4R はアイスランドのジュニアプレーヤーとの対戦です。実はこの子、双子のチェスプレーヤーで、片割れも同じマスターセクションで試合をしています。もう1人も頻繁に試合中に局面を見に来るのですが、2人とも席を立っていると対戦相手がどちらか分かりません(笑) そんな珍しい双子プレーヤーとの対戦は、今大会で最長手数のタフなゲームになりました。
Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (4)
1. Nf3 d5 2. c4 c6 3. g3 Nf6 4. Bg2 g6 5. b3 Bg7 6. Bb2 O-O 7. O-O Bg4 8. d3 Bxf3 9. Bxf3 e6 10. Qc2 Nbd7 11. Nd2 Qe7 12. d4!?
Isle of Man International 2017 (4)
全日本から採用しているセットアップですが、d2-d4 の突き直しをしてきたのは彼が初めてです。白のブレイクとしては、e2-e4 が考えられますが、すでに1マイナーピースを交換している状態ではさほど恐れなくとも大丈夫です。
12... Rfd8 13. Rfe1 Rac8 14. e4?!
指したい気持ちは分かりますが、14. Rad1 などもう少し準備をしてから仕掛けるのが良いでしょう。黒はe2-e4 のブレイクを待つくらいで、自分からあまり仕掛けようはないので、白は時間をかけてOKです。
14... dxe4 15. Nxe4 Nxe4 16. Bxe4 Nf6
昨年のマン島でのWang Hoa 戦でもこのポーンストラクチャーになりました。黒はすでに2ピースを交換しているため、きちんと指せば、白のスペースとダブルビショップのアドバンテージを抑え込んで戦えるはずです。逆にd4 のポーンをターゲットにする面白みもあるため、黒は満足なはずです。本譜ではNf6-Ne8-Nd6-Nf5 のマヌーバリングをすでに意識していますが、16... b5!? としても良かったでしょう。c4 のポーンを捌くことができれば、黒はd5 のマスをナイトのためのアウトポストとして活用できます。
17. Bf3 Qc7 18. Rad1 Rd7 19. Rd3 Rcd8 20. Red1 h5 21. h4 Ne8 22. Bc3 b5!?
黒が勝ちにいくのであれば、なるべく白からd4-d5 と突き、ポジションを単純化することを許すべきではないと思います。22... Nd6 23. d5 cxd5 24. Bxg7 Kxg7 25. Qb2+ f6 26. cxd5 e5= ならば形勢互角ですが、こうせずにじっくりとd4 を狙うチャンスを残そうと考えました。
23. Kg2 Rc8 24. Qd2 Nd6!?
ここはポーンを交換を挟んでからナイトを跳ぶかどうか迷いましたが、bファイルを開くことは、わずかに白にとってメリットが大きいように感じ、ポーンはそのままにしてナイトを跳ぶことにします。24... bxc4 25. bxc4 Nd6 26. c5 Nf5 27. Rb1+/=
25. Bb4
ここは白もどう指すか迷うところです。私がメインで考えていたのは、25. Ba5 Qb8 26. d5 cxd5 27. cxd5 e5 という形で、これならばe5-e4 を狙って黒に面白い実があると思っていました。本譜ではこれよりも白はポジションの単純化を目指します。
25... bxc4 26. Bxd6 Rxd6 27. bxc4 Rcd8 28. Qe3 c5!
この手以外は一切チャンスはないと思い、ルークを捌いても局面を改善します。
29. dxc5?!
29. d5 Bd4 30. Qg5 Kg7= ならば形勢互角ですが、どちらもまだ注意の必要な局面です。
29... Rxd3 30. Rxd3 Rxd3 31. Qxd3 Qxc5
私が目指したポジションに到達しました。駒数はイコールで異色ビショップですが、黒のビショップはf2 をアタックするチャンスがあり、白のビショップよりも明らかにアクティブです。Aronian のゲームでこうしたクイーン+異色ビショップのエンドゲームを見たことがあったので、黒の理想形を思い描きながら試合を進めます。
32. Qd8+ Bf8 33. Qb8 Qd4 34. Qa8 Kg7 35. Qe4 Qa1 36. Qe2 Bc5 37. Qc2 Qd4
これでビショップとクイーンが両方f2 を狙えるようになりました。白はひたすら待つしかありませんので、黒はゆっくりとブレイクの方法を模索します。
38. Qe2 f5 39. Qc2 Kf6 40. Qe2 e5 41. Bd5 e4
私はe4-e3 とf5-f4 のどちらのブレイクもありえると思いましたが、e5 の位置からf5-f4 と仕掛けるのは妙に思え、ひとまずポーンをe4 まで進めることにします。ブレイクのチャンスを作るだけでなく、白マスビショップをキングから分断し、f3 のマスを弱める狙いもあります。
42. Bc6 Ke5 43. Be8 Kf6 44. Bc6 Qc3 45. Bd5 Bd4 46. Bc6 a5 47. a4 Qc1 48. Bd5 Qa3 49. Bc6 Qb3 50. Be8 Qb7 51. Kh2 Qb4 52. Bc6?
相手は基本的に早指しで、この手もさほど考えずにさっと指しました。こうしたひたすら待つだけのポジションでは、ディフェンス側に間違いが出やすいものですが、これは明らかにケアレスミスです。
52... Qc5
私はc4 の浮いたポーンも狙うほうが自然だと思いましたが、52... Qb6! 53. Qd2 Kg7! 54. Kh3 Bxf2 55. Qd6 Bc5 56. Qe5+ Kh7 57. Be8 e3-/+ のほうが正確で、f2 を取れれば黒の有利な相当大きそうです。
53. Qd2 Qxc4
指した直後にキングを先に動かすべきだったと後悔しましたが、結局相手のさらなるミスで同じになります。53... Kg7! 54. Be8! Qxc4 (54... Bxf2?! 55. Qd7+ Kh6 56. Qd8!= 先述のラインで51. Qb6! がベターなのは、このクイーンの侵入を防いでいるためです。) 55. Bb5 これで本譜と同じです。
54. Bb5?!
54. Qh6! Qxc6 55. Qh8+ Kf7 56. Qxd4= 白クイーンは来るとすればg5 のマスだと思い込んでおり、h6 のマスは見落としていました。これを防ぐのが、先にキングをg7 に退いておいたほうが良い理由です。
54... Qc5 55. Kg2 Kg7 56. Be8 Qd5 57. Kh2 Qe5 58. Bb5 Qc5 59. Kg2 Qa7
ひとまず1ポーンアップした黒は、ここからどう仕掛けるか迷うところですが、f2 へのアタックと、f3 でのチェックのチャンスを消してしまったため、意外とどう仕掛ければ良いのか分かりません。コンピュータは59... e3 60. fxe3 Bxe3 61. Qd7+ Kh6 62. Qc6 Qd4-/+ とする手筋を指摘しますが、これで勝てるのか自信がありませんでした。実際にやってみれば、白はg3 のポーンのディフェンスと、f5-f4 のブレイクに対する警戒が大変で、ミスが出やすいものだと思います。なにより他の変化ではチャンスを作ることはできないため、自信がなくともこの変化に跳び込むしかありませんでした。
60. Bc4 Kh7 61. Bb5 Qc5 62. Be8 Bg7?!
結局間違ったプランを選択してしまいました。私のアイディアはビショップを7段目に退いてチェックを防ぎ、クイーンを3段目にもどいてf3 のマスでのチェック狙いを復活させることでしたが、白のg6 への反撃が十分であることを読み切れませんでした。代わりにもう一度、62... Qd5 から白マスビショップを追い返し、e4-e3 を仕掛けるべきだったでしょう。
63. Qd7! Qc3 64. Qe6! Qf3+ 65. Kg1 Qg4
g6 を守ったは良いものの、f5-f4、e4-e3 のどちらも仕掛けられなければ、ポジションを進展させることはできません。
66. Kg2 Kh6 67. Qd6 Kh7 68. Qe6 Qf3+ 69. Kg1 Qd1+ 70. Kg2 Qg4 71. Kg1 Kh6 72. Qd6 f4
この異色ビショップエンディングがドローであることはもちろん承知しています。しかし、他にやることはありません。
73. Qxf4+ Qxf4 74. gxf4 Bf6 75. Bc6 Bxh4 76. Bxe4 Be7 77. Kg2 Kg7 78. Kf3 Kf6 79. Bb1 Bc5 80. Bd3 h4 81. Kg4 Bxf2 82. Bc2 Bg3 83. Bb1 Kg7 84. Bd3 Kh6 85. Bc2 Bf2 86. Bd3 Be3 87. Kxh4 Bxf4 88. Kg4 Bd2 89. Bb5 Kg7 1/2-1/2
ルークやクイーンが残っていて、勝ちのチャンスを作れる異色ビショップエンディングは、また帰国後に研究をしてみようと思います。
さて、マン島のトーナメントも早くも折り返しになりました。5R ではイングランドの元U14,U17 のチャンピオン、大山くんとの対戦が決まりました。レイティングを考えると、もしかすると当たるかもしれないと予感はありました。去年のジャパンリーグでは私が勝ちましたが、あれから約1年、4NCL などの大会で揉まれ、どのように成長しているかを楽しみに試合をしてこようと思います。
2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198)
Isle of Man International 2017 R5 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games
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