突然ですが、有田でのチェス大会が終わった2日後からベトナムの首都、ハノイに来ております。大会に参加するためでもあるのですが、ハノイでの試合は年明け1/3からですので、まだまだ先のこと。今は普段通りのレッスンをしながら、初となるハノイでのんびりしつつ、地元のチェスクラブに顔を出してベトナムのチェスプレーヤーと交流しています。簡単にですが、ベトナムに来て1週間ほどを振り返りたいと思います。
ベトナムを選んだ理由はいくつかあります。まず日本との時差が2時間と短く、普段の仕事に支障がないこと。福岡空港から直通便があり、有田での大会後の移動が楽だったこと。そしてブダペストでの記事をご覧になったかたはご存じだと思いますが、私がベトナム料理が好きなことです。日本人に一番馴染みがあるベトナム料理と言えばフォーという米麵だと思いますが、こちらはブンリュークアというトマトとカニのすり身が入った麺料理です。ハノイの路上店で、25000ベトナムドン(150円)でした。
ベトナムの北部に位置するハノイは、南部のホーチミンほど年中暖かいわけではなく、フルーツもホーチミンのほうが美味しいそうです。それでもハノイでは至る所でフルーツをカゴで運んで売る人や、ジュースのお店を見ることができます。日本の友人からハノイではsinh tốというスムージーが美味しいと情報を貰い、アボカドスムージーとマンゴースムージーを試してみました。フルーツの種類によって作り方は少し異なるようですが、私の買った店では新鮮なフルーツにコンデンスミルク(練乳)とココナッツミルク、氷、水を加えてミキサーにかけていました。
滞在はハノイ旧市街のホテルで、仕事の合間には近場を観光しています。こちらはベトナムの革命家、ホーチミンの遺体があるホーチミン廟です。説明を読むまで、廟というものがなんなのかを忘れていました。
トレインストリートはハノイ人気の観光名所の1つで、多くのカフェが並んでいます。使われなくなった線路を利用しているのかと思いきや、現役の線路で電車も日に数本通るそうです。線路に立ち入ることを禁止している日本では、こうして線路横に店があり、多くの人が立ち入る様子は見られないですね。
旧市街の北にはハノイ最大の湖である西湖(タイ湖)が広がっており、湖周辺には多くの高級ホテル、観光名所があります。南部のチャンクオック寺は湖に乗り出すように建っています。
ハノイ市内にはいくつかチェスクラブがあるようで、そのうちの1つに日曜日足を運んでみることにしました。少し離れた場所だったので、ハノイ初のバスに乗車します。Google Mapでバス停の場所と路線を確認し、無事にバスに乗り込むことができました。ハノイの市バスは車内で乗務員から切符を買うシステムで、7000ベトナムドン(42円)から10000ベトナムドン(60円)くらいのようです。結構遠くまで60円で行けるのはお得ですね。写真は運転手の趣味なのか、バス前方に並べられたぬいぐるみたち。
この日の目的地であるThe Cozy Villageに到着しました。こちらは日本にもよくあるボードゲームカフェで、飲み物を購入すれば店内のボードゲームで遊べるようです。2階、3階、4階にはプライベートルームがあり、団体のお客さんはこうした部屋を予約して借りることになります。私が事前にコンタクトを取っていたHanoi Chess Villageは、学生を中心としたチェスクラブで、この日は大学チェスクラブの対抗戦を行っていました。日本でもあることですが、メンバーの足りないクラブには、中高生くらいの年の子たちも混じっていました。
対抗戦はA-Dグループあり、2、3、4階の部屋を3つ借りて40人以上が指していたと思います。私はチェスクラブのメンバーに挨拶した後、ベトナム語版の日本の漫画が大量にある休憩室(?)で待っていましたが、ここでたくさんのベトナムのチェスプレーヤーからチャレンジを受けることになりました。相手は私同様に大会の見学に来たプレーヤーや、試合の抜け番を貰ったプレーヤーだと思います。若いプレーヤーは勢いとやる気がとてもあり、私も刺激を受けることができました。
思い出せる限りで11試合指し、9勝1敗1ノーゲーム(途中で対抗戦の試合が始まったため、中断した) でした。また今週も彼らの活動があるそうなので、詳しい内容を聞ければまた足を運んでみたいと思います。ハノイにはひとまず12/26まで滞在し、その後でHong Kong Internationalに参加するため、香港へと向かう予定です。
2024/12/16
2024/12/13
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第37回予告
12月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、12/15(日) 20時からスタートです。
今年最後のYouTubeの講座テーマは『アドバンテージの変換』です。チェスには駒得、スペース、展開の早さなど様々なアドバンテージがあります。先月のテーマにしたダブルビショップも、典型的なアドバンテージとなりうるものです。今回はそうしたアドバンテージを、また違ったアドバンテージに変えていく試合の流れや、最終的に勝ちを決める方法を見ていこうと思います。
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第37回『アドバンテージの変換』|2024.12.15
今年最後のYouTubeの講座テーマは『アドバンテージの変換』です。チェスには駒得、スペース、展開の早さなど様々なアドバンテージがあります。先月のテーマにしたダブルビショップも、典型的なアドバンテージとなりうるものです。今回はそうしたアドバンテージを、また違ったアドバンテージに変えていく試合の流れや、最終的に勝ちを決める方法を見ていこうと思います。
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第37回『アドバンテージの変換』|2024.12.15
2024/12/08
有田セラミック・チェス大会2024
京都での大会終了後、下関、小倉と西に移動してきて、今日は1年ぶりの佐賀県有田町のチェス大会です。有田セラミック・チェス大会は伊万里チェスクラブが主催する非公式大会で、有田町の九州陶磁文化館で開催されるようになり、今年で3回目となります。私は一昨日、去年に続いての参加でしたが、福岡の北、小倉からの朝の移動は初めてで少し大変でした。
この大会の一番の特徴はほぼ全てのボードで、有田焼のチェスピースが使われていることです。有田焼のチェスピースは色味がどれも異なっており、プレーヤーは相談して好きなピースの置かれたボードに移動して指すことになります。ボード順が決まっておらず、様々な有田焼のチェスピースに触れられるのもこの大会の魅力です。公式戦ではこうはいきません。
今年は20名の参加者が集まり、10時45分の定刻から初戦が行われました。1-2Rはなるべく九州在住のメンバーと本州から遠征してきたメンバーを当てるようにします。私の初戦の相手は福岡の岡村さんで、2年前のこの大会最終戦以来の対戦となります。
白はNf3-Nh4のアイディアを使ってこなかったため、黒はビショップを退くマスを確保できました。これに対して面白いのはビショップを動かし直して交換を強制する手です。7. Bd3 Bxd3 8. Qxd3= もちろん互角の局面ですが、h7-h6を待ってからビショップをぶつけることで、6. Bd3 Bg6!?を避けて局面を単純化できます。
ビショップで取り返すのが自然だと思いましたが、ポーンを押し込んでスペースを拡大するアイディアが勝りました。5... dxe4! 16. Nd2 Nf6 17. Nc4 Bc7-+ 確かに黒はh6-h5-h4なども使って白キングにプレッシャーをかけられるのに対し、白は明確なプランを持ちづらい局面です。
試合後、岡村さんにはb3ではなくb4をカバーすべきで、そのためのナイトの正しいルートはNf3-Ne5-Nd3であることを指摘しました。本譜は明らかなナイトの使い方が消極的です。
バックランクは気にせず、c5のマスに利きを持ち、dポーンを早めにブロックできるd6のマスがクイーンの逃げ場所として勝ります。28... Qd6 29. Nxe7+ Rxe7
今年は20名の参加者が集まり、10時45分の定刻から初戦が行われました。1-2Rはなるべく九州在住のメンバーと本州から遠征してきたメンバーを当てるようにします。私の初戦の相手は福岡の岡村さんで、2年前のこの大会最終戦以来の対戦となります。
Okamura, M - Kojima, S
Arita Ceramic Chess Tournament 2024 (1)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bf5 5. Nc3 e6 6. Be2 h6 7. O-O
白はNf3-Nh4のアイディアを使ってこなかったため、黒はビショップを退くマスを確保できました。これに対して面白いのはビショップを動かし直して交換を強制する手です。7. Bd3 Bxd3 8. Qxd3= もちろん互角の局面ですが、h7-h6を待ってからビショップをぶつけることで、6. Bd3 Bg6!?を避けて局面を単純化できます。Arita Ceramic Chess Tournament 2024 (1)
7... Nbd7 8. b3 Bd6 9. Bb2 O-O 10. Rc1 Qe7 11. Re1 Rad8 12. cxd5 exd5 13. Bf1 Rfe8 14. g3 Ne4! 15. Nxe4 Bxe4
ビショップで取り返すのが自然だと思いましたが、ポーンを押し込んでスペースを拡大するアイディアが勝りました。5... dxe4! 16. Nd2 Nf6 17. Nc4 Bc7-+ 確かに黒はh6-h5-h4なども使って白キングにプレッシャーをかけられるのに対し、白は明確なプランを持ちづらい局面です。
16. Bg2 a5 17. a4 Nb8
b4の弱くなったマスを利用しようと考えましたが、少し時間がかかります。7... h51のようにキングサイドで動いても良かったでしょう。18. Bc3 Bb4 19. Bxb4 Qxb4 20. Nd2
試合後、岡村さんにはb3ではなくb4をカバーすべきで、そのためのナイトの正しいルートはNf3-Ne5-Nd3であることを指摘しました。本譜は明らかなナイトの使い方が消極的です。
20... Bg6 21. Nb1 Na6 22. Nc3 Qb6 23. Na2 Re7 24. Bf1 Nc7 25. Nc3 Ne6 26. Bg2 Rde8 27. Bxd5?!
次のNe6-Nxd4をどう受けるか悩む局面で、27. Rf1は指すのに対抗があるでしょう。本譜は私も考えていた手で、2ピースvs.2ポーン+ルークのマテリアルになります。点数上は白が勝るように見えますが、黒の2ピースが抑える白マスのコントロールは強力です。27... cxd5 28. Nxd5 Qd8
バックランクは気にせず、c5のマスに利きを持ち、dポーンを早めにブロックできるd6のマスがクイーンの逃げ場所として勝ります。28... Qd6 29. Nxe7+ Rxe7
29. Nxe7+ Rxe7 0-1
ここからという局面で白の時間が落ちました。黒が指しやすいと思っていましたが、d4-d5と押し込まれた局面は予想よりも簡単ではないようです。 初戦が終わると2階のカフェで昼食を取ります。食後のコーヒーやお茶は数種類の古伊万里のカップでいただくことができ、その説明も見ることができます。こちらは染付龍波楼閣文小椀という200年ほど前の古伊万里だそうです。 私たちが試合をしたのは九州陶磁文化館の1階ロビーで、そこからはガラス越しに庭園を眺めることができます。紅葉のちょうど良い時期ではありますが、庭園に出るにはコートを羽織らないと肌寒くもあります。 私は最初の3試合九州のメンバーと試合をし、最後に同じ関東からの遠征組である山口くんに勝って4連勝での優勝を決めました。有田セラミック・チェス大会は3年連続の優勝となりますので、とても嬉しいです。毎年恒例、有田焼の賞品はまだ開けていませんので、こちらは帰宅してからの楽しみにしたいと思います。参加者、運営の皆様、ありがとうございました。
ラベル:
Slav Defence,
国内大会
2024/12/03
Kyoto Gion Open 3 Day3
更新が遅くなりましたが、京都祇園オープン3は12/1の日曜日に最終日を迎え、無事に全試合を終了しました。私は5Rで野口さんに勝ったのは良かったものの、最終戦で木下さんに必勝のエンドゲームを落とし、4勝1敗1ドローの3位に終わりました。優勝は5勝1ドローの松村くんで、私以外のIM戦も危なげない内容でドローにしています。入賞者の皆さん、おめでとうございます!
最終日のゲーム解説は5Rにします。野口さんとはトータルのスコアは良いものの、昨年はジャパンオープンという大舞台で負けており、悔しい思いをしました。それ以来ほぼ1年ぶりの対戦となります。
11手でクイーンが消え、シンプルな局面になりました。ポーンが無く、ルークを使いやすいセミオープンファイルの場所が違うのがポイントなりそうです。
この手は少し気にしていましたが、c4を狙う手はさほど脅威ではありません。白はナイトでc4をカバーしつつ、白マスビショップをクイーンサイドに利かせます。
c4への反撃がもう少しありそうなら、b2-b3とするつもりでしたが、逆にc5のマスを使われた反撃が鬱陶しいでしょう。白は早めにb2-b4の形を決めておき、タイミングを見てb4-b5、c4-c5のいずれかを狙います。
ポーンはセンターに向かって取るが原則ですが、ここはf4に残ったポーンがターゲットになることを嫌い、さらにfファイルを開くことで将来的にf7を狙えるチャンスがあると考えました。
この試合で最も気に入っている手です。d6へのプレッシャーは緩和してしまいますが、代わりにナイトを守りつつ、Ne3-Nd5+をスレットにしています。
ここでルークを交換しておかなければ、Rf5-Rf4+から2つ目のルークも跳びこまれ、白キングが先にメイトされてしまいます。どちらのルークを残すか少し悩みましたが、a7のルークは7段目を抑える役割があるうえ、後でも別ファイルに動くことでaポーンの進路を確保できます。
1st Place Matsumura Cocoro (CM, JPN, 2036) 5.5/6
2nd Place Song Julien (IM, FRA, 2307) 5/6
3rd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2320) 4.5/6
4th Place Noguchi Koji (JPN, 1999) 4.5/6
5th Place Nagai Toshiyuki (JPN, 1806) 4.5/6
Kyoto Gion Open 3 Final Standings
2nd Place Song Julien (IM, FRA, 2307) 5/6
3rd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2320) 4.5/6
4th Place Noguchi Koji (JPN, 1999) 4.5/6
5th Place Nagai Toshiyuki (JPN, 1806) 4.5/6
Kyoto Gion Open 3 Final Standings
最終日のゲーム解説は5Rにします。野口さんとはトータルのスコアは良いものの、昨年はジャパンオープンという大舞台で負けており、悔しい思いをしました。それ以来ほぼ1年ぶりの対戦となります。
Kojima, S (IM, JPN, 2320) - Noguchi, K (JPN, 1999)
Kyoto Gion Open 3 (5)
1. d4 g6 2. g3 Bg7 3. Bg2 c5 4. dxc5 Qa5+ 5. c3 Qxc5 6. Nf3 Nf6 7. O-O O-O 8. Na3 d6 9. Qa4 Nc6 10. Qh4 Qh5 11. Qxh5 Nxh5
11手でクイーンが消え、シンプルな局面になりました。ポーンが無く、ルークを使いやすいセミオープンファイルの場所が違うのがポイントなりそうです。 Kyoto Gion Open 3 (5)
12. Rd1 Rb8 13. Nb5 Bd7 14. a4 Rfc8 15. Be3 a6 16. Nbd4 Na5
この手は少し気にしていましたが、c4を狙う手はさほど脅威ではありません。白はナイトでc4をカバーしつつ、白マスビショップをクイーンサイドに利かせます。
17. Nd2 Nf6 18. Nc2! Bc6 19. Ba7 Ra8 20. Bb6 Bxg2 21. Kxg2 Nc4 22. Nxc4 Rxc4 23. Ne3 Rc6 24. a5 e6 25. c4
24... Nd7 25. Nd5!は白がd5のマスを早めに活用し、指しやすそうです。黒はそれを嫌ってe7-e6を突き、d5のマスを抑えますが、代わりにd6を弱めています。白はそこにつけこみ、c4まで伸ばしたポーンでd5のマスを抑えつつ、d4-c3にビショップを退けるようにします。25... Nd7 26. Bd4 Bxd4 27. Rxd4 Kf8 28. Rad1 Ke7 29. b4
c4への反撃がもう少しありそうなら、b2-b3とするつもりでしたが、逆にc5のマスを使われた反撃が鬱陶しいでしょう。白は早めにb2-b4の形を決めておき、タイミングを見てb4-b5、c4-c5のいずれかを狙います。
29... Nf6 30. g4! h6 31. h4 Rb8 32. f4
g5までポーンを突き進めてポーン交換が行った際に、hファイル、fファイルをどちらも開けるようにしておき、さらにg5に残ったポーンを守れるようにしておきます。32... b6 33. g5 hxg5 34. fxg5!?
ポーンはセンターに向かって取るが原則ですが、ここはf4に残ったポーンがターゲットになることを嫌い、さらにfファイルを開くことで将来的にf7を狙えるチャンスがあると考えました。
34... Nh5?!
f4にターゲットになるポーンが無くなった以上、端にナイトが跳ぶのは不自然です。34... Ne8! 35. axb6 Rbxb6! 36. c5 Rb7!=ならば7段目への白ルークの侵入を防ぎつつ、d6も守り駒の数がぴったり足りて形勢互角でした。35. b5 axb5 36. cxb5 Rc3 37. Re4!
この試合で最も気に入っている手です。d6へのプレッシャーは緩和してしまいますが、代わりにナイトを守りつつ、Ne3-Nd5+をスレットにしています。
37... Rb3 38. Nd5+ Kd8 39. Nxb6 Rxb5 40. Rxd6+
この試合、初めてマテリアルのリードを取りました。後は黒の反撃を抑えつつ、aポーンを武器に決め手を探します。40... Ke7 41. Rd7+ Ke8 42. Ra7 Rd8 43. Rc4 Rf5 44. a6! Nf4+ 45. Kh2 Nxe2 46. Rc8!
ここでルークを交換しておかなければ、Rf5-Rf4+から2つ目のルークも跳びこまれ、白キングが先にメイトされてしまいます。どちらのルークを残すか少し悩みましたが、a7のルークは7段目を抑える役割があるうえ、後でも別ファイルに動くことでaポーンの進路を確保できます。
46... Rf2+ 47. Kh3 Rf3+ 48. Kg2 Rb3 49. Rxd8+ Kxd8 50. Rd7+ Ke8 51. Rb7 Nf4+ 52. Kf1 Rb1+ 53. Kf2 Nd3+ 54. Ke3 Ne5 55. a7 Rxb6 56. a8=R# 1-0
ブダペストから4大会、FIDE公式戦の大会はレイティングプラスで終わっていたので、この流れでさらにレイティングを戻したかったですが、今回はさすがにマイナスです。次のFIDE公式戦の大会は、年末年始のHong Kong Internationalに参加する予定ですので、そちらではまた良いゲーム、良い結果を出せるように頑張ってきます。今大会も運営、参加者の皆さん、ありがとうございました。 参加者全員の参加記念品は、チェス柄のネクタイをいただきました。良い本は早い者勝ちでしたが、残っていたこちらも嬉しいです。 京都を発った後は山口県下関市に来ています。こちらで週末まで過ごし、日曜日は佐賀県有田市の非公式大会に参加します。
ラベル:
Modern Defence,
国内大会
2024/11/30
Kyoto Gion Open 3 Day2
京都祇園オープン3の2日目です。この日も各ボードで熱戦が繰り広げられました。今夜は午前のラウンドで指した試合をお届けします。京大チェスサークルの柳井くんとは、昨年私が鴨川を散策していたところを捕獲されてからの付き合いで、公式戦では初対戦となります。
Kojima, S (IM, JPN, 2320) - Yanai, Y (JPN, 1879)
Kyoto Gion Open 3 (4)
1. d4 c6 2. c4 d5 3. Nc3 Nf6 4. e3 e6 5. Nf3 Nbd7 6. Qc2 b6 7. b3 Bd6!?
黒が早くクイーンサイドフィアンケットを決める変化では、7... Bb7 8. Bb2 Be7と低く構えるのが一般的です。黒からe6-e5の早いブレイクが無いことを利用し、私もBf1-Bd3の高くビショップを組む形を決めます。Kyoto Gion Open 3 (4)
8. Bd3 Bb7 9. O-O O-O 10. Bb2 Re8 11. Rad1 c5 12. cxd5 exd5 13. Qb1
将来的にc8にくるであろうルークを気にし、早めにクイーンを下げておくことにしましたが、13. Bf5!のほうが良かったと思います。g7-g6を気にしましたが、それならばa1-h8ダイアゴナルを弱くなり、本譜のようにナイトをg3に運ぶ必要が無くなります。
13... a6 14. Ne2 Rc8 15. Rc1 Ne4 16. Ng3 g6
Ng3-Nf5を止めますが、このナイトの跳びこみがどこまで効果的だったかは自信がありません。ポーンの形を決めずに16... Ndf6とする手もありました。17. dxc5 Ndxc5 18. Be2?!
IQPになった時点で白マスビショップを早めに諦める手もありました。18. b4! Na4 (18... Nxd3 19. Qxd3+/-) 19. Bd4 Nac3 20. Qb3と進んだ場合、黒は孤立のd5とa1-h8ダイアゴナルの弱さが気になります。
18... Qe7 19. Bd4 b5 20. Rc2 Ne6 21. Ba1 f6
ここはa1-h8を気にしてくれたのがありがたかったです。直前にルークをc2に上げた手は緩手で、ここで21... Rxc2 22. Qxc2 Rc8 23. Qd3くらいで黒はcファイルを抑えることに切り替え、十分な局面に思えます。22. Rxc8 Rxc8 23. Rc1 Rxc1+ 24. Qxc1 N4g5 25. Nxg5 Nxg5 26. Bd3
g3のナイトを組み直すためにe2のマスを空けますが、全く違う方向性もありえました。26. h4 Ne4 27. Nxe4 dxe4 28. a4! こうしてb5を崩し、c4のマスを奪ってa2-g8ダイアゴナルを利用するアイディアも有力です。
26... Be5 27. Ne2 Ne6 28. h3 Kg7 29. a3?!
b4まで白からポーンを伸ばして待つつもりでしたが、甘い手でした。少し気は進まないですが、29. Nd4 Nxd4 30. Bxd4 Bxd4 31. exd4+/=として白マスビショップの働きの差で満足すべきです。29... Bxa1?!
黒からのビショップ交換はd4のアウトポストを抑えづづけられるためにありがたいです。29... Qc5!としてクイーン交換を迫れば、白はa1の浮きビショップが困っています。
30. Qxa1 Nc5 31. Bc2 Qc7 32. Nf4 Qd6 33. Qd4!+-
ずっとおとなしかったクイーンをようやく好位置に運ぶことができました。33... Bc6??
最後のタクティクスの見落としは時間切迫で仕方がありませんが、33... Ne6 34. Qa7 Nd8 35. b4+-でもNf4-Nc5が厳しい状況です。
34. Qxc5 1-0
午後は松村くんとの大事な全勝対決でしたが、ひどい勘違いであっさり負けてしまい、この日は1勝1敗で一歩後退です。気を取り直して明日の最終日も頑張ります。Kyoto Gion Open 3 R5 Pairings
2024/11/29
Kyoto Gion Open 3 Day1
本日から京都の知恩院和順会館で、京都祇園オープン3が始まりました。3年前は参加できませんでしたので、私にとって京都での大会は今回が初めてです。3日間で6試合を指す今大会には、海外からの参加者も含めて47名が集まっています。
昨年不調だったチェコの最終戦では、12. Qb3でドローオファーされてすぐに受けました。今日は12... Qb6と返し、クイーン交換になってもゲームをするつもりでした。
Qd1-Qc2セットアップの良い点は、黒が慌ててe6-e5ブレイクを行うとg6を取れることにあります。白からビショップを退く手はf7のピンが消えてe6-e5がすぐできるようになるうえ、d3の位置は将来的にナイトやルークのターゲットになりえます。
クイーンが退いたことで黒マスビショップがg3のナイトに直射していることを見落としています。20... Nf1か20...Ne2と退いて互角の形勢だったでしょう。
アウトポストであるc5にナイトを切り替え、b7を守るのが良いアイディアで、白からの反撃を許しません。
Takayasu, N (JPN, 1756) - Kojima, S (IM, JPN, 2320)
Kyoto Gion Open 3 (1)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. e3 e6 7. Bxc4 Bb4 8. O-O O-O 9. h3 Nbd7 10. Nh4 Bg6 11. Nxg6 hxg6 12. Bd2
昨年不調だったチェコの最終戦では、12. Qb3でドローオファーされてすぐに受けました。今日は12... Qb6と返し、クイーン交換になってもゲームをするつもりでした。 Kyoto Gion Open 3 (1)
11... a5 13. Qc2 Qe7 14. Rfd1 Rfd8 15. Bd3?!
Qd1-Qc2セットアップの良い点は、黒が慌ててe6-e5ブレイクを行うとg6を取れることにあります。白からビショップを退く手はf7のピンが消えてe6-e5がすぐできるようになるうえ、d3の位置は将来的にナイトやルークのターゲットになりえます。
15... e5! 16. dxe5 Qxe5 17. Ne2 Bd6!?
ダブルビショップを持たせている黒にとって、黒マスビショップの交換はありがたいことです。17... Nc5 から黒マスビショップ交換を受け入れて、d3のビショップをすぐ狙う手も良かったでしょう。ただし私はh2-h3をすでに白が突き、少し黒マスが弱くなっていることを利用し、黒マスビショップを残して白キングへのダイレクトアタックのチャンスを探すことにしました。18. Ng3 Nc5 19. Bc3 Qe7 20. Be2?
クイーンが退いたことで黒マスビショップがg3のナイトに直射していることを見落としています。20... Nf1か20...Ne2と退いて互角の形勢だったでしょう。
20... Bxg3 21. fxg3 Qxe3+ 22. Kh2 Nce4 23. Bf3?!
見落としでe3を落としてしまったのは仕方がないとして、この1ポーンダウンを粘るためには白はピースをなるべく残すべきです。23. Be1と退いてg3を受けるほうが良かったでしょう。23... Nxc3 24. Qxc3 Qxc3 25. bxc3 Nd7!
アウトポストであるc5にナイトを切り替え、b7を守るのが良いアイディアで、白からの反撃を許しません。
26. Rab1 Nc5 27. Rxd8+? Rxd8 28. Rd1? Rxd1 29. Bxd1 b5 30. axb5 cxb5 31. Bc2 a4 32. g4 a3 33. Bb1 Na4 0-1
2つのルークを交換してもらえたのも黒にとっては一直線に勝ちのエンドゲームに入る楽な展開です。いずれにせよ黒が勝勢ですが、27. Rd4のような手で粘るべきでした。2戦目は相手の近くで不戦勝となり、初日は8人いる連勝者のうちの1人となっています。2日目も頑張ります。Kyoto Gion Open 3 R3 Pairings
紅葉が見頃を迎える京都は多くの観光客でにぎわっており、和順会館隣の平山公園でも、レンタル着物で記念写真を撮る人を多く見かけました。
ラベル:
Slav Defence,
国内大会
2024/11/23
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第36回予告
11月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、11/24(日) 20時からスタートです。
11月のYouTubeの講座テーマは『ダブルビショップ』です。ビショップは一般的に白マス黒マスがどちらも揃っており、両方の色のマスを抑えられると強く働きます。そのようなビショップが2つある状態をダブルビショップ、またはビショップペアと呼びます。今月の講座では、ダブルビショップがどのような強さを発揮するかや、相手にダブルビショップを持たれた際にどのように対抗するか、またダブルビショップの意外な弱点などを紹介していこうと思います。
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第36回『ダブルビショップ』|2024.11.24
11月のYouTubeの講座テーマは『ダブルビショップ』です。ビショップは一般的に白マス黒マスがどちらも揃っており、両方の色のマスを抑えられると強く働きます。そのようなビショップが2つある状態をダブルビショップ、またはビショップペアと呼びます。今月の講座では、ダブルビショップがどのような強さを発揮するかや、相手にダブルビショップを持たれた際にどのように対抗するか、またダブルビショップの意外な弱点などを紹介していこうと思います。
プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第36回『ダブルビショップ』|2024.11.24
2024/11/05
Japan Open 2024 Day4
1日遅れですが、ジャパンオープン最終日のレポートです。最終戦の中継トップ4ボードは全て決着がつきました。1Bは黒の青嶋くんが南條くんに勝ち、2Bは白のHafizさんがLiuさんに勝ち、3Bは黒の私が奥野くんに勝ち、4Bは黒の中原くんがFengさんに勝ちました。単独トップだった南條くんが陥落し、6Pが4人並ぶ混戦となりましたが、細かなタイブレーク争いを制したのは青嶋くんでした。入賞者の皆さん、おめでとうございます! (6Pで上位3人と並んでいた中原くんは、2byeで入賞から外れており、Chess Resultsの発表と異なっています。 )
最終戦、私は奥野くんと2年ぶりの対戦になりました。奥野くんは現在パナマ籍ではありますが、岡部くん、松村くんと並び、日本人のジュニアとしてトップクラスの力を持つプレーヤーです。6RではインドネシアのIM Hafizさんとタフなゲームの末にドローを取っており、私も気合を入れて試合に臨みます。
1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2372) 6/7
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2320) 6/7
3rd Place Hafiz Arif Abdul (IM, INA, 2376) 6/7
4th Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2361) 5.5/7
5th Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2189) 5.5/7
Japan Open 2024 Final Standings
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2320) 6/7
3rd Place Hafiz Arif Abdul (IM, INA, 2376) 6/7
4th Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2361) 5.5/7
5th Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2189) 5.5/7
Japan Open 2024 Final Standings
最終戦、私は奥野くんと2年ぶりの対戦になりました。奥野くんは現在パナマ籍ではありますが、岡部くん、松村くんと並び、日本人のジュニアとしてトップクラスの力を持つプレーヤーです。6RではインドネシアのIM Hafizさんとタフなゲームの末にドローを取っており、私も気合を入れて試合に臨みます。
Okuno, R (PAN, 2007) - Kojima, S (IM, JPN, 2320)
Japan Open 2024 (7)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 a6!?
オリンピアード用に調べていたのは、Tal Variationに対してa7-a6と指すアイディアです。4... h5が圧倒的人気でどこでも勧められおり、私も何度か指していますが、4...h6、4...Qc7のような手も試してきました。黒は白がg2-g4と指してきた際にd7にビショップを退き、c6-c5から反撃を試みます。
5. c4 dxc4 6. Bxc4 e6 7. Nc3 h6
このアイディアを試してきたということは、奥野くんのメインの準備は4... h5 5. c4 e6 6. Nc3 dxc4だったのではないかと予想います。本譜もこれに似ていますが、h6でポーンを止めている分、g5のマスを白に使われる心配がありません。
8. Nge2 Ne7 9. Ng3 Bh7 10. a3 Nd7 11. Nce4 Nf5 12. Nxf5 Bxf5 13. Ng3 Bh7 14. Qg4 Nb6 15. Be2
ビショップの退くマスは少し意外でした。黒のビショップがBh7-Bd3と来てキャスリングを妨害することを嫌ったようですが、d3の位置のビショップは浮いていて狙われやすく、私はこう指す気はありませんでした。白としては白マスビショップがd5の利きから完全に外れ、d5のアウトポストを黒に使われやすくなるほうが気になります。15. Ba2と指して何も問題無いと思います。
15... Nd5 16. O-O Qb6 17. Bc4 O-O-O 18. Bxd5?
d5のナイトは強いですが、これを焦ってビショップで交換するのは戦略上正しくありません。g3のナイトでd5のマスをコントロールするのは手間がかかるため、白はd5の利きを一時的にでも0にしてしまうと、黒がこの重要なマスを使ったプレーをしやすくなってしまいます。18. h5 Rg8くらいが自然な流れだと考えていました。
18... Rxd5 19. Be3 Qxb2! 20. Qf3 Rd7 21. Ne4 Bxe4
21... Bxa3とさらにポーンを取る手もあったようですが、私は白マスビショップでナイトを早めに消すのが分かりやすいと考えました。b1のマスを抑える利きが消えることで、白ルークがb1にきて黒キングへの攻撃チャンスが生まれますが、それを守り切る時間は十分にあります。
22. Qxe4 Qb5 23. Rfb1 Qd5 24. Qd3 Be7
h4を当てるテンポはありがたいと思いましたが、ピンを利用して24... Bc5! 25. Rd1 Ba7-+と指す手がビショップが攻守に利き、最もシンプルだと指した後にすぐ気づきました。とは言え、本譜も十分強い手です。
25. Rb3 Kb8?
ここでキングをどう守るか、方向性を間違えました。a7にキングを置くプランは黒マスビショップの利きに入って危なそうですが、クイーンがしばらくd5を抑えていれば大丈夫で、キングがa6を直接守ることで、Rb3-Rb6-Rxa6のようなルークサクリファイスのアイディアを止めやすいと考えました。しかし、実際には2手かけてしまうのは勿体なく、もっとシンプルな手がありました。25... Bxh4 26. Rab1 c5! 27. Rc1 Be7!-+ c6-c5はキングがc8にいる状況では指しづらいと思っていましたが、d3のクイーンの存在でピンになっているため、問題ないようです。
26. Rab1 Ka7 27. Qc3 Bxh4?!
ポーンを取る余裕はあると思ったのですが、c5の利きを外すのは少し危険でした。27... f5! 28. Qb2 b5として守るか、b7-b5と崩さずに済む選択肢を探すべきでした。
28. a4
28. Qb2! Rb8 (28... b5 29. Rc1! Be7 30. Rxc6!) 29. Rb6 Bd8 30. Rxc6 b6 31. Rbc1と進んだ場合、白に余計なチャンスを与えてしまっています。
28... Rc8?
これでc6-c5をゆっくり準備しつつ、次にBh4-Bd8と退いた際に万全のディフェンスができると考えていました。28... Rb8!-+が正しいルーク位置で、早めにb7を守ることで白にチャンスを与えません。
29. Qb2! b5 30. Qc3 Kb7?
白のクイーンがb2に下がって巨大な砲台を作るアイディアを見落としていました。さらにここはルークの正面にキングを置くアイディアがおかしく、30... Rb8! 31. Rc1 Be7 32. Qxc6 bxa4 33. Rxb8 Qxc6 34. d5+ Kxb8 35. dxc6 Rd5-+とするくらいで十分でした。
31. axb5 cxb5 32. Qa5 Ra8!
ここは正確なディフェンスが求められます。クイーンが落ちそうな黒は2ルークvs.クイーンの構図で勝負したくもありますが、32... Rcc7? 33. Rxb5+ axb5 34. Rxb5+ Qxb5 35. Qxb5+ Kc8 36. Qa4+/-と進んだ際、クイーンの8段目から潜り込みからf7,g7あたりを狙われるのが厄介です。
33. Rxb5+ axb5 34. Rxb5+ Kc8 35. Rc5+ Kb8 36. Rxd5 Rxa5 37. Rxd7 Ra7 38. Rd8+??
ドローのエンドゲームを覚悟した直後に白がひどい見落としをしました。38. Rxa7 Kxa7 39. d5+ Kb7 40. dxe6 fxe6=ならばドローです。
38... Bxd8 0-1
なかなか珍しいただ取りで決着がつきました。たまたまではありますが、昨年のジャパンオープンでは中原くん、今年の全日本では米満くん、ジャパンチェスクラシックスではCharronくん、そしてこのジャパンオープンでは奥野くんと、ここ最近の大きなトーナメント最終戦では、力をつけてきた若いプレーヤーと対戦が続いています。そしてその全てで黒番を引き、Caro-Kannを使って全勝しています。少しCaro-Kannで悩んでいた時期もありますが、今はこの頼りになる武器を、多少のラインのマイナーチェンジのみでさらに磨いていければと思っています。
最後になりましたが、今回の大会もお疲れ様でした。名古屋の地で150名近い参加者を20か国以上から集め、大会を成功させた連盟の運営スタッフ、名古屋チェスクラブ、スポンサーの皆様に感謝いたします。次は今月末の祇園オープンに参加しますので、今大会に参加されなかったプレーヤーとの交流も楽しみにしています。
名古屋チェスクラブが用意してくれた名古屋お土産セットは豪華すぎです! ゆっくりいただこうと思います。
Japan Open 2024 (7)