2018/03/07

Cappelle la Grande 2018 R5


カペルは前半の4試合で3.5Pを挙げ、ようやく上位ボードに上りつめました。4Bで対戦するのは2年ぶりの顔合わせとなるインドのGM Shyam です。白も引けたことですし、大事な勝負のラウンドです。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525)
Cappelle la Grande 2018 (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. d4 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 Nc5 11. Re1 Bd7 12. Rb1 h6 13. Kh2



Queen's Gambit Ragozin でくるという期待は裏切られ、King's Indian のモダンな変化になりました。この変化は羽生さんと3年前に指して研究しています。

13... a5 14. Ndb5 h5 15. Bf4!? Bxb5


先日見たMikhalevsky のゲームで、白がc7 へのサクリファイスを決めて勝っていたのを見て、f4 へビショップを出してみましたが、この場合は上手くいきません。15... h4 16. Nxc7 Qxc7 17. Bxd6 Qb6 18. e5 Bf5!-/+ b1 にルークを動かしたことが仇となり、この反撃があります。それを考えてみると、ここでナイトを消す必要はないかもしれません。

16. cxb5 h4 17. gxh4!+/=



17. g4 Ne6 18. Be3 g5!? という展開から、f4 のマスを抑えられるのは好みではありません。そこで思い切ってh4 を取って勝負します。Baku Olympiad ではGM Amanotov 相手に負けはしたもののこのアイディアを試し、感触は悪くなかったことを覚えています。

17... Nh5 18. Bg5 Bf6 19. Qd2 Ne6 20. e5!


ここも正しい判断ができました。20. f4? Nhxf4!-+ はポーンがタダ落ちでダメ。駒を捌くとBf6-Be5 の串刺しが待っています。 20. Nd5!? Nxg5! 21. Nxf6+ Qxf6 22. hxg5 Qe5+ 23. Kg1 Nf4= の後、b5 のポーンが落ちる展開も好ましくありません。ならばクイーンを交換して、エンドゲームに持ち込みます。

20... dxe5 21. Qxd8 Raxd8 22. Bxf6 Nxf6 23. Rxe5 Rd2 24. Kg1?!



この辺りからやや不正確な判断が出始めます。自然に見える24. Re2 Rxe2 25. Nxe2+/= ならば、白は優位をキープできそうです。Re8-Rd8-Rd2 を恐れていましたが、Bg2-Bxb7-Bf3 がぴったりで問題ないため、黒はb7 を一度守らないといけないんですね。これを見通したのは、少し冷静でなかったかもしれません。

24... Nf4! 25. Rxe8+ Nxe8 26. Ne4 Re2 27. Nc3 Rc2 28. Ne4 f5!?


e8 のナイトを抑え込もうとする私に対し、Shyam はg5 を弱めても白のナイトをどかして勝負です。

29. Ng5 Nd6 30. a4 Ne2+ 31. Kf1 Nc1 32. Kg1?!



c1 にナイトが潜り込み、私のルークを抑え込もうとするのは実に面白い構想です。これに対してキングが戻るのは弱気すぎで、d3 にナイトがいく形でチェックになることを恐れる必要はありませんでした。32. b4! axb4 33. Rxb4 Nd3?! 34. Rd4! Nxf2 35. b6!+/- このブレイクは後で考えたものの、こうした早いタイミングで使えました。

32... b6 33. Bf1 Kg7 34. b4 axb4 35. Rxb4 Kh6 36. Rd4 Nb3 37. Rd3


最初は3段目から7段目を目指すつもりでしたが、e4 でブロックされてしまうため、37. Rd5! と5段目からが良かったでしょう。

37... Nc5 38. Rd5 Nce4


38... Ra2 39. Re5 Rxa4 40. Re7 Rxh4 41. Nf7+ Nxf7 42. Rxf7 Rb4 43. Rxc7 Rb1=/+ 少し黒が指しやすいですが、白はドローに持ち込めると思います。38... Nxa4 39. Re5 Kg7 40. Re7+ Kf6 41. Re6+ Kg7 42. Re7+= ならばすぐドローが決まります。

39. Nxe4 Nxe4 40. Bd3 Rc1+



これで40手に到達し、持ち時間が増えます。今大会は40手90分+30分で、この増えた30分を互いにフルに使い、ここから長くゲームは続きます。

41. Kg2 Nc5 42. Be2 Nxa4 43. Rd7 Rc5 44. Kg3 Nc3 45. Bd3 Nd5 46. Kf3 Nb4 47. Be2 c6


b5 とc7 を交換し、ルークエンディングになればドローは間違いないでしょう。白は7段目のルークの位置が絶妙で、見事に黒キングの動きを縛っています。ただこうして単純にポーンを交換してくれるのも、白はドローを目指すうえでありがたいと思っていました。

48. bxc6 Nxc6 49. Rb7 Rc3+



49... Nd4+ 50. Ke3 Nxe2 (50... Re5+ 51. Kxd4 Rxe2 52. f3 Rf2 53. Ke3 Rh2 54. Rxb6 Rxh3 55. Kf4 Rxh4+ 56. Ke5=) 51. Kxe2 Rc3 52. Rxb6 Rxh3 53. Kf1 Rxh4 54. Kg2= おそらくShyam も読んでいたのは、ナイトとビショップを交換し、1ポーンアップのルークエンディングを目指す形です。しかしこれは、fポーンvs.f,gポーンになってしまうため、黒が勝つことはできないでしょう。

50. Kg2 Nd4 51. Bf1 f4 52. Rxb6 Nf5 53. Rb2 Nxh4+ 54. Kh2 Nf3+ 55. Kg2 Nh4+ 56. Kh2 Kg5 57. Bb5


ビショップはf1 で窮屈に閉じこもるよりも、c8-g4 のダイアゴナルのほうが広々として良いだろうと思い、切り替えにいきます。

57... Nf3+ 58. Kg2 Ne1+ 59. Kh2 Kh4 60. Bd7 Nf3+ 61. Kg2 Ne5 62. Rd2 Rd3 63. Rxd3 Nxd3



ルークを交換してピースのエンドゲームにしても、まだまだShyam は勝ちを諦めません。私はこれはドローに決まっていると思いつつも、最後まで油断せずにプレーを続けます。

64. Bc8 Ne1+ 65. Kf1 Nf3 66. Kg2 Nd4 67. Bg4 Kg5 68. Kh2 Nc6 69. Kg2 Ne5 70. Bc8 Kh5 71. Be6 g5 72. Bf5 Kh6 73. Bc8 Kg6 74. Be6 Kg7 75. Bf5 Kf7 76. Bc8 Kf6 77. Kh2 Nf3+ 78. Kg2 Nh4+ 79. Kf1 Nf3 80. Kg2 Nd2 81. Bg4 Ke5 82. Bh5 Kf5 83. Bd1 Ke4 84. Bc2+ Kd4 85. Bg6


黒はキングをセンターから回して、あわよくばf2 を狙おうという構想ですが、これに対しては本譜でもでてくるポーンの捌きが通用します。85. h4! gxh4 86. Kh3=

85... Nc4 86. Bf5 Ne5 87. h4!



私がポーンブレイクが分かりやすいと考えたタイミングは、キングd4、ナイトe5 の形です。これでポーンを捌いてしまえば、ドローがとても分かりやすくなります。

87... gxh4 88. Kh3 Nf3 89. Kg4 Ke5 90. Bc8 Ne1 91. Kxh4 Nd3 92. Kg4!


92. f3? Ke3! はf3 のポーンを取られたうえ、キングがすでに潜り込まれているかなり悪い形です。どうせ落ちるfポーンなのであれば、取らせている間にキングが戻ってくるのが正解です。

92... Nxf2+ 93. Kf3 Ne4 94. Bb7 Ng5+ 95. Kg4 Ne4 96. Kf3 Nc5 97. Ba8 Ne6 98. Kg4 Nd4 99. Bh1 f3 100. Bxf3 Nxf3 101. Kxf3 1/2-1/2



途中やや指しづらかったものの、なんとか耐えきってドローです。1ポーンアップの良さを活かしきれなかったのは、反省として持って帰ります。

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525) 1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
3/8 14:00 R7
3/9 14:00 R8
3/10 10:00 R9

Cappelle la Grande R6
Live Games

次のラウンドはフランスのFM に黒です。2200台に数字を落としていますが、今回は2400台に2ドローのようなので気を引き締めていこうと思います。

この5R で、パリからきていた松村心くんはトーナメントを一足先に終えました。最終戦は1900に勝って大きくレイティングを稼いでいます。これで日本チームは4人に減って寂しいですが、残り試合もしっかりと戦ってきます。心くん、また会える機会を楽しみにしています!


会場脇に出る、カペル伝統のチェスショップは健在です。ここでは様々なチェスセットの他、最新のチェス本が販売されています。


今年は食事が出ないため、これまで食堂として利用していたスペースを開放し、広い検討室にしています。


検討室脇には巨大なチェスセットが! 時々参加者の子供たちがここでゲームをしています。


昨夜は私が最長の5時間半ゲーム。ダンケルクに4人で戻り、夕飯はポークリブを選びました。濃い味付けに手が止まりません!

0 件のコメント:

コメントを投稿

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.