全日本選手権2日目です。私は午前のラウンドで塩見さんを下し、真っ先に3連勝を決めます。続いて青嶋くんもSamuelくんに勝ち、ケンジくんと東野さんはドローだったため、3連勝は私と青嶋くんの2人に絞られました。そうなれば当然、4R での直接対決となります。昨年は野口さんを下して一時期はトップに立つも、青嶋くんに8R で痛恨の負けを喫し、2位に沈んだのでした。昨年の雪辱を晴らす大事なラウンドです。
昨年のマン島でドイツのIM をLubbe を破って以来、6. d3 ラインにはクイーンをb6 に配置する変化を指すことにしています。黒はNg8-Nf6 を遅らせることで、白のg2-g4 を牽制します。これに対して青嶋くんはポーンを交換し、センターのポーンストラクチャーを変えてきましたが、手数をかけてCaro-Kann Exchange のポーンストラクチャーにされるのは、黒としてはcファイルが使いやすく、嫌ではないでしょう。
じっくりと時間をかけてピースを組み、クイーンサイドでプレッシャーをかけられるようにします。黒はd4 取りはもちろん、Nc6-Nb4 から白のアタックチャンスを削ることも視野に入れています。
d4 の守り方ですが、これは少し意外でした。ピースを単純に捌けば黒はディフェンスが楽になり、その分クイーンサイドの攻撃に集中できます。
7段目のディフェンスを入れつつ、場合によってはcファイルにヘビーピースを3つ重ねます。20... a5 とすぐに押し込み、キング前を崩すアイディアもあったでしょう。
白はこれくらいしかアクションがありませんが、落ち着いてポーンを交換すれば黒にとってありがたいことがいくつかあります。1つはeファイルが使いやすくなること、もう1つは6段目が通ったことで、Nd7-Nf6-Ne4 のマヌーバリングが可能になることです。
しかし、検討でこの手がやや不正確だったと話に上がりました。代わりに24... a3! 25. b3 Nf6! 26. Ka1 Ne4-/+ としていれば、c3 のマスが弱く、黒は白キングに対して存分にアタックのチャンスが残っています。本譜でもバックランクの弱さがあり、十分に黒のチャンスがあると思っていましたが、上記の変化のほうが白が危ないのは明らかでした。
ここは勇気を出してエクスチェンジを取りにいくべきでした。27... Nd2+! 28. Ka1 Nf3 29. Qh6 Nxe1 30. Rxe1 私はこの手を読んでおり、白の代償は十分だと思っていました。(30. Nh5? Nc2+! 31. Rxc2 f6! 32. Rg2 Re8!-+ 青嶋くんが指摘したナイトをすぐ飛ぶ変化は上手くいきません。) 30... Re8! 31. Rc1 Kh8! 32. f6 Rg8-/+ 恥ずかしながらeファイルでルークをぶつける手が見えていませんでした。黒はしっかりディフェンスすれば、大丈夫そうです。
しかし、このエクスチェンジサクリファイスは成立しておらず、青嶋くんは直後に青ざめたとのことです。しかし、私は見事に白の落とし穴に気付きませんでした。試合後、代わりにすぐルークを回せば白に勝ちなのではないかと話が出ましたが、29. Rg1 g5! 30. Qxc6 Rxc6 31. Nxd5 Rh6! 32. c4 Rxh3= ならば、白のパスポーンは危なそうですが、バックランクの弱さを突いたプレーが黒もでき、まだまだ難しい形勢でした。
g6 を守るにはこの1手だと思いましたが、これが大間違いでした。試合後に青嶋くんから、g6 取りはスレットになっておらず、単にeポーンを進めれば黒勝ちだと指摘されました。30... e3! 31. fxg6 Qe4+ 32. Ka1 fxg6 33. Nxg6+ Qxg6 34. Rxg6 e2-+ eポーンがプロモーションできるのであれば、一時的にクイーンとナイトを交換しても大丈夫です。ここにきてc7 に上げたルークがg7 のマスを守っているのがポイントでした。
32... Rxg6?? 33. Qf8+ はメイトですので、当然クイーンを捨て、2ルーククイーンにする1手です。
バックランクメイトがあるため、白も勝負にいくことはできません。今年の全日本の中でも、かなり重要になるであろう青嶋くんとのゲームは、こうしたファイティングの末にドローで幕を閉じました。
R1 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Kanda, D (JPN, 1859) 1-0
R2 Kobayashi, A (JPN, 2061) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 0-1
R3 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Shiomi, R (JPN, 2085) 1-0
R4 Aoshima, M (JPN, 2280) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 1/2-1/2
R5 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Higashino, T (JPN, 1978)
明日はトップボードで小島-東野、Tu-青嶋、松尾-大多和となっています。どこも面白いペアリングですが、まだまだ3日目ですので今後どうなる分かりません。その他のペアリングについては、以下のサイトをご覧ください。それでは3日目もよろしくお願い致します。
Japan Chess Championship 2018 R5 Pairings
Aoshima, M (JPN, 2280) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Japan Chess Championship 2018 (4)
1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. d3 Nd7 7. Bd2 Qb6 8. O-O-O Bd6 9. exd5!?
Japan Chess Championship 2018 (4)
昨年のマン島でドイツのIM をLubbe を破って以来、6. d3 ラインにはクイーンをb6 に配置する変化を指すことにしています。黒はNg8-Nf6 を遅らせることで、白のg2-g4 を牽制します。これに対して青嶋くんはポーンを交換し、センターのポーンストラクチャーを変えてきましたが、手数をかけてCaro-Kann Exchange のポーンストラクチャーにされるのは、黒としてはcファイルが使いやすく、嫌ではないでしょう。
9... cxd5 10. Bf4 Ne7 11. d4 O-O 12. Bd3 Rac8 13. Rhe1 Bxf4+ 14. Qxf4 Nc6
じっくりと時間をかけてピースを組み、クイーンサイドでプレッシャーをかけられるようにします。黒はd4 取りはもちろん、Nc6-Nb4 から白のアタックチャンスを削ることも視野に入れています。
15. Qh4 g6 16. Bb5
d4 の守り方ですが、これは少し意外でした。ピースを単純に捌けば黒はディフェンスが楽になり、その分クイーンサイドの攻撃に集中できます。
16... a6 17. Bxc6 Qxc6 18. Kb1 b5 19. Rc1 b4 20. Ne2 Rc7
7段目のディフェンスを入れつつ、場合によってはcファイルにヘビーピースを3つ重ねます。20... a5 とすぐに押し込み、キング前を崩すアイディアもあったでしょう。
21. f4 a5 22. g4 a4 23. f5
白はこれくらいしかアクションがありませんが、落ち着いてポーンを交換すれば黒にとってありがたいことがいくつかあります。1つはeファイルが使いやすくなること、もう1つは6段目が通ったことで、Nd7-Nf6-Ne4 のマヌーバリングが可能になることです。
23... exf5 24. gxf5 Nf6?!
しかし、検討でこの手がやや不正確だったと話に上がりました。代わりに24... a3! 25. b3 Nf6! 26. Ka1 Ne4-/+ としていれば、c3 のマスが弱く、黒は白キングに対して存分にアタックのチャンスが残っています。本譜でもバックランクの弱さがあり、十分に黒のチャンスがあると思っていましたが、上記の変化のほうが白が危ないのは明らかでした。
25. c3! b3 26. a3 Ne4 27. Nf4!? Re8?!
ここは勇気を出してエクスチェンジを取りにいくべきでした。27... Nd2+! 28. Ka1 Nf3 29. Qh6 Nxe1 30. Rxe1 私はこの手を読んでおり、白の代償は十分だと思っていました。(30. Nh5? Nc2+! 31. Rxc2 f6! 32. Rg2 Re8!-+ 青嶋くんが指摘したナイトをすぐ飛ぶ変化は上手くいきません。) 30... Re8! 31. Rc1 Kh8! 32. f6 Rg8-/+ 恥ずかしながらeファイルでルークをぶつける手が見えていませんでした。黒はしっかりディフェンスすれば、大丈夫そうです。
28. Qh6! Kh8 29. Rxe4?
しかし、このエクスチェンジサクリファイスは成立しておらず、青嶋くんは直後に青ざめたとのことです。しかし、私は見事に白の落とし穴に気付きませんでした。試合後、代わりにすぐルークを回せば白に勝ちなのではないかと話が出ましたが、29. Rg1 g5! 30. Qxc6 Rxc6 31. Nxd5 Rh6! 32. c4 Rxh3= ならば、白のパスポーンは危なそうですが、バックランクの弱さを突いたプレーが黒もでき、まだまだ難しい形勢でした。
29... dxe4 30. Rg1 Rg8?
g6 を守るにはこの1手だと思いましたが、これが大間違いでした。試合後に青嶋くんから、g6 取りはスレットになっておらず、単にeポーンを進めれば黒勝ちだと指摘されました。30... e3! 31. fxg6 Qe4+ 32. Ka1 fxg6 33. Nxg6+ Qxg6 34. Rxg6 e2-+ eポーンがプロモーションできるのであれば、一時的にクイーンとナイトを交換しても大丈夫です。ここにきてc7 に上げたルークがg7 のマスを守っているのがポイントでした。
31. fxg6 fxg6 32. Nxg6+ Qxg6!
32... Rxg6?? 33. Qf8+ はメイトですので、当然クイーンを捨て、2ルーククイーンにする1手です。
33. Rxg6 Rxg6 34. Qf8+ Rg8 35. Qf6+ Rgg7 36. Qf8+ Rg8 37. Qf6+ Rgg7 38. Qf8+ 1/2-1/2
バックランクメイトがあるため、白も勝負にいくことはできません。今年の全日本の中でも、かなり重要になるであろう青嶋くんとのゲームは、こうしたファイティングの末にドローで幕を閉じました。
R1 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Kanda, D (JPN, 1859) 1-0
R2 Kobayashi, A (JPN, 2061) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 0-1
R3 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Shiomi, R (JPN, 2085) 1-0
R4 Aoshima, M (JPN, 2280) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 1/2-1/2
R5 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Higashino, T (JPN, 1978)
明日はトップボードで小島-東野、Tu-青嶋、松尾-大多和となっています。どこも面白いペアリングですが、まだまだ3日目ですので今後どうなる分かりません。その他のペアリングについては、以下のサイトをご覧ください。それでは3日目もよろしくお願い致します。
Japan Chess Championship 2018 R5 Pairings
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