1日遅れましたが、ジャパンオープン最終日のレポートです。5R 終了時点で山田くんが唯一5連勝、そして彼を7人の4P が追う展開となりました。そして最終戦、4P グループで最年少、高校生の大多和くんが山田くんに黒で勝ち! 私が中村くんに、南條くんが東野さんに、松尾さんが松本くんに勝ちで、すべての入賞者が出そろいました。5P で5人が並ぶ最終結果というのは、近年でも稀だと思います。皆さん、お疲れ様でした!
1st Place Yamada, K 5/6 (0 Otawa)
2nd Place Matsuo, T 5/6 (0 Yamada)
3rd Place Nanjo, R 5/6 (0 Matsuo)
4th Place Otawa, Y 5/6 (1/2 Takahashi, Yamada, S)
5th Place Kojima, S 5/6 (0 Katsuta)
2nd Place Matsuo, T 5/6 (0 Yamada)
3rd Place Nanjo, R 5/6 (0 Matsuo)
4th Place Otawa, Y 5/6 (1/2 Takahashi, Yamada, S)
5th Place Kojima, S 5/6 (0 Katsuta)
タイブレークはこのような順でした。5連勝でずっとトップに立っていた山田くんが1位であるのは順当でしょう。私は2R で負け、やや下のボードでプレーしたことが影響し、タイブレークは5位でした。こればかりは仕方がないですね。追いつくために後半4戦、しっかり勝てたことを収穫にしたいと思います。6位以下の順位やそのほかの結果は、以下のリンクからご確認ください。
Japan Open Final Standings
そしてこの順位はとても重要です。なぜならば、上位2名は来年のオリンピアード代表権を得られるためです。全日本選手権と違い、この代表権は繰り下がりません。そのため、今大会での代表権は山田くんと松尾さんが得るので確定ですが、山田くんはすでに全日本の順位で代表権を持っています。そのため、ジャパンオープンでの代表権獲得者は松尾さん唯一人です。松尾さんがオリンピアードに参加するとなれば、2000年のイスタンブールオリンピアード以来となります。
名古屋オープンに引き続き、力強いプレーを見せてくれた松尾さんがチームメイトに加わってくれるのであれば、とても嬉しいことです。一方で全日本選手権に参加しなかった南條くんは、今大会のタイブレークが3位であるために代表権を得られませんでした。バクー同様、IM 2人が率いるチームにならないことは残念ではありますが、いずれにせよ代表権を持つプレーヤーの誰が参加を表明し、誰が辞退するかはまだ分かりません。オリンピアード代表メンバーがどうなるかは、来年春頃までの楽しみとなりますね。
さて、話が長くなりましたが、最終戦、中村くんとの試合解説に移ろうと思います。中村くんとは今年4回目の対戦で、公式戦での対戦が多い1年になっています。
Kojima, S - Nakamura, N
Japan Open 2017 (6)
1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e6 6. Bg5!?
Japan Open 2017 (6)
前回の中部快速オープンでは、6. g3 を指しましたが、私はオープニングによっては同じ相手に同じラインを2回続けて指さないため、ここで手を変えます。この手を選んだのはなんとなくなのですが、試合後に調べてみるとメインのレパートリーに入れても良い手だと思うようになりました。
6... d5
中村くんはしばらく考えた末、この手を選びました。ありえなくはないですが、彼のレパートリーではIQP を持つものはあまりないため、指し慣れないポジションになるのではないかと思います。6... Be7 7. e3 O-O 8. Be2 Qa5 9. Bh4 がメインラインで、こちらであればd7-d5 からのポーン交換をナイトで取り返し、IQP を避けることができます。
7. cxd5 exd5 8. e3 Be7 9. Be2
サマーオープンでは、剱持さん相手に同じポジションを持ち、9. Bb5 と指しました。試合後に指摘された1ポーンを取る変化は、私は黒が十分なのではないかと思っています。9. Bb5 Bd7 10. Bxf6!? Bxf6 11. Nxd5 Bxd4 12. exd4 Qg5 13. Bxc6 Bxc6 14. Ne3 Rd8! これで黒は勝負できます。d5 をすぐ取る気がないのであれば、ビショップの位置は大人しくe2 で十分です。本譜ではCaro-Kann Panov Botvinnik を白黒逆、なおかつ白が1手得しているイメージでゲームを進めます。
9... O-O 10. O-O Be6 11. Rc1 Rc8 12. Qa4?!
剱持さんとの試合でもこのクイーンの動きが上手くいかなかったのですが、その反省が活きていません。試合中に考えていたほかの候補手、12. Bf4, 12. a3 はどちらもOK です。クイーンがa4 に早く動きすぎる問題点は、Nc3-Na4 の牽制ができなくなるため、Qd8-Qb6 が指しやすくなることです。
12... a6 13. Nxc6 Rxc6 14. Rfd1 h6 15. Bf4 Qc8
私が想定していたマスとは違う場所にクイーンが動きましたが、これはなるほどと思いました。黒はcファイルにヘビーピースを重ねて力を強め、c3 のナイトをピンにします。これに対しては、直前にf4 に退いたビショップをBf4-Be5 と切り替え、c3 をサポートするプランを考えます。
16. a3 Ne4 17. Be5 Rd8
17... Nc5! 18. Qf4 Nb3 19. Rb1 f6 20. Bd4 Bd6!=/+ 試合後、中村くんにはすぐにナイトを退く変化を指摘しました。f7-f6 はキング前を弱めるので多少の抵抗がありますが、白には具体的に弱まった白マスを活用する方法がありません。
18. Na2!?
ビショップでサポートしたとはいえ、c3 のナイトはいずれなんとかしなければいけません。私は早々にa2 のマスにナイトを退き、黒が持つcファイルからのプレッシャーに対抗しようとします。
18... Nc5 19. Qf4 Bg5 20. Qg3 Ne4
試合後、私は中村くんにすぐにdポーンを進めるのはどうかと指摘しました。a2 の浮いたナイトは、黒のビショップのターゲットになりうるものです。20... d4!? 21. f4! お互いに検討では見落としていた変化で、以下のラインをメインでチェックしました。(21. Bf3?! dxe3! 22. Bxc6 exf2+ 23. Kxf2 Rxd1 24. Rxd1 Qxc6 25. Nc3 f6!-/+ 黒はエクスチェンジを捨てていますが、それを十分に補う攻撃のチャンスを持ちます。) 21... Ne4 22. Qe1 Bxa2 23. Rxc6 Qxc6 24. fxg5 Nxg5 25. Bxd4= 白はダブルビショップを持ちますが、ポーンストラクチャーが少し乱れ、形勢は互角と判断できそうです。
21. Qf3 Nd2?
この手は少し考えましたが、ピースを捌くことは黒にとって得になりません。21... Rxc1 22. Rxc1 Qxc1+! (中村くんは検討でこの手を見つけました。) 23. Nxc1 Nd2 24. Qg3 Ne4 25. Qf3 Nd2= 黒は勝負に行っても良いポジションですが、こうしたドローでの決着も面白かったでしょう。
22. Rxd2 Rxc1+ 23. Nxc1 Qxc1+ 24. Rd1+/=
ナイトを捌いてしまえば、単に白がポーンストラクチャーとピースの働きが良いポジションになります。彼が見落としていたのは、e5 のビショップがb2 を守っていたことです。
24... Qc6 25. Qg3! Bf5 26. Bf3! Bf6 27. h3
ここは急がずに、まずはバックランクメイトを外しておきます。27. e4 Bxe4 28. Bxe4 Bxe5 29. Qxe5 Re8! の返し技があるため、白はすぐには駒得になりません。
27... Qe6 28. Bxf6 Qxf6 29. Qf4
ここは早めにポーンを取っておくべきでした。29. Rxd5! Rxd5 30. Bxd5 Qxb2 31. Qb8+ Kh7 32. Bxf7+- これであれば、白はb2 を取らせても勝勢です。私の見落としは、30手目でh3 を取られても、f7 での総交換から 白勝ちのポーンエンディングに持ち込めることです。
29... Qg6 30. Bxd5 Rd7 31. Kh2 Be6 32. e4
ここも安直に指しすぎました。せっかく直前でキングを2段目に逃がしているので、32. Be4! f5 33. Rxd7 Bxd7 34. Bxb7+- と2つ目のポーンを取っておくほうが簡単です。
32... Qh5 33. Qb8+ Kh7 34. Bxe6 Rxd1?
34... Qxd1 35. Bxd7 Qxd7 36. Qe5+/- ならば、おそらく白が勝てるでしょうが、まだ多少先の長いクイーンエンディングでした。本譜はすぐに終わりです。
35. Bg4 1-0
これでd1 のルークを回収し、白の勝ちとなりました。最後は上手く指せましたが、もう少しIQP のミドルゲームでどう指すべきか、勉強をしてみようと思います。
今回のジャパンオープンでは、初めて函館の山田さんが運営に3日間携わってくださり、スムーズにゲームが進行されたと思います。今後もSwiss Manger とChess Results を用いたペアリング、結果発表が続くと良いですね。山田さんに今回お世話になった恩は、月末の函館チェス大会でお返ししようと思います。参加者と運営の皆さん、3日間お疲れ様でした。また次の大会でもよろしくお願い致します。
昨日の妻と東芝さんの3人で、反省会を兼ねての夕飯。適当に決めた店ゆえ期待していませんでしたが、カレーはとても美味しかった!
2 件のコメント:
函館チェス大会のお知らせ見たら
今年が最後かもしれません って書いてるけど何があったのでしょう
▽o・~・o▽
http://hakochess.ehoh.net/
クラブの代表が代わるので、来年以降は開催できる保証がないとのことです。
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