコントロールします。白はビショップペアを失っても、c5,d4 といった黒マスをコントロールし、黒の白マスビショップの働きを封じることで優勢を築き上げます。

16... Rf5 17. Nf3 Qc7 18. Bxe7!


e7 とe5 の取り合いも白にとって望む流れだと思っていました。異色ビショップにこそなりますが、黒キング前の黒マスの弱さは致命的で、白は簡単に黒キングを攻めることができます。黒は少しパッシブになっても、e7 を守り続けるほうが良かったと思います。

18... Bxe5 19. Nxe5 Rxe5 20. Qd4!

Centralization! 白のクイーンはc5 のマスを抑えつつ、最も重要なa1-h8 のダイアゴナルの抑えます。ビショップと組み合わせ、クイーンをg7、h8 に跳びこませるメイトの形はシンプルながら強力です。

20... Rf5 21. g3 Rf7 22. Bb4 h5


h7 にキングの上がるマスを作り、h8 のマスをルークでカバーできるようにするアイディアですが、代わりにg5 のマスやg6 のポーンが弱くなります。

23. Re5!

ルークをeファイルに2つ重ねることが一番の目的ですが、h7-h5 から黒キングの前が弱くなったことも踏まえ、5段目で横に振る準備にもなります。

23... Bf5?! 24. Rae1! Be4 25. f3!?


ここでポーンを犠牲にするのは勝ちに十分なアイディアですが、別の勝ち方もありました。25. Bc3! Kh7 26. R1xe4! dxe4 27. Qxe4 Kh6 28. Bd2+ Kg7 29. Re6+- 本譜と似たエクスチェンジサクリファイスですが、弱くなったg6 の突破を狙う点が違います。

25... Rxf3 26. R1xe4!

勝ちを確実にする大切なエクスチェンジサクリファイスです。26. Re7?? Rxg3!-+ は白キングの逃げ場がなく、カウンターを食らって負けてしまいます。

26... dxe4 27. Re7! Rxg3+ 28. Kh1!


ルークは取らずにキングを逃がしておけば黒からはチェックがなく、クイーン取りとg7 のメイトスレットのダブルスレットに黒は対応できません。

28... Qxe7 29. Bxe7+-

こうしてクイーンを貰い、白の駒得を確定させました。後はバラバラの黒ポーンを回収しながら、キングを攻め立ててゲームを終わらせます。

29... Rg4 30. Qc4+ Kg7 31. Qxc6


a8 のルークに当てつつ、f6 でのチェックのチャンスを作ります。黒がRg4-Rf4 とディフェンスにルークを戻す前に勝負をつけます。

31... Rg8 32. Qf6+ Kh7 33. Bb4 g5 34. Qf7+ 1-0

最後はg8 のルークを取るか、h5 ポーンの取りからg4 のルークを取って白勝ちです。内容も良く、3R以来の勝利はとても嬉しいです!

Open R10 Qatar - Japan 1-3

Aziz Husain (IM, QAT, 2380) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1-0
Al-Sulaiti Ghanem (IM, QAT, 2185) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 0-1
Al-Homaid Abdulla (QAT, 1358) - Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) 0-1
Erfan Mohamad Firdaus (QAT, 1294) - Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) 0-1

Women R10 Japan - Honduras 3.5-0.5

Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) - Godoy Yolanda (HON, 1219) 1-0
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) - Viana Valeria (HON, 1441) 1-0
Misawa, Yuki (JPN, 1587) - Garcia Andrea Nicole (WCM, HON, 1631) 1/2-1/2
Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) - Maradiaga Cesia (HON, 1533) 1-0


この日はオープン、女子ともにほぼ完勝といって良いでしょう。それぞれカタール、ホンジュラスを下して最終戦を残すのみとなっています。


最終戦の相手はオープンがマダガスカル、女子が北マケドニアとなっています。最終戦だけは試合開始時間が早く、インド時間の10時、日本時間の13時半からスタートしており、NCS の放送もちょうど始まったところです。私は最終戦を外れたため、ライブで日本チームの様子を見守ろうと思います。

2022/08/08

Chennai Olympiad R9 Japan - UAE

対戦相手から貰ったお土産たち。この日は86年ドバイチェスオリンピアードの記念コインをいただきました。

チェンナイオリンピアードもいよいよ大詰めです。R9 でオープンチームは、前回も対戦したアラブ首長国連邦とのマッチになりました。バツミでは私が個人で負けを食らったチームです。前日に続き、1B のTuさんを体調不良で欠く厳しい条件でゲームが始まります。

Al Hosani O (IM, UAE, 2215) - Kojima, S (IM, JPN, 2346)
Chennai Olympiad (9)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. d3 Bc5 6. O-O d6 7. c3 Ba7 8. Re1 O-O 9. Nbd2 Ne7 10. Nf1 Ng6 11. Bb3!?

Japan Chess Classic の最終戦では11. Ng3 d5!? と進みました。この試合ではもう少し準備をしてからd6-d5 の突きなおしをすることになります。

11... c6 12. Ng3 h6 13. h3 d5 14. exd5 Nxd5 15. d4 exd4 16. Nxd4


この局面は想定していたつもりでしたが、実際ここにきて何を指せば良いのか分からなくなりました。アクティブに指す手はいくつかあるのですが、d5 を取られた際にポーンで取り返して孤立ポーンを作る展開はなるべく避けたいと考えていました。

16... Ndf4

試合後にMisha と話をして16... Re8 17. Rxe8+ Qxe8 18. Bxd5 cxd5 19. Be3 Bb8!? はバランスを崩し、勝負できる局面なのではないかと考えています。本譜の跳びこみは少し早く、リスクもあるのですが思い切って試してみました。

17. Qf3 Qf6 18. Ne4 Qe5!


最初はh4 にクイーンを置くつもりでしたが、Ne4-Nd6 が厄介であるため、e1 のルークを恐れずe5 のマスを選びます。実際、そこまで危ないディスカバードアタックはありません。

19. Bxf4 Nxf4 20. Ng3 Qg5?!

しかし、ここは長く時間を使って考えながら正解が分かりませんでした。20... Qf6 21. Ndf5 Bxf5 22. Qxf4 Bg6 23. Qxf6 gxf6 24. Re7+/= は黒で受け入れるべきエンドゲームです。もちろん、白は本譜同様にNe4-Ng3 の往復でドローにする気だった可能性も大いにあります。

21. Ne4?!


21. Re4 Ng6 22. Rae1+/- はテンポ良く白がルークをeファイルに重ね、優勢を築けているでしょう。

21... Qe5 22. Ng3 Qg5 23. Ne4 Qe5 1/2-1/2

1B が不戦勝ですでに勝っている以上、2B は無理せずドローで構わないという判断だと思います。私からも繰り返しを避けて勝負する方法がなく、ドローは致し方ありません。

Open R9 Japan - UAE 0.5-3.5

Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) - Othman A. Moussa (FM, UAE, 2229) 0-1
Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) - Al Hosani Omran (IM, UAE, 2215) 1/2-1/2
Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) - Sultan Ibrahim (IM, UAE, 2108) 0-1
Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) - Abdulrahman Mohammad Al Taher (UAE, 2029) 0-1

Women R9 Paraguay - Japan 4-0

Vargas Gabriela (WIM, PAR, 2140) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 1-0
Oviedo Acosta Paula (PAR, 1855) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 1-0
Montiel Caceres Helen (PAR, 1763) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 1-0
Mayeregger Gonzalez Renata (PAR, 1479) - Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) 1-0


オープンチームは私が一番早く終わり、残り2人にマッチの行方を託しましたが、残念ながら敗れてしまいました。女子もパラグアイにストレート負けを喫し、両チームとも一歩後退です。今日こそはどちらのチームともポイントを挙げていきたいですね。


今日はオープンが14年ぶりの対戦となるカタール、女子がホンジュラスとの対戦です。長かったチェンナイオリンピアードも残りは2試合。ラストスパートです!

会場の一部にチェスショップのスペースが出ていたことは、後半戦に入るまで気づきませんでした。

2022/08/07

Chennai Olympiad R8 Mongolia - Japan

試合後にドイツのGM Keymer Vincent と(撮影時のみマスクを外しています。)

更新が遅くなりましたが、6日のレポートです。チェンナイオリンピアードR8 は、オープンがGM 3人を擁するモンゴルとの対戦になりました。私は15年以上の付き合いながら、初対戦となる同世代のGundavaa との試合です。

Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Gundavaa, B (GM, MGL, 2503)
Chennai Olympiad (8)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Nd7 4. Ba4 Ngf6 5. O-O e6 6. d3 a6 7. c4

この日は初めてc2-c4, d2-d3 セットアップをやってみました。オンラインではかなり練習していたつもりでしたが、ここでは経験の浅さが出ました。

7... Be7 8. Nc3 O-O 9. h3 Qc7 10. Re1


試合後、Misha からは9. Qe2 Ne5 10. Nxe5 dxe5 12. f4! ならば白は指しやすく、黒はNd7-Ne5 を指しづらいのではないかと指摘されました。

10... Ne5 11. Be3 Nfd7 12. Rb1 Bf6 13. Nh2 Nc6 14. Ng4 Bd4 15. Bxc6 bxc6 16. Bxd4?

d4 のアウトポストはポーンで早く埋めさせるのが良いと考えたのですが、ポーンがd4 まで食い込むことで黒がスペースを得るメリットを過小評価していました。代わりに16. Ne2! f5 17. exf5 exf5 18. Nxd4 cxd4 19. Bxd4 fxg4 20. Re7 Rf7 21. Qe2 d5 22. Qe6 Qf4 23. Re1 Nf8 24. Qxc6 Rxe7 25. Rxe7 Qc1+ 26. Kh2 Qf4+ は1つドローで終わる変化として考えられます。

16... cxd4 17. Ne2 e5 18. Ng3 a5 19. Qf3 f6!


ナイト2枚とクイーンをキングサイドに寄せ、何か黒キングへの攻撃が作れないかと考えましたが、7段目を開いてディフェンスされ、白の攻撃が無効化されます。逆にg7-g6, f6-f5 とゆっくり黒がキングサイドを開く構想が見え、自分がかなりまずい状況にいることが分かりました。

20. h4 Nc5 21. Red1 Qd7 22. Nh2 g6 23. h5 Qg7 24. hxg6 hxg6 25. Qe2 f5 26. f3

耐える展開ですが、開くわけにはいかないので仕方がありません。

26... Qf6 27. Nhf1 Ra7 28. Nh1 Rh7 29. Nf2 Kg7 30. Qd2 Qd8 31. b3 Rfh8 32. a3 Ne6 33. g3 f4 34. g4 Rh4!?


黒はhファイルから最終的な突破をはかり、白は基本的にはそれを待ちながらクイーンサイドの反撃に期待するしかありません。

35. b4 Qg8 36. b5 Ng5 37. Kg2 Qh7 38. Qxa5 Rh1 39. Qc7+ Nf7 40. Nxh1 Qxh1+

ここで40手に到達し、時間の余裕はできました。しかし局面はすでに黒がエクスチェンジを捨てて決めにきた段階で、白にはディフェンスがありません。

41. Kf2 Rh3 42. Ke1 Rxf3 43. Kd2 Rf2+ 44. Kc1 Bxg4 45. b6 Bxd1 46. b7 Rc2+ 47. Kxd1 Rf2 0-1


今大会初めてドローチャンスもない完敗ゲームでした。

Open R8 Mongolia - Japan 4-0

Batsuren, Dambasuren (GM, MGL, 2518) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1-0
Gundavaa Bayarsaikhan (GM, MGL, 2503) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 1-0
Bilguun Sumiya (GM, MGL, 2463) - Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) 1-0
Gan-Erdene Sugar (IM, MGL, 2428) - Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) 1-0

Women R8 Japan - Cyprus 2.5-1.5

Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) - Markidou Christianna (CYP, 1701) 0-1
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) Ioannides Liu Alice (CYP, 1292) 1-0
Misawa, Yuki (JPN, 1587) - Bouzana Christina (CYP. 1435) 1/2-1/2
Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) - Sokolova Victoria (CYP, 1193) 1-0


オープンは今大会初のシャットアウト負けでしたが、代わりに女子は5R のパラオ戦以来の嬉しい勝利です!


更新が遅れたため、すでに試合はほぼ終わっていますが、R9 はオープンがアラブ首長国連邦、女子がパラグアイとの対戦です。残り3試合、しっかりと指してきたいと思います。

2022/08/06

Chennai Olympiad R7 Japan - Nepal

ホテルと会場を往復するバスもオリンピアードの特別仕様です。

休憩日明けの7R はオープンがネパール、女子がエチオピアとの対戦となりました。ネパールはこれまでオリンピアード、アジア大会などいくつかの海外大会で対戦しています。私はヨーロッパのIMトーナメントにも参加している若いプレーヤーとの試合になりました。

Thing, B (CM, NEP, 2260) - Kojima, S (IM, JPN, 2346)
Chennai Olympiad (7)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 d6 6. a4 a5 7. O-O h6 8. Nbd2 O-O 9. h3 Ba7 10. Re1 Be6 11. Bb3 Re8 12. Bc2 Qd7 13. Nf1 Rad8 14. Ng3 d5

Italian の変化ですが、基本的にa2-a4、a7-a5 と付き合う形は黒が良いと思っています。私も白番でこのフォーメーションを指しますが、a2-a4 は突かず、1手得をした形にします。

15. Qe2 Bc5!?


少し違う形ですが、Topalov の試合で黒のビショップがBa7-Bc5-Bf8 を見たことがあったので、それを試してみようと思いました。しかし、相手の次の手を見てまた違った試みをします。

16. Nh4 Bxh3!? 17. exd5 Nxd5?

思い切ってビショップを切りましたが、メインの読みはドローでした。17. gxh3 Qxh3 18. Nhf5 Ng4 19. Ne3 Bxe3 20. Bxe3 Qh2+ 21. Kf1 Qh3+= からパペチュアルチェックです。本譜のd5 を先に取る手はすっかり読み抜かしており、ここで対応を誤りました。17... Ne7! とかわせば良かったのですが、本譜は白キングへのアタックを過信しています。

18. gxh3 Nf4 19. Bxf4?


19. Qf3 Nxh3+ 20. Kg2 Nxf2 21. Nhf5+/- と進んだ形は黒にこれ以上期待できるアタックがなく、3ポーンピースでも白が大きく有利なポジションです。本譜はピースを返してくれて勝負できるようになりました。

19... exf4 20. Qf3 fxg3 21. Qxg3 Bd6 22. Qg4 Ne5 23. Qxd7 Nxd7 24. d4 Nf6

駒数はイコールでクイーンを捌き、一気にエンドゲームに入ります。白のポーンはバラバラであるため、チャンスはあると考えていました。

25. Nf5 Bf8 26. Ne3 c5 27. dxc5 Bxc5 28. Nc4 b6 29. Kf1 g6 30. Rxe8+ Rxe8 31. Re1 Rxe1+ 32. Kxe1 Nd5


狙いはNd5-Nf4 でh3 のポーンを狙い、白のピースをディフェンスに縛らせることです。

33. Bd3 Nf4 34. Bf1 f6 35. f3 Kf7 36. Kd1 Nd5 37. Nd2 f5 38. Bc4 Ke6 39. Ke2 Ke5 40. Bxd5 Kxd5

ビショップナイトの交換になり、ナイトよりも働いているビショップ+アクティブなキングを得ました。少し黒が有利な局面で、どう進めるかを考えます。

41. f4 Bd6 42. Kf3 g5 43. fxg5 hxg5 44. b3 Be5 45. Nb1 Kc5 46. Ke3 Bf4+ 47. Kd3 Bc1 48. Kc2 Be3 49. Kd3 Bf4 50. Na3 g4


Na3-Nb5 の動きでc3 を守られることが分かり、おそらく勝つことはできないと分かりました。チームの勝ちはこの時点ですでに決まっていたため、ドロー模様でもとことんやることにします。

51. hxg4 fxg4 52. Nc2 g3 53. Ne1 Kd5 54. Ng2 Bg5 55. Ne1 Ke5 56. Ng2 Kf5 57. b4 Kg4 58. bxa5 Kf3??

残り時間数秒まで考え、実行した1つのブランダーで試合を崩してしまいました。58... bxa5 59. Ke4= でドローです。

59. a6!


指されてみると当然の1手なのですが、59. axb6 しか見えていませんでした。

59... Kxg2 60. a7 Kf2 61. a8=Q g2 62. Qb8 Be3

一瞬、白はクイーンの位置を間違えてドローに持ち込めるのではないかと思いました。ビショップはb6 ポーンを守ると同時に、g1 のプロモーションをサポートする好位置です。

63. Qh2 Bc5 64. Kc4 Kf1


試合後にビショップが戻ればドローだったのではないかと考えました。実際には64... Be3 65. Kd5 Kf1 66. Qh3 Kf2 67. Ke4!+- が白の勝ちを決める手で、g1 は確保しているものの、ビショップ取りとf3 でのクイーンチェックを同時に狙われて黒の負けになります。しかし、白が残り少ない持ち時間でこれを見つけていたかは定かではありません。

65. a5 g1=Q 66. Qxg1+ Bxg1 67. a6 b5+ 68. Kxb5 Ke2 69. c4 1-0

6R と違い、自分がずっと優勢で押す側だったため、1つのブランダーで形勢がひっくり返ってしまう悔しい敗戦でした。気を取り直して次の試合に向かいます。

Open R7 Japan - Nepal 2.5-1.5

Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) - Chaulagain, Purushottam (NEP, 1975) 1-0
Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) - Thing, Bibek (CM, NEP, 2260) 0-1
Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) - Bhandari, Kshitiz (FM, NEP, 2071) 1-0
Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) - Jaiswal, Rupesh (FM, NEP, 2083) 1/2-1/2

Women R6 Ethiopia - Japan 2-2

Haile, Lidet Abate (ETH, 1624) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 1-0
Bantiwalu, Aster Melake (ETH, 1425) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 1-0
Abera, Mekdes Demssie (ETH, 1342) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 0-1
Ayele, Hana Mulugeta (ETH, 1437) - Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) 0-1


オープンチームは私こそ負けたものの、マッチには勝てて一安心です。これでチームは4勝3敗と1つ勝ち越し、再び上位の国にチャレンジすることになります。女子チームは6R のフィジー戦と逆で、上位2つのボードが負けたものの、下位2つが勝ってタイになりました。今日こそチームとして勝つことを願っています。


今日の組み合わせはオープンがモンゴル、女子がキプロスです。私の対戦相手であるGM Gundavaa とは、互いに高校生だった2006年のドーハアジア大会からの付き合いです。今回が初対戦となるので、良いゲームができるよう頑張ってきます。

2022/08/05

Chennai Olympiad R6 Uruguay - Japan

試合会場の入り口付近では、有名な選手を一目見たり、一緒に写真を撮ろうとする地元のチェスファンが、カメラを片手に大勢並んでいます。この日は「Giriだ!」という声が上がり、オランダのAnish Giri を追いかけるファンが複数いました。ちなみにGiri はダッシュで逃げていました。有名選手は試合前から大変です。

私がブログ更新のタイミングを間違えたことと、休憩日の昨日は私が特に出かけなかったため、今日は遅れていた6R の記事をお届けします。この日のオープンチームは、南米ウルグアイとの対戦になりました。ウルグアイはGM Georg Meier がドイツから移籍してきたことで、大幅にパワーアップしています。

Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Diaz Hollemaert, N (IM, URU, 2425)
Chennai Olympiad (6)

1. e4 g6 2. d4 d6 3. Nc3 a6 4. Be3 Nf6 5. f3

Modern Defence は予想の範囲内でしたが、Ng8-Nf6 が早いPirc への変化は予想外でした。ここは5. h3 がメインの準備でしたが、細かい変化を覚えていなかったので早速違うセットアップにしてみます。

5... b5 6. Qd2 Nbd7 7. g4 Bb7 8. g5!?


8. h4 からh4-h5 の押し込みをメインに考えるのもありえそうです。私はh5 にナイトを跳ばし、センターポーンの形を決めさせることにしました。

8... Nh5 9. Nge2 e5 10. Ng3 Nf4 11. Nce2

11. Bxf4?! exf4 12. Qxf4 h6! は手痛い反撃を食らいます。

11... Nxe2 12. Bxe2 h6!? 13. O-O-O?!


この試合はお互いに序盤の10手ほどでかなり時間を使いました。私はクイーン交換を受け入れるつもりでキャスリングをしましたが、Misha からはh2-h4 で黒のピースを抑え込んだままにしたほうが良いと指摘されました。13. h4 hxg5 14. hxg5 Rxh1+ 15. Nxh1 Be7 16. d5! とかわせば、g5 のポーンは残り黒は多少窮屈な状態が続きます。

13... hxg5 14. dxe5 Nxe5 15. Bxg5 Qxg5 16. Qxg5 Bh6 17. h4 Bxg5+ 18. hxg5 Ke7

クイーンが消えて一気にエンドゲームに突入します。この局面は互角ですが、この先のプレーは相手が一枚上手だと思わされる手がいくつかありました。

19. Kd2 d5 20. Ke3 Rxh1 21. Rxh1 c5 22. exd5 Bxd5 23. a3 Rc8 24. Rh4 c4 25. c3


このポーンストラクチャーの固定の仕方は致命的に悪いわけではないのですが、b2ポーンの身動きが取れなくなってしまうため、もう少し違った形にすべきか別の機会に時間を取って考えるつもりです。

25... Nd7 26. Rd4 Nb6 27. Ne4 Be6 28. Nf6?!

d5 のマスを抑えつつ、キングへのけん制にもなると思ってナイトをこの安定したマスに置きましたが、ナイトがf6 で働くのはもう少し違った形でした。ここは28. Rd6! Rb8 29. Rd2= くらいで互角です。

28... Na4 29. Rd2 Rd8


この手を軽視しており、失敗したと感じました。白はb2 のポーンを守り切ることができません。このポーンを捨ててドローを目指す最善策を探しましたが、肝心なところで間違えてしまいました。

30. Bd1?


b2 を取らせた後で、ナイトを簡単に生還させないという基本的な方針はあっていましたが、自身のキングがどこに行くべきかという判断を間違えました。30. Rxd8! Kxd8 31. Bd1! Nxb2 32. Bc2! Ke7 33. Kd4!= 私はキングがc1 を目指してナイトを狙いにいくべきだと思っていましたが、本譜のビショップをぶつける手があるため、そのアイディアは働きません。代わりに黒キングを8段目に下げさせたうえで、どんどん白キングが上がれば、黒のクイーンサイドのポーンを狙うチャンスもあり、十分にドローにできました。

30... Nxb2?!

しかし、相手も時間がギリギリでキングの正しいマスを見失います。30... Rxd2 31. Kxd2 Nxb2 32. Bc2 Bf5! ならば白キングを下げさせたことで得になり、上記と異なる変化になります。

31. Rxd8! Kxd8 32. Bc2 Ke7 33. Kd2?


上記の通り、キングが上がるべきでした。ナイトを低い位置から攻撃することにこだわらず、33. Kd4! とすれば白は問題ありません。

33... Bf5! 34. Bxf5 gxf5 35. Ke3 Nd3 36. f4 Ne1 37. Kd2 Nd3 38. Nh5 a5 39. Ke3 Ne1 40. Kd2?

ここで再度、d2 がキングにとって良くない位置であることを見抜けなかったため、私の負けが決まりました。ちょうど時間の増える魔の40手目です。c2 でのフォークを避け、a3 を取らせないようにするにはこの手しかないと思っていましたが、a3 を捨てても早くキングサイドを捌くことがドローのカギでした。40. Ng7 Nc2+ (40... Ng2+ 41. Kd4! Nxf4 42. Nxf5+ Ke6 43. Ng3 Nd5 44. Ne4 Nc7 45. Ng3=) 41. Kd2 Nxa3 42. Nxf5+ Kd7 43. Ne3 b4 44. cxb4 axb4 45. Kc1 Ke8 46. Nd5 b3 47. Kb2 Nb5 48. f5= 黒のキングサイドのパスポーンは強そうに見えますが、落ちずに前進させる方法がありません。

40... Ng2! 41. Ng7


ナイトを追う手もf5 を守られてしまい、意味がありません。41. Ke2 Kd6 42. Kf2 Nh4-+ さらにナイトを追うとb5-b4 でブレイクされてしまいます。

41... Nxf4 42. Nxf5+ Ke6 43. Nd4+ Kd5 44. Nxb5 Ne6 45. Ke3 Nxg5 46. Kf4 Ne6+ 47. Kf5 Kc5 48. Na7 Nc7 0-1

白を多く持たせてもらっているにもかかわらず、こうして負けてしまいチームメイトには申し訳ないです。次の黒番で挽回したいと思います。

Open R6 Uruguay - Japan 3-1

Meier, Georg (GM, URU, 2613) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1/2-1/2
Diaz Hollemaert, Nahuel (IM, URU, 2425) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 1-0
Vazquez, Facundo (FM, URU, 2336) - Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) 1-0
Roselli Mailhe, Bernardo (IM, URU, 2413) - Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) 1/2-1/2

Women R6 Japan - Fiji 2-2

Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) - Lyons, Kieran (WFM, FIJ, 1767) 1-0
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) - Sewak, Aarti (FIJ, 1412) 1-0
Misawa, Yuki (JPN, 1587) - Terubea, Cydel (FIJ, 1450) 0-1
Arai, Yuki (JPN, 1495) - Prasad, Tanvi (FIJ, 1165) 0-1


ウルグアイからはTuさん、小林くんがドローを取りましたが、残り2人が敗れてマッチは1-3でした。女子はフィジーを相手に上位ボード2つが勝ち、下位ボード2つが負けて2-2の引き分けになっています。後半戦最初となる次のマッチでは、チームとしての勝ちをオープン、女子ともにもぎ取りたいですね。


7R のペアリングはオープンが12年ぶりの対戦となるネパール、女子がエチオピアです。この組み合わせであればどちらも勝ちたい相手ですが、勝負はやってみなければ分かりません。頑張ってきます!

2022/08/03

Chennai Olympiad R5 Japan - Netherlands Antilles

撮影時のみマスクを外しています。

チェンナイオリンピアード5Rは、私が初めての抜け番を貰いました。チームメイトにオランダ領アンティル戦を任せ、私はホテルでライブ観戦です。開始早々、Simonが体調不良のために不戦敗と連絡が入り、嫌な予感がしましたが、唯一相手のほうがレイティングの高いAlexが、黒番で好ゲームを見せてくれました。

Blijstra, W (FM, AHO, 2198) - Averbukh, A (CM, JPN, 2155)
Chennai Olympiad (5)

1. d4 Nf6 2. c4 e5 3. dxe5 Ng4 4. Bf4 Nc6 5. Nf3 Bb4+ 6. Nc3 Qe7 7. e3

Budapest Gambit! 対1.d4 のオープニングではマイナーながら、これが一番だという対策を見つけるのは苦労すると思います。ここは7. Qd5 としてe5 のポーンを守るのがメインセオリーですが、白からそれを外してきたため、黒は戦略的なチャンスが生まれます。

7... Bxc3+!? 8. bxc3 Ngxe5 9. Be2 d6 10. Nxe5 Nxe5 11. O-O Bd7


ダブルビショップを放棄しても、白のポーンストラクチャーを乱して勝負です。次の手は白がダブルポーンを解消しますが、それでも孤立ポーンの問題が残ります。

12. c5 dxc5 13. Qd5 Nc6 14. Bxc7 Be6 15. Qd6 Rc8 16. Qxe7+ Kxe7

黒はクイーンを捌き、マイナーピースとルークのエンドゲームに持ち込みました。ダブルビショップvs. ポーンストラクチャーの良さという典型的な構図ですが、展開の早さもあって黒には不満がなさそうです。

17. Bg3 Rhd8 18. Rfd1 Na5 19. Rxd8?!


私が予測するに、白は次にBg3-Bc7 がフォークのスレットになると勘違いし、この交換を仕掛けたのではないでしょうか。黒がキングでこのルークを取り返さなければいけないようだと少し問題ですが、Rd8-Rd2 と跳びこみがビショップに当たるため、ここはルークで取り返して黒優勢にはっきりなります。

19... Rxd8! 20. a3 Rd2!

こうしてdファイルを抑えたうえで7段目に跳びこんでしまえば、黒の優位は明らかです。さらに通常はダブルビショップはビショップ+ナイトのペアに勝ることが多いですが、ここでは1つのマスを2つのピースで抑えられないという弱点が浮き彫りになります。具体的にはc4 のマスを黒が活用するアイディアに対抗できません。

21. Kf1 Bc4! 22. Bxc4 Nxc4-/+


こうしてアウトポストであるc4 にナイトが侵入してしまえば、黒マスビショップで対抗することはできません。後はクイーンサイドのポーンを落とすか、自身のポーンを伸ばすかでチャンスを拡大するだけです。

23. a4 Kd7 24. a5 Kc6 25. a6 b5 26. Ke1 Kb6 27. Bb8 Rd7 28. Ke2 Na5 0-1

最後は伸びてきたa6 ポーンを落とした時点で白がリザインしました。少し早い気もしますが、これによってスコアをタイにした日本は1、4Bも続けて勝ち、オランダ領アンティルを下しました。一番気になるボードで早めの決着がついたことが、良い影響を与えたかもしれませんね。

Open R5 Japan - Netherlands Antilles 3-1

Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) - Roose, Alex (AHO, 1888) 1-0
Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) - Blijstra, Willem (FM, AHO, 2198) 1-0
Bibby, Simon (FM, JPN, 2147) - van Bemmelen, Ursus (FM, AHO, 2145) 0-1
Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) - Capella, Rurik (AHO, 1952) 1-0

Women R5 Palau - Japan 0-4

Whipps, Kayah Iblai Flores (PLW, 1054) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 0-1
Magno, Angelica (PLW, 1211) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 0-1
Sisior, Destiny (PLW, 1298) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 0-1
Wag-eyen, Rosemarie (PLW) - Arai, Yuki (JPN, 1495) 0-1


5Rにしてようやくオープン、女子ともに揃って勝ちました! 女子は4-0とストレートの勝利が嬉しいですね。どちらもこの勢いで次のラウンドにも向かおうと思います。


今日の6R はオープンがウルグアイ、女子がフィジーとの対戦です。ウルグアイは近年、ドイツからGM Gerog Meier が移籍したことが話題で、今回も1B でウルグアイ代表としてオリンピアードに登場しています。私たちとの試合でもMeier を出してくるため、トップボードでTuさんがどんな試合をするか楽しみです。

2022/08/02

Chennai Olympiad R4 Paraguay - Japan

オリンピアード4日目の様子をインドからお届けします。この日は昼食に日本のインドレストランでも馴染みのある、パラックパニール(写真右)が出ました。ほうれん草とインドのカッテージチーズのカレーですね。今回滞在するホテルの料理は、私が知る過去のオリンピアードの中でも最高で、肉無しでも満足度が高いメニューが多いのが嬉しいです。

この日の日本オープンチームは南米パラグアイとの対戦となりました。私の相手であるDelgado はキューバ出身で、かつてはキューバ代表も務めた実力者です。幸運なことにまたGM戦で白番を引けたので、しっかりと準備をして試合に臨みました。

Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Delgado, R (GM, PAR, 2614)
Chennai Olympiad (4)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 e6 4. O-O Nge7 5. Re1 Nd4!?

予想していた2... d6 3. Bb5+ のMoscow ではなく、2... Nc6 3. Bb5 のRossolimo になりました。黒の6手目は最近人気の出てきた2番手の手でしたが、私は見たことがなくここで時間を使います。メインラインは、5... a6 6. Bf1 d5 7. exd5 Nxd5 8. d4 Nf6 9. Be3 と進みます。

6. Bf1 Nec6 7. d3 Nxf3+ 8. Qxf3 Be7 9. Nd2 O-O 10. c3 b5 11. Qg3 b4 12. Nf3


少し慣れない形ではありましたが、ここまで進んで満足な局面を迎えました。d4 のマスをカバーしながらナイトをキングサイドに運び、Bc1-Bh6 を狙います。この先、互いにセンターポーンをどう動かすかで作戦が大きく変わってきそうです。

12... Kh8 13. Bf4 d5 14. exd5

試合後、Misha からは14. e5 と押し込むのはどうかと言われました。形としてe5 にポーンを指し、キングサイドへのアタックチャンスを求めるのは当然あり得る選択です。一方で私はeファイル、黒マスビショップのh2-b8 ダイアゴナルを閉じるのを嫌い、本譜を選択しました。こちらであれば、e5 のマスはピースで使うチャンスが残ります。

14... Qxd5 15. Ne5 Bb7 16. Be2


私としては、f1 に一度退いたビショップをいかに使い直すかがゲームのカギだと考えていました。f3 のマスを早めに空けたのは、Bf1-Be2-Bf3 を実現するためで、この構想自体は良いものだと思っています。しかし、コンピュータの指摘はポーンを捨ててもd3-d4 と突き、ビショップをd3 に置きなおしてキングサイドを攻めるというものです。16. d4! cxd4 17. Bd3! Nxe5 18. Rxe5 Qc6 19. Rh5 f5 (19... g6 20. Be5+ Kg8 21. Rxh7! Qxg2+ 22. Qxg2 Kxh7 23. Qh3++- これは綺麗にメイトです。) 20. Bb5!+- 変化の一例ですが、こうしてビショップを捨てても黒クイーンをg2 からそらせば、次のQg3-Qg6 に対する受けがなく、白の勝勢でした。

16... Rac8

16... Nxe5 17. Bxe5 f6 18. Bf3 Qd7 19. Bxb7 Qxb7 20. Bd6 と進んだ形は白が少し指しやすいエンドゲームかと試合中は読んでおり、相手もこれを外してきました。

17. Bf3 Qd8 18. Nc4!


ここで最も時間を使い、この手を見つけました。最初はe5 に自然に見える18. Rad1 bxc3 19. bxc3 Ba8= は黒が問題の無い局面です。

18... bxc3 19. bxc3 Qxd3 20. Nd6!?

私が18手目の時点で考えていたのがこの手で、白は捨てたポーンを取り返して十分な局面に持ち込めます。しかし、コンピュータの提案はナイトを戻す手でした。20. Ne5! Qa6 21. Rab1 Ba8 22. Be2 Qa5 23. Bd3+/= と進んだポジションは上記と似ており、白はポーンを捨ててもd3 に置いたビショップでキングサイドを攻撃し、十分な代償がありそうです。

20... Bxd6 21. Bxd6 Rfd8 22. Bxc5 Qxc3 23. Bxc6


ここは異色ビショップにせずにa7 を取る手も考えていましたが、一時的にダブルビショップをキープしても白に残ったaポーンがさほど武器になるとは思えませんでした。実際、23. Bxa7 Qa5 24. Be3 Ba8= と進んだ局面は互角です。

23... Qxg3 24. hxg3 Rxc6 25. Bxa7 Ra8 26. Be3 Rca6

異色ビショップ+2ルーク残る局面を迎えました。これは上手くバックランクメイトやポーン取りのタクティクスを使い、aポーンを助ければドローに十分です。

27. Rec1 Bd5 28. a3 h5 29. Rc7 Kg8 30. Bc5 Ra4 31. Rc1 h4 32. gxh4 Rxh4 33. f3


次のRh4-Rg4 が少し気になるので、それだけ気を付けておけば後は難しくありません。

33... Rc4 34. Rxc4 Bxc4 35. Ba7 Bb5 36. Rb7 Bc6 37. Rb8+ Rxb8 38. Bxb8 1/2-1/2

最後は2つ目のルークも交換してドローにしました。2600台からのドローは前回のオリンピアード以来4年ぶりです。

Open R4 Paraguay - Japan 3-1

Bachmann, Axel (GM, PAR, 2588) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1-0
Delgado Ramirez, Neuris (GM, PAR, 2614) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 1/2-1/2
Cubas, Jose Fernando (GM, PAR, 2451) - Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) 1-0
Jodorcovsky Werjivker, Paulo - Bibby, Simon (FM, JPN, 2147) 1/2-1/2

Women R4 Chinese Taipei - Japan 2.5-1.5

Tsai, Sophie Yi-Hsuan (TPE, 1131) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 0-1
Cho, Hung-Ling (WCM, TPE, 1576) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 1/2-1/2
Weng, Yu-Hsin (TPE, UR) - Arai, Yuki (JPN, 1495) 1-0
Shih, Ching-An (WCM, TPE, 1582) - Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) 1-0


オープンは白番の2人がドローを取りましたが、黒番の2人は負けてしまい、マッチも3-1で敗れています。一方、女子は台湾を相手に接戦でしたが、惜しくも2.5-1.5で敗れました。オープン、女子ともに負けてもチームの雰囲気は悪くありませんので、今日はどちらも勝てることを願っております。私は今日の5Rで初めて抜け番を貰い、ホテルからライブで日本チームを見守ろうと思います。


5R はオープンがオランダ領アンティル、女子がパラオとの試合になりました。ともに格下のチーム相手ですので、ここを勝って前半戦の最後、6R を迎えたいですね。日本チームファイトです!

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