レストデイ明けの6R は、日本とリストが近いウェールズとの対戦です。ウェールズと言えば、2003-2005年頃まで、元代表のPeter Varley が日本に滞在し、積極的にプレーしていたことを思い出します。彼は帰国した後もチェスを続け、昨年、FM のタイトルを獲得しました。今年のウェールズ代表チームで、副将を務めてもおかしくない程の実力があります。
ウェールズという国自体は、日本よりもチェスのレベルが高いと思いますが、今大会の代表は大将のみIM で、他はノンタイトルです。私さえ崩れなければ、十分に勝ちのチャンスはあると考えていました。それではさっくりと結果から。
Japan - Wales 3 : 1
46.1 FM Kojima, Shinya 2282 - IM Jones, Richard 2393 ½ - ½
46.2 CM Nanjo, Ryosuke 2316 - Kett, Tim 2237 1 - 0
46.3 FM Watanabe, Akira 2278 - Dineley, Richard 2259 ½ - ½
46.4 Averbukh, Alexander 2211 - Brown, Thomas 2104 1 - 0
私はさっくりドローにして、残りボードの結果待ちでしたが、黒を持った2人がしっかり勝って、2R 以来、待望のチームとしての勝利です。このラウンドでAlex は初勝利、南條くんが3連勝です。それにしても南條くんは強いですね。普通にここまではIM ノームを余裕でクリアするペースです。
Japan - Mozambique 1 : 3
51.1 Ishizuka, Mirai 1839 - Vilhete, Vania Fausta 1816 0 - 1
51.2 WCM Nakagawa, Emiko 1798 - Castro, Neusa Aridas De 0 0 - 1
51.3 Hasegawa, Emi 0 - Malenda, Ana 0 ½ - ½
51.4 Kikuchi, Arisa 0 - Da Silva, Jesse Mitchel 1512 ½ - ½
女子は上2人が崩れて、モザンビークに敗れました。石塚さんは開幕5連敗で、まだ脱出口が見えません。ここを堪えて、何かしら浮上のきっかけを掴んでほしいと思います。それでは私の試合解説へ。
Kojima, S (FM, JPN, 2282) - Jones, R (IM, WLS, 2393)
40th Chess Olympiad (6)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. e3 e6 7. Bxc4 Bb4 8. O-O O-O 9. Qe2 Bg6!?
40th Chess Olympiad (6)
ハンガリーでも何度か実戦経験のある、Slav Classical ですが、 9...Nbd7、 9...Bg4 に続く、第3のライン登場です。黒で指そうと研究したこともあります。
10. Ne5 Nbd7 11. Nxg6 hxg6 12. Rd1
ここは慌ててe3-e4 を突かず、d4 のポーンを守るのが鉄則です。
12... Qa5 13. e4! e5
黒がc3 のポーンを取った場合、白はダブルビショップとb7へのプレッシャーで戦うことができます。13... Nb6 14. Bb3 Bxc3 15. bxc3 Qxc3 16. Rb1 Qb4 17. Rd3 Rfd8 18. Bd2 Qe7 19. a5 Nc8 20. Bg5 e5 21. dxe5 Rxd3 22. Qxd3 Qxe5 23. Bxf7+ Kxf7 24. Qb3+ Ke8 25. Bxf6 gxf6 26. Qxb7 Rb8 27. Qxb8 Qxb8 28. Rxb8 Kd8 29. Rb7 a6 30. h4 1-0 / Zoler,D - Benitah, Y / Neum 2000
14. d5 Nb6 15. dxc6 bxc6 16. Bd3
この辺りまでが私の研究です。白はなるべくa2-g8 のダイアゴナルをキープしておきたいですが、b3 にビショップを退くと、それ自体が浮いてしまい、c3 を取られた際のことを心配しました。
16... Rfd8 17. Be3 Nbd7
このような変化でドローになったゲームもあるようです。17... Bc5 18. Bd2 Bb4 19. Be3 Bc5 20. Bd2 Bb4 1/2-1/2 / Bacrot, E - Almasi, Z / Szeged 2000
18. Bc4
次に黒がNd7-Nc5 を画策していることは明らかなので、e4 とc3 を気にしつつ、手を作るのにはどうしたら良いか考えました。色々悩んだ末に選んだのは、ビショップをベストのダイアゴナルに戻すことです。黒がf8 のルークをすでに動かしているので、f7 へのアタックから手を作れるのがポイントです。(例えば、黒がc3 を取った場合、Qe2-Qa2 としてf7 を攻撃する。)
18... Nb6
予想の範囲内ではありましたが、黒はナイトを戻してビショップをアタックします。b3 に退く変化も考えましたが、やはりビショップ自体が浮くのを気にし、ドローで落ち着くことにしました。
19. Bd3 Nbd7 20. Bc4 Nb6 21. Bd3 1/2-1/2
30手以内のドローオファーが禁止されている今大会ですが、3回同一局面はもちろんドローです。1時間と少しでのフィニッシュとなりました。
この日、ウェールズに勝ったことで、日本の男子チームは戦績を2勝2敗2ドローのタイに戻しました。現在順位は74位で、スタート順位の92位から大幅に上げています。南條くんの活躍が大きいことは、言うまでもないでしょう。
そして今日は男子がアルジェリア、女子がイラクとの対戦です。両チームとも大将のレイティングが跳び抜けて高いチーム(アルジャリアの大将は2400台のIM、イラクの女子大将は2100台のWIM です。)なので、私と石塚さんは非常に苦労しそうですが、なるべく良い報告ができるよう頑張ります! ちなみにアルジェリアの女子チームはとても親日的なので、試合前に何らかのアクションがあると予想します。ポルトガル戦の前にも、一緒に記念撮影をしました。
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