全日本選手権は昨日最終日を終えましたが、こちらのブログの更新が追い付いていないので4日目のレポートからお届けします。5/6が7人並んで大混戦で迎えた4日目、私は1Bに初めて上がり、Tuさんとの直接対決に臨みました。Tuさんには昨年のジャパンチェスクラシックスで勝っていますが、全日本選手権ではこれまで勝ち星がありません。
Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Tran, T T (CM, JPN, 2389)
Japan Chess Championship 2024 (7)
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 c5 7. dxc5 Bxc5 8. a3 Nc6 9. Qc2 Qa5 10. Rd1 Be7 11. Be2 Ne4!?
TuさんとQGDのオーソドックスな変化を指すことになるとは思いませんでした。11手目のナイト跳びこみは白のクイーンサイドのポーンストラクチャーを崩す古くからある手ですが、トップレベルではさほど評価されていないと考えていたため、Tuさんのチョイスとしては意外でした。近年見直されているかもしれないので、少し調べてみるつもりです。 Japan Chess Championship 2024 (7)
12. cxd5 Nxc3 13. bxc3 exd5 14. O-O h6 15. a4
実はこの変化は1週間前、シモキタ名人戦の同時対局で全く同じ局面を持っています。その時はb1のルークを先にまわしましたが、試合後にaポーンを突き直して取られないようにする手順が正確であると確認していました。
16... Rd8 16. Rb1 Bd6 17. Bxd6 Rxd6
この辺りの数手はTuさんがすぐ指してきたので、準備手順だったのだと思います。白のクイーンサイドのポーンの乱れをどう評価するかは難しいところですが、基本的にはIQPポジションの考え方を使い、d5を攻める、d4のマスを抑えるアイディアを上手く使いながら試合を進めていきたいところです。18. Rfd1 a6 19. h3 Rb8 20. Nd4 Bd7 21. Rd2!?
ここは少しどう進めるか悩みました。すぐにc6でナイト交換をすれば、c3への早い反撃を助けてしまうことになります。黒のナイトがc6から捌ければRb1-Rb4がa4を守りながらb,dファイルにルークを重ねる準備になるため、少し様子を見ることにしました。
21... Ne7 22. Rb4 Qc7 23. Qb3 Nc6!
一度交換を避けたナイトを戻し、局面を単純化するのは黒にとって安全策です。白はb4のルークの逃げ場がないため、ナイト交換に応じるほかありません。24. Nxc6 Rxc6 25. Qxd5 Be6 26. Qe4 Rxc3 27. Rdb2??
自分で指しておきながら、あまりにひどいブランダーで驚きました。バックランクを受けるのは消極的かつ、すぐには必要ないと思ったのでb7を先に攻撃しておき、様子を見るつもりでした。しかし、ここで黒ルークのバックランク侵入を許すことは、決定的なチャンスを黒に与えることになります。ルークをd1に下げる手もありますが、27. f4!? くらいでh2のマスをカバーし、キングが上がれるようにしておいたほうが良かったでしょう。e3が弱くなるため好みではないと感じていましたが、バックランクをカバーできるメリットのほうが大きいうえ、本譜でもどうせ指すことになる手です。
27... Rc1+ 28. Bf1 Rd8!
b7を無視して2つ目のルークをバックランクに突入させるアイディアがあることに気づき、愕然としました。29. Rb1 Rdd1 30. Rxc1 Qxc1-+ でもディフェンスにならないため、他の守り方を考えなければ位なりません。29. f4 Rdd1 30. Rf2 Bc4
30... Bd5のように、一度b7を受けておく手もありましたが、本譜を指されるまでこのビショップはただ取りできると勘違いしていたので、ここでの見落としもひどかったです。黒は一気にピンになっているf1のビショップを攻めてゲームを決めにきますが、ここで少しTuさんにも見落としがあってゲームは難しくなります。
31. Rxb7 Bxf1?!
b7を取れた私は、こちらもバックランク、クイーン、f7への反撃が同時に生まれてなんとかなるのではないかと、細い希望を見出していました。これに対してTuさんがすぐf1を取ったのは少しありがたく、31... Qc8とされていたほうが白は困っていたと思います。本譜でも正確に指せば黒は勝つのですが、余計な難しい変化を読み切らなければなりません。32. Qe8+ Kh7 33. Qe4+ g6 34. Rxf1!
残り2分を切るまで考え、ここはルークを丸々捨てることにしました。マテリアルでは勝負になりませんが、黒の白マスビショップを消し、Bf1-Bd3-Bc4のようなビショップを退くディフェンスの手のチャンスをなくしておくことで、f7,g6への反撃が通りやすくなると考えたのです。本譜の代わりに34. Kh2 Bd3-+であれば、黒はピースアップで白の反撃がないことから勝勢が分かりやすく、34. Rxc7 Bd3+-+も黒のピースアップで、f7を取っても反撃や駒数が足りません。
34... Rxf1+ 35. Kh2 Rh1+ 36. Kg3 Rc4
黒はルークアップですがクイーンとf7が一直線に狙われているため、どう守るか悩むところです。f7を単純に守ろうとしても、36... Qc4 37. Qe8!があり、黒キングは危なくなります。意外とg3に上がった白キングに迫る手が無いのにも、局面を面白くしているポイントです。37. Qd5 Rc5 38. Qe4 Rc4
Tuさんも時間ギリギリまで考え、勝つアイディアがないと結論づけて繰り返しのドローを選択しました。しかし、実際にはここでは38... Rg5+! 39. Kf3 Qd8! という手があり、ルークを捨てて黒勝勢というコンピュータの評価です。40. fxg5 Rf1+ 41. Kg3 Qd6+-+ ここまで進めば明らかですが、黒キングの守りも怪しく見えるため、時間のない中でルークを返して勝負をするのはかなり難しい決断です。私も38... Rg5は考えていましたが、続きが無いと思っていました。
39. Qd5 Rc5 40. Qe4 Rc4 1/2-1/2
続く南條くんとの試合も難しい応酬の末にドローになり、私は4日目を2ドローの1Pで終えることになりました。この日2勝だった青嶋くん、1勝1ドローだった南條くん、Tuさんの背を追って最終戦を迎えます。
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