先日、モンゴルのウランバートルで行われていた、2nd Eastern Asian Youth Chess Championship が全日程を終えました。日本からは6セクションに8人のプレーヤーが参加していましたが、その中でU14 セクションに参加していた逢坂拓真くんが、5勝4ドローの7/9 という好成績で準優勝となり、一発でCandidate Master のタイトル獲得となりました! 逢坂くんは日本のジュニアでトップクラスの実力を持つプレーヤーの1人で、これまでもギリシャやスロバキアのユース大会に参加してきましたが、表彰台に上ったのは今回が初めてです。拓真、おめでとう!
Osaka, T (JPN, 1867) - Hitgelt, K (MGL, 2136)
2nd Eastern Asian Youth Chess Championship U14 (3)
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 c5 4. d5 exd5 5. cxd5 d6 6. e4 g6 7. Bd3 Bg7 8. h3 Nbd7 9. Nf3 a6 10. a4 Nh5!?
2nd Eastern Asian Youth Chess Championship U14 (3)
2日前に書いたAntonさんのゲームの記事では、このナイト跳びを遅らせたために白にBc1-Bf4 を許し、d6 のポーンが負担になりました。早めにh5 にナイトを跳ばすのは近年の流行で、黒はf4 とe5 のマスをカバーしておき、ピースの交換を狙います。
11. O-O Ne5 12. Nxe5!?
Antonさんが指したように、12. Be2 Nxf3+ 13. Bxf3 Nf6 (13... Qh4!?) といった流れが自然に見えますが、いずれにせよ黒はナイトを1組交換することができます。
12... Bxe5 13. f4 Bd4+ 14. Kh2 O-O 15. Qf3 Bd7 16. Be3 Bxe3 17. Qxe3+/=
基本的にこのように2ピースを交換するのは黒の満足な展開ですが、f4 に出られずに困った黒マスビショップを白が捌き、センターの厚みをもってe4-e5、f4-f5 のどちらの狙いも作れるのであれば、白にとって良さそうなポジションに思えます。するとどこが黒のミスなのかという話になりますが、おそらく14... Qh4!? と指し、白が弱めたg3 のマスを狙えば本譜よりも良かったでしょう。
17... Re8 18. Rae1 Qb6 19. Qf2 Ng7 20. f5! Red8 21. f6
f6 にポーンを刺されるのも嫌ですが、ここfファイルを単純に開いても、白のアタックは強力です。21. fxg6 fxg6 22. Qf7+ Kh8 23. Re2+- これでfファイルにルークを回した場合、黒はルークもナイトもビショップも、簡単にポジションを改善することができず、苦しい状況です。
21... Ne8 22. Qd2 Qb4 23. Rf4!
b4 のマスへの侵入はよく見られるアイディアですが、fポーンをすでに進めている白は、4段目でルークを振り、黒クイーンに対抗するアイディアが使えます。
23... c4? 24. Bxc4! b5
黒はこの手を見落としていたのでしょう。黒はクイーンでビショップを取ることができません。24... Qxc4 25. e5! Qc7 26. e6! Bc8 27. exf7+ Qxf7 28. Re7 Qf8 29. f7++- と進めば、白の勝ちです。
25. Ba2 Qc5 26. b4!
1ポーンアップになった白は、着実に試合を進めます。ここでクイーンサイドを固めてしまえば、黒のカウンタープレーのポイントはcファイルのみに絞られます。一方で白はキングサイドで十分にアタックのチャンスを残しています。
26... Qc7 27. a5 Rdc8 28. Re3 Qd8 29. Qf2 Rc7 30. g4 Rac8 31. Ne2 Rc2 32. Bb3 Rb2 33. g5 Rc1 34. Rff3
攻め合いにして押し切ろうとするのは理解できますが、安全にプレーすることを心がけるのであれば、2ルークとクイーンの交換をして、黒のカウンタープレーを完全に消してしまっても良かったでしょう。34. Nxc1 Rxf2+ 35. Rxf2+-
34... Bc8 35. Rc3 Rcb1?
ここは黒のラストチャンスでした。35... Rxc3! 36. Rxc3 h6! 37. h4 Bg4! ならば、黒はビショップが突然使えるようになり、侵入した2ルークと合わさって反撃を作れています。
36. Bc2! Ra1 37. Nd4!?
本譜のナイトが侵入するプランも、もちろん強力です。もう1つの面白いフィニッシュは、37. Qb6! Qxb6 38. Rxc8!!+- で、バックランクメイトの受けがなく白勝ちという変化です。
37... Qd7 38. Nc6 Kh8 39. Ne7 Bb7 40. Qh4! h5 41. gxh6 Kh7 42. Nxg6! fxg6 43. f7 1-0
リスト2のプレーヤーを下した逢坂くんは、この後も崩れることなく最後まで乗り切りました。リスト1のプレーヤーには途中でトップの座を明け渡してしまったものの、3位以下にきっちりとポイント差をつけての2位は、立派な結果だったと思います。この戦績で逢坂くんは、現在日本で登録されている6人に追加で、7人目の、そして最年少のCandidate Master となります。
他の7名のプレーヤー、そして付き添った保護者の皆さんも、モンゴルへの遠征お疲れ様でした。近年はこうして、ジュニアたちが団体で海外大会に遠征に行くことが多くなり、私のジュニア時代との違いにただ驚くばかりです。今後も近い世代同士、皆さんで競い合い、互いに腕を磨いてほしいと思います。また7月、ジュニア選手権や小学生選手権で顔を合わせると思いますので、そちらの大会でも悔いのない試合ができるよう応援しています!
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