2018/07/30

Chubu Rapid Open 2018 Tournament Report


昨日は中部快速オープンに参加するため、5月以来となる名古屋遠征でした。9月からヨーロッパに渡り、秋の名古屋オープンに参加できない私にとって、年内最後の名古屋でのイベントです。2000オーバーが半分以上という驚きのハイレベルなメンツとなり、優勝を目指してアツい戦いが始まりました。

トーナメント序盤、私は藤沢さん、入江さん、野口さんに3連勝で前半を折り返します。同じく3連勝は馬場さん、Alexのみで、リスト1のTuさんはAlex に負け、リスト5の松尾さんは一昨年のジュニアチャンピオン、田中泰良くんにドローを落としています。泰良くんはカナダでプレーしている中学生で、2.5/3 でぴったり3連勝組の後をつけ、後半戦も上位陣を破って今大会の台風の目となりました。


Baba, M (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2497)
Chubu Rapid Open 2018 (4)
Position After 33... a5

4R との馬場さんとの対戦では、このようなポジションになりました。黒はポーンを捨ててみたものの、代償はイマイチで少し苦しい展開が続きました。しかし、白マスでのプレッシャーを保ってここまで来て、ようやく白のミスが出ます。

34. f3? Qxd3 35. Qb8 Kg8 36. Qxb7 b4


白はピースを取りかえしましたが、その代わりに黒クイーンに潜り込まれ、反撃のチャンスを許しています。34. Bc5! から黒マスビショップを交換していれば、ゆっくり指して白が優勢だったでしょう。

37. Qc8 bxc3!?



ここは時間がほぼない中、パスポーンを作って勝負に行くことにします。しかし、Bd4-Bc5 の手が見えていながら、それに対する正しいディフェンスを探す余裕はなかったのであれば、37... Qd2 からパペチュアルチェックを狙うのが安全策でした。

38. Bc5 Kh7?


これが決定的な間違いで、白はピースアップを保ちながらパスポーンをブロックできます。代わりに38... c2! 39. Qxf8+ (39. Bxf8 ではクイーンに1段目に潜り込まれてからプロモーションされ、白はどうしようもありません。) 39... Kh7 (こうしてチェックされてから初めてキングが避ければ、本譜と違って白クイーンをcファイルから外していますし、なによりポーンが7段目まで前進しています。) 40. Ba3 Qd4+ 41. Kf1 Qa1+ 42. Ke2 Qd1+ 43. Ke3 c1=Q+ 44. Bxc1 Qxc1+ 45. Kf2 Qb2+ これであれば、問題なくドローです。

39. Bxf8 Qd4+ 40. Kh2 Qxh4+ 41. Qh3 Qd8 42. Ba3 g6 43. Bc1 1-0



以下、c1 を抑えられて負けです。ビショップを捨ててパスポーンを作ったのに、それをすぐに生かさなかったのは悔やまれるプレーでした。

これで馬場さんは4連勝。続くAlex との4連勝対決も制して、5R終了時点で優勝を決めました。最終戦もTuさんとドローになり、1P のリードをつけての優勝はさすがです! 私は5R で東芝さんにドローになった後、最後は鈴木さんとの対戦になりました。

Suzuki, M (JPN, 2062) - Kojima, S (IM, JPN, 2497)
Chubu Rapid Open 2018 (6)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Nbd2 Nd7 6. Nb3 Ne7 7. Be3 Bg6 8. Bd3 Nf5 9. Qd2 Be7 10. O-O a5 11. a4 Nxe3 12. Qxe3 O-O 13. Ne1 b6 14. f4 Bxd3 15. Qxd3 c5 16. Qh3 f5



最終戦はここからにしましょう。かつて馬場さんとの全日本選手権のゲームでも、同じようなポーンストラクチャーにしたことがありました。f4-f5 の押し込みを防いでおき、互いにどちらがgポーンを伸ばしてキングサイドを開くかという展開になります。ただし、白は2マイナーピースをすでに交換しているため、アタックの力は不十分で、黒はすでに満足なポジションだと判断できると思います。

17. Nf3 Rc8 18. Rfd1 Kh8 19. Kf2?!


キングの避ける方向として、この手には疑問が残ります。白からg2-g4 とする気配がはっきりとないのであれば、黒はゆっくりとg7-g5 のブレイクを準備できるでしょう。Kg1-Kh1 からルークをh1に戻し、どこかでg2-g4 を仕掛けるべきなのではないかと思います。

19... c4 20. Nc1 Qe8 21. Ne2 Rg8 22. Ng5 Qg6??



しかし、ここで事件が起きました。私たちは互いに何事もなくゲームを進めましたが、後になってこれはディフェンスが成立しておらず、23. Qxh7+! Qxh7 24. Nf7# があることに気付きました。教科書的なクイーン捨てからのナイトの窒息メイトです。黒が正しくh7 とe6 を守るためには、22... Nf8 と指すべきでした。

23. Nf3? h6 24. Ng3 Rcf8 25. Ng1 Qh7


最初思いついた際はルークを最終的にg5 に置けば良いと思っていましたが、それよりもg5 にポーンが残るほうが良いと思いなおし、ゆっくりとg7-g5 の準備を進めます。クイーンもh7 に下げてしまえば、h6 を守りながらgポーンの邪魔からどくことができます。

26. Re1 Rf7 27. Re3 g5!



念願のブレイクをベストのタイミングで実行し、完全に黒がキングサイドでイチシアチブを握りました。後はgファイルを開いた際に理想的なアタックができるようにさらに準備するのみです。

28. N3e2 Nf8 29. g3 Ng6 30. Re1 Rfg7 31. Qf1 gxf4 32. gxf4 Bh4+ 33. Ng3 Nxf4 34. Rf3 Nh5 35. N1e2 f4 36. Nxf4 Nxf4 37. Rxf4 Rxg3 38. Rxh4 Qf5+ 39. Rf4 Qxf4+ 40. Ke2 Rg2+ 0-1


勉強はしていても、実践したことのないアイディアをラピッドで使うのは難しいと実感したゲームでした。これでなんとか4.5/6 となり、去年最終戦負けで逃した入賞に滑り込んだのでした。

1st Place Baba Masahiro 5.5/6
2nd Place Tran Thanh Tu 4.5/6
3rd Place Averbukh Alex 4.5/6
4th Place Kojima Shinya 4.5/6
5th Place Tanaka Tyler 4.5/6

Chubu Rapid Open 2018 Final Standings


終わってみればサマーオープン同様、順番こそ入れ替わったものの、リストトップ4人が4位まで入賞... なのですが、そこに泰良くんが入ったのがすごいです。泰良くんは国内のレイティング1500台でありながら、2000台に3勝1敗1ドローで今大会を乗り切りました。FIDEレイティングが2000台であることを考慮しても、素晴らしい戦績だったと思います。その他、A,B の入賞者、そして参加者、運営に皆さん、この日1日お疲れ様でした。来年以降、また名古屋の大会には顔を出したいと思いますので、その際はよろしくお願い致します。


私の試合での幻のメイトも教科書的できれいでしたが、こちらもなかなか。6Rでのとある最終局面です。


大会終了後は松尾さんと2人で反省会と称し、オリンピアードに向けての話や過去の海外大会の話などをしていました。大阪に帰る松尾さんを見送った後は、1人で指定の新幹線の時間までお茶をします。名古屋駅構内のこちらのカフェは、ぴよりんというひよこ型プリンが名物なのですが、週末は夕方には売り切れるそうで、なかなか実物にはお目にかかることができません。代わりのグレープフルーツのゼリーでほっと一息ついて、東京への帰路についたのでした。

2018/07/17

Summer Open 2018 Day2 Tournament Report


今年のサマーオープン入賞者たち

サマーオープン2日目も無事に昨日終わりました。オープンクラスの入賞者は蓋を開けてみればリスト上位4名で、私が少しリスト順位から落ちたのみでした。入賞だけでなく、参加者の皆さん、2日間に試合お疲れ様でした。

1st Place Tran Thanh Tu 6/6
2nd Place Baba Masahiro 5/6
3rd Place Aoshima Mirai 5/6
4th Place Kojima Shinya 5/6


Tuさんは2日目も全勝で乗り切り、2位以下に1P差をつけての優勝となりました。馬場さん、青嶋くんはTuさんに負けのみで残り5試合を勝ち、私は2ドローで上位3名とは当たらずに5Pです。私の2日目の試合は全てエンドゲームに入り、タフなゲームが続きました。


Kojima, S (IM, JPN, 2497) - Nakamura, N (JPN, 2215)
Summer Open 2018 (4)
Position after 32... Re7

33. Bh6! Bg7 34. Bxg7+ Kxg7 35. Rf7+ Rxf7 36. Rxf7+ Kg8 37. Rc7?!


ここで何を指すか悩みましたが、時間のない中で不正確な手を選んでしまいました。37. e7 Ne5 38. Rf6 Ng6 39. Rxg6+ (この手はなぜか検討戦で見落としていました。) 39... hxg6 40. Bxg6 b5 41. e8=Q+ Rxe8 42. Bxe8 bxa4 43. Bxc6 a3 44. Bd5+ Kg7 45. Kg2 Kf6 46. Kf3 Ke5 47. Bb3 Kd4 48. Ke2 c4 49. Ba2 c3 50. Kd1 Ke4= この変化は白にチャンスがありそうに見えましたが、黒はキングを上手く使ってドローに持ち込むことができます。 他には37. Rb7!? Ne5 38. e7 Ng6 39. Bxg6 hxg6 40. Rxb6 Kf7 41. Rxc6 Rh8+! 42. Kg2 Rh5! 43. Rxg6 Kxe7= この変化もドローです。ただしどちらも黒が気を付けて指さねばならず、実際には決着がつく可能性もあるでしょう。

37... Ne5 38. e7 Ng6 39. Bxg6 hxg6 40. Rxc6 Kf7 41. Rxb6 Rc8!



当然の1手です。aポーンを取る時間が無いのは誤算で、これは負けを覚悟しました。

42. e8=Q+ Kxe8 43. Rxg6 c4 44. Re6+ Kf7?


黒キングはcポーンのサポートとaポーンへのアタックのため、クイーンサイドに向かうのが正確です。このミスによって黒は勝ちのチャンスを失ってしまいました。

45. Re1 c3 46. Kg2 c2 47. Rc1 Rc3 48. Kf2 Ke6 49. Ke2 Ra3 50. Rxc2 Rxa4 1/2-1/2



eファイルのパスポーンの力がどれくらいなのか、判断の難しいゲームでした。続く松本くんとのゲームも序中盤で上手く指せず、ドロー模様のエンドゲームになったはずでしたが...


Matsumoto, Y (JPN, 2036) - Kojima, S (IM, JPN, 2497)
Summer Open 2018 (5)
Position after 20.Ng3

20... Re8!? 21. Nxf5 gxf5


ここはポーンストラクチャーを崩しても勝負することにします。fファイルのダブルポーンは悪い形に見えますが、e4 にナイトが跳んでこないように抑えることで、最大の弱点であるd6 をカバーする役割を果たします。

22. f3 Ne3 23. Rd2 Re5 24. Rde2 Rae8 25. Nf4 b6?



私はe3 に潜り込んだナイトを強い、松本くんは帰る場所がないために弱いと判断してこの局面になりました。白のナイトは当然f4 に跳んでg2 とd5 を守るものだと思っていましたが、私は次のNf3-Nd3-Nxc5 を気にしすぎました。白の狙いはもっとシンプルに、b2-b3 の後でキングを上げてe3 のナイト狙うことです。25... Kf8! 26. b3? (26. Nd3 R5e7 27. Nxc5 dxc5 28. d6 Re6 29. d7 Rd8 30. Rxe3 Ke7!= この1手は少し見つけづらいです。) 26... Nxg2! 27. Rxe5 Nxe1!-/+ この変化のようにRxg2 がチェックにならないようにキングをf8 に避ける手は考えてはいたものの、e1 のルークを取るアイディアを見落としていて、g2 取りが成立するのはf4 のナイトがどいた後のみだと勘違いしていました。これならばe3 のナイトはトラップになることはありません。

26. b3 c4 27. Kd2?!


ここは焦りすぎです。27. c3! b5! 28. Kd2 b4! 29. cxb4 c3+ 30. Kd3 Nxd5 31. Nxd5 Rxd5+ 32. Kxc3+/- ならば本譜と似ていますが、白がポーンアップしていて明確に白優勢です。

27... c3+! 28. Kd3 Nxd5 29. Nxd5 Rxd5+ 30. Kxc3 Rc8+ 31. Kb2 Kg7 32. c4?!



なんとかナイトを落とさずに捌きましたが、まだポーンストラクチャーの悪い黒が気を付けて指さなければいけません。c2-c4 はd4,d3 のマスを弱め、黒の孤立したdポーンを捌くチャンスを与えてしまいます。

32... Rd4 33. g3 Rd3 34. Rf2 d5 35. cxd5 Rxd5 36. Re3 Kf6 37. f4 Rd1 38. Rg2 Rcd8 39. Kc3 R8d4 40. Rg1 R1d2


黒は主な問題を解消しましたが、それでも勝つのは難しい状況です。しかし決定的なミスが白に出ます。

41. a4 b5 42. axb5 axb5 43. b4 Rd5 44. Ra1 R2d4 45. Ra6+ Kg7 46. Rb6 Rc4+ 47. Kb3 Re4 48. Rc3 h5 49. Rb7 Re2 50. Rdd2 51. Rc2??



ルークを交換する際は、ポーンエンディングの結果がどうなるかまで計算しなければいけません。

51... Rxc2 52. Rxc2 Rxc2 53. Kxc2 Kf6 54. Kc3 Ke6 55. Kd4


55. Kd2 Kd5 56. Kd3 f6!-+ があってツークツワンクです。

55... Kd6 56. Kd3 Kd5 57. Kc3 Ke4 58. Kb3 Kd4 0-1



最後はAsaka Samuel くんとのゲームです。昨年、海外から強い中学生が移籍してきたと聞いて彼のプレーは見続けていましたが、対戦は今回が初めてです。彼にとっても国内のレイティングを2100に乗せて初めての大会でした。


Asaka, S (JPN, 2153) - Kojima, S (IM, JPN, 2497)
Summer Open 2018 (6)
Position after 30.Ra2

30... Nb8! 31. Rc2 Rxc2 32. Qxc2 Nc6!


cファイルでルークとクイーンを交換してドロー一直線とはせず、勝負にいくならクイーンは残してナイトを組み変えます。白はa3-a4 を突いてしまったせいでb4 のマスが弱く、黒はそれを利用してチャンスを作りにいきます。

33. Nc1 Qd8 34. Na2 h5 35. Be1? f4!



b4 を守りにビショップが退く手は予想しており、ここがチャンスだと思いました。根元のe3 を崩すことでd4 を弱め、一気にポーンをバラバラにします。

36. Bd2 Qb6 37. Nc1 Bf6 38. Bg6 fxe3 39. Bxe3 Bxd4 40. Bxe8 Bxe3 41. Qg6?


互いに時間切迫の中で白に痛いミスが出ます。黒がすでに有利なのは仕方がありませんが、ここはじっと耐えるしかありません。黒にはぴったりのディフェンスがあるため、クイーンの飛び込みは役に立たないのです。

41... Ne5 42. Qc2 Qd4+



試合後の検討で42... Bh6! 43. Ne2 Qf2!-+ を見つけて、わかりやすく黒が勝ちであると気付きました。本譜でもそうですが、g1 をナイトで守られても攻撃できる手筋を黒は見つけなければいけません。

43. Ke2 Bf4 44. Kf1 Bxh2


44... Qe3! 45. Ne2 Nd3!-+ は見つけるべきでした。h2 を取るよりも、c1-h6 のダイアゴナルに利かせておくほうがビショップは仕事をします。

45. Ne2 Qe3 46. Bg6 Nc6 0-1



最後はSamuel くんがh5 のポーンを取ったものの、時計を推し損ねて時間が切れて負け。黒はビショップを組み直して大きく優勢ですが、まだ決定的な勝ちではないためもったいない負けでした。

なんとかこの最終戦を勝って5Pグループに滑り込みました。昨年は初戦でフランスのプレーヤーに負けたものの、最後に南條くんと当たる1B まで上がりましたが、今回はそれもなく、やや消化不良です。なかなか思うような指しまわしができない中で結果を拾えたのは収穫だと思いつつ、次の大会ではもう少し内容もついてくるように修正したいと思います。


試合後はフランスからの一時帰国組と、京急蒲田近くの海鮮料理のお店へ。私が頼んだこぼれ寿司はこのボリュームで何が何やら(笑)


そして意外なイベントとして、マジシャンが席まで足を運んでくれて目の前でマジックを披露してくれました。自分のサインを入れたトランプが、束の中から一番上へ、かと思えばポケットの中へ。そして極めつけは、未開封のペットボトルの中から現れました! 心くんも円造くんも、フランス帰国直前に良いお土産ができたようです。

2018/07/15

Summer Open 2018 Da1 Tournament Report


会場は久々のPIO です。Photo by Yamada, A

今日から2日間、蒲田でサマーオープンが開催されています。私はTuさんに次いでリスト2での参加となりましたが、初戦でいきなりまいったペアリングとなりました。円造くんはフランスから一時帰国中の中学生で、7月に2回レッスンを行っています。事前に指した際も、FIDEレイティング以上の実力を感じました。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Motoyama, E (FRA, 1996)
Summer Open 2018 (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 d5 5. cxd5 Nxd5 6. Bg2 Nb6 7. Nc3 O-O 8. O-O Nc6 9. e3 e5!?



現在の主流は9... Re8 ですが、こちらもまだ指せるでしょう。実はさほど深く研究していませんでした。

10. d5 Na5 11. e4 c6 12. Bg5 f6 13. Be3 cxd5 14. Bxb6 Qxb6 15. Nxd5 Qd8 16. Rc1 Nc6!


つい最近見たフランスのトップGM の1人、Fressinet のゲームでは、16... Rf7? 17. b4! Nc6 18. b5 Na5 19. Nc7! Qxd1 20. Rfxd1 Rb8 21. Rd8+ Rf8 22. Ne8!+- という試合を見ていました。しかしこのライン、調べてみると94年に指されたゲームの解説の分岐にも書かれていました。このゲームを見た際に16... Nc6 も少し考えていましたが、ベストの変化を見つけられませんでした。

17. Qb3



ここは少し悩むところですが、17. b4 Bg4 (17... Be6 18. b5 Bxd5 19. exd5! Ne7 (19... Nb4 20. d6) 20. d6! Nc8 21. Qb3+ Kh8 22. Rfd1+/-) 18. Qb3 こうした変化のほうが多少良かったかもしれません。しかし、私の感覚ではb7を当てつつ、素早くd1 にルークを回せる本譜が自然に感じました。

17... Rf7 18. Rfd1 Be6 19. Qe3?!


白がはっきりとしたアドバンテージを掴むのは簡単ではないですが、試合後に調べたところ、19. h4!? が面白いかもしれません。アイディアはKg1-Kh2, Bg2-Bh3 から白マスビショップを交換し、d5 のアウトポストのコントロールを強めることです。これをやらなかったため、本譜ではd5 のナイトを簡単に捌かれ、黒が満足になってしまいます。

19... Rd7 20. a3 Ne7 21. Nxe7+ Qxe7 22. Rxd7 Qxd7 23. Bf1 Bf8



お互いにポーンに遮られたビショップを組みなおします。黒にダブルビショップを持たせている白は、白マスビショップを交換したのちにナイトを再びd5に組み替えるのが理想ですが、手数がかかりすぎて実現は難しく、チャンスを掴みづらい局面です。

24. Bc4 Rc8 25. Qb3 Rxc4?!


ここは黒に不正確な手がありました。ビショップペアを残すべき黒は、25... Kh8! 26. Rc3 Bh3!=/+ という選択肢を見落としています。

26. Rxc4 b5 27. Rc7 Qxc7 28. Qxe6+ Kg7 29. g4!?



互いに時間切迫の中、私はなんとか勝ちのチャンスを作ろうと画策します。g3-g4-g5 というプランはシンプルですが、どう止めるべきか黒は悩むところでしょう。

29... Qc1+ 30. Kg2 Qf4 31. g5?!


クイーンをf4に振られる変化も考えており、それにもgポーンの押し込みだと思い込んでいました。しかし、コンピュータは全く予想していなかった手を示します。31. Qd7+! Kh8 32. h3! Qxe4 33. Qf7! Qa8 34. Qxf6+ Bg7 35. Qe6!+/- 確かにこうしてf6 を取ってe5 を弱めれば、白がまだ勝ちのチャンスを残しているように見えます。しかし、e4 を早々に取らせる変化は勇気がいりますし、実際私はほとんど思いつきませんでした。

31... f5


31... fxg5 32. Qxe5+ Qxe5 33. Nxe5 Bd6 34. Nc6 Bc5= これでも形勢互角という評価ですが、白にのみパスポーンができるために少し黒は躊躇しそうです。本譜を選ぶ気持ちも理解できます。

32. Qf6+



試合後の検討で、32. Qxe5+ Qxe5 33. Nxe5 fxe4 34. Kg3 Bc5 35. Kf4 Bd4! 36. b3 Bc5! 37. a4 bxa4 38. bxa4 Bxf2 39. Kxe4 ならば、黒はドローに十分ではないかと話し合いしました。ただ本譜の手順では白に一切のチャンスがなく、こちらの分岐ならば黒は間違えないように正確に指す必要があります。ならば白が勝つためにどちらを選ぶべきだったかは明らかです。

32... Kg8 33. Nxe5 Qxe4+ 34. Kg3 Qd5!


恥ずかしながら、この手を見落としており、34... Qb7 35. Qe6+ ならチャンスがあると思っていました。とほほ...

35. f4 Bg7 36. Qe7 Bxe5 37. Qe8+ Kg7 38. Qe7+ Kg8 39. Qe8+ 1/2-1/2



最後はどうしようもなく、私からパペチュアルチェックを入れました。ポイントは落としましたが、色々と勉強になるゲームで良かったです。

続くラウンドは大西さん、青木さんに勝って2.5/3 となっています。加速が外れた3R は上位にとって多少ゆるめの当たりとなり、明日の4Rからまた上位同士の対戦になります。私は中村くんに白を引いたので、ここを勝ってTuさん、馬場さんら全勝組を追いかけたいところですね。ペアリングはChess Results で確認することができます。

Summer Open R4 Pairings

それでは皆さん、明日も暑くなりそうですが、ばてずに後半戦も乗り切りましょう。2日目もよろしくお願い致します。



2018/07/14

Indian Wedding Vol.3


インド滞在最終日のこの日は、午後からショッピングモールへ。イベントが始まるのが夕方からと聞き、ホテルでゆっくりしてるだけでは勿体ないと、外に出ることにします。ファッションブランドは日本やヨーロッパでも見られるものが多かったですが、本屋や雑貨、スーパーマーケットなどはインド独自のものをたくさん見ることができました。


スーパーマーケットの片隅ではチェスセットを発見。少しおもちゃ色が強いですかね。


スパイスの樽量り売り! インドの町中ではこうしたスパイスを売る店があるイメージでしたが、モール内のスーパーマーケットでもこうした形式で販売されることに驚きです。それだけインドの家庭では、自分で購入したスパイスを調合するのが普通ということですね。他にもスーパーマーケットでは、お茶やインスタント麺を見つけてゲットしてきました。


ホテル近くにあったラクナウの最高裁判所。この先にラクナウのチェスセンターがあり、すごく行ってみたかったのですが、時間の関係で断念しました。今回はチェスがメインの旅ではないですものね。


夕方からはこの日のイベントが始まります。こちらの部屋はエキゾチックに飾られ、新郎の到着を待っています。


新郎側の関係者が中心で集まっていたので、これはグジャラートで2日目に見た儀式の新郎サイドなのでしょうかね。新郎も前日とは全く違う、インド風の衣装でばっちり決めています。


21時頃になると、食事会場も準備が進んできました。それにしてもハイアットリージェンシーの内装は非常に豪華です!


ただし、私たちは23時頃のタクシーで空港に向かわなければならず、メインまではありつけませんでした... そのため前日同様、ホテルマンが運んでくれる前菜を中心にお腹を満たします。やはりここでもインドのカッテージチーズ、パニールは美味しかったです。


ホテルを出る直前、最後に見ることができたイベントはホテルの玄関先で行われていました。太鼓で音頭を取る男性を中心に、完全にお祭り騒ぎです。他の宿泊は驚いていたのか、インドでは結婚式の度にこうなので慣れたものなのか(笑)


しばらくすると、新郎が登場します。なんだか頭二つ分ばかり高いような...


馬ですよ!


今回の結婚式では色々と予想外のことがありましたが、まさか新郎が馬に乗って現れるとは思いませんでした。馬もドレスアップして、どことなく誇らしげですし、インドの衣装に身を包んだ彼も実に絵になります。日本で真似すればキザになりすぎる演出も、インドではすんなり受け入れられますね。


イベント自体はまだ数日続きましたが、私たちは帰国しなければいけないため、ここでお別れでした。実に濃密な数日間で、人生でもなかなかできない体験をさせてもらえました。新婦側の家族の皆さん、招いてくださり、ありがとうございました! また日本でも交流できる機会を楽しみにしています。

2018/07/11

Indian Wedding Vol.2


路傍の牛

インドに到着して2回目の朝は4時半に起き、前日利用したアーメダバード空港から、ラクナウ空港へと向かいます。前日祭では新婦側のゲストが大勢集まり、そのメンバーとともに空港へ向かうので、その様子はさながら民族大移動。40人を超えるグループで海外を移動するのは初めてのことです。ラクナウ空港に向かう道中、車窓からは牛の姿を確認できました。


正午をまわった頃にラクナウに到着し、そこから結婚式場のホテルまでは車ですぐでした。早起きの睡眠不足を解消するために少し休憩を取り、夕方からの式に備えます。19時半に式場に移動すると、新郎側の招待客も交じり、かなりの人数が今か今かとイベントのスタートを待っていました。部屋の広さは日本の100人規模の披露宴会場くらいですが、丸テーブルが置かれているのは一部で、ステージ側は座席のみ。かなりの人数が招待されていそうです。


新郎新婦の入場を待つ間、ホテルマンが前菜を席まで運んでくれます。野菜を揚げて甘辛いソースにくぐらせたもの、パイナップルの炒めたもの、香辛料の入ったコロッケなど。私はタンドリーチーズが気に入って、数えきれないほど食べていました。久々に食べましたが、インドのパニールというカッテージチーズは私の好物です。


会場到着から1時間ばかりが過ぎ、ようやく新郎新婦入場です。インドらしい衣装に身を包んだ2人はステージ上で大量のカメラに囲まれます。少し落ち着いたのち、会場前のソファーへ。日本で言うところの高砂ですね。


ここからがこの日のイベントの本番といっても良いでしょう。インド映画さながら、プロのダンサーが踊りを披露します。


そして男女2人組の司会が登場。半分はヒンディー語なので、何をしゃべっているかは分からない部分が多かったですが、明らかにしゃべりのプロです。それも日本の披露宴で司会のようなしゃべりではなく、バラエティー番組の司会のようなかけあいでイベントを進行します。


少年たちもサングラスでばっちり決め、プロのダンサーを従えて踊ります。


少女だって踊ります。


踊りのテーマや曲調に合わせて背景のディスプレーも模様を変え


カラフルな扇も広がります。


これもまた背景が細かい。バクーで見た絨毯博物館を彷彿とさせます。


ダンス鑑賞を抜けて廊下に出ると、ブュッフェ形式のディナーを楽しむことができました。しかし、前菜として運ばれたパニール食べ過ぎてメインが進まない... それでも、去年のマン島で初めて食し、お気に入りメニューとなったビリヤニをゲットできて嬉しかったです。


スタートから2時間半が経過して、新郎新婦、さらには親族がステージに上がって踊りだします。そろそろフィナーレか?


まだ終わりません! 新郎(イケメン)も2人の姉妹と一緒にキレキレのダンスを披露。主役がステージに上がり、会場は大いに沸きます。


新婦も妹とステージに上がります。この妹さんが、今回私たちをインドに招待してくれました。そして姉妹のダンスが終わると、司会から驚きの言葉が...

「次は日本からのスペシャルゲスト~」
「!?!」

そんなわけで、私たちも呼ばれてステージに上がりました(笑) インドの感想を求められあたふた。そしてさも当然のように「インドに来たなら、踊らないとね!」 と突然の振り。我々がどんな踊りで目の肥えたインド人たちを納得させたかはご想像にお任せしますが、なんとかこれも乗り切りました。前日は数十人に交じってのダンスでまだ気楽にできましたが、翌日にはステージ上で100人単位の招待客を前にダンスすることになるとは(笑) これも海外結婚式での良い経験です。


最後は新郎新婦揃ってのダンスから、2人の熱愛ぶりがうかがえるムービーが流れてフィニッシュです。ちなみにこのムービー、日本の披露宴で流すような静止画を繋げたものではなく、全て動画でした。撮影の手法、演出、編集のどれをとってもプロの仕事で、完全に2人は映画の主役のような輝きを見せていました。2人とも末永くお幸せに、と言いたいところですが、彼らの結婚式はまだまだ続きます。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.