ラベル 6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2013/12/11

2013年後半の遠征を振り返って

スペインバルセロナから2回目の更新です。無事に家に帰るまでが遠征ですが、一応試合はすべて終了しているので、今回の遠征を通して改めて感じたことや、今後のことについて、いくつか書き出してみようと思います。ちょっと長くなりそうなので、あまり興味のない人は適当に読み飛ばしてください(笑)

(1) 3つ目のIM ノームについて


今回の3か月に渡る遠征の最大の目標は、何といっても2月までの遠征で取り損ねた、3つ目のIMノームの獲得でした。すでにこちらのブログでは経緯を説明していますが、10月のFirst Saturday の最終戦で敗れたことで、一度はこの大会でのノーム獲得は無理だと思われました。しかし、ハンガリーチェス連盟の協力もあり、11月のFIDE Congress で、9R までの戦績でのノームが認められることとなり、私としては大変嬉しかったです。日本人として初めてのIM Elect になれたことは、今回の遠征の最低限のハードルクリアと言えるでしょう。今回の遠征中、たくさんの応援メッセージを送ってくださった皆さん、そしてノーム獲得が決まった11月半ばに、お祝いのメッセージを送ってくださった皆さんには、改めてこの場で感謝の言葉をお送りしたいと思います。

(2) レイティング2400到達について

こちらはノームを3つ揃えることよりも苦労しています。私が今、ノームを取れるような戦績で連続3大会をプレーできれば、レイティングは2400に到達するでしょう。しかし、良い時があれば悪い時もあるのが人間というもので、なかなかそう簡単にはいきません。実際、ノームを揃えてから2400到達までに、数年かかっているプレーヤーもいます。マヨルカの大会を終えても、私のレイティングは2350台でストップしており、残りの50弱を稼ぐにはもう少し時間が必要です。こちらは私にとって、来年クリアすべき次なる目標となるでしょう。こちらも、なるべく早くに達成したいですね。

(3) ノビサドのトーナメントについて

ノビサドの大会は初めてのセミクローズドで、IM セクションと言いながらGM がいたり、IM ノームの最低基準である平均レイティング2230を超えない可能性があったりと、なかなか怪しいシステムでした。それでも、ノビサド自体は良い街だったと思いますし、宿や値段も納得できるレベルでした。オーガナイザーのGM Sinisa も親切で良い人でしたね。今後、日本からわざわざセルビアに飛ぼうとはあまり思いませんが、ハンガリーを拠点にするのであれば、セルビアの大会は気楽に足を伸ばしやすいと思います。

(4) アグリジェントのトーナメントについて


シチリア、アグリジェントの大会は3泊4日で7R という弾丸日程でしたが、ヨーロッパの代表クラスであるGM 2人と対戦できたのは良い経験でした。(結果もついてくれば、なお良かったのですが...) そして、この大会を調べていて気づいたことですが、イタリアは意外と賞金付きのオープン大会が多く、その一部はFIDE の大会HP に掲載されていません。(ここ重要!) イタリアの大会を探すためには、こちらのHP をチェックするのが良いでしょう。

そしてもう1つ、重要なことです。イタリアで開催されている各大会の賞金額は様々ですが、おそらく優勝賞金が500ユーロを超えると、GM が参加するようになります。GM は(基本的には)チェスのプロであるため、賞金を稼ぐためにオープン大会に参加します。GM は一般的に参加費がタダですが、500ユーロ未満の優勝賞金であるならば、割に合わないと考えるGM が多いのではないでしょうか。もちろん、場所による交通費やスケジュールも関係してくるので、厳密には言い切れないですが、割と良い線をついている気がします。この辺りのことは、アメリカの大会事情に詳しい上杉くんにも聞いてみたいですね。とにかく、これから海外大会のレベルを予想する際は、優勝賞金をチェックすることは必須にしようと思っています。

(5) チェコのトーナメントについて


ブルノ、ピルゼンでの15日間、16試合は、私のこれまでの人生において最長のFIDE 公式戦連続記録でした。私の他には、カザフスタンのWIM Abdulmalik、ウクライナのIM Piankov、ロシアのGolcman らも2つのトーナメントに連続で参加しており、これはスケジュールを組んでいるオーガナイザー側の意図通りと言えるでしょう。多くの試合をまとめてこなしたいプレーヤーにとって、こうしたオーガナイザー同士が連携したトーナメントというのは、大変ありがたいものです。

さらに、これらの大会の良い点として次に挙げられるのは、参加費が安いことです。私はホテルではなくホステルに泊まったため、1大会の参加費と宿泊費は75ユーロずつほどでした。私がこれまで参加してきた大会の中でもダントツの最安値ですし、なかなかこれを下回るオープン大会を探すのは難しいと思います。ちなみにIM タイトルを獲得すれば、参加費はタダになるので、さらに安くなります。

その代り、優勝賞金はイタリアより下がり、9R のブルノで40000円程となります。シチリアのアグリジェントよりも、列車やバスが利用できるブルノ、ピルゼンのほうが交通の便は良いはずなのに、GM が参加しなかった理由がこれでしょう。GM との試合を求めるならば、こうした優勝賞金の低い大会は避け、チェコでももっと大規模な、プラハオープンなどに目をつけると良いかと思います。

(6) マヨルカのトーナメントについて


マヨルカは再びIM ノームを目指すクローズドトーナメントでしたが、ノームを目指さなくても良いということで、のびのび指すことができたような気がします。これまで公開していませんでしたが、この大会の参加費は6泊7日、朝食と夕食が付いて合計350ユーロです。私はさらにノームを達成していると理由で、50ユーロ値切り、300ユーロにしてもらいました。(ブリッツから参加したため、エキストラの2泊分をさらに払っていますが) この値段が安いか高いかの判断は人それぞれだと思いますが、マヨルカのビーチに面した四つ星ホテルが、宿泊場所+試合会場であることを考えれば、十分に安いと私は思います。おそらく、夏の観光シーズンを外しているために、実現可能な値段なのでしょう。観光客の多い真夏にこの値段であれば、完全に赤字である気がします... 値段と内容を考えれば、今後IM トーナメントを探す人には、是非お勧めしたい大会です。

そしてこの大会中、WIM Dave の母親から、現在私がいるバルセロナの夏のオープン大会は良いと勧められました。振り返れば、昨年の春に浜松の大会に参加した際も、対戦した秋山ヒメナさんから、スペインの大会は良いと言われていたのでした。スペインのオープン大会についてはまだしっかりと調べていませんが、イタリア、チェコと同様に、今後の長期遠征を考えて良い国であることは確信しています。

(7) ハンガリーを離れた理由について

ここは今日の記事でも一番大切なだと思うところです。私は3つ目のノームを達成したことで、ハンガリーのノームトーナメントにこだわる必要がなくなり、近隣の国の大会に足を運ぶようになりました。結果的にレイティングは大きく稼げませんでしたが、これは正解だったと思っています。

私がハンガリーの外に出た一番の理由は様々ですが、一番は私以外のプレーヤーも参加しやすい大会を発掘することにあります。(ノビサドとスペインはさておき) イタリア、チェコの大会はどちらも良いもので、今後、日本から団体での参加を検討する価値は十分にあるでしょう。私が経験してきた団体での海外オープン大会参加は、フランスのカペル、タイのバンコク(もしくはパタヤ)、マレーシアのクアラルンプールなどですが、ヨーロッパ方面で、もう少し数を増やしていくべきだと思っています。なんといっても、チェスはヨーロッパが本場ですからね! 私も昔は井上さん、馬場さんらに案内されて海外大会についていくだけの小僧でしたが、最近は後輩を引き連れて、こうした大会を周らなければいけない立場です。後輩たちに、勝手にここに行けというのは酷な話ですからね。そのためにも、どこのどういった大会が参加しやすいかを、自らチェックする必要があります。

最近は大学生たちの交流が盛んな割には、彼らだけで海外の大会にチャレンジしようという流れは、今のところあまり見えてないように思えます。(去年のマレーシアぐらいですかね) 私も情報の提供や、可能であれば自身の参加という形でサポートをしていくので、私よりも若い世代には、もっと積極的には海外のオープン大会に参加してほしいと思います。過去にカペルやマレーシアに参加した先輩方にも、どんどん話を聞いてみてください。チェスのレベルに関係なく、海外の大会に参加するということは、特別な経験になるはずです。

(8) 私の今後について

なんで12月中に帰ってくるの? といまだに聞かれることがありますが、これはブログにすでに書いた通り、ヨーロッパには180日中90日しか滞在してはいけないという、シェンゲン協定のためです。もう説明するのが面倒なので覚えてください(笑) これを厳密に守るならば、私は3月の半ば頃まで、ヨーロッパに戻ることはできません。南條くんからは、すぐアメリカにでも行けば? と言われましたが、いまのところそうする予定はありません。

13日の帰国後は、しばらくは日本でレッスンやレクチャーの日々に戻りつつ(依頼はいつでもどうぞ!)、次は3月末、チェコツアーの一環である、タイのLanta Open への参加を考えています。こちらはまた後日の記事で詳しく扱いますが、先に情報を知りたい方は、大会名から飛べるリンク先をチェックしてみてください。そして(7)と繋がりますが、やる気のある大学生たちと参加できれば面白いかなと考えています。もちろん社会人も歓迎ですよ!

ちょっと長くなりすぎましたが、ひとまず書きたいことは書き切りました。それでは皆さん、また12月13日以降、再び日本でよろしくお願い致します。ブログに書けない内容の裏話などは、また飲み会の席のお楽しみにということで(笑)

2013/11/11

Sicilian Paradise 5th and 6th rounds - An Italian Fighter -


優勝カップを手にするGM Rausis Igor と大会運営たち

イタリアでの短い3日間の大会が幕を閉じました。優勝したのはチェコのGM Rausis Igor です。4勝2ドローという安定した戦績で、2位3位の2人とは0.5P差をつけています。チェコに行く直前に、この国のレベルの高さを確認させてもらいました。

それでは、この日の2ゲームを簡単に振り返ろうと思います。まずはイタリアのジュニアプレーヤーとのゲームから。彼は最終日だけ開始時間が早いのを失念していたのか、40分ほど遅刻して会場に現れました。

Guccione, C (ITA, 1786) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)
6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro (5)

1. c4 c6 2. Nf3 Nf6 3. g3 d5 4. Bg2 dxc4 5. O-O Nbd7 6. Na3 Nb6 7. Qc2 Be6 8. b3!



昨年のLondon Classic で、アメリカのIM Bartholomew が指してきたように、ここで1ポーンを捨てるのが白のベストムーブだと信じています。白はピースの展開と、b7, a7 へのプレッシャー、センターの支配により長期的なイニチアチブを握ります。

8... cxb3 9. axb3 g6 10. Bb2 Bg7 11. e4 h6?!


この手はセンスの欠片もない手でした。ナイトでビショップを当てるルートは本譜のd4 もあるため、g5 だけ抑えても何の意味もないことを見落としていました。

12. Nd4! Bc8 13. e5! Nfd5 14. e6! Nb4 15. exf7+?!



白は勢いよくポーンを伸ばしてきましたが、ここで早々にテンションを解放してしまうのが間違いです。試合後に私が彼に指摘したのは15. Qe4! で、15... f5? 16. Nxf5! 17. Bxb2 18. Ng7+! ならば、即黒キングはメイトにされてしまいます。

15... Kxf7 16. Qe4?


f7 取りのチェックを挟んでからこの手はブランダーで、少し先まで読む必要がありますが、黒のピースアップが確定します。

16... c5! 17. Ne6 Bxe6 18. Bxg7 Bd5! 19. Qe5 Rh7!



白はうまくピース交換したように見えましたが、g7 のビショップは逃げ場がなく、ゲームオーバーです。

20. Bxd5+ N6xd5 21. f4 Nc6 22. Qe4 Kxg7 23. f5 Nf6 0-1


1700台ながら4番ボードまで上がってくるのはどれほどの実力者かと思いましたが、2時間ほどでの勝利が決まりました。これで3勝1敗1ドローとなり、最終戦のペアリング発表を待つことになります。


試合前から今日は子供の見学が多いなと思っていましたが、案の定、子供たちのみの大会が始まりました。45分指し切りの持ち時間ですが、とにかく子供たちは指すのが楽しくてしょうがない様子。バシバシと時計をたたく音が鳴りやみません。他のクラスと並行して同じ会場で試合をさせることは、子供にマスターたちと同じ空気を味わわせるために、大切なことだと思います。


お昼はピザ屋が営業していなかったため、少し歩いた先の売店でクロワッサンを2つ購入。合わせて1.6ユーロでした。会場には気になるゲームが残っているため、早々にホテルに戻ります。


会場に戻って人の集まっていた2番ボードを覗くと、なんとGM Rausis が劣勢のエンドゲームを指しているではありませんか。白を持つのはイタリアのSardo, G (2198) です。1ポーンアップのルークエンディングは黒絶望的かと思いましたが、Rausis の抵抗は強靭で、ぎりぎり半ポイントを拾うこととなりました。それでも2100台が2500台のGM からドローというのは、素晴らしい結果です。

そして全試合が終わり、最終ラウンドのペアリングが発表されました。私は2番ボードでRausis に黒... なぜ4回目の黒なのか(笑) しかし、こればかりは仕方がないので軽く彼のゲームをチェックし、試合の準備を進めます。

Rausis, I (GM, CZE, 2556) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)
6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro (6)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 e6



久々に伝家の宝刀、5... e6 Variation を使います。4... dxc4 の時点でここ数年、FIDE 公式戦では負けのない得意定跡ですが、Rausis も黒でこの変化を得意としています。経験豊富なGM がどのラインで勝負にくるか、少し楽しみで指してみました。

6. e4!? Bb4 7. e5 Nd5 8. Bd2 b5 9. axb5 Bxc3 10. bxc3 cxb5 11. Ng5 h6!?


この変化は2月にハンガリーで2回指して勝っていますが、その時とは11手目で手を変えます。11... h6 はGM Sakaev の勧めで、早いキャスリングを狙いとします。

12. Ne4 O-O 13. h4!?



少し別な形ですが、Morozevich がこのh2-h4 から素早くルークを出すアイディアを考案し、以来トップレベルでも注目されています。11... h6 に対しても使ってくるのは意外でしたが、やはりルークがg3 に上がる狙いは黒にとって嫌なものです。

13... Nc6 14. Rh3 f5?


試合後、Rausis にはこの手がすでに変なのではないかと指摘されました。白がキングサイドで手を作る最大のポイントとなる手を見落とし、これで十分ディフェンスになると勘違いしていたのです。検討では14... f6!? のほうが良いと話し合っており、Rh3-Rg3 にも、Qd1-Qh5 にも、黒はキングを守ることが可能です。

15. Nd6! Bd7 16. g4!



指される直前までこの手をかなり軽視していました。f5 のポーンを消してe4, g4 のマスを使えるようにし、gファイルも開くのであれば、白のアタックは非常に強力なものになるでしょう。

16... Nce7 17. g5! f4


17... Kh7 18. gxh6 gxh6 19. Qh5! Ng8 20. Ra6!+/- でも白のチャンスは明らかです。

18. gxh6 gxh6 19. Qh5!+-



こう指されてから、すでに黒には満足なディフェンスがなく、リザインしても良い局面だと気づきました。すでに黒はh6 のポーンを失うことが確定しています。

19... Nf5


19... Kh7 20. Nf7! (このh6 とd8 のダブルアタックを見落としていました。) 20... Rxf7 21. Qxf7+ Kh8 22. Bxf4+-, 19... Kg7 20. Rg3+! Kh7 21. Nf7! fxg3 22. Qxh6+ Kg8 23. Nxd8 gxf2+ 24. Ke2 Raxd8 25. Bh3+-

20. Qg6+ Ng7 21. Bg2 Ne7 22. Qxh6 Nef5 23. Nxf5 Rxf5 24. Bf3 a5 25. Rh1 Ra7 26. Rg1 Bc8 27. Be4 Rff7 28. Bxf4 b4 29. Qh7+ 1-0



ここ最近のGM との試合の中でも、一番内容が悪かったと言えます。何もできずに負けでした。


そしてSardo は最終戦でも見せてくれます。トップを走り、優勝は間違いないと思われていたGM Miezis のSanake Benoni をうまく捌き、気づくとエクスチェンジアップに。最後はルークを切って勝ちのポーンエンディングにし、そのままMiezis を下しました。彼と私のみが2人のGM 両方と対戦しましたが、色に関係なく彼のプレーは私を遥かに上回っていました。なぜ彼ほどのプレーヤーが2100台なのか、私だけでなく、Miezis, Rausis も首をかしげたのではないでしょうか。1番ボードで2100台が2500台後半のGM を破るという驚きのゲームが、最終ラウンドの最後に終わり、今大会すべての試合が終了しました。

R1 11/08 10:30 Varriele, L (ITA, 1927) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
R2 11/08 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Valguarnera, G (ITA, 2036) 1-0
R3 11/09 09:30 Miezis, N (GM, LAT, 2565) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 1-0
R4 11/09 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Sudakova, I (WGM, RUS, 2362) 1/2-1/2
R5 11/10 09:00 Guccione, C (ITA. 1786) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
R6 11/10 14:30 Rausis, I (GM, CZE, 2556) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 1-0


表彰式は活躍した子供たちから。すごい自慢げです(笑)


4R で対戦したロシアの美女WGM Sudakova, I は惜しくもオープン入賞を逃しましたが、女性No.1 プライズを獲得しています。


最終日に会場を沸かせたSardo, G は4勝1敗1ドローの3位でした。今後、別の国の大会でも名前を聞くようになるでしょうか。


Rausis にあえなく敗れた私も、なんとか7位入賞です。ふがいない戦績でしたが、頂いたカップは大切に保存しようと思います。


最後は入賞者全員での撮影です。皆さんお疲れ様でした。

住み慣れた、そして指しなれたハンガリーを離れ、セルビアに続いて2度目の出張トーナメントが無事に割りました。最終戦の負けで、レイティングはおそらく-2 ほど。稼ぎに来たはずがマイナスなのは悔しいですが、勝ちとドロー、ドローと負けでレイティング変動は7.5 違うため、上がるのも下がるのも紙一重です。それでも今回のゲームを通して、やはり自分はまだまだと思っているので、またしっかり復習しなければいけません。16日から始まるチェコでの15日間16連戦では、今度こそレイティングを稼げるように頑張ってきます。今大会のレポートは、次号のチェス通信にも掲載予定ですので、そちらもお楽しみに。

2013/11/10

Sicilian Paradise 3rd and 4th rounds


この日は午後から、会場が別の部屋に変更になりました。

シチリア、アグリジェント2日目です。前日の公開通り、トップシードのGM Miezis と1番ボードでの対戦となりました。IQP ポジションが大好物のラトビア代表に、カロカンで真っ向勝負です。

Miezis, N (GM, LAT, 2565) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)
6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro (3)

1. c4 c6 2. e4 d5 3. cxd5 cxd5 4. exd5 Nf6 5. Qa4+ Nbd7 6. Nc3 g6 7. Nf3 Bg7 8. Be2 O-O 9. O-O Nb6 10. Qh4 Nbxd5 11. d4 b6 12. Bg5 Bb7 13. Rac1 Rc8 14. Rfe1 Qd6 15. Ne5 Rfe8 16. h3 Nxc3 17. bxc3 Ne4!



若干変わったラインでしたが、この駒の捌き方は悪くないでしょう。黒は満足な形でいくつかのピースを消していきます。

18. Bf3 Nxg5 19. Bxb7 Rc7 20. Ba6 Ne6 21. Nc4 Qf4 22. Qg4 Qxg4 23. hxg4 Nf4


ナイトはe6 からd5 へ。c3 の弱点を狙える位置に切り替えます。

24. Ne3 Rd8 25. Bb5 Nd5 26. Nxd5 Rxd5 27. Ba4 e6



ナイトも消えて異色ビショップになった時点でドローオファーします。Dobrov 戦と違い、これは早すぎることはないと考えていましたが、Miezis の答えはノーです。客観的に考えれば、ダブルポーンとc3 の弱点を抱える白のほうが若干指しづらいはずですが、それでも逆転できる(もしくは最悪でもドローに持ち込める) と考えるのがこのレベルのGM なのでしょうか。

28. Bb3 Rd8 29. Red1 b5 30. Kf1 Rdc8 31. Rd3 Bf8 32. d5!


ここは、なるほどと思った一手。f7 へのカウンターを作ることで、c3 のポーンを落としても問題ないようにします。

32... exd5 33. Rxd5 a6 34. Rcd1 Be7 35. Re1 Kf8 36. Re4 Bf6 37. Rd6 Rc6 38. Rxc6 Rxc6 39. c4 bxc4 40. Bxc4 a5



白は気になっていたポーンを消し、悪くはなくなりました。しかし、互いに丁寧に指せば、やはりドローになるはずです。

41. Bb3 Rc7 42. g3 Bc3 43. Re3 Bb4 44. Re5 Rc5 45. Re4 f5 46. gxf5 Rxf5 47. Re6 Bc5 48. f4 g5


次にビショップを動かす手が見え、これは失敗したかと思いましたが、実はそうでもありません。

49. Bc2 Rd5 50. Ke2 gxf4 51. gxf4 Bb4 52. Kf3 Rd2 53. Bb3 Kg7 54. Ra6 Rd7 55. Kg4 Bd2 56. f5 Bc3 57. Kf3 Re7 58. Rc6 Bf6 59. Rc8 Rd7 60. Be6 Rb7 61. Rg8+ Kh6 62. Ke4 Rg7 63. Ra8 Bc3 64. Kd3 Rc7 65. Bc4 Bb4?



これは痛いミスでした。黒が優先すべきことはfポーンをブロックしておくことで、そのためにはaポーンは見捨てるべきです。キングが上がることによるカウンタープレーを過小評価していました。65... Bf6! 66. Rxa5 Kg5 67. a4 h5 68. Rb5 h4 69. Be6 h3 70. Rb1 Rc3+ 71. Ke4 Kg4=

66. f6 Rc6 67. f7 Rf6 68. Ke4 Kg5 69. a3!?


f8 のマスを抑えていなければならない黒は、ビショップを諦めざるをえません。

69... Rf4+ 70. Ke5 Rf5+ 71. Ke4 Rf4+ 72. Kd3 Rf3+ 73. Ke2 Rxa3 74. Rb8 Be7 75. f8=Q Bxf8 76. Rxf8 h5



さぁやってきました。半年ぶりのビショップ+ルーク vs ルークです。このマテリアルには、あまり良い思い出がありません。

77. Bd3 Ra1 78. Kf3 Ra3 79. Rf5+ Kg6 80. Rd5+ Kf6 81. Kf4 Ra1 82. Rxh5 a4 83. Rh6+ Ke7 84. Ke5 Re1+ 85. Be4 Kd7 86. Rh7+ Kc8 87. Ra7 a3 88. Rxa3 Kc7 89. Rb3 Rc1 90. Rb2 Kd7 91. Rh2 Kc7 92. Rh7+ Kb6 93. Rb7+ Ka5 94. Rb2 Rd1 95. Bd5 Ka4 96. Rb8 Ka3 97. Bc4 Rd2 98. Ke4 Ka4 99. Bd3 Rh2 100. Kd4 Rh4+ 101. Kc3 Rh5 102. Rc8 Ka5 103. Rc6 Ka4 104. Ra6+ Ra5 105. Rh6 Rc5+ 106. Bc4 Rg5 107. Rf6 Rg3+ 108. Kd4 Rg4+?


このチェックが敗着で、108... Rg7! 109. Kc5 Rc7+ 110. Kd5 Kb4= ならば、ドローチャンスがあったでしょう。

109. Kc5 Ka3 110. Rf2 Rg5+ 111. Bd5 1-0



やはり時間のない中、GM 相手にルークで守りきるのは簡単ではありません。4時間40分指し続け、力尽きました。途中のポジションがどうあれ、やはりミスは出るものですね。


今大会のプライズです。Miezis は過去にトロフィーをゲットして、ラトビアまで持って帰るのが大変だったという話をしていました。確かにサイズによっては、帰りの飛行機でどうするんでしょうか...

お昼は再び駆け足でピザを食べに行き、次の試合の準備もできぬまま(そもそもペアリングの公開が5分前なのですがw)、会場へ戻ります。相手はロシアのWGM Sudakova, I と発表され、2番ボードで連続マスターとの試合を迎えます。

Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Sudakova, I (WGM, RUS, 2362)
6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro (4)

1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 e6 4. Qc2 dxc4 5. Qxc4 b5 6. Qc2 Bb7 7. Bg5 Nf6 8. Nbd2 Nbd7 9. e3 a6 10. a4 Qb6 11. Be2 c5 12. axb5 axb5 13. Rxa8+ Bxa8 14. O-O



オープニングはほとんど知らなかった割に、十分白にアドバンテージがある形になりました。黒は一般的にc6-c5 を突ければ満足ですが、ここではキングサイドのピースの展開の遅れが気になります。

14... Be7 15. dxc5 Bxc5 16. Bxf6!? gxf6 17. b4!?


この手はおそらくベストではないだろうなと思いつつ、指してみたら面白そうだという誘惑に負けました。17. Nb3 もありえる一手です。

17... Bxb4 18. Bxb5 Ke7 19. Bxd7 Bxd2 20. Nxd2 Qb7 21. Nf3??



21. Ne4 でドローにしてはつまらないと思い、なんとか勝ちにいくアイディアをひねり出せないかと時間をかけて指した一手がこれでした。自分のミスに気づき、相手が次の手を指すまでのわずかな時間、動揺を悟られないように努めます。代わりに21. Qc5+! Kxd7 22. f3 Qc7 (22... Rc8? 23. Ne4!+-) 23. Qd4+ ならば、白はわずかなアドバンテージをキープできていそうです。

21... Qxd7?


21... Qxf3! 22. Qc5+ (22. gxf3 Rg8+ and Mate!) 22... Kxd7-+ 2300台後半が2人揃ってピースただ取りを見落とすとは、チェスとはなんとも不可思議なゲームです。

22. Rd1?


ほっとしたせいか、続くこの手が緩手でした。22. Nd4!+/= ならば、ポーンストラクチャーの乱れた黒の隙を突くチャンスはまだまだあるでしょう。

22... Qc8 23. Qd2 Bxf3!



本譜のgファイルからルークが回ってディフェンスするアイディアを見落としていたため、このビショップナイトの交換をあまり真剣に考えていませんでした。

24. Qd6+ Ke8 25. gxf3 Rg8+ 26. Kh1 Rg5 27. Rb1 Rd5!


オンリームーブでc8 のマスを守り、黒は中央に縛られたキングを守り切りました。

28. Rb8 Rxd6 29. Rxc8+ Rd8 30. Rc7 Rd7 1/2-1/2



レイティングプラスのためには倒しておきたい相手でしたが、中盤でベストのプランを見つけるが難しかったです。ここまで2勝1敗1ドローで、レイティングはトントンといったところ。3日目の2試合でレイティングと賞金がどうなるかが決まります。

R1 11/08 10:30 Varriele, L (ITA, 1927) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
R2 11/08 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Valguarnera, G (ITA, 2036) 1-0
R3 11/09 09:30 Miezis, N (GM, LAT, 2565) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 1-0
R4 11/09 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Sudakova, I (WGM, RUS, 2362) 1/2-1/2
R5 11/10 09:00 Guccione, C (ITA. 1786) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)
R6 11/10 14:30


ピザ屋のお兄さんたち。ノリの良さがさすがにイタリア人といった感じです。


今日のにゃんこ。

2013/11/09

Sicilian Paradise 1st and 2nd rounds


シチリアで迎える最初の朝です。

アグリジェントでの試合初日、朝7時に起きて朝食をとり、試合まで外をぶらぶらしてみます。シチリア島は3000m 級のエトナ山を始め、山の多い地形となっており、アグリジェント周辺も小高い丘陵地帯です。私の滞在しているホテルは、アグリジェント中心地から多少下ったところに位置しています。


行きは車で送られたため、どの辺りが中心地か分かりません。中心地に戻って観光するためには車が必要そうですが、そもそも試合のスケジュールが詰まっているため、その時間はなさそうです。


スーパーマーケットでは、ワイン、チーズ、ハムはさることながら、とにかくパスタの種類が多かったです。こちらは右も左も全てパスタで、キロ100円ぐらいが中心でした。当然ですが、日本よりも安いですね。


ホテルに戻ると、会場に人が集まり始めていました。チェスグッズの販売を行う人もおり、英語とイタリア語の本が並んでいます。若干本のラインナップは古く、ここで本を買う気にはなりませんが(笑)


そして試合開始は当たり前のように遅れます。前夜の食事会で仲良くなったミハエルは、いつも遅れるんだよ~と教えてくれました、さすがイタリア(笑) 私は事前の情報通りリスト4で、1900台の少年と試合スタートです。時間がないため、解説は簡単にしておきます。

Varriele, L (ITA, 1927) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)
6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro (1)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 dxc4 5. e4 b5 6. e5 Nd5 7. a4 e6 8. Ng5!



Slav Defence Geller Gambit を指されるのは久しぶりです。相手は14歳だと思いますが、なかなかオープニングは詳しかったですね。

8... h6 9. Nge4 b4 10. Nb1 Ba6 11. Nbd2 Nf4 12. Qg4 Nd3+ 13. Bxd3 cxd3 14. Nb3?!


c5 を狙うこの手はイマイチで、14. 0-0 と指しておくほうが良かったでしょう。

14... Nd7 15. Bd2 Bc4 16. Nbc5 Nxc5 17. dxc5 Qd5! 18. Bxb4 Qxe5 19. O-O Qf5 20. Qxf5 exf5 21. Nd6+ Bxd6 22. cxd6 Kd7



とりあえずオープニングの段階を乗り越え、黒にのみチャンスのある形になりました。どうすればdファイルのポスポーンを生かすことができるかを考えます。

23. Rfe1 Rhe8 24. f3 Rab8 25. Rxe8 Rxe8 26. Rc1 Bb3 27. Kf1 Rb8?!


27... Re2! 28. Re1 c5! (この手はもちろん考えたのですが、全く読み切れませんでした。) 29. Bxc5? Bc4!!


Analysis Diagram

コンピュータがこの手を示しても、すぐには理解できませんでした。30. Bb4 (30. Rxe2 d2!-+) 30... d2 31. Bxd2 Rxd2+-+

28. Bc3 Kxd6 29. a5 c5 30. Re1 f6 31. g3 Bc2 32. Re3 h5



試合中、ポーンを取れる手を見逃したかと思いましたが、それは勘違いです。32... Rxb2 33. Bxb2 d2 34. Re1

33. Kf2 Rb7 34. Re8 Kd5 35. Ke3 Kc4 36. Kd2 Ba4 37. Re3 Rd7 38. Re6 Kb3 39. Re3 Bb5 40. Re6 Kc4 41. Re3 Bc6 42. Kd1 Rd6 43. f4 Be4 44. Kd2 Rd7 45. Re1 Rb7 46. Re3 Rf7 47. Re1 Kd5 48. Rf1 Rf8 49. Rg1 Kc4 50. Re1 Rh8 51. Re3 Kd5 52. Re1 h4 53. Rg1 hxg3 54. hxg3 Rh2+ 55. Kc1 Rc2+ 56. Kd1 Bf3+ 57. Ke1 Re2+ 58. Kf1 0-1



ずいぶん手間取りましたが、最後はhファイルから侵入して勝ちをもぎ取りました。隣のボードではロシアのIM が、14歳の少女を相手に苦戦していましたが、最終的には勝利。全11ボードで、結果は各上の9勝1敗1ドローだったようです。


お昼はすぐ近くのピザ屋さんで食べたのですが、量と値段、そして美味しさにたまげました。これまで日本やハンガリーでも、美味しいピザは食べたことがあるつもりでしたが、本場イタリアの石窯で焼いたピザは何かが違います。シンプルなマルガリータですが、私がこれまで食べたピザの中で一番だったと思います。7年半前、トリノでは何を食べていたのでしょうか...(笑) ちなみにこのサイズで3.5ユーロでした。こちらも驚きの安さです。


昼食後ホテルに戻ると、名物のプールに水が入れられているところでした。到着した当初は空だったので、さすがにもうプールの時期ではないのだと思っていましたが、まだまだシチリアでは夏が終わらないようです。昼は25度を超えますからね。次の2R は棋譜だけ載せておきます。

Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Valguarnera, G (ITA, 2036)
6° Open Internazionale "I Dioscuri" - Memoraila Filippo Vetro (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 c6 9. h3 Qc7 10. Be3 Re8 11. Qc2 d5?


12. exd5 exd4 13. Nxd4 cxd5 14. cxd5 a6 15. Rac1 Rxe3 16. fxe3 Qxg3 17. Qf2 Qxf2+ 18. Kxf2 Ne5 19. Rfd1 Bd7 20. b3 Rc8 21. Nce2 Re8 22. Rc7 g5 23. Ng3 g4 24. h4 Bf8 25. Rxb7 Bc8 26. Rc7 Nfd7 27. Ndf5 Nc5 28. d6 Ncd3+ 29. Ke2 Be6 30. Rxd3 Nxd3 31. Kxd3 Rd8 32. Rc6 a5 33. Ke2 a4 34. bxa4 Ra8 35. Rc2 Rxa4 36. Bc6 Ra7 37. Rd2 Bxd6 38. Nxd6 Bxa2 39. Ndf5 f6 40. Nh6+ Kf8 41. Ngf5 Bc4+ 42. Ke1 Ra1+ 43. Kf2 g3+ 44. Kxg3 Bd3 45. Rxd3 Rd1 46. Be4 1-0



手数はかかりましたが、全く問題のないゲームでした。下位相手ですが、これでノビサドの最終戦から続いて4連勝です。今大会初日は、リスト1-5 の5人が連勝となっています。

しかし、次はちょっと厳しい相手です。ここからは上位勢の潰しあい、私は1B に飛んでラトビア代表、GM Miezis と試合をしてきます。ここで簡単に破れてはシチリアまで来た甲斐はありません。なんとかポイントを取り、2日目が終わっても上位に食いついていられるようにしたいですね。


おまけ、ピザ屋にいた猫ちゃん

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.