2019/01/31

International Chess Festival in Leányfalu 2019 R9


私は1日早く終わりましたが、本来の最終戦は真っ最中です。

最終戦は今大会で最もレイティングの高いGM Aczel との対戦です。彼とはIM時代から三回目の対戦で、三度私が黒です。前回はSlav Exchange で少しチャンスを作りましたが、最終的にはドローに終わりました。今回も同じオープニングになると思いましたが、予想を裏切る幕開けになります。

Aczel, G (GM, HUN, 2551) - Kojima, S (IM, JPN, 2393)
International Chess Festival in Leanyfalu 2019 (9)

1. Nf3!? d5 2. g3 g6!?



1. d4 しかほとんどデータになかった彼がKing's Indian Attack を採用したことも意外ならば、私がGrunfeld のセットアップで応戦したことも彼には予想外だったでしょう。1. Nf3 d5 2. g3 Nc6 を11月に見つけて研究しましたが、最新の試合ではイマイチしっくりきていませんでした。そこで色々と調べ直し、この手順でGrunfeld をやることにします。

3. c4 c6 4 . Bg2 Bg7 5. d4 Nf6 6. Na3!?


白番でも調べて何試合か指しているだけに、白のラインはだいたい知っているつもりでしたが、これは完全に未知の手でした。c4 を黒から取らなければ、a3 のナイトは少し妙な位置にも見えますが、これをゲームにゆっくり参加させる方法が白にはあります。ボスニアヘルツェゴビナのGM Nikolic の得意ラインだと後で調べて知りました。

6... O-O 7. O-O Bf5 8. Bf4 Be4



c3 のナイトがいないため、e4 のマスのコントロールが弱くなっています。それを利用し、e4 にビショップを置くのはスタンダードなアイディアでしょう。黒としては、どこかでf3 のナイトがどいたタイミングで白マスビショップを交換するのは歓迎ですし、ビショップ同士の交換を避けようと、Bg2-Bh3 or Bg2-Bf1 と白が指そうものなら、f3 のナイトを取ってダブルポーンにしてしまいます。いずれにせよ、ピースを1枚交換することで局面を単純化し、後手の不利を少なくするのが黒の狙いです。

9. Rc1 Nbd7 10. Qd2 Re8


Qd2-Qb4 の際に、Qd8-Qb6 とぶつけられるよう、e7 のポーンを守るのが1つのアイディアですが、将来的なe7-e5 のブレイクも視野に入れています。

11. Rfd1 Nf8!?



ここはe7-e6 とポーンストラクチャーを決めてしまうのも1つの手だとは思いつつ、e6 のマスにナイトを組み替えるのも面白いアイディだと考えました。

12. b3 Ne6 13. Be5 Bf8!?


白のと黒はピースの配置が似ており、どちらもe5, e4 にビショップを置くことで、相手のフィアンケットビショップを消そうとしています。黒としてはピース交換は悪くないですが、a3 のナイトが一時的に浮いていることに着目し、f6 のナイトを取られてダブルポーンに指せてもかまわないと判断しました。白が次に何もしなければ、Nf6-Nd7 からダブルポーン無しで、ビショップナイトの交換ができ、当然これも黒としてはありがたい展開です。

14. Bh3 Ng7 15. cxd5?!



このタイミングでポーン交換をするのは少し妙に感じました。確かにd5 から黒ポーンが消えれば、Na3-Nc4 というナイトにとって絶好の動きができますが、黒にとっても好ましいポーンストラクチャーになることをAczel は失念しています。

15... Bxf3! 16. exf3 Nxd5


これで黒は白マスビショップを手放しても、白にダブルポーンと孤立ポーンを作り、d5 のアウトポストに強力なナイトを置くことができました。これは白がc4 のマスを得たことをよりも、トータルでは黒のメリットのほうが大きいと考えられるでしょう。

17. Nc4 e6



17... f6 からすぐにビショップを取りかえすことも考えましたが、私はf8-a3 のダイアゴナルを早めに開いて黒マスを利用しにいくことと、d5 の強力なナイトを残すプランを選択しました。

18. g4 Qh4 19. Bg2 Bb4 20. Qc2 Red8


Ng7-Nf5 を許さないよう、18. g4 と突いてくることは予想済みで、これによって弱くなったh4, f4 などの黒マスも黒は使うチャンスとなります。後はg7 のナイトがゲームに戻ってきて、ゆっくりd4 にプレッシャーをかけるような流れになれば、黒としては指しやすい局面になるでしょう。

21. Bg3 Qf6 22. h4 Nf4 23. Bf1



23. g5? Qf5 24. Qxf5 Ne2+! 25. Kf1 Nxg3+ 26. fxg3 Nxf5 は次にポーンを取り、黒が大きく優勢です。

23... h6 24. a3 Bf8 25. Qe4 g5


f4 にナイトを刺してg3 のビショップを封じ込め、かなり黒が指しやすくなったと感じました。d4 の弱点を抱える以上、白からは簡単にf4 のナイトを取って駒を捌きたくはないでしょう。

26. b4 Ne8 27. Bd3 Bg7 28. Ne5 Nxd3 29. Rxd3 Rd5?



ここは迷ったのですが、単純に29... gxh4 とポーンを取ってしまえば良かったと後悔しました。f3-f4, g4-g5 などの反撃を気にしましたが、hファイルを開かれるほうが色々と厄介でした。

30. hxg5 hxg5 31. Kg2


私はd4 への攻撃が十分強いと感じていましたが、e5 のナイトが攻守によく利いており、むしろhファイルからの反撃にどう対処するのか黒が悩む番になっています。

31... Nd6 32. Qe3 Rd8 33. f4 gxf4 34. Bxf4 Qe7 35. Rh1 f6 36. Qh3!



Aczel は全てを読み切っていたわけではないでしょうが、この手を残り2分の段階で指し、私の判断を待ちます。Qh3-Qh7、Ne5-Ng6 の流れは終わってしまうので、黒はこのピースサクリファイスのチャレンジを受け入れるしかありません。

36... fxe5 37. Bxe5 Bxe5


私は残り10分で、ここからの変化を読み切ることができませんでした。コンピュータの指摘は37... Qg5! 38. Qh7+ Kf7 39. Rh5 (39. Rf3+ Nf5!) 39... Rh8 40. Qxh8 Qxg4+ 41. Rg3 Qxg3+ 42. Kxg3 Bxh8 43. Rxh8 という変化ですが、これは途中が難しいうえ、最終局面もルークにbポーンを狙われそうで自信がありません。

38. dxe5 Nf7??



ビショップを交換する前から、ずっとルークを取るとどうなるのか読み続け、タイムアップになりそうなところでこの手を指してしまいました。この試合で一番反省すべき点はここで、ポーンの数をしっかり数えれば黒はピースを返しても、キングを守り切ればまだ戦えると判断できるはずでした。時間切迫とはいえ、ナイトを退く手とルークを取る手、どちらのダメな変化を読むことばかりに時間を使い、他の選択肢が完全に頭にありませんでした。

実際に試合後、Aczel からは38... Qg7 でナイトを返せばイコールなのではないかと指摘され、愕然としました。38... Qg7 39. Rxd5 cxd5 40. exd6 Rxd6 41. Re1 はコンピュータは白やや良し評価ですが、黒も注意深く指せばすぐ崩れるような状況ではないですし、十分に勝負できます。もう1つのルークを取るとどうなるかの変化も、Aczel は試合後、瞬時に示してくれました。38... Rxd3?? 39. Qh8+ Kf7 40. Rh7+ Kg6 41. Rg7+!! Qxg7 42. Qh5#


2つのルークとピースを捨ててメイトとは... パズルのようです。

39. Rf3!+- Qe8 40. Qh7+


本譜でも白の勝ちですが、ここは40. Rxf7! Kxf741. Qf3+! Kg8 42. Qf6 でメイトでした。

40... Kf8 41. Qg6 1-0



時間の増えた41手目、何を指してもピースを取りかえして白勝ちの局面で、Aczel は10分時間を使いました。途中上手く指して有利な局面を作ったものの、時間切迫での冷静さや有効な手の作り方などは、1Rと同じく2500GM の力強さを感じました。悔しい最終戦黒星ですが、大いに勉強させてもらいました。

1/22 14:30 R1 Horvath, A (GM, HUN, 2508) - Kojima, S (IM, JPN, 2393) 1-0
1/23 14:00 R2 Varga, Z (GM, HUN, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2393) 1/2-1/2
1/24 14:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2393) - Audi, A (FM, IND, 2322) 1-0
1/25 14:00 R4 Chan, K (MAS, 2228) - Kojima, S (IM, JPN, 2393) 1/2-1/2
1/26 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2393) - Xu, Y (IM, CHN, 2528) 1/2-1/2
1/27 14:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2393) - Mahalakshmi, M (WIM, IND, 2218) 1-0
1/28 14:00 R7 Krstulovic, A (FM, HUN, 2332) - Kojima, S (IM, JPN, 2393) 1/2-1/2
1/29 14:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2393) - Kantor, G (IM, HUN, 2514) 1/2-1/2
1/30 14:00 R9 Aczel, G (GM, HUN, 2551) - Kojima, S (IM, JPN, 2393) 1-0

+5 Horvath
+3 Aczel
+2 Xu, Varga
+1 Kantor,
+-0 Kojima, Krstulovic
-3 Audi
-5 Chan, Mahalakshmi

International Chess Festival in Leanyfalu GM Section


私も最後力尽きましたが、Xu Yi もVarga に敗れてノームチャンスが消えました。彼クラスの実力者でも、なかなか厳しいですね。今度会うときはまた互いにレベルアップしていたいものです。

さて、年末年始の一時帰国はあったものの、これでオリンピアードから続く遠征の全試合を終えました。最後の大会は最終戦で負けてレイティング+1止まりとやや不満ではありますが、11月12月の試合は序盤から崩れて20手前には決着がついている、トータルで負け越してレイティング大幅ダウンと散々な大会もあったので、一度休憩を入れた成果はあったと思っています。今回の9試合では黒でのGM戦も粘り強く指せましたし、結果こそイーブンでも、オリンピアードや10月のモンテネグロのような絶好調時に近いプレーができたと思っています。今後はこのパフォーマンスのプレーをいつでもできるようにし、反省点をまとめて改善していければ、また次のステップに進めるでしょう。次の海外大会がどこになるかは未定ですが、まずは帰国して日本のチェスファンの皆さんと交流し、チェスのレッスンの日常にも戻りたいと思います。長い遠征、たくさんの応援をありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.