17時間の時差があるラスベガスでも、年が明けて2017年を迎えました。皆さん、今年もよろしくお願い致します。新年最初の投稿は、残っていたラスベガス最終日のレポートです。
30日の朝、ペアリングを見て愕然としました。最終戦はアメリカのYoo Christopher Woojin に白です。彼はまだ10歳の1800台ですが、2200台、2300台からポイントを取り続け、初戦以外負けなしでここまで乗り切っていました。前日の8R でも隣のボードで、2300台後半のFM からドローを取っています。当たりたくない相手でしたが、決まってしまった以上、覚悟を決めるしかありません。
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Woojin Yoo, C (USA, 1833)
North American Open 2016 (9)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 c6 6. O-O d5 7. Qb3 Ne4!? 8. Nc3 Nxc3 9. bxc3 Qb6 10. Qa3
North American Open 2016 (9)
ここは最初の直感では、10. cxd5 Qxb3 11. axb3 cxd5 12. Ne5 Nc6 13. Nxc6 bxc6 14. Bf4+/- と進めれば、a7 のポーンへのプレッシャーで白が優勢だと考えていました。ところがいざ指す段階になり、クイーンを残しつつターゲットにして、b7 へのプレッシャーを作るほうが良いように思え、プランを変更します。
10... Re8 11. cxd5 cxd5 12. Bf4 Nc6 13. Rab1 Qd8 14. Rfd1 e6
相手は手堅くd5 を守ってきます。これに対しては、c3-c4 かe2-e4 でブレイクをするつもりでしたが、d4 のポーンの守りのことを考えれば、eポーンでブレイクするのが筋というものでしょう。
15. Nd2 b6 16. e4 Bb7 17. exd5 exd5 18. Re1
プラン通りにd5 に孤立ポーンを残し、これに対して攻撃を仕掛けようとします。
18... Qd7 19. Qa4 Ne5?
Nc6-Na5-Nc4 を嫌い、クイーンを動かしてナイトをピンにしたところで、黒はこのクイーン交換を持ち掛けてきます。クイーンを交換できれば黒はプレッシャーを緩和できると踏んだのでしょうが、そう上手くはいきません!
20. Qxd7! Nxd7 21. Nc4!
この手を見つけて私は一安心できました。白はナイトがd6 に入れればもちろん良し、ナイトビショップの交換をしても良し、e3 にナイトを退いてd5 を攻撃できても良しと、完全に流れをつかんでいます。
21... Bf8 22. Ne3 Nf6 23. c4 Rad8 24. Bg5 Rd6 25. Bxf6
ここはどうするか非常に時間を使って悩み、残り15分程まで考えて、最もシンプルに駒得する手を選びました。c4-c5 からb6 のポーンを攻撃することも考えましたが、なかなか決定打が見えず、ダブルビショップを放棄してもポーンをすぐ取りにいく決断に踏み切ったのです。
25... Rxf6 26. Bxd5 Bxd5 27. Nxd5 Rxe1+ 28. Rxe1 Rc6 29. Ne3
3試合連続でビショップvs. ナイトですが、前の2つの試合と違うのはルークが残っていることです。これを上手く使うことができれば、前の2つよりもプレーは簡単だと感じていました。
29... f5 30. f4 Bd6 31. Kf2!
白のシンプルなプランは、キングをd3 まで運んでc4,d4 を守ってしまい、ルークとナイトを最大限アクティブに使えるようにすることです。
31... h5 32. a4 a6?
若い彼は勢いで指してポイントを取れることはあっても、エンドゲームの技術がまだまだだと感じました。こうしてb6 を弱めてしまうことは、自分の首を絞める行為です。
33. Ke2 Kf7 34. Kd3 h4 35. Nd5 g5 36. Rb1!
キングサイドがどうなるか完全には予想できませんでしたが、さすがにクイーンサイドで押し切るのが早いと判断してルークを使いにいきます。
36... Kg6 37. a5!? bxa5 38. c5 Bxc5 39. Rc1!+-
これでピースを取り、ゆっくりとdファイルのパスポーンをいかせば、白の勝ちは確定です。
39... Kh5 40. Rxc5 Re6 41. Ne3 Rf6 42. g4+ Kg6 43. gxf5+ Kh5 44. fxg5 Kxg5 45. Rxa5 h3 46. Ke4 Kh4 47. Re5 Rf8 48. Kf4 a5 49. Re6
残った黒のaポーンは、ステールメイト対策として、あえて取らずに残しておきます。計算の手間を省くこうしたアイディアも、小さな実戦のテクニックです。
49... Rh8 50. f6 a4 51. f7 Kh5 52. Nf5 a3 53. f8=Q 1-0
この日は青嶋くんも10歳のFM (レイティングは2100台!) と対戦し、勝利を収めています。互いに絶対に勝ちたい最終戦を白星で飾り、5日間のOpen セクションを終了することができました。
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Feng, M (WCM, USA, 2120) 1-0
Kumar, N (FM, USA, 2251) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhang, P (CHN, 2278) 1/2-1/2
Mousseri, D (FM, USA, 2161) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
Chen, P (CHN, 2297) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhu, J Q (USA, 2288) 1-0
Friedel, J (GM, USA, 2510) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
Li, Z (FM, JPN, 2313) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Yoo, C W (USA, 1833) 1-0
私は最終戦の勝利で6/9 となり、8位タイの14位でのフィニッシュとなりました。North American Open では、各セクションとも10位と同ポイントのプレーヤーまで賞金が出るため、私も入賞の対象となりました! 海外大会で戦績によって賞金を獲得したのは、2013年のチェコでの2大会、そしてイタリアの大会以来ですので、賞金の額にかかわらず、とても嬉しいです。しかしも今回は、5年前に大苦戦で3.5/7 しか取れなかったNorth American Open で、複数のGM, IM に交じっての入賞ですので、喜びもひとしおです! この数年間での自分の成長を感じることができました。最終順位は、こちらかから確認ができます。
優勝したのは、私が唯一敗れたGM Friedel J でした。全体を通して上位ボードで試合を続け、1敗もしなかったのは流石です!
30日の夜は、ベラッジオの専用劇場で公演されている、シルクドソレイユの「O」を観に行きました。事前の話に聞いていた通り、大胆な舞台装置と演出、全般に渡って水を使ったショーは、シリアスとコミカルが交じり合い、素晴らしかったです!
ホテルの外では、カナダから来ていた田中さん一家と偶然出くわし、記念撮影をすることができました。去年の夏、圧倒的な強さで小学生選手権とジュニア選手権を優勝した田中くんとは、また日本の大会でも再会できることを楽しみにしています。
最後になりましたが、今回のラスベガス遠征でお世話になった東野さんと青嶋くん、お二人ともありがとうございました! ともに遠征ができて、とても楽しかったです。また2017年も、国内外の大会でよろしくお願い致します。応援してくださった皆さんにも、心から感謝致します。
1 件のコメント:
アメリカおそロシア▽o・~・o▽
http://news.nicovideo.jp/watch/nw2581105?news
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