2022/08/02

Chennai Olympiad R4 Paraguay - Japan

オリンピアード4日目の様子をインドからお届けします。この日は昼食に日本のインドレストランでも馴染みのある、パラックパニール(写真右)が出ました。ほうれん草とインドのカッテージチーズのカレーですね。今回滞在するホテルの料理は、私が知る過去のオリンピアードの中でも最高で、肉無しでも満足度が高いメニューが多いのが嬉しいです。

この日の日本オープンチームは南米パラグアイとの対戦となりました。私の相手であるDelgado はキューバ出身で、かつてはキューバ代表も務めた実力者です。幸運なことにまたGM戦で白番を引けたので、しっかりと準備をして試合に臨みました。

Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Delgado, R (GM, PAR, 2614)
Chennai Olympiad (4)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 e6 4. O-O Nge7 5. Re1 Nd4!?

予想していた2... d6 3. Bb5+ のMoscow ではなく、2... Nc6 3. Bb5 のRossolimo になりました。黒の6手目は最近人気の出てきた2番手の手でしたが、私は見たことがなくここで時間を使います。メインラインは、5... a6 6. Bf1 d5 7. exd5 Nxd5 8. d4 Nf6 9. Be3 と進みます。

6. Bf1 Nec6 7. d3 Nxf3+ 8. Qxf3 Be7 9. Nd2 O-O 10. c3 b5 11. Qg3 b4 12. Nf3


少し慣れない形ではありましたが、ここまで進んで満足な局面を迎えました。d4 のマスをカバーしながらナイトをキングサイドに運び、Bc1-Bh6 を狙います。この先、互いにセンターポーンをどう動かすかで作戦が大きく変わってきそうです。

12... Kh8 13. Bf4 d5 14. exd5

試合後、Misha からは14. e5 と押し込むのはどうかと言われました。形としてe5 にポーンを指し、キングサイドへのアタックチャンスを求めるのは当然あり得る選択です。一方で私はeファイル、黒マスビショップのh2-b8 ダイアゴナルを閉じるのを嫌い、本譜を選択しました。こちらであれば、e5 のマスはピースで使うチャンスが残ります。

14... Qxd5 15. Ne5 Bb7 16. Be2


私としては、f1 に一度退いたビショップをいかに使い直すかがゲームのカギだと考えていました。f3 のマスを早めに空けたのは、Bf1-Be2-Bf3 を実現するためで、この構想自体は良いものだと思っています。しかし、コンピュータの指摘はポーンを捨ててもd3-d4 と突き、ビショップをd3 に置きなおしてキングサイドを攻めるというものです。16. d4! cxd4 17. Bd3! Nxe5 18. Rxe5 Qc6 19. Rh5 f5 (19... g6 20. Be5+ Kg8 21. Rxh7! Qxg2+ 22. Qxg2 Kxh7 23. Qh3++- これは綺麗にメイトです。) 20. Bb5!+- 変化の一例ですが、こうしてビショップを捨てても黒クイーンをg2 からそらせば、次のQg3-Qg6 に対する受けがなく、白の勝勢でした。

16... Rac8

16... Nxe5 17. Bxe5 f6 18. Bf3 Qd7 19. Bxb7 Qxb7 20. Bd6 と進んだ形は白が少し指しやすいエンドゲームかと試合中は読んでおり、相手もこれを外してきました。

17. Bf3 Qd8 18. Nc4!


ここで最も時間を使い、この手を見つけました。最初はe5 に自然に見える18. Rad1 bxc3 19. bxc3 Ba8= は黒が問題の無い局面です。

18... bxc3 19. bxc3 Qxd3 20. Nd6!?

私が18手目の時点で考えていたのがこの手で、白は捨てたポーンを取り返して十分な局面に持ち込めます。しかし、コンピュータの提案はナイトを戻す手でした。20. Ne5! Qa6 21. Rab1 Ba8 22. Be2 Qa5 23. Bd3+/= と進んだポジションは上記と似ており、白はポーンを捨ててもd3 に置いたビショップでキングサイドを攻撃し、十分な代償がありそうです。

20... Bxd6 21. Bxd6 Rfd8 22. Bxc5 Qxc3 23. Bxc6


ここは異色ビショップにせずにa7 を取る手も考えていましたが、一時的にダブルビショップをキープしても白に残ったaポーンがさほど武器になるとは思えませんでした。実際、23. Bxa7 Qa5 24. Be3 Ba8= と進んだ局面は互角です。

23... Qxg3 24. hxg3 Rxc6 25. Bxa7 Ra8 26. Be3 Rca6

異色ビショップ+2ルーク残る局面を迎えました。これは上手くバックランクメイトやポーン取りのタクティクスを使い、aポーンを助ければドローに十分です。

27. Rec1 Bd5 28. a3 h5 29. Rc7 Kg8 30. Bc5 Ra4 31. Rc1 h4 32. gxh4 Rxh4 33. f3


次のRh4-Rg4 が少し気になるので、それだけ気を付けておけば後は難しくありません。

33... Rc4 34. Rxc4 Bxc4 35. Ba7 Bb5 36. Rb7 Bc6 37. Rb8+ Rxb8 38. Bxb8 1/2-1/2

最後は2つ目のルークも交換してドローにしました。2600台からのドローは前回のオリンピアード以来4年ぶりです。

Open R4 Paraguay - Japan 3-1

Bachmann, Axel (GM, PAR, 2588) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1-0
Delgado Ramirez, Neuris (GM, PAR, 2614) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 1/2-1/2
Cubas, Jose Fernando (GM, PAR, 2451) - Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) 1-0
Jodorcovsky Werjivker, Paulo - Bibby, Simon (FM, JPN, 2147) 1/2-1/2

Women R4 Chinese Taipei - Japan 2.5-1.5

Tsai, Sophie Yi-Hsuan (TPE, 1131) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 0-1
Cho, Hung-Ling (WCM, TPE, 1576) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 1/2-1/2
Weng, Yu-Hsin (TPE, UR) - Arai, Yuki (JPN, 1495) 1-0
Shih, Ching-An (WCM, TPE, 1582) - Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) 1-0


オープンは白番の2人がドローを取りましたが、黒番の2人は負けてしまい、マッチも3-1で敗れています。一方、女子は台湾を相手に接戦でしたが、惜しくも2.5-1.5で敗れました。オープン、女子ともに負けてもチームの雰囲気は悪くありませんので、今日はどちらも勝てることを願っております。私は今日の5Rで初めて抜け番を貰い、ホテルからライブで日本チームを見守ろうと思います。


5R はオープンがオランダ領アンティル、女子がパラオとの試合になりました。ともに格下のチーム相手ですので、ここを勝って前半戦の最後、6R を迎えたいですね。日本チームファイトです!

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