2018/10/30

Third Saturday GM October 2018 Tournament Review


全セクションの参加者たちと

初参加であったDjenovic のThird Saturday トーナメントは、私にとって思いがけないものになりました。最終戦でのNikceviv への負けは悔しかったものの、4勝1敗4ドローで3つ勝ち越し、パフォーマンス2511という結果は、私がこれまで参加してきた大会でもベストに近い戦績です。これまで参加したトーナメントの中で、最もGMノーム獲得に手応えのあった大会であることは間違いありません。GM 3人を抑えての優勝も嬉しい結果でした。GMトーナメントは賞金が出るわけではなく、あくまでノームとレイティングのみをかけて戦うものですが、それでも日本の大会ですら遠ざかっていた優勝を、こうして海外のレベルの高い大会で成し遂げられて嬉しくないはずはありません。

来月はセルビアのノビサドでも連続して大会があり、ハルカーニも含めてどこに行くか迷っていましたが、来月もモンテネグロに行くことを決めて、その旨をオーガナイザーに伝えました。ただし、ルートを少し変えて、オーストリアのウィーン、モンテネグロの首都、ポドゴリツァ、有名な美しい村、コトルなどを経由してゆっくり来ようかと考えています。来月も結果が良いようであれば、12月も参加したいくらいですね。


ちなみにこの大会の舞台であるデノビッチは、これまでお伝えした通りモンテネグロの静かな海辺の村で、本当に海以外何もありません。Djenovic というワードで検索しても、観光名所は数キロ離れたHerceg Novi が紹介されるくらいです。最寄りのバス停は機能していないようで、アクセスも悪く、タクシーを呼ぶか、誰かの車に乗せてもらわなければどこにも行けません。しかし、それこそがチェスに集中できる環境として、ある意味良いのではないかとも思える10日間の滞在でした。毎日研究をしているか、部屋か海でのんびりしているか、どちらかです。観光に行きたければ、大会の前後の期間を使えば良いですしね。


今月の試合内容についても、色々と満足な点、反省のあった点が見えています。3R のKotronias とのゲームは、特に大きなミスも緩手もなく、今年のベストゲーム候補の1つです。調子を落としているとはいえ、彼のような経験のあるGM に完勝できたことは、今後試合を続けるうえでも大きな自信になると思います。また以前とは違い、ファイティングなゲームが増えて様々なポジションを考えるようになりました。特にオリンピアードから続いている、クイーンエンディングやルークエンディングなどのエンドゲームの経験は、勝ち負けに関係なく大きな財産になりそうです。パペチュアルチェックの切り方や、メイトになりやすいアタックの作り方も、これまで自分が意識しつつも避けてきた苦手分野として、どう克服するか考えてみようと思います。

最後にレイティングのことですが、デノビッチの9試合でレイティングは+12.3 となり、FIDE への大会報告が間に合うようであれば、私の11月のレイティングは2432 となります。この数字は羽生さんがこれまで記録していた2415 を抜き、日本籍のプレーヤーの歴代最高の数字となります。このレイティングを超えるプレーヤーに何人か勝っておきながらも、自分がこの数字を背負う実力があるのか、まだ自信はありません。それは来月、このレイティングでプレーしながら感じていきたいと思っています。12月の頭にはあっさり元のレイティングに戻っているということがないようにし、逆にさらにレイティングを上げて、GMノームを狙えるように頑張ります。オリンピアードからの遠征が1か月を超えて、まだノームは達成できていませんが、引き続き応援をよろしくお願い致します。

2018/10/29

Third Saturday GM October 2018 R9


モンテネグロのThird Saturday 最終戦、私はGM Nikcevic に白で挑みます。彼はここまで勝ったり負けたりではありますが、初戦でKotronias のドローオファーを蹴って勝ったのが印象的でした。これまでIMノームのかかった最終戦は幾度となく経験してきましたが、今回が人生初のGMノームをかけた最終戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2424)
Third Saturday GM October 2018 (9)

1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 e6 5. Nc3 Nf6 6. g3 Qb6 7. Ndb5 Ne5 8. Bg2 a6 9. Qa4



GMノームをかけた最終戦、勝つために何を指せば良いのか試合前も試合中もとても悩みました。Nikcevic は私と白番のオープニングが、1. Nf3 からのEnglish と被っており、私よりもはるかに経験があります。そんな彼でも、この変化は7. Nb3 がレパートリーで、こちらのラインは指さないことを事前にチェックしていました。案の定、試合が始まってみると7手目からかなり時間を使って考え始めます。

9... Bc5!?


この手は初めて見ました。9... Rb8 10. Na3 Bxa3 11. Qxa3 Nxc4 12. Qb3 という変化を予想していた私も、ここから時間を使って考え始めます。

10. O-O Nxc4 11. b3!?



私はここで早々に勝負の手を出します。単純に考えればナイトを取り合う場面ですが、私はそれよりもポーンを捨てる変化がこれまで研究してきたラインに似ていて面白いと感じました。これまでの実戦例では、11. Qxc4 axb5 12. Qxb5 と進んで白十分なようです。

11... Nd6 12. Nxd6+ Qxd6 13. Bf4


白はc4をタダで取らせてしまいましたが、その分黒のピースを何度も動かさせ、それを追いかけてピースの展開のリードを広げます。

13... Qe7 14. Rac1?



しかし、こうしたギャンビット系のオープニングでは、ちょっとした緩手で苦しくなるものです。私としては、cファイルをコントロールしてc5 のビショップをターゲットにするプランが自然だと思いましたが、これでは黒が問題なくなってしまいます。代わりに14. Bg5! h6 15. Bxf6 Qxf6 (15... gxf6 16. Ne4) 16. Ne4 Qe7 17. Nxc5 Qxc5 18. Rac1+/= とするほうが良く、ピースを捌いてもcファイルのコントロールで、白は十分にポーンの代償を伴ってプレーできるようになります。

14... O-O 15. Bg5 d5


1手遅れてのBf4-Bg5 には、当然のごとく黒はdポーンを伸ばしてNc3-Ne4 を防ぎます。これに対して白はe2-e4 からのブレイクのアイディアを使って満足だと思っていましたが、Bc8-Bd7 がクイーントラップのスレットになっているため、すぐにはeポーン突きを実行できません。さらにb2-b3 と伸びたことの弱点がこの後で露見します。

16. Qh4 Ba3!



当たり前と言えばそれまでなのですが、黒はターゲットになるビショップを逃がしつつ、c1 のルークをアタックすることでテンポを得て、白のe2-e4 を遅らせます。この手を許してしまうことが、b2-b3Ra1-Rc1 の組み合わせの最大の失敗でした。

17. Rcd1 h6 18. Bxf6 Qxf6 19. Qxf6 gxf6 20. e4 dxe4 21. Nxe4


そしてこの試合の一番の反省点でもあるのが、こうしたポジションの形勢評価です。私はこの時点では、白は理想的な展開ではなくとも、まだb7 を取りかえして戦えるのではないかと安直に考えていました。しかし、ポーンを取りかえして異色ビショップにしたとしても、黒はf2 のポーンを狙うことができるためにはっきりと優勢です。これはFirst Saturday のPlat戦と同じであることに少ししてから気づき、段々と焦り始めます。こうしたことは、クイーンを交換する前から認識できなければいけません。

21... f5 22. Nd6 Ra7!



Nikcevic のプランの立て方、そして要所要所での手はとても勉強になりました。私はなぜか22... Rb8 しか考えておらず、黒はc8 のビショップの展開に長く苦労するので、ポーンの代償は多少あるだろうと、この手を見るまで思っていました。

23. Rd3 b5 24. Rfd1 Rc7 25. Bf3 Rd8 26. Nxc8


次にRcd7 が困るため、ここで不本意ながら相手の使えていないビショップを取らざるをえません。一瞬、b5 のポーンが取れるのではないかと思いましたが、ピースがトラップされてしまいます。26. Nxb5? Rxd3 27. Nxc7 Rxf3 28. Rd8+ Kh7! 29. Rxc8 Rc3-+ 黒キングの寄けるマスがg7 ではなくh7 であることがポイントで、c7 のナイトをピンにした黒が勝ちとなります。

26... Rdxc8 27. Rd7 Kf8 28. Bh5 Be7 29. R1d2 b4 30. Be2?



時間が増えるまであと10手を、残り時間2分を切る中で正確に指すのは難しいにしろ、このミスはひどかったです... 依然として苦しいですが、30. Rxc7 Rxc7 31. Be2 Rc1+ 32. Kg2 a5 33. f4 Bc5-/+ としておくほうが良かったでしょう。

30... Rxd7 31. Rxd7 Rc2-+


こうして7段目に入られ、a2,f2 がどうしようもなくなった時点で勝負は決しました。勝ちにいくためにリスクを取った結果ですので仕方ないと言えば仕方がないですが、途中の手の不正確さ、形勢評価の甘さは反省材料として、しっかりブダペストに持って帰ろうと思います。

32. Bxa6 Bc5 33. Rd8+ Ke7 34. Rc8 Bxf2+ 35. Kf1 Rxa2 36. Be2 Bd4 37. Rc4 Bc3 38. Rh4 Bd2 39. Rd4 Rb2 40. Bc4 Be3 41. Rd3 f4 42. gxf4 Bxf4 43. h3 f5 44. Bb5 Rd2 0-1



すでにご存じのかたも多かったと思いますが、こうして最終戦は敗れてしまい、初のGMノーム獲得はお預けとなってしまいました。また週末にブダペストで始まるトーナメントで出直しです。応援ありがとうございました!

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347) 1/2-1/2
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424) 0-1

Third Saturday GM October 2018

+3 Kojima
+2 Miljković, Nikčević
+1 Atakisi
+-0 Gungl, Manush
-1 Kotronias, Kargin
-3 Rabrenović, Der Manuelian

最終戦は予想に反してファイティングゲームばかりで、勝ち星が大きく変動しました。ノームを逃したことは残念でしたが、それでもこうしてGMトーナメントで優勝できたことは嬉しいですね。これについてはまた後日、今大会の総評の記事でお伝えしようかと思います。


天気はあいにくですが、無事にクロアチアのドゥブロブニクへと到着しました。今日から3日間をこの街で過ごし、ブダペストへ帰ります。

2018/10/28

Third Saturday GM October 2018 R8


モンテネグロのThird Saturday は8R で、ともに3つ勝ち越ししているトルコのIM Atakisi との直接対決を迎えます。今大会の優勝の行方を決めるだけでなく、勝ったほうがGMノームにわずかに望みを繋げられるだけに、互いに大きな意味を持つ一戦です。

Atakisi, U (IM, TUR, 2394) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Third Saturday GM October 2018 (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nh3



Atakisi は今大会、Manush 相手にCaro-Kann Exchange を試していましたが、互いに勝ちを狙うこのラウンドは、違う変化になることも予想していました。この変化に対しても、Nakamura が使った新しいアイディアを用意しています。

6... Nd7!? 7. Bc4 Ngf6 8. Nf4 Qc7


白のh2-h4 に対してe7-e5 を返せるようにするため、e7-e6 をキープするのが黒のアイディアです。

9. Qe2 Nb6



9... e6 10. Bxe6 fxe6 11. Nxe6 Qa5+ 12. Bd2 Bb4 13. c3 Bd6 は黒が指せますが、相手の狙い通りといった感じでしょう。Nd7-Nb6-Nbd5 はよくある安全策で、オリンピアード中にMisha とチェックしていました。

10. Bb3 a5 11. a4 Nbd5 12. Nxg6


12. Nxd5 Nxd5 13. O-O e6 14. f4 O-O-O= が私の読んでいた変化で、黒は大丈夫でしょう。本譜でも白はダブルビショップを持つ代わりに、いくつかのポーンをさらに突かなければいけなくなり、ピースの展開の早さで黒は問題ないと思っていました。

12... hxg6 13. c3 e6 14. h4 Bd6 15. Ne4 Nxe4 16. Qxe4 O-O-O 17. Bg5 Be7



黒マスビショップを交換し、いよいよナイトvs. ビショップの構図となります。黒のナイトはd5 がかなり良いマスで、b4 に潜り込めるためにc3-c4 を恐れる必要がありません。これこそ、早い段階でa7-a5 を突き、白にa2-a4 を突かせた狙いです。

18. Bxe7 Qxe7 19. O-O-O g5! 20. hxg5


ここは難しい判断ですが、黒のクイーンをアクティブにさせないために、20. h5 Rh6= もあったと思います。将来的に白がg2-g4 を突くようであれば、f4 がナイトにとって絶好のアウトポストとなります。

20... Qxg5+ 21. Kb1 Nf6 22. Qf3 Qg4



これでクイーンを交換すれば、ナイトのほうがビショップよりも柔軟性があり、キングサイドのポーンを狙って黒が良いと思いました。しかし、Atakisi は私の読んでいなかったアイディアでポーンを守ります。

23. Rxh8 Rxh8 24. Qxg4 Nxg4 25. Rd3 Nf6


25... Rh1+ 26. Ka2 (26. Kc2 Kd7! 27. Rg3 Rh4! e3 がチェックになるのがポイントです。) 26... Nf6 27. Rg3 Rh7 細かな差かもしれませんが、こうして白キングをセンターから遠ざけておくのも手でした。

26. Rg3 Rh7 27. Bc2 g6 28. Kc1 Kd7



キングでf6 のナイトを守れるようにしておけば、Rg3-Rf3 も怖くありません。これでルークが自由になり、潜り込んでチャンスを作りにいけます。

29. Rg5 b6 30. Kd2 Nd5 31. Be4 Rh1 32. Rg3 Ra1 33. Bc2 Rg1 34. Be4 Nf6 35. Bf3?


ここでどうしてAtakisi が読み間違いをしたのかは不思議です。このビショップの位置では、ポーンを守ることができません。35. Bc2 Ke7=/+ で黒は考えなおしです。

35... Rb1! 36. Kc2 Rf1 37. Rh3 Rxf2+



こうしてポーンを取り、俄然勝つ気が湧いてきました。相手のルークの反撃を極力抑え込み、キングサイドのポーンマジョリティを活かしてエンドゲームで勝つ方法を考えます。

38. Kb3 g5!


時間が増える直前、早めにgポーンを伸ばしてビショップを脅かすのが良いアイディアだと気付きました。ビショップが不安定になれば、g2 のポーンは風前の灯火です。

39. Rh6 Nd5 40. Rh7 Kd6!



40手目で落ち着いてこの手を指せたことも、自分としては嬉しいポイントです。白はビショップがピンになり、g5-g4 を食らってしまうため、f7 を取ることができません。

41. Rg7 f6 42. Bxd5 exd5!


42... cxd5 43. g3 Rg2 44. Rb7 Kc6 45. Re7 Re2 でも黒有利ですが、gポーンを取るのが遅れてしまいます。なるべく相手に反撃のチャンスを与えぬポーンストラクチャーを目指します。

43. g4 Rf4 44. Rf7 c5!



ここも6段目にポーンが並んだままだと、白ルークにまとめて狙われてしまうため、ポーンを進めて捌いてしまいます。

45. Rb7 Kc6 46. Rf7 cxd4 47. cxd4 Kd6?!


試合後、Atakisi からはどうしてd4 を取らなかったのかと聞かれました。すぐには意味が分かりませんでしたが、47... Rxd4! 48. Rxf6+ Kc5-+ ならば次にg4 も取って2ポーンアップになり、黒が簡単に勝ちです。fポーンを残し、2コネクテッドパスポーンで勝負することばかり考えていました。

48. Rb7 Rxg4 49. Rxb6+ Ke7 50. Ra6 Rxd4 51. Rxa5 g4 52. Ra7+ Kf8 53. Rc7



53. a5 g3 54. Ra8+ Kg7 55. Ra7+ Kh6 56. Ra8 f5 57. Rg8 Rg4 58. Rxg4 fxg4 59. a6 g2 60. a7 g1=Q 61. a8=Q Qe3+ 62. Ka2 d4-+ このクイーンエンディングも、黒はさらにプロモーションしそうなポーンを2つ持つため、なんとか勝てそうです。

53... Rc4! 54. Rd7 g3 55. Rxd5 Rc1?!


試合中はこれで決まったと思いました。アイディアは相手に1段目にルークを退かせないようにしつつプロモーションをサポートし、いざというときにはRc1-Ra1 で相手のポーンを止めることです。しかし、基本通りにルークはパスポーンの後ろに回るが正解でした。55... Rg4! 56. Rd1 Ke7! この手をきちんと考えていませんでした。8段目にルークを退けるようにしておけば、相手のパスポーンは怖くありません。57. a5 f5 58. a6 f4 59. a7 Rg8 60. Rg1 Ra8 61. Kc4 Rxa7 62. Kd4 Kf6 63. Ke4 Kg5-+ こうしてコネクテッドパスポーンをある程度進めたうえで、相手のパスポーンを取ってしまえば黒は楽に勝ちです。

56. Rd2?



私もこれしかなく、黒の勝ちは揺るがないと思っていました。しかし、First Saturday のNguyen戦のエンドゲーム同様、相手のルークの動きに見落としがあります。56. Rd8+! Ke7 (56... Kg7? 57. Rd3! これでチェックを絡めるアイディアが生まれるため、白はルークをgファイルに振ることができます。) 57. Rg8 Rg1 58. a5 Kf7 59. Rg4 f5 60. Rg5 Kf6 61. Rg8 f4 62. Ka2 Rd1 63. b4 Rd6 64. Kb3 Kf7 65. Rg4 f3 66. Rf4+ Rf6 67. Rxf6+ Kxf6 68. a6 f2 69. a7 f1=Q 70. a8=Q Qd3+ 71. Ka4 Qc2+ 72. Kb5 g2 73. Qh8+ Kg5 74. Qd8+ Kf4 75. Qd6+ Kf3 76. Qf6+ Ke2 77. Qe7+ Kd2 78. Qg5+ Kd1 79. Qd5+ Kc1 80. Qd4 Qe2+ 81. Kb6 Qf1 82. Qc3+ Kd1 83. Qd4+ Kc2 84. Qe4+ Kc3 85. Qe5+ Kxb4-+ 長い手順でクイーンエンディングは勝ちになりそうですが、黒が大変なのは明らかです。お互いにこうした変化があるのは全く見えていませんでした。

56... f5 57. a5 f4 58. Rd4 g2


ここはもう、ルークを貰って十分に勝ちです。黒キングはクイーンサイドに近く、白のパスポーンを止めに行くことが可能です。

59. Rxf4+ Ke7 60. Rg4 g1=Q 61. Rxg1 Rxg1 62. Ka4 Rg5!



最も分かりやすく、5段目でカットオフして白キングを上がれなくしておきます。

63. a6 Kd7 64. a7 Rg8 65. Kb5 Kc7 66. Ka6 Rg6+ 67. Kb5 Kb7 0-1


このトップ争いを制し、私が4つ勝ち越しの単独トップに立ちました。そしてGMノームの条件である5つ勝ち越しに、これであと一歩です。最終戦はいつもより早い日本時間17時開始ですので、夜には結果をお知らせできると思います。場合によっては、ブログも夜に2回目の更新をします。

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347) 1/2-1/2
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)

Third Saturday GM October 2018

+4 Kojima
+2 Miljković, Atakisi
+1 Nikčević, Manush
-1 Kargin, Gungl,
-2 Kotronias, Der Manuelian
-4 Rabrenović

それでは最終戦に行ってきます! 良い報告ができるように頑張ります。

2018/10/27

Third Saturday GM October 2018 R7


Third Saturday もいよいよゴールが見えてくる頃です。この日の相手はドイツのジュニアプレーヤー、Gungl です。他の若いプレーヤー同様にここ数年で力を伸ばし、GM からもポイントを削ってレイティングを伸ばしてきています。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Gungl, T (FM, GER, 2347)
Third Saturday GM October 2018 (7)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 e5!?



彼がこの変化を指すことは分かっていたので、試合前にかなり調べてきました。ここ数年でとても多く指されるようになった、7... 0-0 8. 0-0 e5 のラインに比べると、黒のイコアライズには一苦労しそうな変化です。

8. cxd5 cxd5 9. Nb5 Bb8 10. dxe5 Nxe5 11. Nxe5 Bxe5 12. Bd2 O-O


以前の彼のゲームでは、12... a6 13. Bc3 Bxc3+ 14. Nxc3 0-0 15. Rd1 Be6 16. 0-0 Rc8 と進んでいました。私はここで17. Qa4! と出るアイディアを発見し、d4 をコントロールして白良しと準備していました。本譜の手も対策済みです。

13. Bc3 Bxc3+ 14. Qxc3 Bd7 15. O-O Bxb5 16. Bxb5 Qb6 17. Qb3 Rad8



Chessbase の機能を色々いじっていると、ポジション検索の際にピースを置かず、ポーンストラクチャーだけを設定すると、そのポーンストラクチャーになったあらゆるゲームが出てくることを発見しました。これを利用し、全く同じポーンストラクチャー、ピースの数でのゲームを色々とチェックし、白の作戦を考えてきました。次の手は18. Be2!? Qxb3 19. axb3 a6 も考えましたが、Rd8-Rd6-Rb6 に対してb3 のポーンが負担になると感じ、このプランは諦めました。本譜では孤立ポーンを捌かせてしまいますが、その代わりにビショップでf7 に対して長くプレッシャーを持つことができます。

18. Rfd1 d4 19. exd4 Rxd4 20. Rxd4 Qxd4 21. Rd1 Qe5 22. h3 Qc7


黒はd5 を捌いても、f7 の守りに多少気を使わなければいけないため、ミスも出やすい状況です。なるべくクイーンを残しつつ、プレッシャーをさらにかける作戦を考えます。

23. Qd3 Rc8 24. Ba4 b6 25. Bb3 Re8 26. Qf3 h6 27. g3 Qe7 28. Qc6 Rd8 29. Rxd8+ Qxd8 30. Qb7



ルーク交換の後でクイーンが侵入すると、これはチャンスなのではないかと思いました。a7 を当てつつ、もちろんメインはf7 です。

30... Qd7 31. Qa8+ Kh7 32. Qf8!


このマスに潜り込むのが絶妙で、黒はディフェンスがかなり限られ、ピースを動かしづらくなります。

32... Nd5 33. h4 Kg6?



まさかと思いました。見た目通りキングが上がるのは危険で、33... h5 からじっと耐えるしかありません。それでもd5 のナイトが動けず、白が有利であるのは明らかです。

34. Qa8! Ne7 35. Bc2+


4Rでもあったように、相手のキングへの一番良いプレッシャーのかけかたを見つけるのは、私の苦手とするところです。本譜も悪くありませんが、35. h5+! Kf6 36. Qf3+ Qf5 37. Qc3+ Qe5 38. Qc4!+- ならばf7 を取って完全に白勝ちでした。

35... f5 36. g4 h5 37. gxf5+ Nxf5 38. Qf3



ここはピンになっているf5 のナイトにどう詰めよるかが課題です。38. Qg2+ Kf7 39. Bb3+ Kf8 40. Qg5!+/- ならば、h5 を確実に取ることができます。

38... Qe6?


私も見えていませんでしたが、時間切迫で相手に大きなミスがでます。38... Qc8! が正しい手で、c2 のビショップをアタックしておくことでテンポを稼ぐことができました。

39. Qf4! Kf6


39... Qf6 40. a4 a6 41. Be4 a5 42. Kg2+- はツークツワンクとなり、黒はf5 のナイトがどうしようもありません。黒クイーンがナイトとg5 のマスを守れる位置が、f6 のたった1マスしかないのがポイントです。

40. Qg5+ Ke5 41. f4+!



時間も増え、余裕をもってこの手を指しました。パペチュアルチェックもないことを確認したうえで、f5 のナイトを取りにいきます。これで問題なく白勝勢のはずなのですが、ここから信じられない事件が起こります。

41... Kd6 42. Bxf5 Qe1+ 43. Kh2 Qf2+ 44. Qg2?


私のミスは2つ。2ポーンを取らせても、クイーンを交換したエンドゲームは勝ちだと思ったこと、そしてなぜか2ポーンを捨てる以外にチェックを切る方法はないと思ってしまったことです。44. Kh1! もし41... Kd4 であれば、Qg5-Qg1 がチェックとなるため、当然この位置にキングを逃がすつもりでした。しかし、41... Kd6 に対してはなぜか、キングを1段目に退く選択肢がすっぽりと頭から抜けていました。時間も豊富にあっただけに、なぜここで正確に指せなかったのか、悔やんでも悔やみきれません。44... Qe1+ 45. Qg1! Qxh4+ 46. Qh2 Qe1+ 47. Kg2 Qd2+ 48. Kg3 Qe1+ 49. Qf2+- これであれば、f4 のポーンが残っているため、本譜とは大違いです。

44... Qxh4+ 45. Bh3 Qxf4+ 46. Qg3 Ke5



このポジションまで来て愕然としました。2ポーンを返してしまったため、このエンドゲームは勝つことができません。時間ぎりぎりまで考えましたが、勝ちを掴み寄せるアイディアは出てきませんでした。

47. Bd7 g5 48. Kg2 Qxg3+ 49. Kxg3 Ke4


g3 にキングを上げさせてもらえたのはラッキーかと思ったのは一瞬で、クイーンサイドのディフェンスが間に合いません。

50. a4


50. Be8 Kd3 51. Bxh5 Kc2 52. b4 b5= これもドローです。

50... Kd3 51. Bf5+ Kc4 52. Bc2 Kb4 1/2-1/2



ビショップナイトのアドバンテージを活かしてプレッシャーをかけ、相手のミスを誘って駒得をし、完全に自分の流れだと思っていたゲームでした。それをこうした1つのミスで台無しにしてしまうとは、勝負の恐ろしさをあらためて痛感した1局です。この試合を勝っていればGMノームにリーチだっただけに、自分のふがいなさにがっかりしますが、気を落とさずにあと2局、頑張ろうと思います。

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347) 1/2-1/2
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)

Third Saturday GM October 2018

+3 Kojima, Atakisi
+2 Miljković
+1 Nikčević
+-0 Kargin, Manush
-1 Gungl, Der Manuelian
-2 Kotronias
-5 Rabrenović

レイティングトップのKotronias が、ようやくManush を相手に今大会初勝利を挙げました。Manush はFirst Saturday でもそうでしたが、IMノームの条件である1つ勝ち越しがなかなか厳しいようです。あと2試合頑張れ!

2018/10/26

Third Saturday GM October 2018 R6


デノビッチに来てから、早いもので1週間が経とうとしています。2日前には海水浴を断念しましたが、足をつけるだけなら気持ち良いうえ、長時間海に入っていられると気付き、この2日間は昼食後に海でのまったりタイムを入れています。海以外何も観光名所らしきものはありませんが、それがデノビッチの良いところかもしれません。

この日はFirst Saturday で敗れたManush に同じ黒をもって試合に臨みます。色々と考えた末、まず負けないだろうというラインをチョイスしました。

Manush, S (IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Third Saturday GM October 2018 (6)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bf5 5. cxd5 cxd5 6. Nc3 e6 7. Ne5 Nfd7 8. Qb3 Nxe5 9. dxe5 Nd7 10. Qxb7 Rb8 11. Qc6 Bb4 12. Bb5 Rb6 13. Qxd7+ Qxd7 14. Bxd7+ Kxd7



前回の反省を活かし、この変化を徹底的に研究してきました。黒はポーンを捨てていますが、ピースの早い展開とダブルビショップで十分に代償があります。

15. O-O


ここで彼からドローオファー。Manush はFirst Saturday でもそうでしたが、負けなければそれで良いという考えでレイティングを稼ぎに来ているようで、短手数ドローも厭わないスタンスです。私が調べていたのは15. Ke2 で、本譜はすぐにポーンを返すつもりなのだと気付き、ゲームを続行します。

15... Rc8 16. a3 Bxc3 17. bxc3 Rxc3 18. Bd2 Rc2



深く潜り込むのが自然だと思いましたが、ビショップの利きを遮り、b1 が抑えられなくなるというデメリットもあります。18... Rc4 として、ルーク交換になってもパスポーンができればそれで良しというアイディアもありました。

19. Bb4 Rbc6 20. Rfd1 Ke8 21. h3 f6


私が事前に研究していた変化で、このアイディアがありました。その時は黒マスビショップをアクティブにする狙いでしたが、ここではセンタポーンの厚みを武器にする狙いです。

22. exf6 gxf6 23. Rd2 Rxd2 24. Bxd2 e5 25. Bb4 Bc2 26. Kf1 Bd3+ 27. Kg1 Bc2 28. Kf1 Kd7 29. Ke1 Ba4 30. Ra2 Rc1+ 31. Kd2 Rg1 32. g3



工夫して潜り込み、白陣を弱めたつもりでしたが、さほど痛手にはなっていないようです。それでも、d5-d4 の押し込みと、キングの侵入を目指してプレーを続けます。

32... Ke6 33. Rb2 a6 34. h4 Kf5


ここは相手の次の手が全く見えておらず、少しキングが上がるのは尚早だったかもしれません。34... Bb5 として、bファイルを先にブロックしておくほうが良かったでしょう。

35. Be7! Bb5 36. a4 Bxa4 37. Rb6



これで白もルークの潜り込みに成功し、f6 のポーンを取ることができます。

37... Rd1+ 38. Ke2 Ra1 39. Rxf6+ Kg4 40. Kd2 Bb5


ここで時間を増やしましたが、黒が勝ちに行くプランはありません。

41. Bd6 e4 42. f3+ 1/2-1/2



最後は相手がポーンを捌こうとしたところでドローオファー。ここまでくればどうしようもないと思い、受けることにしました。ところが、42... exf3 43. Rf4+ Kxg3! このポーンを取れることを完全に見落としていました。44. Ra4+ Kh3 45. Rxa1 f2 46. Be7 f1=Q 47. Rxf1 Bxf1 で異色ビショップによるドローが濃厚ですが、一応黒は1ポーンアップです。オファーを受ける前にもう少しきちんと読まなければいけないと反省しました。

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347)
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)

Third Saturday GM October 2018

+3 Kojima, Atakisi
+2 Miljković
+1 Nikčević, Manush,
+-0 Kargin
-1 Gungl
-2 Der Manuelian
-3 Kotronias
-4 Rabrenović


この日は初めて全ボードがドローとなり、勝ち星のプラスマイナスに変動はありません。私と同じ3つ勝ち越しでGMノームのチャンスがかかっているトルコのAtakisi も、苦しいゲームを粘ってNikcevic からドローを取りました。


この日の夕飯は初めてのサラダご飯。でも肉中心のモンテネグロらしく、しっかりチキンのグリルとカリカリベーコンが入っています。

2018/10/25

Third Saturday GM October 2018 R5


今月のThird Saturday も折り返しの5R を迎えます。ここまで、調子のよいプレーヤーとそうでないプレーヤーがはっきりしてきていますが、それも後半でどうなるかまだわかりません。連勝中の私も、油断せずにセルビアのIM Rabrenovic との試合に臨みます。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Rabrenovic, V (IM, SEB, 2343)
Third Saturday GM October 2018 (5)

1. Nf3 d5 2. d4 Bf5!?



Leningrad Dutch やGrunfeld を用意していましたが、まさかBaltic とは予想外でした。しかし、このマイナーなオープニングに対しても、いくばくかの経験とアイディアを持っています。

3. c4 e6 4. Nc3 Nc6!?


4... c6 5. Qb3 Qb6 6. c5 でReversed London System のような形をイメージしていましたので、またもや予想を裏切られます。これでオープニングはChigorin Defence になります。

5. Bf4 Bd6 6. Bg3 Bxg3 7. hxg3 h6 8. cxd5 exd5 9. e3 Nge7 10. Be2



このポーンストラクチャーにおいては、白はc5 のマスにナイトを入れること、そしてマイノリティーアタックによってチャンスが作れることを経験上分かっていました。黒のキングサイドのアタックチャンスは十分ではないでしょう。

10... Qd6 11. a3 a6 12. Rc1 O-O 13. O-O Nd8 14. Na4 c6


これはマイノリティーアタックがやりやすい形になりました。14... b6 15. Qb3 Ne6 16. Rc3 からcファイルにルークを重ねるプランを考えていました。c7 はすぐには取れませんが、c7-c5 を抑えてることで長期的なターゲットとすることができます。

15. Nc5 Ng6 16. Qb3 Qe7 17. Rc3 Rc8 18. Rfc1 Re8 19. Qd1



ここはクイーンをa2 に下げる手もあったと思いますが、キングサイドへの反撃を多少警戒して、f3 のナイトを守っておくことにします。クイーンを退くメインの狙いは、bポーンを伸ばすことです。

19... Rc7 20. b4 Qf6 21. a4 Bg4 22. b5 axb5 23. axb5 h5 24. bxc6 bxc6 25. Nd3!


マイノリティーアタックを済ませ、c6をバックワードポーンにした段階で、ナイトを退きます。これでルークの前を開くと同時に、Nd3-Nb4, Nd3-Ne5 などの狙いを作れるようにしておきます。

25... Qd6 26. Nd2!? Bxe2 27. Qxe2 h4 28. gxh4 Nxh4 29. Qh5!



ナイトを退いてのビショップ交換には自信はありませんでしたが、クイーンを黒キングに近づけてプレッシャーをかける作戦は面白いと思いました。明確な弱点のあるクイーンサイドで集中的にプレーするよりも、キングサイドでも何かしらの狙いを見せておくほうが、黒はディフェンスが難しく、間違える可能性が高くなるはずです。

29... Ng6 30. Nf3 Ne6 31. Nfe5!


ここは自信を持ってナイトを交換します。Nf3-Ng5 を止めるためにe6 に上がってきたナイトは、c6 を守るために再びパッシブなマスに戻るしかありません。

31... Nxe5 32. Nxe5 Nd8 33. e4!



この3段目を開く手も、29手目付近から構想にありました。d4 のポーンを弱めることは基本的には好きではありませんが、hファイルに並ぶヘビーピースはそれを補う力があります。

33... Re6!


33... dxe4 34. Rh3 Qh6 35. Qxh6 gxh6 36. Rxh6 Kg7 37. Rh4!+/- このエンドゲームは白が有利でしょう。メイティングアタックのチャンスを無くしても、白は全く気にしません。

34. exd5?!


この試合で唯一と言える緩手でした。捨てるつもりで突いたeポーンでしたが、ルークを6段目に上げられてディフェンスされた本譜で、攻撃のチャンスをどう作れば良いのか、残り時間2分では見つけることができませんでした。34. Ng4!! dxe4 35. Rh3 Kf8 36. Qg5! Kg8 37. Qh4 Kf8 38. Ne3+- こうして相手キングやピースに揺さぶりをかける流れが正確に読めれば、前日の試合のメイティングアタックも見つけられるでしょう。

34... Qxd5 35. Rc5 Qxd4??



残り時間は私が2分、相手が5分だったこの局面、相手の手を見てまさかと思いました。前日のようにまだまだタフなゲームが続くと思っていましたが、このブランダーで勝負ありです。正しくは35... Qd6 36. g3 くらいで、白はd4-d5 をどこかで狙えれば良いなと考えていました。これでもまだ白のほうが少し指しやすいでしょう。

36. Rd1!+-


相手はこの手が見えていませんでした。Re8-Re6 によってバックランクが弱くなっているうえ、こうして見るとh5 のクイーンも絶好の位置にいます。

36... Qxc5 37. Rxd8+ Qf8 38. Rxf8+ Kxf8 39. Qh8+ Ke7 40. Qxg7 Ke8 41. Qg8+ 1-0



GMトーナメントでの3連勝は自身初です! 次は今月前半のFirst Saturday で完敗したインドのManush に再び黒です。彼もここまで負けなしと好調ですので、面白い試合ができるのではないかと思っています。

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347)
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)

Third Saturday GM October 2018

+3 Kojima, Atakisi
+2 Miljković
+1 Nikčević, Manush,
+-0 Kargin
-1 Gungl
-2 Der Manuelian
-3 Kotronias
-4 Rabrenović

3つ勝ち越しから4つ負け越しまで、綺麗に8グループに分かれています。トルコのIM Atakisi もGMとの3試合を残しているとはいえ、ここまで力強いプレーで白星を重ねています。彼との8Rのゲームはトーナメントの大詰め、注目の一戦になりそうですが、それまでの6,7R でしっかりポイントを取ることがまずは大切ですね。

2018/10/24

Third Saturday GM October 2018 R4


昨日は昼前に、せっかくなので海に入ってみることにしました。10月後半でもモンテネグロは暖かで、海水浴をしている人の姿もちらほら見られます。私は海の町の生まれと育ちではありますが、海の遊びと言えばもっぱら釣りで、海で泳ぐのはさほど好きではありませんでした。しかし、こうした綺麗な海を見ていると、入らないのはもったいないように思えてきます。

ところが、入ってみると水が冷たい! 日差しの強さと気温のわりに水が冷たい気がします。それとも海水浴ってこういうものでしたでしょうか... ブダペストの温水プールに慣れすぎたせいか、この冷たさはたまらないということで、5分で久々の海水浴は終わりました(笑)

15時からはいつも通り試合です。この日の相手はアメリカのDer Manuelian という若いプレーヤーで、ここ2年ほどはヨーロッパにも足を運んで精力的にプレーしています。それでも今大会でレイティングは一番低いため、私としては黒でも勝っておきたい相手でした。

Der Manuelian, H (USA, 2269) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Third Saturday GM October 2018 (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Bd6!?



満を持してこのラインが登場です。12... Be7 のこれまでの勝率はとても良いですが、相手に研究されているとも思ったため、新しいラインにチャレンジします。

13. Ne4 Nxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qe2 Bc7!


この変化の大切なアイディアです。一度閉じたクイーンの前を開き、Qd8-Qd5 のチャンスを作ります。

16. c4 b5! 17. Bc3?!



b7-b5 が成功し、d5 がアウトポストになることが確定した形では、c3 のビショップは単にターゲットにしかならないでしょう。17. Kb1 bxc4 18. Qxc4 0-0 19. Qxc6 Rb8 と進めば、黒は開いたbファイルとd5 のアウトポストを活用し、1ポーン分の代償を伴ってプレーできそうです。

17... bxc4 18. Ne5 O-O 19. Kb1 Nd5 20. Qxc4 Bxe5 21. dxe5 Qg5!


白のビショップと黒のナイトでは、明らかにナイトのほうが強いため、交換はすぐせずにポーンを狙いにいきます。

22. Qe4 Nxc3+ 23. bxc3 Rfd8 24. Kc2 Rd5 25. f4 Qe7



ここは25... Qg4!? として、g2, f4 へのプレッシャーを残しておく選択肢もありましたが、本譜でも黒は概ね満足です。

26. Qb4 Qc7 27. Rxd5 cxd5 28. Rb1 Rc8 29. Rb3 Qc6


ところが、ここまできてどのように進めれば明確に良くなるのか、わからなくなってしまいました。黒はポーンストラクチャー、ピースの働きから有利であることは疑いようがありませんが、クイーンが潜り込む隙がなかなか作れません。

30. Qb5 Qc7 31. Kd2 Rd8 32. g3 Rc8?!



もうしばらく様子見かと思いましたが、ここは32... Qc4! と入るチャンスでした。dファイルにルークをまわしたのは、d5-d4 がメインのアイディアのつもりで、こちらを見落としていました。

33. Ke2 a5 34. Kf3 Qa7 35. Kg4 Qf2


なんとかキングサイドに逃げていく白キングを追いかけ、このポジションまで到達しました。ここから上手くメイトスレットを作れれば良かったのですが、それは私の苦手とするところです。

36. Qa6 Rf8 37. Qxa5 Qe2+?!



37... Qg2! 後になってから、f3, h3 のどちらにも白キングを逃がさないために、ここがクイーンのベストの位置だと気付きました。しかし、ここから具体的にどうするのか、コンピュータが指摘するラインを全て追っていかないと分かりませんでした。38. Qb4 (38. c4 f5+! 39. exf6 gxf6-+) 38... g6! 39. hxg6 h5+! 40. Kxh5 Qh3+ 41. Kg5 Qxg3+ 42. Kh5 Qxg6+ 43. Kh4 Kg7! 44. Qxf8+ Kxf8-+ こうしてg3 を取れるように工夫すれば、白はクイーンを捨てるしかなかったのですね。もっとこうした正確に相手キングを追い詰める計算力は鍛えねばなりません。

38. Kh4 g5+


38... Qh2+ 39. Kg4 Qg2-+ で再び同じポジションですが、見えていれば最初から指しています。

39. hxg6 fxg6?!


ここはまず取りかえす1手だろうと思いましたが、39... Qh2+! 40. Kg4 Qg2! やはりこの位置です! 41. gxf7+ Kxf7 42. Rb7+ Kg6-+ こうした変化がありました。

40. Kh3! Qf1+ 41. Kh2 Qf2+ 42. Kh3 Qg1



私がイメージしたのはこのクイーンの位置です。h2 に白キングを下げられないようにしたうえで、追い詰め方を考えます。

43. Rb2 g5 44. fxg5 hxg5


44... Qh1+ 45. Rh2 Qf1+ 46. Rg2 hxg5 47. Qa4 で本譜と同じですが、ルークを挟ませるのを強制させる点で、こちらの手順が正解でした。

45. Qa4 Qh1+ 46. Rh2 Qf1+ 47. Rg2 Qf5+ 48. Kh2 Kg7!



すぐにe5 のポーンを取りかえさず、hファイルからの攻撃チャンスを見せておきます。

49. Rb2 Qxe5?!


しかし、ここで時間を使っても手が見えませんでした。49... Rh8+! 50. Kg1 Qh3! e6 を守ったままでクイーンが跳び込むのはもちろん考えました。51. Rb7+ Kh6!! しかし、ルークの前にキングを持ってくる手を考えていませんでした。51... Kg6 52. Qc2+ があるため、hファイルにルークとクイーンを重ねるアイディアは諦めてしまいましたが、単にクイーンがh3 にいるだけで、g3 のポーンを取ることができます。

50. Qd4 Qxd4 51. cxd4



ここで相手からドローオファーがきましたが、aファイルのパスポーンは役に立たず、ポーンがバラバラな分だけ、白が少し悪いエンドゲームです。私がドローを受ける理由は何一つとしてありません。

51... Rf3 52. Kh3 Rd3?!


思い描いた形は良かったのですが、手順が不正確です。52... Kf6! 53. Kg4 Rd3! 54. Rb4 Ra3 55. Rb2 Ra4 が正しい手順です。

53. Rb4?



53. a4! Rxd4 54. Ra2! Rc4 55. a5 Rc7 としたほうが、白は粘れたでしょう。確かにaファイルのパスポーンも、後ろからルークにサポートされると厄介です。

53... Kg6 54. Kg4 Ra3 55. Rb6 Kf6 56. Rb2 Ra4 57. Rd2 e5


これでd4 のポーンが落ち、黒に強力なパスポーンができます。

58. Kh5 exd4 59. Kg4 Ke5!?



ここはかなり迷いました。59... d3+ 60. Kf3 Ke5 61. Ke3 g4-+ でも勝てそうですが、私は相手のgポーンよりも、自分のdポーンが強力だと信じて本譜を選びます。

60. Re2+ Kd6 61. Kxg5 d3!?


これでも勝ちですが、61... Kc5 62. Kf5 d3 63. Rd2 Kd4-+ としてキングをd4 に潜り込ませるほうが簡単だったかもしれません。

62. Rd2 Rd4 63. Kf5 Kc5 64. g4 Kc4 65. g5 Kc3!-+



残り数秒まで考えてこの手を選びました。黒の勝ちはこれしかありません。65... Re4? 66. g6 Kc3 67. g7 Re8 68. Rg2 d2 69. Rg1 Kc2 70. Kf6 d1=Q 71. Rxd1 Kxd1 72. Kf7 Ra8 73. g8=Q Rxg8 74. Kxg8 d4 75. a4 d3 76. a5 d2 77. a6 Kc2 78. a7 d1=Q 79. a8=Q= はお互いに2回目のクイーンが同時にでき、ドローです。

66. g6 Kxd2! 67. g7 Kc2 68. g8=Q d2


相手に先にクイーンを作らせても、黒のプロモーションは止められません。

69. Qg2 Kb1 0-1



このゲームをなんとか勝ち切り、これで連勝です! 前半4試合、白1黒3にもかかわらず、2つ勝ち越しはかなり良いスコアだと言えるでしょう。白を引く今日の試合もしっかり勝って3つ勝ち越しになりたいですね。

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343)
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347)
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)

Third Saturday GM October 2018

+2 Miljković, Kojima, Atakisi
+1 Kargin, Manush,
+-0 Nikčević, Gungl,
-2 Der Manuelian
-3 Kotronias, Rabrenović

Kotronias はKargin に負けて苦しい3つ負け越しです。私が今日対戦するRabrenović もここまで良くない戦績ですので、ここもポイントを取りたいですね。

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