2017/09/24

Isle of Man International 2017 R1


いよいよマン島でのトーナメントがスタートします。この日は時差の影響も少なく、しっかりと夜は休み、7時に起床して朝食に向かいます。Devonian は昨年宿泊したMannnin Hotel に比べると、部屋がややこじんまりとしていて、ホテルのグレードを表す星の数も1つ減ります。これで朝食がイマイチだったら後悔しそうなところでしたが、食事は当たりでした! バイキング形式ではありませんが、10種類ほどのメニューから食べたいものを伝えると、調理をして持ってきてくれます。初の朝食はベリーの乗ったパンケーキにしてみました。


レストランの内装も素敵です。私が降りてきたときは貸し切りでしたが、注文を待っているとイングランドのNo.1 女子プレーヤー、Jovanka Houska が旦那さんとともに現れました。他にもまだ気づいていないだけで、強豪プレーヤーが同じホテルに宿泊しているかもしれません。

さて試合はと言えば、私は初戦、去年と同じDahl との対戦になりました。去年も1900台と思えないしっかりとした指しまわしでしたが、今年はさらに手ごわい相手になっていました。自分の最も得意とするスタイルではない、タクティカルなゲーム展開にしてみることにします。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974)
Isle of Man International 2017 (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. e4!?



去年と同じ流れで、この5手目をどうするか悩みました。近年は5. e3!? が人気があり、チェスセンターで簡単にチェックした、Opening Repertoire English でも、このラインが勧められていました。これもさせたら面白いだろうと調べてきましたが、少し指し切る自信がありません。そこで以前も指したことのある5. e4 にします。

5... Nb4 6. Bc4 Nd3+ 7. Ke2 Nf4+ 8. Kf1 Nd3!?


ここでd3 に戻る手は数は少ないものの、ここ数年で人気を伸ばしてきています。8... Ne6 9. b4 g6 10. bxc5 Bg7 11. Bxe6 Bxe6 12. d4 のラインは、かつてカぺルでGM Danin と指したことがあります。

9. Qe2 Nxc1 10. Rxc1 a6 11. h4



白は黒マスビショップを放棄しますが、代わりにピースの展開のリードがあります。hファイルから展開させるルークの力も使い、キングサイドで黒いプレッシャーをかけたいところです。

11... e6 12. e5 b5 13. Bd3 Nc6 14. Rh3 Bb7 15. Ng5!?


少し迷いましたが、ここで仕掛けることにします。試合前に調べていたHou Yifan のゲームでは黒がd7 にビショップを置く形で、このNf3-Ng5 を入れていました。それに比べると、e6 へのサクリファイスの狙いも見せられるため、このナイトの飛び込みは良さそうだと考えました。

15... Be7


15... Qc7 16. Bxh7 Qxe5 17. Re3 Qh2 18. Rh3 Qd6= といった流れも少し考えていました。本譜はg5 のナイトをビショップで消すことを意図していますが、それならばd6 のマスやc5 のポーンが弱くなります。それならば、白はh7 を貰って勝負です!

16. Bxh7 Bxg5 17. hxg5 Qxg5 18. Ne4



ここも時間を使い、この手で仕掛けることを決めます。白はポーンがバラバラになりますが、2つのルークが黒よりも使いやすく、それでタクティクスのチャンスを作れれば大丈夫だろうと思っていました。試合後、相手からは18. Rh5? Rxh7! 19. Rxh7 Nd4-+ という変化を読んでいたと教えられています。

18... Qxe5 19. Rxc5 Qd4!?


d6 をカバーしつつ、アタックのチャンスも残せる面白い手です。うっかり20. Rhd3?? などと指そうものなら、h7 のビショップがただで落ちてしまいます。私はそれに気づき、もう1つのルークでクイーンをアタックできるようにしました。c5 をナイトのために空けておくのもポイントです。

20. Rcc3!? Ne5 21. f4 Nc4 22. Rcd3!?



時間の増加する40手まで、まだ半分ほどしかきていないにもかかわらず、私の残り時間は6分ほどでした。しかし、相手も残り時間をじりじり減らしながら、慎重に手を選ぶポジションです。22. Rhd3 Qb6 23. Ng5 Rd8!= もう1つのルークが回る手も考えられますが、はっきりと形勢が分からなかったため、本譜のようにb2 を捨てて白の攻撃のチャンスがはっきりしそうなポジションを目指します。

22... Qxb2 23. Nc5 Bd5?


彼が時間をかけてこの手を指すと、私は目を疑いました。b7 のビショップ取りとe6 へのサクリファイスを受けるためには、ビショップをc8 に退くしかないと読んでいたためです。ここでビショップが退くような手はいかにも黒がまずそうですが、白には決定打がありません。23... Bc8! 24. Qe4 Nxd2+ 25. Rxd2 Qxd2 26. Qc6+ Kf8 (26... Ke7? 27. Qc7+ Bd7 28. Rd3 Qc1+ 29. Ke2+-) 27. Nxe6+ (27. Nd3!? Ke7! 28. Qxa8 Rxh7 29. Qxc8 Rxh3 30. Qc7+ Ke8 31. Qc6+ Ke7 32. Qc7+ Ke8=) 27... fxe6 28. Qc5+ Kf7 29. Qh5+ Ke7 30. Qg5+ Kf8 31. Qc5+ Kf7 32. Qh5+= コンピュータの解析では、こうしてパペチュアルチェックでドローになると出ますが、とても難解なため、どちらかが途中で間違えそうです。私は試合中、a8 のルークを狙う変化は読み切れず、別の手も検討していました。

24. Rxd5 Rxh7 25. Rxh7 Qb1+ 26. Kf2 Qxh7 27. Nxe6!



Dahl が読み落としたのは、このタイミングでのナイトサクリファイスです。これが成立してしまうため、Bb7-Bd5 ではなく、Bb7-Bc8 がオンリームーブでした。27. Rh5!? Qg8 28. Qe4 Rc8 29. Qb7 Rd8 30. Qxa6+- も白が勝てそうですが、残り時間30秒まで考えて本譜がシンプルだと結論付け、ナイトを捨てます。

27... Qh4+ 28. Kg1 Ra7


28... fxe6 29. Qxe6+ Qe7 30. Qc6+ Kf7 31. Rd7+- でも白の勝ちです。

29. Nc7+ 1-0



最後はダブルチェックからメイトです。勝たなければいけない相手でしたが、非常に難しいゲームでした。


会場はやはり、昨年と同じ劇場でした。裏口の目の前がDevonian であることに気付いたので、部屋から会場まで5分もかかりません。この1R はランダムペアリングであるため、普通のオープントーナメントではありえないほど、上位がポイントを落としていました。リスト3 のCaruana はKramnik に勝ち! 他にも強豪GM が負けスタートとなっています。

そして私は2R、アメリカのトップジュニアプレーヤー、Xiong Jeffery を引きました。65B から一気に上がり、17B になりましたので、ゲームの中継もあります。イギリスとの時差は8時間ですので、ゲームスタートは日本時間の21時半です。久々の2600台との対戦ですが、なんとかポイントを取りたいですね。頑張ってきます!

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)

Isle of Man International 2017 R2 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games

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