2024/05/08

Japan Chess Championship 2024 Day5 Tournament Report

今年の全日本選手権も一昨日最終日を迎え、無事に全日程を終えて閉幕しました。9試合を終え、7.5Pでトップに立ったのは南條くんで、青嶋くんとのわずかなタイブレーク争いを制して二連覇を決めました。今年は10位まで表彰が増え、表彰台もにぎやかになりましたね。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

Japan Chess Championship 2024 Final Standings


私は最終戦、米満くんに黒を持ったゲームを勝って、トータル6勝1敗2ドロー。昨年と全く同じスコアではありましたが、1つ順位を落として4位でのフィニッシュでした。最終戦の他のボードの結果次第では2位までありえたので、もう1歩を望んではいましたが、初戦負けを考えればここまで挽回しただけで上出来です。前半のゲームはどこで負けてもおかしくなかっただけに、後半少しずつ安定してきたのは良かったと思います。ただし最終戦の内容はもう少し改善が必要です。

Yonemitsu, K (JPN, 1988) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Japan Chess Championship 2024 (9)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 Nd7 6. Nf3 Ne7 7. Be2 Nc8!?

過去何回か、このマヌーバリングは試したことがあります。4.Nf3ラインでは、白からb2-b3,c2-c4と突くアイディアがNe7-Nc8には有効で、b6に出たナイトの行き場を抑えます。しかし、このNd2-Nb3を早めに決めている変化では、Ne7-Nc8と潜るアイディアは十分使えると思います。

8. a4 Be7 9. O-O O-O 10. a5 a6 11. Be3 Re8?!


白はa5までポーンを伸ばすことでNc8-Nb6を防ぎ、黒のナイトのマヌーバリングを制限します。これに対してe7のマスを空け、Nc8-Ne7と戻すアイディアがあったかと記憶していたのですが、少し別の変化と混同していたようです。a7からナイトを組み替えるのは、c2-c4を見てからのつもりでしたが、ここは11... Na7! 12. Ne1 (12. c4 dxc4 13. Bxc4 Nb5 14. Qe2 Nc7) 12... c5! 13. Nxc5 Nxc5 14. dxc5 Nc6と進めるのが良かったようです。f3のナイトがどいたタイミングでc6-c5を仕掛けるのは試したことがありましたが、Nc8-Na7-Nc6の組み替えを失念していました。

12. Ne1 Bf8 13. g4 Bg6 14. f4 f5?

白マスビショップを交換後にf7-f5とするなら良かったのですが、g6に残った状態でのf7-f5は理想的ではありませんでした。キングサイドを開くチャンスを残すf7-f6を、このタイミングか12手目でやっておくほうが良かったでしょう。

15. Bd3 Ne7 16. h3 h6 17. Nf3 Bh7 18. Rf2 Kh8 19. Rg2 g6


奇妙な形で黒の駒は働きに不満があります。しかし、白もどう仕掛けるか悩ましく、コンピュータの評価は大きく白優勢なものの、ゲーム中は難しいと思っていました。白も油断すれば、g6-g5の反撃が飛んできます。

20. Bf2 Bg7 21. Qe2

試合後に米満くんには、d2の位置のほうが良いのではないかと指摘しました。黒がビショップ退いたことで、b4のマスは白クイーンにとって安全になっています。21. Qd2! Rf8 22. Qb4? (22. Re1!) 22... g5! しかし、先述のg6-g5からの反撃には気を付けなくてはなりません。タイミングを見て、キングサイドとクイーンサイドの仕掛けを織り交ぜるのが白にとって良い作戦なのではないかと思います。

21... Rg8 22. Bh4 Qf8 23. Bxe7?!


この黒マスビショップとナイトの交換は即決で、少し気になりました。確かにf4-e5-d4と黒マスで白ポーンは連なっており、黒マスビショップの働きにはやや不満があることは分かります。しかし、あまり早めに黒マスビショップを諦めてしまうと、黒からの黒マスを利用した反撃に気を配る必要が出てきます。23. Rf1 Qf7 24. Kh1のような得になる手をいくつか挟み、様子を見ても良かったでしょう。

23... Qxe7 24. g5 h5 25. Nbd2 Rgd8 26. Nh4 c5!

白はキングサイドを閉じつつ、h5への将来的なサクリファイスを狙っていることは気づいていました。それには十分気を付けながら、黒は待望のクイーンサイドでの反撃を試みます。

27. c3 cxd4 28. cxd4 Qb4! 29. Qe3 Nb8!?


d4への反撃を作るためには、このナイトの組み替えは必須です。ただしルークをcファイルに先に回すべきかどうか、かなり悩みました。d4への反撃が遅れるとNd2-Nf1-Ng3からh5へのサクリファイスを準備されることを恐れたのですが、そこまで気にせずとも良かったようです。29... Rac8 30. Nf1 Nb8 31. Ng3 Nc6 32. Nxh5 gxh5 33. g6 Qxd4!= ピースを返すアイディアはなんとなくイメージしていましたが、本譜のほうがh5へのサクリファイスが難しく、安心だと考えました。

30. Be2 Nc6 31. Nb3 Bf8 32. Bxh5!?

f8へビショップを退き、c5のマスをカバーしつつKh8-Kg7の逃げ場を作ったことで、h5へのサクリファイスは難しくなっただろうと思いました。その矢先、それでもお構いなしにピースを切ってきたことには驚きです。このサクリファイスは成立してはいるものの、白がアドバンテージを作れるかは疑問です。32. Bf1 Kg7!と進めば、h5へのサクリファイスはいよいよ実現不可能ですが、それでも白はd4を守り続けて戦える状況です。キングサイドの突破にこだわらず、作戦を変えてじっくり戦うのもありでした。

32... gxh5 33. g6 Bg8 34. g7+!?


gファイルとg6のマスを開くことで攻撃のチャンスを作ります。しかしg8に退いたビショップがh7を守っている限り、簡単に白に決定的なアタックを許すことはないと読んでいました。代わりに34. Rg5!? Kg7 35. Rxh5 Rac8と進める変化もあったようで、黒はh7を受けているものの、g8のビショップはどこにも動けず、ピースアップと言えるかは疑問です。

34... Bxg7 35. Ng6+?

この攻めは不発に終わり、白のアタックチャンスは霧散します。白のアタックにはクイーンの協力が不可欠ですが、クイーンで狙うべきはh5のポーンではなく、直接g7のビショップでした。35. Qg3! Rd7 36. Kh1 Nxd4 37. Nxd4 Qxd4 38. Ng6+! Kh7 39. Nh4! Kh8 40. Ng6+ Kh7 41. Nh4= このようにgファイルにクイーンを寄せられた後、Nh4-Ng6-Nh4の往復をされると、黒はパペチュアルチェックを受け入れざるをえません。これは試合中気づいていませんでした。

35... Kh7 36. Qf3 Bf7! 37. Qxh5+ Bh6!


32手目の段階では、ここでキングをg8に逃がすつもりでした。これでも黒は守り切って優勢なのですが、本譜のほうがより良いアイディアだと直前で気づきます。h7にキングを残すのは危険にも思えますが、むしろピンにっているg6のナイトにキングの攻撃が残っている効果が大きく、白はさらなる駒損を避けられません。

38. Kh2 Rg8 39. Rag1 Qxb3 40. Nf8+ Raxf8 0-1

最後にf8にナイトを跳びこませたのは、勘違いではなくリザインの代わりなのでしょう。h5へのサクリファイスにこだわりすぎていたことが白の失敗で、きっぱりとこのアイディアを諦めるか、実行するならばもっと丁寧に読む必要があったと思います。

この全日本選手権では6.5Pを取った中原くんを筆頭に、大学生の活躍が非常に目立ったと思います。全日本初参加ながら、大きくレイティングを伸ばしたプレーヤーもいます。私も大学生たちと同じトレーニンググループに入っており、彼らの成長を間近に見ています。簡単に世代交代とはならないよう、日本代表の一員としてまだまだ頑張るつもりではありますが、それと同時に彼らには大いに期待しています。

最後になりましたが、今年も全日本選手権の運営をありがとうございました。日本チェス連盟の理事たち、スタッフ、スポンサーの皆様に心より感謝いたします。次は来週末の中部快速オープンでよろしくお願いいたします。

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