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2026/07/25

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.14


こちらのシリーズ最終回です。昨年のジャパンオープンは、GM,IMを複数招き、日本で初めてのノームチャンスのある大会として、画期的な企画だったと思っています。今年も幕張で開催予定のジャパンオープンが楽しみです。さて、その昨年のジャパンオープンから、未公開であった試合を1つご紹介します。前半かなり苦戦し、後半挽回する中で指した松永くんとのゲームです。

Matsunaga, T (JPN, 2001) - Kojima, S (IM, JPN, 2318)
Japan Open 2025 (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. Bd3 Nc6 5. c3 e6!?

Caro-Kann Exchange 対策としては、5... Qc7, 5... Nf6 を併用して使ってきましたが、JobavaのCreative Caro-Kannで勧められている、5... e6!? をこの試合では始めて試してみました。c8のビショップの展開を諦めますが、Bf8-Bd6, Ng8-Ne7, f7-f6 と組み、タイミングを見てe6-e5と突くのがメインのアイディアです。

6. Nf3 Bd6 7. O-O Nge7 8. b3!? O-O 9. Bb2


白がBc1-Bf4をしてこなかったため、b8-h2ダイアゴナルは黒が抑えました。これに対抗するために、9. Ba3から黒マスビショップの交換を目指す手もあったと思います。本譜はピース交換を避け、互いにゆったりとピースの改善を行います。

9... Bd7 10. Nbd2 f6! 11. c4!

黒は白がc3-c4,Nb1-Nc3ができないよう、d2にナイトを展開したのを見てからf7-f6を突き、白はそれでもc4を突く自然な流れです。黒はd5へのプレッシャーで、e6-e5が簡単にできないため、再度ゆっくりとピースの位置改善を目指します。

11... Be8! 12. Rc1 Rc8 13. Re1 Bf7!


QGD Exchangeでは、白の黒マスビショップがBc1-Bg5-Bh4-Bf2と組み替えられるので、逆に黒がBc8-Bd7-Be8-Bf7としても、なんらおかしくはありません。最初の5... e6!? によって閉じ込めたビショップの問題は、ひとまず解決できたと言えるでしょう。

14. a3 Bb8 15. b4!? dxc4 16. Bxc4 Nd5

白がクイーンサイドのポーンを伸ばしてきたところで、黒からポーンストラクチャーを決め、d4をIQPにしたうえ、d5のマスをナイトで抑えてしまいます。d4のポーンは簡単に動けないため、b2のビショップはしばらく脅威になりません。

17. Ne4 b6 18. Nc3?


互いに駒かなピースの改善をさらに進める段階で、白にタクティクスの見落としが発生しました。d5のナイトに対抗したい気持ちは分かりますが、c4のビショップが浮くことを忘れています。

18... Ncxb4! 19. Bb3 Nxc3 20. Bxc3 Nd5 21. Bb4 Re8 22. Ba4 Rxc1 23. Qxc1 Nxb4!

これでd3のフォークを目指せれば、黒はポーンアップのまま、駒を捌いてエンドゲームを迎えることができます。

24. Bxe8 Nd3 25. Bxf7+ Kxf7 26. Qc3 Nxe1 27. Qxe1 Qd5!


Centralization! 黒もようやくクイーンの出番です。d5の好位置を抑えたクイーンは、キングサイド、クイーンサイドの両方をにらみます。

28. Qb1 Bd6 29. Qb2 Qa5 30. g3 Qxa3 31. Qe2 a5 32. Qe4 Qb3 33. Kg2 Qd5 34. Qxh7 a4 35. Qb1 b5 36. h4 a3 37. g4 a2-+

h7ポーンを返しても、クイーンサイドに2コネクテッドパスポーンを作り、それを押していけば黒の勝ちです。

38. Qh7 a1=Q 39. g5 Qd1 40. g6+ Ke8 41. Qg8+ Kd7 42. Qxg7+ Be7 0-1


ようやく2024-25の未公開シリーズが終わりました。2026年の試合はまだ半分ですので、オリンピアード以降にまた面白い試合をご紹介できるか考えてみようと思います。明日からはタイのトーナメントに遠征しますので、そちらからもゲームをお届けできればと思います。

2026/07/16

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.13


このシリーズもそろそろ終わりです。第13弾として紹介するのは、昨年の中部快速オープンの野田くんとの試合です。昨年の大会時のレポートでは、4Rの東芝さんとの試合をご紹介しましたが、最終戦は4連勝同士で野田くんとの対戦でした。2年連続のカデッツチャンピオンであり、現在U12の日本ランキング1位でもある彼には、ここ2年でポイントを落とした大人たちも多いと思います。

Noda, R (JPN, 1796) - Kojima, S (IM, JPN, 2278)
Chubu Rapid 2025 (5)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 a6!?

Caro-Kann Advance の変化は、Shirov Variation (4. Nc3)、Short Variation (4. Nf3) の流行を経て、この10年で最も注目のラインの1つが、このTal Variation (4. h4) です。これに対して、Batumi Olympiad (2018) の時は4... Qc7 を指していましたが、現在はJobava がCreative Caro-Kann の中で進める4... a6 を指しています。Advance Variationでは他の変化でも見られるアイディアで、g2-g4に対してBf5-Bd7と戻る含みを持たせつつ、1手待って様子を見る狙いがあります。

5. Bd3


4... h5 5. Bd3! ならば普通の手順で、白は将来的に黒が弱めたg5のマスを使うことで優勢を築こうとします。本譜では黒が余計なh7-h5を入れていないため、キングサイドが弱くなっておらず、単純な白マスビショップ交換からキングサイドでチャンスを作れるのかは疑問です。

5... Bxd3 6. Qxd3 e6 7. Nf3 c5 8. c3 Nc6 9. Be3 cxd4 10. cxd4 Nge7 11. Nc3 Rc8 12. a3 Na5!

白マスビショップをすでに交換していること、さらにNc6-Nb4を嫌ったa2-a3を指させたことで、b3、c4のマスが弱くなっていることを利用します。

13. Nd2 Nf5 14. h5 Be7 15. g4


白はポーンストラクチャーから、e3のビショップは働きが悪く、交換させても良いと考えるかもしれません。しかし片方のビショップを交換し、残ったビショップの働きが悪いのであれば、それはそもそも白の進め方としておかしいと言えるでしょう。黒はe3のビショップの働きが悪かろうと、交換してスペースの狭さの問題を解決し、白の攻撃チャンスを減らせれば満足です。

15... Nxe3 16. Qxe3 O-O!

白のキングサイドのポーンストームは脅威ではなく、黒キングはキングサイドへの避難で十分に安全、そしてルークの連携の価値が高いと考えます。

17. f4 Nc4 18. Nxc4 Rxc4 19. g5 Qb6 20. O-O-O Qb3 21. Rd3 Rfc8 22. Rh3 b5


ポーンのみでくる白のキングサイドアタックに対し、ルークを素早く連携させて行う黒のクイーンサイドアタックのほうが強力です。ここはbポーンが伸びる前に、Qb3-Qa2と潜り込む手も有効です。

23. g6 a5! 24. gxh7+ Kh8

Sicilian の逆サイドキャスリングの攻め合い等で多く出てくる形で、黒はh7ポーンに蓋をさせ、hファイルから攻めさせなければ、黒キングはさほど危険ではありません。この形でg7を攻める戦力が不十分であることが、白の不満な点です。

25. Kb1 b4 26. Ne2 Qc2+ 27. Ka2 bxa3 28. Rd2 Qf5 29. Qd3 Qxd3 30. Rhxd3 axb2 31. Rxb2 a4


少し悩みましたが、クイーン交換を受け入れてエンドゲームに持ち込めば、aポーンの存在で十分に黒勝勢です。互いのダイレクトアタックのチャンスが消えれば、h7のポーンは隙を見て回収できます。

32. Rdd2 a3 33. Rb7 Bb4 34. Rd1 Rc2+ 35. Ka1 Rxe2 36. Rxb4 Rcc2 37. Rb3 Ra2+ 38. Kb1 Kxh7 39. Rdd3 Rab2+ 40. Rxb2 axb2-+

マイナーピースと1組のルークも交換してしまえば、黒に不安のないルークエンディングとなります。b2に残ったポーンで決着をつける必要はなく、d4、f4を狙ってさらなる駒得を目指します。

41. Rg3 Kh6 42. Rg4 Rd2 43. Ka2 Rxd4 44. Kxb2 Kxh5 45. Rxg7 Rxf4 46. Kc3 Kh6 47. Rg3 Re4 48. Rf3 Kg7 49. Rg3+ Kf8 50. Rg5 f6 51. exf6 Kf7 52. Kd3 Kxf6


白のポーンを全て消し、2コネクテッドパスポーンが残れば後は時間の問題です。

53. Rg1 Ke7 54. Ra1 Kd6 55. Rb1 Rh4 56. Ke3 Rh3+ 57. Kf4 e5+ 58. Kf5 Rf3+ 59. Kg4 e4 60. Re1 Ke5 61. Re2 d4 62. Kh5 Rg3 63. Kh4 Rg8 64. Kh3 e3 65. Ra2 Ke4 66. Ra1 d3 67. Kh2 e2 68. Ra4+ Kf3 69. Ra1 Kf2 70. Rb1 Rh8# 0-1

中部快速オープンだけでなく、先日参加した町田サマーラピッドのように、関東でもFIDEラピッド大会が増えていて嬉しいです。1日で気楽に参加でき、FIDEレイティングの増減がある大会は、今後も需要が増えていくのではないかと思います。

2026/07/14

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.12


久々にブログでの未公開棋譜を振り返るシリーズです。大会での遠征で日本各地に毎年足を運びますが、昨年は例会に参加する目的で大阪を訪れました。その際に蛭川さんと指した試合をご紹介します。これまで扱ってきたゲームに比べると、どこが見どころかの判断は難しいですが、大きく動かず様子を見るプレーをご覧いただければと思います。

Hirukawa, Y - Kojima, S
Osaka

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. Nc3 a6 5. d4 Bf5!?

a7-a6とBc8-Bf5のミックスは以前から時々指していました。e7-e6を遅らせているため、ビショップナイトの交換を狙う典型的なアイディアであるNf3-Nh4が使えないので、白は優位を得るのに工夫が必要です。

6. Be2!?


私は白番では6. Qb3としてb7をすぐ攻撃する手を使っていましたが、最近は6. Ne5 Nbd7 7. Qb3 Qc7 8. cxd5 Nxe5 9. dxe5 Nxd5 10. e4!? という変化が面白いのではないかと思っています。

6... h6! 7. O-O e6 8. Qb3

白のセットアップはおとなしくも自然に見えますが、ここは8. Bd3!? と1手損でもビショップを交換するアイディアが面白いでしょう。白マスビショップを交換するなら、最初から6. Bd3 で良いように思えますが、黒には6... Bg6!? とビショップを退いて交換を待つ手があります。本譜ではNf3-Nh4を警戒するh7-h6が入っているため、黒はBf5-Bg6が使えず、白マスビショップの交換にはd3で応じるしかありません。

8... Qc7 9. Bd2 Nbd7 10. Rac1 Bd6 11. h3 O-O 12. Rfd1 Rfe8


黒はa7-a6、h7-h6と端ポーンに2手かけているため、全体のピースの展開では遅れています。しかし、局面は閉じていて白がピースの展開の早さを活かすプランがありません。黒はゆっくりとピースの展開の遅れを取り戻せば、満足な局面を迎えることになります。

13. a4 Rad8 14. Be1 Qb8 15. Nd2 Bh7 16. Qa2 Bb4!?

黒もどこで動くか悩むところですが、c3のナイトを当ててe4のマスのコントロールを奪い、白のe3-e4を警戒しておきます。

17. Bf3 a5 18. Nf1 dxc4! 19. Qxc4 e5!


ここでセンターで大きく動きます。d4のポーンは孤立ポーンとして残してくれれば弱点になるので黒としては不満がなく、e5ポーンと素直に交換してくれれば、e5のマスを奪えてこちらも満足です。

20. Be2 Nb6 21. Qa2 exd4 22. exd4 Re7!?

開いたeファイルでルークを重ねるのも、d4をターゲットにdファイルでルークを重ねるのも、どちらも黒にとって良く、その準備となるルークを上げる手は柔軟なアイディアです。

23. Ng3 Red7 24. Nh5 Nfd5 25. Bg4 Re7 26. Nxd5 Nxd5 27. Bxb4 Nxb4 28. Qc4 Rde8 29. Ng3 Qf4 30. Rc3?


すでに白は盤全体で揺さぶりをかけられ、その全てに対応するのが難しい状況ですが、バックランクを弱めてしまうとあっという間に決着になってしまいます。

30... Re1+ 31. Rxe1 Rxe1+ 32. Kh2 Qxf2 33. Ne2 Be4 34. Rg3 Qf1 0-1

昨年の主だった試合はほとんど紹介済みなので、このシリーズも残りは2試合の予定です。

2026/04/09

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.11


ブログでの未公開棋譜を振り返るシリーズです。2024年末の香港、ハノイ遠征の試合はほぼ解説を出していますので、2025年に入ろうと思います。この年は年始の国内大会、東海オープンで奥野くんと最終戦で優勝を争いましたが、2か月後に東京で再戦の機会を迎えます。銀座で開催された東京&西東京選手権では、私は戦績が振るいませんでしたが、この試合は面白かったと思います。

Kojima, S - Okuno, R
Tokyo & Western Tokyo Chess Championships 2025 (3)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Bb4 5. Bg5

1月の東海オープンでは、指し続けていた5. cxd5 exd5 6. Bg5 を指しましたが、ここでは以前指していた変化に戻しました。こちらの変化では、黒からdxc4のチャンスがあるため、黒からのh7-h6の催促にはビショップナイトの交換を仕掛けます。

5... h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 Rd8!?


f6のナイトが消えた分、d5のポーンの守りが黒の課題となりますが、ここでは8... dxc4 と取ってからc7-c5とセンターに反撃するプランが一般的です。この変化は思い出深く、2018年のバツミでは、オリンピアードで3回目の対戦となるライバル、IM Wiedenkeller との試合でこの変化を指しました。本譜は初めての変化で戸惑いましたが、自然に思えるd5へプレーヤーをかけるプランを選択します。

9. Qb3 c5 10. dxc5 Nc6 11. cxd5 exd5 12. Bb5 Bxc5 13. Nxd5 Qd6 14. e4?!

d5のポーンを落としたは良いものの、次のポーン突きはd4とa7-g1ダイアゴナルを弱める緩手でした。ここは単にc3にナイトを下げるくらいでも良かったと思います。

14... a6 15. Be2 Be6 16. O-O Nb4


この手でピンのナイトを攻められる手を軽視していました。ポーンを返すか、必死で守るか悩んだ挙句、後者を選ぶことにします。

17. Rcd1 Nxd5 18. Bc4 Ne3??

この手が成立するのかかなり丁寧に読みましたが、結論として白は安全なエンドゲームまで一直線で向かうことができます。代わりの黒の手は難しいですが、18... Qb6! 19. exd5 Bg4! が良い手で、白はポーンアップでもd5のパスポーンを活かすアイディアが難しく、黒はダブルビショップで十分に代償を得ています。

19. Rxd6 Bxc4 20. Rxd8+ Rxd8 21. Qc3! Nxf1 22. Qxc4 Rd1 23. Qxf1!


メイトを防ぐためにクイーンを返すのが唯一ですが、白の好手で、白はポーンアップのエンドゲームとなります。しかし、これでも勝ちを確実にするには油断禁物でした。

23... Rxf1+ 24. Kxf1 Kf8 25. Ke2 Ke7 26. Ne1 Bd4 27. Nd3 Kd6 28. b3 Ke6 29. f4 Kd6 30. Kf3 Ke6 31. g4 b5 32. e5 f5 33. gxf5+

この手でも勝てそうですが、e4のマスに白キングが上がるほうが明確なので、33. exf6 Kxf6 34. Ke4 のほうが良かったでしょう。本譜は黒キングがf5にくるのを許したことで、少し怪しくしてしまいます。

33... Kxf5 34. Nb4 g5 35. fxg5?


黒のキングに上がられ、e5-f4のポーンを崩されると白が勝てるのか怪しくなってきます。f4のポーンを取られても、f3のマスを明け渡さない限り危険はないと割り切り、クイーンサイドのポーンを早くとるほうが良かったでしょう。35. Nxa6! gxf4 36. Nc7 b4 37. Nd5 Bc3 38. a4!+-

35... hxg5 36. Nxa6 g4+!

e5を取られる前にこちらのポーンが伸びてくるのを軽視していました。h2が固定されるか、h2-h3から交換になってしまうと、クイーンサイドだけで勝てるのかが疑問になってきます。

37. Kg2 Bxe5 38. Nc5 Bd6 39. Nd3 Ke4 40. Nf2+ Kd4 41. Nxg4 b4??


bポーン1つで黒のa,bポーンを抑えるのは好形に見えますが、ここではキングが早く侵入すべきでした。41... Kc3! 42. Ne3 Kb2 43. a4 Kxb3 44. axb5 Kb4 ならば黒はキングでbポーンを追いかけて回収し、簡単なドローです。

42. h4 Kc3 43. Ne3 Bf8

b5-b4のせいでc4にマスを与えているため、黒はナイトフォークに警戒しなければならず、キングの侵入が遅れます。

44. Nc4 Kc2 45. h5 Kb1 46. Kf3 Kxa2 47. Na5+-


a2は取らせても、b3を安全な形で守れることになり、白の勝ちを確信しました。

47... Kb2 48. Ke4 Kc3 49. Kf5 Kd4 50. Kg6 Ke4 51. h6 Bc5 52. h7 Bd4 53. Kf7 1-0

h8でプロモーションし、ビショップを取った後で、b4のポーンを落としにキングが戻れば白勝ちです。途中まずくした自覚はあったので、次はこうしたエンドゲームを問題なく勝ち切れるようしたいですね。

2026/03/02

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.10


2024年のブダペストオリンピアードから帰国し、最初の国内大会がチーム選手権でした。ここ最近は参加するチームをころころ変えている私ですが、この年は20年前の優勝チームである麻布同期たちと組み、大会に臨みました。大阪チームとのペアリングでのこちらの対局は、お蔵入りにするには勿体ない内容なので、この機会にご紹介させていただきます。

Kojima, S - Scott, T
Japan Team Chess Championship 2024 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 Bb4+ 4. Bd2!?

このシリーズの前半で紹介した山本くんとの試合では、Bogo-Indianに対してビショップ交換を避ける4... Nbd2 を指しましたが、その後の研究でこちらでも良いと考えました。ただし、調べてきたのは少しマイナーなアイディアです。

4... Qe7 5. e3!? O-O 6. Bd3 Bxd2+ 7. Qxd2 d6 8. Nc3 c6 9. O-O-O e5 10. Bc2!


Qd8-Qe7に対してはキングサイドにフィアンケットを組むことが多いですが、クイーンサイドにキャスリングするダイナミックなアイディアを見つけていました。e6-e5-e4に対しては、ビショップをc2に早めに退くことで対処します。

11... Re8 11. dxe5 dxe5 12. Qd6 Qxd6 13. Rxd6 Na6 14. h3!

クイーン交換前であれば、g2-g4と突いていきそうですが、ここではg4のマスを抑えて黒の白マスビショップを制限する狙いです。dファイルとd6のマスを長期的に抑えることで、白はアドバンテージを得ています。

14... Bd7 15. Rhd1 Re7 16. Ng5! h6 17. Nge4?!


ここはe4のマスへの切り替えで戦うものと考えたのですが、ナイトは敵陣に跳びこみ、駒交換を進めるほうが良いというのがコンピュータの指摘です。17. Nh7! Nxh7 18. Rxd7 Rae8 19. Rxe7 Rxe7 20. Rd8+ Nf8 21. Ra8!+- 7段目へのルークの跳びこみでは不十分かと考えていましたが、こうして8段目も活用すれば白が大きく有利であることは明らかです。

17... Nxe4 18. Nxe4 Be6 19. b3 Kf8 20. Kb2 Ree8 21. Kc3 f5 22. Ng3 g6 23. h4!

この試合の中で最も気に入っているプランです。黒のe5、g6の2つのポーンを固定し、弱点として優位を拡大します。

23... h5 24. e4! f4 25. Nf1! Bg4 26. Rf6+?


2月のYoutube講座では、こちらの局面を扱いました。本譜の6段目でのルークチェックは結果的にg6を落とせたので良かったですが、実は焦りすぎなアイディアで、正しく黒に対処されると困ってしまいます。ここはじっと耐えるように26. R1d2! とルークをかわしておき、次にNf1-Nh2-Nf3-Ng5とナイトをゲームに戻せば白勝勢でした。

26... Ke7 27. Rdd6 Rad8?

g6のディフェンスはできないように見えますが、直接守るのではなく、6段目を分断するアイディアで対処することができました。27... Nc7! 28. Rxg6 Ne6!-+ こうしてナイトをe6まで運べば、g6を取ったルークは生還できず、駒得の黒が勝勢になります。

28. Rxd8 Rxd8 29. Rxg6 Kf7 30. Rg5+-


本譜ではg6を取ったルークは無事に生還し、白がポーンアップのエンドゲームに入りました。白マスビショップの働きにやや不満はありますが、黒のe5、h5を弱点として固定しているので、白の優位は十分なものでしょう。

30... Be2 31. Nd2 Ke6 32. Nf3 Bxf3 33. gxf3 c5 34. Rxh5 Nb4 35. a3 Nc6 36. Rh6+ Kd7 37. h5 Rg8 38. Rh7+ Kc8 39. h6 Rg2 40. Rf7 Rh2 41. h7 Nd8 42. Rg7 Rh3 43. Kd2 Rh2 44. Ke2 Rh1 45. b4 cxb4 46. axb4 a6 47. Ba4 Rh6 48. Bd7+ Kb8 49. Bf5 1-0

最後はhポーンを活用して勝利を決めました。試合後は完璧なゲーム運びだと思っていたので、Na6-Nc5-Ne6があったことを後で見つけて愕然としました。この見落としは反省するとしても、h2-h4からの構想を作れたのは良かったと思っています。

2026/02/28

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.9

ハンガリーの建築や像をモチーフにしたチェスセット。気づくと売り切れてました...

このシリーズもすっかりご無沙汰になってしまいました。時間を見て残していた棋譜解説を書いていこうと思います。第9弾はオリンピアード直前の大会で、ハンガリーのIM Nomin-Erdene とのゲームです。彼女はモンゴルの女子プレーヤーとして有望視されていましたが、私がIMを取る直前の2014年頃にはハンガリーに移住&移籍し、ノームトーナメントを転戦していた記憶があります。近年は調子を落としていますが、GMノームも獲得している女子の強豪選手です。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nomin-Erdene, D (IM, HUN, 2319)
XIII. Premium Nemzetkozi Sakkverseny (6)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 Nbd7 5. cxd5 exd5 6. Bf4 Nb6!?

この手は指されるまで全く知りませんでした。多くのQGDの変化において、b6はナイトが早めにいくマスではありませんが、白がBc1-Bf4を早く決めた際には、Bf8-Bd6でビショップ交換を狙えること、将来的にNb6-Nc8-Nd6のようなマヌーバリングを見込めることから、このタイミングでは悪くなさそうに思えます。

7. e3 Bf5 8. Nh4 Be6 9. Bd3 Bb4 10. Nf3 Ne4 11. O-O!? Bxc3 12. bxc3 Bg4 13. c4?


ここはe4のナイトが不安定になるので早めに仕掛けてみようと考えましたが、もう少し辛抱強く指すほうが良かったでしょう。13. Qc2! Bxf3 14. gxf3 Nd6 15. a4 Qf6 16. Rfb1 という進行であれば、白は開いたキング前もさほど気にせず、クイーンサイドでプレッシャーをかけて戦えそうです。

13... Nxc4 14. Bxe4 dxe4 15. Qa4+ c6 16. Qxc4 exf3 17. Rfb1 Qd7 18. Qb4 b6 19. d5!

ポーンをさらに捨てるリスクを取りましたが、黒キングがキャスリングする前に局面を開いてチャンスを求めます。

19... cxd5 20. e4 d4 21. Rc1 a5 22. Qa3 Ra7 23. gxf3


f3でぶつかっているポーンに手を出すべきかどうかずっと悩んでいましたが、ポーンはポーンだということでこのタイミングで回収しました。2つポーンを捨てている状況では、早めに1つは取り返しておきたいという心理もあったと思います。ここは早さ重視で、23. Rc2 b5 24. Qc5 f6 25. h3 Be6 26. Rd1 d3 27. Rc3 Bc4 28. a4+/= という進め方もあったでしょう。

23... Be6 24. Rc2 b5 25. Qc5 d3 26. Rd2 f6 27. Rc1 Bc4 28. Rxc4?!

ここは上記の変化同様、28. a4! が正確な手でしたが、エクスチェンジを捨て、さらにd3をルークで取った際の黒の対応は難しいのではないかと考えました。

28... bxc4 29. Qxc4 g5?

黒キングの逃げるマスはf7に確保できているので、この手はポーンストラクチャーを弱めてしまううえ、白に主導権を与えてしまいます。29... Rb7! 30. Rxd3 Qb5! 31. Qe6+ Re7=/+ ならば、黒はキングを守り切れています。8段目を弱める手はh8のルークがターゲットになった危ないと考えていましたが、d3のルークに反撃しているのがポイントです。

30. Rxd3 Qb7 31. Rb3 Qa6 32. Rb8+ Ke7 33. Qc5+ Kf7 34. Rxh8+-

h7取りがあるため、白はビショップを取られる心配がありません。マテリアルを挽回し、不安定な黒キングを攻め続けることができるので白勝勢です。

34... Kg7 35. Qf8+ Kg6 36. Rg8+ Kh5 37. Bd6 Qb5 38. Qxf6 Rd7 39. e5 Qb1+ 40. Kg2 h6 41. Qe6 1-0


この試合で勝ったことが、こちらのプレミアム大会で優勝できた大きな要因なので、どこかで紹介する機会を持ちたいと思っていました。今のところ予定はないですが、また次のハンガリーでの試合も楽しみにしています。

2025/10/04

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.8


去年のジャパンチェスクラシックは、ブダペストオリンピアード前、最後の大きな国内公式戦ということで大きな意味を持っていました。台湾のLiu Yeh Yangさんに負けたのは痛かったですが、他の試合は満足な内容で指せたと記憶しています。中国の少年、Li Yanくんと指した4Rのゲームもそうでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2296) - Li, Y (CHN, 1752)
Japan Chess Classic 2024 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 dxc4!?

こうした早いタイミングで取る手は意外で、あまり見たことがありませんでした。白からf1のビショップが1手でポーンを取り返せるため、白に得をさせてしまうように思えますが、黒に唯一プラスがあるとすればd5のマスを活用できることです。

6. e3 Nd5 7. Bxc4! Nxf4 8. exf4 O-O 9. O-O c6


白は黒マスビショップを諦めましたが、その代わりにポーン2つでe5のマスをがっちり抑えており、黒からのe6-e5のブレイクを防いでいます。加えて、黒は手数をかけてf6のナイトを自ら消してしまったがゆえ、d5,e4のコントロールが弱く、h7を気を付けて守られなければいけないという気がかりもあります。

10. Qc2 Nd7 11. a3 b6 12. Rad1 Bb7 13. Rfe1 Re8?

黒は次の手に備え、13... g6!を指してf4-f5を止めておくべきでした。白もf7が弱くなることを確認せず、早めに13.f5!でも良かったでしょう。

14. f5! exf5 15. Qxf5 Bf6


白はh7を攻めるつもりが、意図せずf7への絶好の攻撃チャンスを貰いました。ここでは黒には満足なディフェンスがありません。15... Rf8 16. Ne5!+-, 15... Nf6 16. Bxf7+! Kxf7 17. Ng5+ Kg8 18. Qe6+ Kh8 19. Nf7+ Kg8 20. Nh6+ Kh8 21. Qg8+ Rxg8 22. Nf7# 後者のメイトになる手筋は覚えておきたいものです。

16. Ne5! Re7 17. Nxf7!

この手が成立することで、15... Bf6もディフェンスとして成立しないと読んでいました。一時的にf7のルークがピンの状態になるため、白は駒を回収して勝勢です。

17... Rxf7 18. Qe6! Kh8


18... Qf8 19. Qxd7!+- が成立します。本譜で大きく駒得になった白は、残り気を付けながらピース交換を進めて勝ちのエンドゲームにします。

19. Qxf7 h6 20. Ne4 Qe8 21. Qxe8+ Rxe8 22. Nxf6 Nxf6 23. Rxe8+ Nxe8 24. Re1 Nd6 25. Bd3 Bc8 26. Re7 Bf5 27. Bxf5 Nxf5 28. Rxa7 Nxd4 29. a4 Nb3 30. Rb7 Nc5 31. Rb8+ Kh7 32. b3 Nxb3 33. Rxb6 Nc5 34. a5 1-0

QGD Bf4 variationは、私の白番の武器としてオリンピアードでも活躍してくれました。また紹介できる面白い試合ができるよう、引き続き頑張ります。

2025/08/27

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.7


続いては昨年の夏にトレーニングで指したゲームをご紹介します。松村くんは現在、日本でトップクラスの力を持つユースプレーヤーで、こちらのトレーニングの主催者でもあります。毎回、オープニングを指定して集まったメンバーでラピッドを指すのが主な活動ですが、この時はNimzo-Indianがテーマだったため、白番黒番どちらでも指したい変化を調べてきました。

Kojima, S - Matsumura, C
Training

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3 d5 5. Nf3 O-O 6. Bd3

この日はオーソドックスなRubinstein Variationを選択しました。6. Bd2が現在はよく指されており、私も何回か経験がありますが、今回は古くからのメインラインに松村くんがどんなセットアップをするかが気になりました。

6... b6!?


白マスビショップの活用して普通に見えますが、センターへの反撃を優先するのが人気の変化です。6... c5 7. O-O cxd4 8. exd4 dxc4 9. Bxc4 b6と進めてIQPを決めてから、a8-h1の広いダイアゴナルをビショップで抑える、いわゆるKarpov Variationは手堅いでしょう。私は黒で主にこの変化を指していました。

7. O-O dxc4 8. Bxc4 Bb7 9. Qe2

他のオープニングでも、c4を黒から交換してからBc8-Bb7と組む変化はありますが、白のセンターの厚みを過小評価するべきではありません。遅かれ早かれc7-c5を狙うのであれば、上記のKarpov Variaitionの手順がやはり優秀に思えます。c7-c5が遅れるようであれば、c7のポーンは白から絶好のターゲットになります。

9... Nbd7 10. Rd1 Qc8?!


これは指されて少し驚いた手です。クイーンの避け場所はe7が安全で、じっくりc7-c5のチャンスを窺えます。c8の位置だと、Ra1-Rc1からクイーンもターゲットになってしまい、苦しい展開でしょう。

11. Bd2 Re8 12. Rac1 h6 13. a3 Bxc3 14. Bxc3

ここもIQPを早めに決めているKarpov Variationとの違いで、d4が孤立ポーンでない本譜では、白はd4-d5をじっくり狙えるため、c3はビショップの位置として悪くなく、黒が黒マスビショップを手放す代償が十分ではないように思えます。

14... Ne4 15. Be1! e5 16. Ba2!


e4のナイトはアクティブではありますが、白は黒マスビショップをキープしてゆっくり対処することで、十分にダブルビショップの強さが活きる展開を目指せます。白マスビショップも退いてcファイルを開ければ、次にQe2-Qc4を狙い、c7、f7にプレッシャーをかける準備が整います。

16... Ba6 17. Qc2 exd4 18. Qxc7! Qxc7

Bb7-Ba6はc4のマスをカバーしますが、代わりにe4のナイトが浮いてしまいます。ここはいずれにしても白勝勢ですが、一か八かc3にナイトを跳びこむべきではないかと、検討で松村くんに指摘しました。ちょうどこの頃に自身の著「チェスが強くなる人の本」の執筆が佳境で、その中で少し触れたInterferenceというタクティクスです。

18... Nc3!?
Analysis Diagram

19. Bxf7+!! (19. Qxc8? Ne2+ 20. Kh1 Raxc8) (19. Rxc3!? dxc3 20. Qxd7 Qxd7 21. Rxd7 cxb2 22. Bc3 Rad8 23. Rxd8 Rxd8 24. Nd4+- 試合後の検討ではこの変化を出しました。) 19... Kh8 20. Qxc8 Ne2+ 21. Kh1 Rexc8 22. Rxc8+ Rxc8 23. Be6+- 先にf7を取れば、すぐにc8でクイーンを交換する変化と違い、白は駒得のうえにe6のマスが使えて勝勢です。

19. Rxc7 dxe3 20. Rdxd7 exf2+ 21. Bxf2 1-0


本譜はd7のナイトも見捨ててきたため、白の駒得が大きくすぐに決着となりましたが、c7での交換で7段目を抑えられてしまっているため、黒はどうしても苦しいでしょう。長くNimzo-Indianのメジャーな変化は白側で避けてきましたが、こうしてある程度の自信をもって指せたのは良い経験でした。

2025/08/20

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.6

松本チェスクラブには昨年から、例会に2回、大会に2回足を運んでいます。今年の4月以降、クラブの運営体制が変わっても、活動自体は問題なく継続されているようでなによりです。今夜はそんな松本チェスクラブの第1回大会から、中学生のRyuくんと指したゲームをご紹介します。

Ryu, C - Kojima, S
1st Matsumoto Open(5)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nf3 Nd7 7. Bd3 Ngf6 8. O-O e6 9. Re1 Bd6!?

この試合はCaro-Kann Classicalの、h2-h4がない変化でした。この局面では9... Be7が手堅いですが、こちらも指すことができます。

10. c3


10. Nf5 Bxf5 11. Bxf5 O-O 12. Bd3と進んだ場合、黒は白マスビショップを手放すことになりますが、代わりに白のピースの展開を遅らせてバランスが取れています。

0... Qc7 11. Qc2 Bxd3 12. Qxd3 O-O 13. Bd2 Rad8 14. Re2 c5 15. Ne4 Nxe4 16. Qxe4 cxd4 17. cxd4

d4が孤立すれば黒はひとまず作戦成功です。17. Qxd4 Ne5! 18. Nxe5 Bxe5 19. Qxe5 Qxe5 20. Rxe5 Rxd2=/+ ならば、白はポーンを乱さない代わりに7段目にルークを侵入されてしまいます。

17... Nf6 18. Qd3 Bf4?!


IQPの原則に従ってマイナーピースを交換しようと思いましたが、白の黒マスビショップはあまり働きが良くないため、少し白を助けてしまったようです。e2のルークの横利きが開くのももう少し気にするべきでした。代わりに18... Rc8くらいで先にcファイルを抑え、d8にはもう1つのルークを置けば黒が優勢です。

19. Rc1 Qb8 20. Qb3 Bxd2 21. Rxd2 Rd6 22. Rdc2 Nd5 23. a3 h6 24. g3 Rb6 25. Qd3 Qd6 26. Ne5 Qe7 27. Nc4 Rc6 28. Ne3!

f3からナイトを組み替え、e3まで運んでd5のマスを奪い返すのが白の好判断です。cファイルをがっちり握られていると、孤立ポーンを持たせていても黒が良いとは言えなくなってきました。

29... Rxc2 29. Rxc2 Nb6 30. Qe4 Qd7 31. Qe5 Rc8


本当はルークを残してd4にプレッシャーをかけたいところでしたが、Rc2-Rc7を防がなくてはいけないためにルーク交換を仕掛けざるをえません。ナイトとクイーン、あるいはクイーンだけのエンドゲームになれば完全に互角です。

32. Rxc8+ Qxc8 33. Qc5 Qd8 34. Nc4 Nxc4 35. Qxc4 a6 36. b4 Qd7 37. Kf1 Qb5 38. Qxb5?

ここしかチャンスは無いと思い、クイーン交換を仕掛けたところ、相手はそれに乗って自分からクイーンを取ってきました。しかし、白のa,bポーンが動けない状態で、黒のbポーンのみ動く手が残っているポーンエンディングは、黒にテンポ調整のチャンスがあります。正しくは38. Qe2! として黒からのクイーン取りを待つべきでした。

38... axb5 39. Ke2 Kf8 40. Kd3 Ke7 41. Ke4 Kd6 42. g4 g6 43. f3 f5+ 44. Ke3 g5?


このポーンエンディングで正確な判断ができなかったのは大きな反省です。ポーン交換のタイミングは遅らせても支障ないと思いましたが、相手がfポーンでしか取り返せず、e4のマスのコントロールを失う今がベストでした。44... fxg4! 45. fxg4 Kd5 46. h4 g5 47. hxg5 hxg5 48. Kd3 e5 49. dxe5 Kxe5 50. Ke3 b6!-+ ここで突けるポーンが1つ残っていることで白に手番を渡し、ツークツワンクにできれば黒の勝ちでした。

45. h3!=

これでg4でのポーン交換の際にhポーンで取り返せれば、白は黒キングのe4への侵入を阻止できます。

45... Kd5 46. Kd3 b6 47. Kc3 fxg4 48. hxg4 Kd6 49. Kd2 Kc6 50. Kc2 Kd5 51. Kd3 e5 52. dxe5 Kxe5 53. Ke3 Kd5 54. Kd3 Ke5 55. Ke3 Kd5 1/2-1/2



大会の最終戦で、優勝を逃がす痛いドローでした。この1年、国内大会で難しいポーンエンディングもいくつか目にしていますので、自分が失敗したものも教訓にしてレベルアップしていきたいですね。

2025/08/16

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.5


久々に去年~今年の未公開棋譜を振り返るシリーズです。この2年間は東海オープンに続き、5月の中部ラピッド選手権で名古屋に遠征をしています。2024年中部ラピッド最終戦の東芝さんとの試合は、優勝を決めるために落とせない一戦でした。

Higashishiba, T - Kojima, S
Chubu Rapid Open 2024 (5)

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6 5. Qe2 Na6!?

当時勉強していたChessableのコースでこれが勧められていましたが、かなり珍しい変化です。Na6-Nb4からc2を狙う含みを見せておき、白の出方を伺います。

6. d4 Nxe4 7. Qxe4 Qd5 8. Qxd5 cxd5 9. Bb5+ Bd7 10. Bxd7+ Kxd7 11. c3 f6!


e5のマスを早めに受けておき、Nf3-Ne5を止めておきます。クイーン交換まで済ませているため、将来的なe6の弱さもさほど気にならないでしょう。

12. h4 e6 13. Bf4 Be7

ドローを目指すのであれば、13... Bd6からビショップ交換を狙う手もありえます。しかし、e7でもa3-f8ダイアゴナルで強力に利くビショップですので、残しておいても悪いはずはありません。この判断が後に黒にチャンスを呼びこむことになります。

14. Ke2 Rac8 15. Rac1 Rc6 16. Rhd1 Rhc8 17. h5 Nc7 18. Bxc7?!


Nc7-Ne8-Nd6のマヌーバリングを恐れたとのことでしたが、それならばd6での交換でも遅くありません。いずれにせよ、黒がビショップを持つ展開になれば、b7-b5-b4のマイノリティアタックもやりやすく、黒は互角以上の形勢で満足です。

18... R8xc7 19. Ne1 Bd6 20. g3 b5 21. a3 a5 22. Nd3 e5 23. dxe5 fxe5 24. f4 exf4 25. gxf4 Rc4

d3に切り替えた白のナイトは、f4,e5,c5,b4の重要な4マスを抑えていますが、それゆえにd3から動きづらい点が気になります。コンピュータ評価はまだ互角ですが、どちらに転ぶかと言われると黒に転びそうな展開に見えます。

26. Kf3 Kc6 27. Rg1 Rf7 28. Rg4 Re7!?


g7は多少気になりますが、eファイルからの侵入を見せて白キングに揺さぶりをかけます。

29. Nf2?


d3のナイトは好位置であるため、これを動かすのは危険です。29. Rd1 Rce4 30. Rd2 として2段目を守れば白は問題ありません。

29... b4?!

ナイトが離れたのでb4を仕掛けるチャンスだと思いましたが、より着目すべきはc5のマスでした。29... Bc5! ならば白はe3のマスを受けることができず、ナイトも危険な状態です。

30. axb4 axb4 31. Nd3 Kb6 32. cxb4 Rce4 33. Nc5 Rxb4 34. Nd3 Rbe4 35. Rc3 Re3+ 36. Kf2 Re2+ 37. Kf1 Rh2 38. Rb3+ Kc7 39. Rg5 d4 40. Ra5?


キングへプレッシャーを積極的にかける狙いですが、g7への当たりを外してしまうと、e7のルークが自由になってしまい、黒のほうが早くダブルルークを活用して白キングへの攻撃を仕掛けられるようになってしまいます。代わりに40. Rbb5! がb2を受けつつ、様子を見る1手として良かったでしょう。

40... Re3

d3のナイトに揺さぶりをかけるつもりでしたが、40... Ree2 と素直に7段目のダブルルークにして、メイトに近い状態を作っておくほうがシンプルです。

41. Ra7+?


a5にルークを振った以上指したくなる手ですが、黒キングは危険なくするすると逃げてしまいます。41. Ra4! Re4 42. Rc4+ Kd7 43. Rb6 Rd2 44. Rcc6= ならば、白も6段目のダブルルークを作って問題ない局面でした。

41... Kc6 42. Ra6+ Kd5 43. Kg1 Rd2 44. Rb5+ Kc4-+

ダブルルークのチェックを振り切った黒キングは、逆に白の2ピースにフォークをかけ、決定的な駒得で黒勝勢となります。

45. Rxd6 Kxb5 46. Nf2 Re1+ 47. Kg2 Ree2 0-1


Caro-Kann Two Knightsは、黒から様々な変化があるので選ぶ楽しみがあります。また違う形も別の機会にご紹介したいと思います。
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