2012/09/10

Istanbul Chess Olympiad 11th round and Final Result


アルメニアを優勝に導き、国旗を掲げるエースのAronian(中央)

長かったイスタンブールオリンピアードも、終わってみればあっという間だったような気がします。昨日、最終ラウンドと閉会式を迎え、11試合の戦いに幕が下りました。優勝は4年ぶりの王座を奪回したアルメニアで、ここ4大会で3回優勝という、とてつもない記録です。今年も大将を務めたアロニアンは、クラムニクにこそ黒で敗れたものの、白で勝ち星を積み重ね、チームの優勝に大きく貢献しました。

2位はリストトップのロシア。カスパロフが抜けてから毎回優勝を逃しており、今年も悲願達成とはいきませんでした。選手層の厚さでは間違いなく世界一の大国も、オリンピアードでは苦戦を強いられています。

3位に続いたのは、前回優勝国のウクライナ。大将のイヴァンチュクは前大会ほどではないにしろ、十分すぎる働きをしたでしょう。最終戦ではトップを走る中国を3-1 で沈めての逆転入賞となりました。

私たち日本チームは、エジプト、ボリビア、マレーシアに次いで、最後のモナコ戦も2.5-1.5 で敗れ、123位に終わりました。これは私たちとしても、日本で結果をチェックしていたチェスファンとしても、とても満足できる結果ではないでしょう。過去最高レイティングのチームでありながら、どうしてこうなったかの分析は難しいと思いますが、それを考える前に、先に男女の最終試合の結果を載せておきましょう。

Monaco - Japan 2½:1½


54.1 GM Efimov, Igor 2416 - CM Nanjo, Ryosuke 2316 1 - 0
54.2 Villegas, Pierre 2249 - FM Watanabe, Akira 2278 ½ - ½
54.3 FM Van Hoolandt, Patrick 2171 - Averbukh, Alexander 2211 0 - 1
54.4 Nelis, Jean-Francoise 2207 - CM Iwasaki, Yudai 2137 1 - 0

先日の記事で書いたとおり、南條くんのIM ノーム獲得チャンスを残すため、あえて私が試合を抜け、彼を1番ボードで戦わせました。結果は残念でしたが、私はこの決断自体は間違いではなかったと思っています。

Botswana - Japan 0 : 4


52.1 WIM Modongo, Boikhutso 1862 - Ishizuka, Mirai 1839 0 - 1
52.2 WFM Lopang, Tshepiso 1838 - WCM Nakagawa, Emiko 1798 0 - 1
52.3 WCM Sabure, Ontiretse 1682 - Hasegawa, Emi 0 0 - 1
52.4 Leso, Gorata Brandy 1631 - Kikuchi, Arisa 0 0 - 1

女子はボツワナに全勝で、最後は美しく締めたと思います。ライブで見ていた私は石塚さんがMate in two に追い込まれたり、中川さんがシーソーのように傾くエンドゲームをしているのを見て、実にハラハラしました(笑)下2人は全く問題なく、きっちり勝ったと言える内容でした。


試合後にゲームを振り返る日本チーム。暁さんからは愛の鞭

今大会のオリンピアードは、かつてなく厳しい当たりだったと私は考えています。明日の記事でも触れようと思っていますが、日本が確実に勝てる国というのは、2R のブルンジしかなかったと言えるでしょう。さらには私は2350以下のプレーヤーと対戦する機会がなく、大将として参加した3回のオリンピアードの中で、対戦相手の平均レイティングも飛び抜けて高かったです。

相手が強かったから順位が低かったのだと、これだけを言ってしまうと、まるで言い訳のようです。しかし、格上から連日ポイントを取って、大いに盛り上がった4年前のドレスデンオリンピアードも、アフガニスタンやホンジュラス、ボツワナといった、順当に日本が勝てるであろう国とも対戦していることが、最終的な順位アップに繋がっていることは間違いありません。単純な最終順位だけを比較して、今回はダメだというのは、何かがおかしいはずです。

それでも私としては、このチームならばもう少し上を目指したかったと思います。最後の4戦とも相手は強かったですが、16試合で1勝しかできない相手ではなかったはずです。ドレスデンの前のように、個々のトレーニングだけでなく、チームとして集まって研究をしたりトレーニングをしたりすべきだったというのは、私が思う反省点です。もちろん、私が一人ハンガリーにいたので、そう簡単ではないのですが...

そしてチームとしてどうするかとは別に、私が決して忘れないようにしていることは、個人として負けるのは実力が足りないから、ということです。私がMok-Tze Meng とのポーンエンディングを間違えたのも、南條くんがEfimov にピースを取られたのも、はっきり言ってしまえば、私たちがまだまだ弱いからです。私たち2人がこれから、日本のトップとしてIM を目指す以上、2300後半から2400台のプレーヤーを、いつまでも格上とは言っていられません。今後も上を目指す以上、実力をつけて、彼らに勝つしかないのです。


最後のボツワナ戦に臨む日本女子チーム

ただ、今年のオリンピアードチームでは、明るい材料もいくつかありました。女子チームは最初の2戦で8敗し、どうなることかと思いましたが、最終的には全員が2.5P以上を獲得し、長谷川さんとカレンちゃんの2人が勝率5割を達成しました。私の記憶違いかもしれませんが、この戦績によって2人にはレイティング2000と、WCM のタイトルが与えられるはずです。2人とも、おめでとうございます!

さらに今年は男女チームの仲が非常に良く、チームとしてよくまとまっていたことも挙げておきましょう。私はオリンピアード前には、暁さんのスパルタが炸裂して、女子が泣きだすのではないかと心配していましたが(笑)、そんなことは決してなく、下の子供たち2人にも懇切丁寧にチェスの指導をしていました。(+南條くんも)最初から最後まで、負けが込んでいる時でも、日本チーム全体の雰囲気はとても良かったと思っています。

私の記事が自分のゲーム解説中心になっており、こういったチーム状況をお伝えするのが最後の最後になってしまったことは、大変申し訳なく思います。次回のノルウェーでのオリンピアードでは、今度こそエースとして、プレー内容で日本の男子チームを率いるとともに、再び一丸となって戦えるチーム作りというものを目指していきたいと思っています。今大会はふがいない戦績でしたが、また次回以降も応援を続けていただければ幸いです。

明日はエジプト戦のチーム編成について振り返るとともに、チームとして何を1番に目指すべきなのかということを考えてみようと思います。

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