2019/05/31

NSC Rating June 2019


NCS になってから、国内レイティングの記事を書くのは初めてでしょうかね。月に1回の集計となった国内レイティングは、今日、最新の6月版が発表されました。5月の公式戦では、GW の全日本選手権および、ゴールデンウィークオープンが主な大会となっており、変動を楽しみにしていたプレーヤーも多いかと思います。変動のあったプレーヤーのうち、上位は以下の通りです。

小島慎也 2501
青嶋未来 2474
南條遼介 2443
Averbukh Alexander 2305
小林厚彦 2260


当たり前かもしれませんが、上位勢は全員全日本選手権に参加していたメンバーです。私は全日本での7勝3ドローの結果を受けてプラスになり、初めて2500台の大台に乗りました。一時来日で一大会だけ参加したのGM、IM たちを除けば、2500に載ったのはTuさんに続いて2人目だと思います。全日本選手権で優勝した青嶋くんも当然大きなプラスで、2400後半までレイティングを伸ばしました。明日更新されるFIDE レイティングもプラスの値は事前にわかっていますが、発表が楽しみですね。

NCS では以前のJCA とは違い、国内レイティングの発表が公式HP ですぐされるのでありがたいですね。その他の会員のレイティングも、以下のページからExcel ファイルでダウンロードできます。ご自身のレイティングが気になるかたは、是非チェックしてみてください。

6月 NCS Rating リスト

私は明後日参加する東海オープンで、早速このレイティングを使って試合をしてこようと思います。すぐに大台を割らないよう、しっかりプレーしてきたいですね。皆さん、新しいレイティングでの公式戦も、よろしくお願い致します。

2019/05/30

Olympiad Members Selection for 2022


2018年のオリンピアード日本代表メンバーたち

先週、NCS から会員に向けて1つの投げかけがあり、一部のチェスファンの間では、それが活発に議論されています。それは、2022年のベラルーシ、ミンスクで開催されるオリンピアードの日本代表を、どのように決めるべきかということです。古くからのシステムでは、オリンピアード前年の全日本選手権とジャパンオープンの上位入賞者から代表が選出されていましたが、この2大会の戦績だけで代表を決めるやり方はふさわしくないと、以前から指摘されていました。来年のハンティマンシスクオリンピアードから制度を変えるのは急すぎるため、NCS では3年後のオリンピアードから選出方法を見直そうということなのでしょう。現在、NCS のサイト上ではメンバー選出方法に関してのアンケートが6/30 まで実施されており、自由な意見を述べることもできるようになっています。

FIDEオリンピアード選考方法 - Consultation for Japan Olympiad team

私はこの話題が出た際、すぐにブログの記事に取り上げようかとも思いましたが、自分の意見がまとまらず先送りにしていました。それがようやくここ数日でまとまったので、記事を書こうという気になったのですが、ここで私の意見を出すのはまだ控えておこうと思います。私がブログで出す意見はチェス界に影響が強いと以前指摘されたので、6/30 のアンケート締め切りまでは、私の意見はなるべく伏せた状態で、皆さんには選出方法について自由に考えていただければと思います。じゃあ、今日の記事はなんなのかと言われそうですが、単にアンケート実施中ですという、知らない人に向けた宣伝です(笑)

また馬場さんが書いているブログ、Behind the Scene では、これまでの選出方法においての問題点や、馬場さんが提唱する新しい選出方法について書かれていますので、これらにざっと目を通しておくと皆さんも考えやすいかもしれません。誰もが納得する、誰に対しても公平な選出方法を決めるのは難しいかもしれませんが、従来よりもトラブル無く代表が選ばれるようになることを願っています。

2019/05/23

Chess Training


昨日は青嶋くんと2人でトレーニングをしてきました。これまで羽生さんや中村くんを交えて、3人でのトレーニングの機会はありましたが、2人だけは4年以上の付き合いで初めてです。考えてみるとちょっと意外ですね。青嶋くんとのトレーニングは、全日本の閉会式後に話をして、今後お互いに上を目指すために必要だと考えました。午前中から早速、25/10 でゲームを始めます。

Aoshima, M (FM, JPN, 2313) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Training (1)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. Qc2 g6 6. e3 Bg7 7. Bd3 O-O 8. O-O Bg4 9. Ne5 Be6 10. b3 c5 11. cxd5



手順の入りは違いましたが、この変化は去年の全日本での大多和くんとの試合と同じです。その時は11. Ne2 としてd4 を守りましたが、青嶋くんが指したようにピース交換を進めるのが、ポピュラーなアイディアだと思います。

11... Nxd5 12. Nxd5 Bxd5 13. Qxc5 Bxe5 14. dxe5 Bxg2


Avrukh の本で研究していたラインで、実際に知らないでこの変化に跳びこむのは白は嫌かもしれません。私自身もブリッツで一度経験があるくらいで、セオリーはかなりうろ覚えでした。

15. Rd1!



15. Kxg2 Qxd3 16. Qxe7 Nc6 17. Qxb7 Rfc8!? がトルコのGM Atalik が指したゲームの流れです。この変化は黒に危険がなく、ドローのラインがいくつか研究されています。

15... Nd7 16. Qd4 Bf3 17. Rd2 Rc8!?


本譜の流れを防ぐために17... e6!? もありますが、ルークを早めにcファイルに回す手は、c1 のビショップを取りにいく狙いが生まれるため、より面白みがあるように見えます。

18. e6!



私にとってはうろ覚えながら研究手順ですが、青嶋くんはよく初見のポジションでこの手を見つけるなと驚きました。黒には次にNd7-Nc5 や、Qd8-Qa5 といった手があるため、黒マスを開いて積極的に仕掛けるのが白のベストです。

18... Nf6 19. exf7+ Kg7 20. Qf4 Be4!


この手が成立するのが、早めのRa8-Rc8 のポイントです。

21. Bb2!?



21. Bxe4 Rxc1+ 22. Rxc1 Qxd2 23. Rc2 Qd1+ 24. Kg2 Rxf7= これでイコールというのが本に載っているラインでした。本譜では黒マスビショップを残し、g7 の黒キングへのプレッシャーを残しておきます。

21... Bxd3 22. Rad1 Qa5 23. Rxd3 Qxa2


f7 はどうせ取れるはずだと、クイーンを早めに避けて別のポーンをいただいておきます。

24. Qe5?!



ビショップを避ける手では遅いと青嶋くんは判断し、私も試合後に同意しました。しかし、この手が実際には緩手で黒にチャンスが生まれます。24. Be5!? Rxf7 25. Qb4! でb7 を狙ってまだ形勢不明です。

24... Rc2! 25. R3d2 Rxd2


指した直後、25... Qxb3 のほうが安全だったかとも思いました。実際に、26. Rxc2 Qxc2 27. Rd7 Rxf7 28. Rxe7 Qd1+ くらいしか白にも手が無く、この変化はドローです。しかし、本譜は十分に黒が勝ちを狙えます。

26. Rxd2 Qb1+ 27. Kg2 Rxf7



27... Kxf7! が指されてみると実は白の困る手で、危なく見える黒キングには実のところチェックがかかりません! ナイトのピンも外れれば、すぐにRd2-Rd7 もこないため、e7 も危険ではありませんでした。

28. Rd7 1-0


ここで迷った瞬間、私の時間が落ちました。落ちる直前、指そうとしていた手は28... Kg8? なので、これだとf6 のナイトが動けないままで、黒はb7 を取られて少し悪い形勢だったでしょう。しかし、検討で見つけたキングの上がる手が正解でした。28... Kh6! これでナイトが動けるようになるため、次のNf6-Ng4 が意外なほど強力なスレットになります。Qb1-Qe4+ がクイーン強制交換の安全策になるのもポイントです。29. f4! Qc2+ 30. Kg3 Nh5+ 31. Kf3 Qc6+ 32. Qd5 Qxd5+ 33. Rxd5 ならば、白は1ポーンダウンながらドローを十分目指せるポジションでしょう。b3 のポーンを取るか、自分からルーク交換に応じるかで迷い、時間を消費してしまって勿体ない時間落ちでしたが、指してみたいラインでしたし、色々と勉強になりました。


Kasparian 1946
White to move and win

昼食後は私が白番で勝ち。この日の対局は1勝1敗でした。そして試合の合間には私の手持ちの本から、エンドゲームのポジションを研究します。トップの写真はこちらのポジションで、Endgame Manual にも、Endgame Challenge にも掲載されている、Kaparian の有名な局面です。青嶋くんはチェスの勉強に本を使っていないということで、今後はこうして2人で本のポジションを考えてアイディアを出し合うのも良いかなと思っています。私は主に知識と経験で、彼は読みの力で解こうとするので、互いに足りない部分を補い合い、吸収していきたいですね。青嶋くんとのトレーニングは、今後も時間を見つけて続けていきたいと思います。

2019/05/22

Asian Continental Chess Championship 2019 Entry List


今日は青嶋くんとのトレーニングだったため、それについての記事を書こうかとも思いましたが、もう少し時間を使ってじっくり試合を振り返りたいため、今夜は別の話題にします。5/9 の記事で、6月に中国で開催されるAsian Continental Chess Championship に参加することを伝えました。そして今日、その大会のエントリーリストを確認することができました。現時点でのAsian Continental の参加者は、Chess Results で以下のように発表されています。

Asian Continental Chess Championship 2019 Entry List

トップのメンバーは昨年と似ていますが、前回優勝者のWei Yi を始めとする、中国トップ勢の名前がなく、これは少し意外でした。中国のGM で名前があるのは、新しく中国チャンピオンとなったLu Shanglei らです。ただし、まだ試合開始まで2週間ほどあるので、これからプレーヤーが追加される可能性もあるでしょう。もちろん、6月になってレイティングリストも更新されるため、この大会のリストにも変更があるはずです。私は全日本選手権の結果を受けて、2400ジャストでプレーすることになるでしょう。これほどレベルの高いトーナメントは初めてですので、心して準備し、試合に臨もうと思います。

2019/05/13

Weekly Chess Puzzle Vol.46


Yamada, S - Kojima, S
Hakodate 2007 (2)
Black to move


Kojima, S - Sano, T
1st IVL (5)
White to move

全日本で少し間が空きましたが、タクティクス2題の出題です。1つは12年前の函館のトーナメントから、もう1つは初回のIVL からと、どちらも懐かしいゲームです。答えの分かったかたは、いつも通りお気軽にコメント欄に書き込んでみてください。

2019/05/09

Asian Continental Chess Championships 2019 Tournament Preview


河北省にある世界遺産、承徳避暑山荘の小金山 from wikipedia

突然ですが、来月、中国の河北省邢台市 (Xingtai) に妻と2人で行くことになりました。目的は当然トーナメントですが、参加するのはアジアでも有数のハイレベルなトーナメント、Asian Continental です! 昨年は12月にフィリピンで開催されたため、今年はもう少し先かと思っていましたが、実際には割と早めの6月でした。GW前、ぎりぎりでの駆け込みエントリーをサポートしてくださった、ヒーバートさんにはとても感謝しています。

Asian Continental は言葉の通り、ゾーン選手権の枠を取り払い、アジア各国のトッププレーヤーが揃う大会です。日本が所属するゾーン3.3 も、シンガポール、ベトナム、フィリピンなどと争う激戦区ですが、その枠を取り払ったAsian Continental には当然、アジア最強の2国、インドと中国のプレーヤーも参加してきます。参考までに、Wei Yi が参加した昨年のAsian Continental のリンクを貼っておきます。レベルの高さが一目でわかるでしょう。

Asian Continental Chess Championships 2018 Final Standings

この戦いを乗り越えたオープン、女子それぞれのセクションのトップ5人の選手には、World Cup 出場権が与えられます。私は昨年に近いメンツであるならば、3/9 くらいで終わってもおかしくないスタートリストですが、ここにさらに地元中国のレイティングよりも実力のある選手が大勢入ってくる可能性もあります。どんな大会になるか怖さもありますが、勉強だと思ってしっかりプレーしてきたいと思います。今年のAsian Continental は、6/7 スタートです!

【日時】 2019年6月7日-15日
【開催地】 河北省邢台市
【形式】 スイス式9回戦 (40手90分+30分+初手から1手30秒)

今年のエントリーリスト等、また情報が入り次第お知らせしようと思います。初のAsian Continental 頑張ってきます!

Asian Continental Chess Championships 2019 Regulation

2019/05/07

Tokai Open 2019 Tournament Preview


昨年の東海オープン入賞者たち

毎年名古屋で開催されている東海オープンは、今年も来月頭に予定されています。ここ2年は私が東京から参加して優勝しており、今年も今のところは参加しようと計画しています。名古屋はいつ行っても、大会運営や食事など満足できていますので、是非東京やその他の地区の皆さんも、名古屋への遠征を検討してみてください。今年の東海オープンの概要は以下の通りです。

【日時】 2019年6月2日(日) 9:00~18:30
【会場】 名古屋市芸術創造センター 5階会議室(最寄駅:新栄町駅)
【形式】 NCS公式戦 スイス式4R (30m+30s/m)
【参加費】 5000円 (18歳未満4000円、郵便振り込みによる早期割引あり)
【締め切り】 2019年6月1日(土)

申し込みの連絡は、名古屋チェスクラブまでよろしくお願いします。。参加を検討されるかたは連絡先やその他詳細を含め、リンク先をご確認ください。レイティングでセクションわけされ、賞品もあるようです!

東海オープン 2019

それでは東海地区の皆さん、よろしくお願い致します。また来月、お会いできることを楽しみにしています。

2019/05/05

Japan Chess Championship 2019 Day 5 Tournament Report


Photo by Yamada, A

今年もGWに開催されていたチェスの全日本選手権は、昨日無事に全日程を終了して閉会しました。優勝して新チャンピオンとなったのは、スタートから一度も落ちることなくトップを走り続けた青嶋くんです。最終戦績は驚きの9勝1ドローで、私とのドロー以外全て勝ちました。青嶋くん、初の日本チャンピオンタイトル獲得おめでとう!

1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2313) 9.5/10
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2395) 8.5/10
3rd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 7/10
4th Place Asaka Samuel (AUS, 2169) 6.5/10

Japan Chess Championship 2019 Final Standings


私は4日目、5日目で1勝1ドローずつだったため、青嶋くんと1P離され、今年も2位に終わりました。7勝3ドローという戦績ははたから見れば上出来ですが、これで優勝できないのは厳しいですね。それでもレイティングは+5で、2400ジャストに再び戻ります。戻るたびにもう2400を割りたくないと思っていますが、こんどこそ叶うでしょうか(笑) また今年はFIDE戦が多くなりそうですので、引き続き頑張ります。

2014年の全日本で10勝1ドローという、今回の青嶋くんばりの戦績で優勝した南條くんは、今回の戦績にとても満足できないでしょうが、最終戦でテクニックを見せて東野さんを破り、3位に滑り込んだのは流石でした。オーストラリアから数年前に日本に来たサミュエルくんは、当時からさらに実力を伸ばし、今回初めて2200到達と全日本入賞を達成しました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!


表彰後、優勝コメントをする青嶋くんです。全日本優勝はチェスを初めて4年半前から、FM獲得と並んで目標としてしたいたとのこと。過去3回の全日本では優勝できずに悔しい思いをしたが、4回目で達成できて嬉しいという内容でした。FMタイトルを昨年末の香港で、全日本選手権優勝をこのGWで達成した青嶋くんの、次なる目標はやはりIMタイトルでしょうか。先輩プレーヤーとしては、そんなに簡単じゃないぞと言いたい気持ちもありますが、その反面で素直に応援したいですね。

青嶋くんは昨年秋のクラブ選手権以降、香港の大会、東京チェス選手権、そして全日本選手権と3大会を負けなしで乗り切り、しかも全て優勝しています! 今回の全日本でのFIDE公式戦10試合では、レイティングを46伸ばし、6月の更新で2359になる予定です。これは日本のプレーヤーとしては歴代4位の数字で、この勢いであれば2400にいつ乗ってもおかしくないと感じてしまいます。今年後半のトーナメントでも、どんな活躍を見せてくれるか今から楽しみですね。


そろそろ私の試合解説に移ろうと思います。9Rで松尾さんとドローになり、優勝が相当厳しくなった状況で、最終戦の塩見さんとの試合に臨みます。トップと1P差で最終戦、しかも相手は塩見さんに黒というのは、Sam Collins が優勝した2009年と同じでした。その時も感じましたが、優勝云々とは関係なく、トーナメントは勝って締めくくりたいものです。

Shiomi, R (JPN, 2072) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (10)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. d4 exd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nxc6 bxc6 6. Bd3!?



塩見さんとの試合は、Scotch Four Knights になると想定していましたが、このラインはほとんど知りませんでした。d7-d6 では弱気すぎるので、ここはポーンをぶつける1手です。

6... d5 7. e5 Nd7


試合後に塩見さんからは7... Ng4 8. O-O Bc5 とするのが多いと教えてもらいました。g4 にはナイトは跳びづらいかと思いましたが、Qd8-Qh4, h7-h5 も黒にはあるため、白は簡単にh2-h3 がしづらいでしょう。ただし本譜のナイトが退く変化も十分に指せる手です。

8. O-O Be7 9. Qg4?!



e5 にポーンを刺したのであれば、それを活かしてf6 のマスを抑え続けるような状況で戦うのが良いと感じました。本譜の手は典型的でアグレッシブに見えますが、ここではポーンを交換して黒は満足な流れです。9. Re19. f4 で一度e5 を守っておくべきだと思います。

9... Nxe5! 10. Qxg7 Bf6 11. Qg3 Nxd3 12. Qxd3


12. cxd3!? としてキャスリングを妨害したまま、将来的に開いたcファイルからc6 を攻めるのもありえると思います。

12... O-O 13. Nc3 Rb8!



研究していたScotch Four Knights のラインで、似たポーンストラクチャーで開いたb,eファイルから、ルークをダイナミックに使うアイディアを勉強していました。このゲームでもその構想がばっちりはまりました。

14. Rb1 Bg7!? 15. Bf4 Rb4!


黒マスビショップは当然c7 を狙うように展開してくると思ったので、その浮いたピースをアタックしに先程のルークを使います。Rb8-Rb6 からcポーンを突き、6段目でキングサイドに振る構想も頭に少しありましたが、すでに開いている4段目でルークは十分使えました。

16. Qg3 Qf6!



この手は塩見さんにとって予想外だったと思います。私としてはc7 を守ってパッシブに指し続けるよりも、最後のマイナーピースである白マスビショップを展開できるようにし、c2 への反撃を早く作りたいと考えていました。黒マスビショップをg7 に退いたことも、gファイルを閉じてキングを守ることだけでなく、このクイーンの上がるスペースを作るアイディアとつながっています。

17. Bxc7 Rg4 18. Qd6??


この手ではもう試合が決まってしまいます。18. Qd3 Bf5! 19. Qd2 Qg6! 20. f3 Rd4 から黒はc2 を取りかえして優勢ですが、白はその展開を受け入れるしかありませんでした。

18... Qf3! 19. g3 Re4! 20. Nxe4 Bh3 0-1



白のブランダーと白マスの弱さをつき、勝負は早々に決しました。今大会は白番で3ドローと苦戦した代わりに、黒番で5戦5勝でした。Caro-Kann を封印し、新しい武器として研究に取り組んできた1...e5 で、こうして成果が出せたのは嬉しく思います。


全日本選手権と並行で開催されていたゴールデンウィークオープンでは、フランスから来た生徒の心くんが5/6 で優勝しました! 日本のチェスのオープントーナメントで、11歳が優勝したというのは過去最年少の記録ではないでしょうか。小学生選手権ではないですよ。

今年からゴールデンウィークオープン(旧ゴールデンオープン) もFIDE公式戦となり、入賞者のうち3人はFIDE籍が日本ではない、国際色豊かなトーナメントになりましたね。両大会の参加選手の中から、また新たなレイティング保持者も生まれますので、日本でももっとFIDE公式戦が気軽にできることを願っています。大会運営陣の皆さん、そして参加者の皆さん、6日間お疲れ様でした。また次のトーナメントでもよろしくお願い致します。

2019/05/03

Japan Chess Championship 2019 Day 4 Tournament Report


Photo by Yamada, A

1日更新が後れましたが、昨日の全日本4日目のレポートです。昨年から続く変則スケジュールで、今年は4日指して1日休み、そして明日の最終日で最後の2試合となります。最終順位も見えてくる4日目は、私が午前のゲームで東野さんとドロー。これは相手に上手いラインを準備され、1/2 落としたのも仕方ないと思える内容でした。対する青嶋くんは、Samuelを相手に1ポーンダウンの苦しいゲームを大逆転勝ちで星を伸ばし、6.5/7 でこの大会初めて単独トップに立ちます。これ以上離されるわけにはいかない私は、午後のラウンドこそ勝ちを目指して戦います。

Yamada, K (FM, JPN, 2148) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (8)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. d3



1. e4 e5 はTokyo Chess Championship に続き、この全日本選手権でも指すつもりで研究していました。面白いことに今大会では、私だけでなく山田くん、南條くんも黒番で1. e4 e5 を指しています。このRuy Lopez の5. d3 ラインには、キングサイドフィアンケットを用意しています。

5... d6 6. c3 g6 7. O-O Bg7 8. Nbd2 O-O 9. Re1 Re8 10. h3 b5!?


私の持っている本には、黒はNd2-Nf1 を見てからbポーンを突くべきだと書いてあります。それは黒がBc8-Bb7 を指した際に、Nd2-Nb3-Na5 といったマヌーバリングで狙われないようにするためです。10. h3 に対しては、10... h6!? のように1手待ち、白のナイトがd2 から離れてからbポーンを突くことも考えましたが、Nd2-Nb3 にも本譜とは別のアイディアで戦えると考え、あえてbポーンを伸ばすことにしました。

11. Bc2 Bb7 12. Nf1 Nb8!



白はオーソドックスにナイトをf1 に退くことにしたので、黒としてはクイーンサイドでの早い危機は無くなりました。Breyer のセットアップでピースを組み直し、黒は満足な展開になるでしょう。

13. Ne3 Nbd7 14. Ng4!?


白は方針をかなり早い段階で決めてきました。開いたhファイルは将来的に攻撃チャンスを作りうるものですが、きちんと対応すればさほど危なくは無いと判断し、白の誘いに乗ることにします。

14... Nxg4 15. hxg4 d5 16. Bg5 Qc8!



16... Nf6 17. d4! は黒としては嫌な展開です。c8 はクイーンにとって少し不自然にも見える位置ですが、g4 を遠くから狙っていますし、ここからいくらでも組み直しが可能です。

17. Nd2 Nc5 18. Qf3 dxe4


18... Ne6 19. Bf6 Bxf6 20. Qxf6 Nf4 も黒マスビショップを交換して黒はOKですが、本譜もまた面白い流れです。

19. dxe4 Ne6 20. Be3 c5!=/+



これで黒は少し指しやすいと思いました。e6 のナイトはb8-c6-b8-d7-c5-e6 と長い旅路の末、d4, f4, g5 のいずれにマスにも跳ぶチャンスがある、理想的な位置に落ち着いています。

21. Rac1 Qc7 22. Kh2 Rf8!?


後から考えれば余計だったかもしれませんが、一度f7-f5 を見せておくことにします。

23. Qh3 Rad8 24. Qh4 Nf4 25. Nf3 h6 26. g5 h5 27. g4 hxg4 28. Qxg4 c4



c5 のポーンをビショップの当たりから外してクイーンをフリーにしつつ、d3 のコントロールを強めておきます。Nf4-Nd3 と早めに入り、白マスビショップとナイトの交換を目指しても良いのですが、白にとって働きが良いのは黒マスビショップですので、f4 で取られるのを待つもの悪くないはずです。

29. Bxf4 exf4 30. Kg2 Rfe8 31. a3 a5 32. Re2 Re7 33. Qh4 Rde8 34. Rce1 Rd8 35. Rh1 Rde8 36. Rhe1 b4!


少し方針を迷いましたが、結局最も仕掛けやすいbファイルから局面を動かすことにします。

37. Nd4 bxc3 38. bxc3 Qc5?!



ここは時間切迫の中、a3 とf4 のポーンを交換してチャンスが生まれると思いましたが、ベストの手は違いました。38... Qd6! 39. Nb5 Qc5 40. a4 Re5! ナイトがf3 に戻れななければ、g5 のポーンを狙うチャンスが生まれることはもう少し先で考えていましたが、ここで使えるとは思っていませんでした。 41. Qxf4 Rxg5+ 42. Kf1 Bc8-+ これで黒が勝勢であれば、Nd4-Nb5 を恐れずにf4 を守り続けられるd6 のマスからa3 を狙うべきでした。

39. Qxf4 Qxa3 40. Re3 Qc5 41. Nf3?!


時間が増えた40手直後、山田くんが方針を間違えました。黒がhファイルからの攻撃に対応するためには、g7 の黒マスビショップを消すわけにはいきません。そのため、1ポーン取れるとしてもd4 でのビショップナイト交換は仕掛けないでしょう。ならば、白はd4 にナイトを残したままにしてc3 をカバーし、c6 のマスも守り続けたほうが良いでしょう。

41... Bc6! 42. Rh1 a4 43. Nh2? Qf5! 0-1



ナイトをf3 に退いた理由が、Nf3-Nh2-Ng4-Nf6 だということは薄々気付いていました。しかし、これは本譜で指したようなQc5-Qf5 がぴったりになってしまうため、遅すぎて効果的ではありません。ここで試合が終わるのは予想外でしたが、白はe4 が落ちることが確定し、aファイルのパスポーンにも対処が難しいため、このタイミングでのリザインもおかしくはないでしょう。

なんとかこの8Rを勝ちましたが、青嶋くんも南條くんを破ったため、差は1/2 のまま縮まりません。この大事な4日目でも連勝するとは、青嶋くんの勝負強さを感じるトーナメントです。そしていよいよ、休憩日を挟んで明日の2試合で最終順位が決まります。気になる明日のペアリングは以下のリンクから確認ができます。

Japan Chess Championship 2019 R9 Pairings

トップボードはAlex-青嶋、2B は小島-松尾となっています。例年と違って最終日でも1試合にはならないので、皆さん最後まで力を振り絞って頑張りましょう。最終日もよろしくお願い致します。



2019/05/01

Japan Chess Championship 2019 Day 3 Tournament Report


Photo by Yamada, A

全日本選手権3日目は、私と青嶋くんの全勝対決からスタートします。序盤、私の構想がおかしく、少し不利になってしまいましたが、これをなんとか粘ってドローに持ち込みました。これで5R時点で全勝が消え、私と青嶋くんが4.5/5 でトップとなります。午後は4/5 で3位グループにつけていた南條くんと、2年ぶりの公式戦になりました。

Nanjo, R (IM, JPN, 2324) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (6)

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. b3 Bg4 4. Bb2 Bxf3 5. gxf3 e6 6. e3 Nf6 7. Rg1 Nbd7 8. Nc3 g6 9. cxd5 exd5 10. f4 Bg7 11. Qc2 O-O 12. O-O-O d4 13. Ne2 c5 14. Kb1 Nd5
15. Nc1 Nb4 16. Qe4 Qb6 17. Bc4 Rfe8 18. Qf3 Rad8 19. Rg5 dxe3 20. Bxg7 Kxg7 21. dxe3 Nf6 22. Re5 Rxd1 23. Qxd1 Rd8 24. Qe2 Qd6?!



今日は序盤を飛ばしてこの辺りからスタートします。白キングの守りの薄さをつき、黒が有利だと思っていましたが、ここで正しいプランを見失いました。24... Nc6! 25. Rg5 Qa5! と別の角度からd2 のマスを抑えるアイディアが良く、ルークも追い返しているために本譜のf7 へのアタックがありません。

25. Qb2 Qd1 26. Re7! Nbd5?


ここで残り時間わずかまで考え、自分の作戦の間違いに気づきました。f7 をルークで取らせてもh6 に上がって大丈夫だと思っていましたが、26... Rd2?? 27. Qxf6+! Kxf6 28. Rxf7# なんとクイーンを捨ててメイトです。ルークd2 への侵入ができないことのショックで、さらに正しい手を見つけ損ねました。26... Rd7 であれば、f7 もb7 も守れます。

27. Rxb7 Kg8 28. Qc2? Qe1 29. Kb2 Nb4?



去年のオリンピアードでのRagger戦を思い出させる、ナイトの跳ぶマスの間違いです。29... Nxe3! からRd8-Rd2 を狙う筋は見えていながら、本譜のほうが安全だと思ってしまいました。

30. Bxf7+ Kh8 31. Qc3??


31. Qxc5+- ならば黒のアタックは届かないのですが、私も南條くんも時間切迫で正しい形勢判断ができていません。

31... Qxc3+! 32. Kxc3 Ne4+



クイーン交換後のこのチェックが互いの予想よりもずっと強力で、私にとってはとてもラッキーでした。

33. Kc4


ナイトフォークを食らうことを承知でキングが上がります。33. Kb2 Rd2+ 34. Ka3 Rc2-+ でも黒勝ちでしょう。

33... Nd6+ 34. Kxc5 Nxb7+?



素直にルークを取る手でも黒は有利になりますが、確実に勝ちになるタクティクスを見落としています。34... Nd3+!! 35. Nxd3 Nxb7+ 36. Kc6 (36. Kc4 Nd6+-+) 36... Rxd3 37. Kxb7 Rd7+-+ ぴったりのダブルアタックが残っていました。分岐のナイトフォークの筋も含め、パズルのようです。

35. Kxb4 Rd1 36. Ne2 Rd2 37. Nc3 Rxf2 38. h3 a5+!


d6 のマスがフォークになるため、このチェックに対して白キングが避け場所に困っています。

39. Ka4 Rc2 40. Ne4 Rxa2+ 41. Kb5 Re2 42. Bd5 Rxe3!



時間が増えた状況でこの手を見つけ、ゴールが見えてきました。b7 のナイトを諦めても、危険になりうる白のbポーンを消してaポーンをパスポーンにすれば、白は2ピースあっても対抗するのは難しいでしょう。

43. Bxb7 Rxb3+ 44. Kc6 a4 45. Nc5 Rb4 46. Kd6 a3 47. Bd5 Rxf4 48. Nd3 a2!


Nd3-Nc1-Na2 でa2 をブロックされる前に、この手でピースを取りにいきます。これで完全に黒勝ちだと分かっていても、最後まで気は抜けません。

49. Bxa2 Rd4+ 50. Ke5 Rxd3 51. Be6 Kg7



後はキングを押し進め、h3 のポーンを落としにいきます。

52. Ke4 Ra3 53. Kf4 Kf6 54. Bd7 Rd3 55. Bc8 Rc3 56. Bg4 h5 57. Bf3 Rc4+ 58. Kg3 Kg5 59. Bd5 Rc3+ 60. Kh2 Kh4 61. Be6 Rc2+ 62. Kg1 Kg3


キングとルークを利用すれば、白キングを下段に押し戻せます。バックランクのメイトスレットまでできればあと一歩です。

63. Kf1 Rh2 64. Bf7 Rf2+ 0-1



青嶋くんが早々に白星を挙げていたため、私も必死に指しました。振り返ってみてもよく勝てたと思います。

6Rが終わり、私と青嶋くんが5.5/6 でトップ。続いてSamuelくんが5/6で3位につけています。明日の7Rは色の関係で私が2Bに落ち、Samuel-青嶋がトップボードでの顔合わせとなります。後半4試合、もう一息頑張りましょう!

Japan Chess Championship 2019 R7 Pairings


今大会から新しい会場として利用しているのが、大井町駅前のきゅりあんです。立地も良く、中も広々としていて綺麗です。明日からはゴールデンウィークオープンの参加者もここで試合がスタートしますので、そちらもどうなるか楽しみにしています。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.