2017/01/13

Characteristic of A Tournament in U.S


年末のラスベガスのトーナメントについて、忘れないうちに色々なことを書いてみようと思います。今後、アメリカのトーナメントに参加することを検討しているプレーヤーに、参考にしていただければ幸いです。

・チェスセットと時計は持参


アメリカのトーナメントは、基本的にチェスセットと時計をプレーヤーが持参します。日本のトーナメントと違い、シートも用意されていません。用意されているのは、棋譜用紙だけです。そのため、必要な道具を忘れたプレーヤーは会場で購入するか、他のプレーヤーから借りる必要があります。私は他のマスターから借りたことも、逆に貸したこともあります。ラスベガスのNorth American Open では、上位3ボードまではチェスセットと時計の用意がありましたが、他はすべてプレーヤーの持ち込みでした。

このようなシステムに慣れているアメリカのプレーヤーは、試合道具一式をバッグに詰め、どこのトーナメントにも参加するでしょう。逆にヨーロッパやアジアのように、運営側がチェスセットから時計までを用意するのが当たり前の文化圏のプレーヤーは、かなり戸惑うと思います。ちなみに私は、ラスベガスの4R で当たったプレーヤーが、黒のピースだけが赤いチェスセットを持参しており、それで試合の準備をしていました。それは流石に勘弁してくれと、私のチェスセットに変更してもらいましたが、譲らなかった場合はどちらのチェスセットを使うか、揉めるかもしれませんね。

・タフな試合スケジュール


アメリカのトーナメントは持ち時間も長く、それで1日2試合する日も多いため、体力的にはかなりきついでしょう。1日6時間を超える試合が続く可能性もあります。夕方から始まったゲームが7時間を超え、日付が変わっても終わらないということも、かなり珍しいですがありえます。そのうえで夜の10時、11時から数時間かかるブリッツトーナメントを開催し、それに多くの参加者が集まるのも驚きです。

加えて、日本から参加する場合は大きな時差の問題があります。もちろんヨーロッパのトーナメントもありますが、ブダペストが8時間であるのに対し、ラスベガスは17時間です。この大きな時差に体調を崩すことなく、ハードなスケジュールで試合をこなさなければいけないことも、アメリカのトーナメントに参加する際の課題となるでしょう。


・遅いペアリング発表


ペアリングの発表については、私はアメリカのトーナメントには不満があります。今回、エントリーの際に登録したメールアドレスに、対戦相手の名前と色がメールで送られてくることもあり、そのこと自体は画期的だと思いました。しかし、その通知が早かったり遅かったり、タイミングはまちまちでした。HP 上での公開も遅い場合が多く、試合直前に会場前に紙で掲示されてるものを確認しなければいけませんでした。Swiss Manager とChess Results を使うヨーロッパ、アジアのトーナメントとはこの点でも大きく特色が異なり、初めてアメリカに参加したプレーヤーは戸惑うでしょう。

・独特の持ち時間


試合の持ち時間も、他とはかなり違います。North Ameican Open は40手2時間+30分+初手から1手10秒delay でした。このdelay のシステムは、時計によってはBronstein と記載されているもので、Fischerのように時間が増えるのではなく、決められた時間、持ち時間が減らないということです。つまり10秒delay であれば、指し始めた際に最初の10秒は持ち時間が2時間のままで、10秒を過ぎてから1時間59分になるということです。9秒使ってから指しても、1秒しか使わずに指しても、余った時間は加算されません。

delay はDGT の時計の裏には記載があるため、特殊すぎるものではないと思いますが、私は少なくともヨーロッパのトーナメントで見かけたことはありません。日本でもFischer システムの持ち時間か指し切りしか使わないため、初めての人はこの持ち時間の違いにも気を付ける必要があると思います。

・モンロイの利用


アメリカのトーナメントでは、モンロイを使います。モンロイとは、棋譜用紙に自分で棋譜を記録する代わりに、ディスプレーをタッチして駒を動かし、棋譜を記録する小型の機械です。モンロイで記録された棋譜は即中継されるため、観戦をしているプレーヤーにとってはありがたいでしょう。私は今回、インドのアジアジュニア以来、10年ぶりにモンロイを使いました。使い勝手も良かったので、棋譜を紙に書いたのは最初の3試合ほどで、残りは全てモンロイで記録しています。

ちなみにモンロイは使うことは義務ではありません。運営スタッフから試合前に「良かったら使ってね」と渡されます。希望すれば両者ともモンロイを使えますし、逆にどちらも使わなくてもOKです。ラウンドによっては、上位のボードの中継がなく、かなり飛んだ下位ボードの中継はあるという不思議な状況もありえます。この点も、見る人によっては自由、見る人によってはいい加減ともとれる、アメリカ独自のスタイルです。

このように書いてみると、持ち時間とモンロイを除いた上の3つに関しては、日本の大会のスタイルと似ているとも言えるかもしれません。今回は注意点や不満なことを多めに書きましたが、もちろんレベルの高さや盛り上がりなど、参加するべき価値は大いにありますので、今後も機会があればアメリカの大会にはチャレンジしてみたいと思っています。



2 件のコメント:

小柳幸弘 さんのコメント...

バックギャモンの持ち時間に近いようです。去年のギャモン祭りでは10分で保証時間12秒でした。地区予選は基本持ち込みでしてるのでそんなもんかと思いますが

Shinya_Kojima さんのコメント...

他のボードゲームの持ち時間も色々ですね。オセロはかなり短めだと聞いています。

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