2025/06/17

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.3


このシリーズで続いてご紹介するのは、昨年の全日本選手権で指したゲームです。山本くんはこの当時、1900弱のレイティングでしたが、今年の全日本選手権での活躍により、現在は2000を超えています。この1、2年で最も成長した若手の1人でしょう。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Yamamoto, S (JPN, 1884)
Japan Chess Championship 2024 (3)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 Bb4+ 4. Nbd2

Bogo-Indianには去年、Nb1-Nd2の変化を用意していました。ビショップ交換を避け、場合によってはビショップペアを持って白は勝負します。ここでナイトとビショップのどちらを挟むかは、1つ前の米満君との試合で、Sicilian Moscowにどちらを挟むかと似ています。

4... O-O 5. a3 Be7 6. e4 d6 7. Be2 b6!?


黒はクイーンサイドフィアンケットを選択しましたが、e6-e5からc8-h3ダイアゴナルを開くアイディアも一般的です。7... Nbd7 8. Qc2 e5 9. Nb1! が私の準備で、c3にナイトを組み直してe4を支えるつもりでした。

8. O-O Bb7 9. Qc2 Nbd7 10. b4 h6 11. Bb2

上記の変化のようにナイトをc3に組み直すことは叶いませんでしたが、b2にビショップを展開できれば、d2とのナイトの相性も良く、白は満足なセットアップです。

11... c5 12. bxc5 bxc5 13. d5 e5 14. Bc3!


センターが固まったので、サイドでの争いが中心となります。白はクイーンサイドで揺さぶりをかけ、bファイルからの侵入を目指します。

14... Ne8 15. Nb3! Bc8 16. Na5 Nb8 17. Rab1+/-

ビショップはb7では使いづらいために退きなおすのは予想通りですが、ナイトも初期位置に戻ったのは意外でした。単純にbファイルを抑えて白が優勢ですが、駒が取れるようになるにはまだひと手間必要です。

17... Qd7 18. Rb2 Bd8 19. Rfb1 Bxa5?!


いずれにせよ黒は消極的で苦しい状況ですが、19... Bb6 としてbファイルをブロックするほうが粘れます。本譜のように黒マスビショップを貰えれば、白は黒マスを使ったプレーが楽になるでしょう。

20. Bxa5 Na6 21. Nh4!

クイーンサイド一辺倒ではなく、キングサイドでもプレーを混ぜるのがポイントです。f5へのナイトの侵入を見せ、黒のキング前の弱体化を狙います。

21... g6 22. g3!?


ナイトの退くマスを作りつつ、f2-f4も場合によっては狙おうと考えましたが、素直に弱くなったh6を攻撃するほうが良かったかもしれません。22. Qc1! Kh7 23. Bd2+-

22... Nac7 23. Bd3 Ng7 24. Qd1 Nce8 25. Bc2

上記の黒マスを狙うプランではなく、逆に白マスビショップを活用しようと考えました。c4,e4のポーンで妨害された白マスビショップを、Be2-Bd3-Bc2-Ba4とマヌーバリングします。

25... Qh3 26. Ba4 a6 27. Bc6 Ra7 28. Bb6 Re7 29. Bd8 Ra7 30. Rb8


白マス黒マス両ビショップで黒ルークに揺さぶりをかけ、ルークも侵入させます。何か上手い手順ですぐルークが取れないかと思っていましたが、はっきりしたアイディアはありません。それでも黒のピースはあまり動けず、白は大きく優勢です。

30... Nh5 31. Qb3?

ここでクイーンもクイーンサイドで侵入していけば勝ちだと思いましたが、キングサイドでの反撃をきちんと考えていませんでした。ここは31. Qf1! が正確な手で、クイーンを強制的に交換してしまい、黒のキングサイドの反撃を消してしまえば、クイーンサイドで圧倒している白の勝勢です。

31... Nef6! 32. Bxf6


ナイトが出てくれば、あらためてクイーンをキングサイドのディフェンスに使うつもりでしたが、32. Qf3? Nf4! が強力で、黒に余計なアタックを許してしまいます。本譜は泣く泣く黒マスビショップを返しますが、これにより白の優位は間違いなく減っています。

32... Nxf6 33. Qf3 Kg7 34. R8b2 Bg4?!

ここは先述のようなクイーン交換が起こり、bファイルを抑えている白が有利となります。代わりに34... g5! 35. Nf5+ Bxf5 36. Qxf5 Qxf5 37. exf5 e4!=/+ と進めば、黒のナイトは白のビショップに勝る働きをしています。

35. Qd3 Bc8 36. f3! Nh5 37. Qf1 Qxf1+ 38. Kxf1 f5 39. exf5 gxf5?


この自然に見えるポーンの取り返しで、再度白にチャンスが生まれました。39... g5! 40. Ng2 Bxf5 41. Rb7+ Rf7 ならば黒は不満の無い流れです。d3でのチェックがあるため、g3-g4はポーンフォークのスレットになりません。

40. Rb6 Kf6 41. Rb8 Rc7 42. R1b6+-

a6、d6、f5といった複数のポーンがターゲットになっており、黒は全てを守り切るのが大変でしょう。

42... Ng7 43. Bb7 Rd8 44. Bxc8 Rcxc8 45. Rxc8 Rxc8 46. Rxd6+ 1-0


最後は重要なポーンが落ち、あっさりとした決着がつきました。盤全体のプレーで上手くチャンスを作っただけに、不必要な反撃を許して形勢を怪しくした点を反省しています。

2025/06/16

Chubu Rapid Open 2025

昨日は名古屋で開催された中部快速オープンに参加してきました。すでに10回以上参加している1日制の大会で、毎年この大会のために名古屋遠征できることを楽しみにしています。昨年は1つドローがありましたが、今年はなんとか全勝での優勝を果たすことができました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2278) 5/5
2nd Place Noda Ryo (JPN, 1796) 4/5
3rd Place Higashishiba Teruomi (JPN, 1907) 4/5

Chubu Rapid Open 2025 Final Standings


今大会一番の山場は、3連勝同士で迎えた4Rの東芝さんとの試合でした。序盤で優位になったにもかかわらず、適切なプランが分からずに苦戦します。今夜はこちらのゲームをご紹介させていただきます。

Higashishiba, T (JPN, 1907) - Kojima, S (IM, JPN, 2278)
Chubu Rapid Open 2025 (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 c5 6. dxc5 Bxc5 7. Nxc5 Qa5+ 8. c3 Qxc5 9. Nf3 Qc7!?

Caro-Kann は様々な研究に目を通していますが、こちらはJobavaの勧める手です。クイーンを早めに退いてe5を狙い、白のセットアップを早めに決めさせます。

10. Bf4 Nc6 11. Be2 Nge7 12. Nd4 Nxd4 13. cxd4 Nc6 14. O-O?!


本譜のb2を捨てるプランは難しいですが、白が手堅く指したければ避けるべきでしょう。14. Qd2! と先にクイーンを上げておき、d1にルークが移動する準備をすれば本譜の流れにはなりませんでした。

14... Qb6 15. Be3 Qxb2 16. Bd3 Bxd3 17. Qxd3 Qb6 18. Rab1 Qc7 19. Qb5 Rb8

思わずポーンアップした黒ですが、ここはb7を返すことも考えました。19... O-O!? 20. Qxb7 Qxb7 21. Rxb7 Na5! こうしてc4のマスにナイトを置けば、働きの良いナイトと働きの悪いビショップの構図を作ることができます。しかし、せっかくのポーンを返してでもこうすべきか判断ができませんでした。

20. f4! O-O 21. f5 Ne7?!


ここはf5を早めにカバーし、反撃するべきだと思ったのですが、c7のクイーンhが狙われることをなぜか失念していました。21... Na5!? からc4を目指すプランはやはり有力です。

22. Rbc1?!


22. f6! Nf5 23. Rfc1 Qd8 24. Bf2 はポーンの代償がある難しい局面です。私はRf1-Rc1,Qc7-Qd8抜きでこの局面を考えており、ポーンの代償を軽視していました。

22... Qb6! 23. Qxb6 axb6 24. fxe6 fxe6 25. Rc7 Rxf1+ 26. Kxf1 Nc6

黒はポーンストラクチャーを乱しましたが、ポーンアップをキープしたままエンドゲームに入りました。b7の守りにルークは縛られているように見えますが、タイミングを見てaファイルからの反撃を仕掛けることができます。またここでは、26... Nf5! 27. Bf2 h5! としてf5のマスを確保し、ナイトを強く使うアイディアも有力です。

27. h4?! h6?!


お互いにキングサイドを見ていましたが、より重要なのはクイーンサイドです。aファイルからの反撃は当然考えていたものの、なぜかa2を落とす前にbポーンを極力伸ばすアイディアを考えていませんでした。27... b5! が強力な1手です。

28. g4 Na5?!


c4へのナイトの侵入は様々なタイミングで考えていましたが、e6、b7を落とす前にできる限りの準備をしておくべきです。ここが最後のb6-b5のチャンスでした。

29. Re7 Nc4 30. Bc1 Ra8 31. g5?!

指されてみて、g5-g6が嫌なアイディアだと思ったのですが、ここはaポーンを受けておくほうが良かったようです。しかし、31. a3! Nxa3 32. Bxa3 Rxa3 33. Ke2 Rg3 34. g5! hxg5 35. hxg5 Rxg5 36. Rxe6= がドローに持ち込めるエンドゲームだと読むのは、なかなか大変でしょう。

31... Kf8! 32. Rxb7 hxg5 33. Bxg5 Rxa2 34. Rb8+?!


ここはe6を取りにいく判断をしますが、逆に黒キングを積極的に使わせてしまうため良くなかったようです。ルークは7段目で黒キングの動きを制限したまま、34. Kg1!? のようにじっと待つ手をコンピュータは推奨しますが、積極的に反撃を作りにいきたい気持ちも理解できます。

34... Kf7 35. Rb7+ Kg6 36. Re7 Nd2+?

g7を捨てた際のhポーンの脅威がいかほどか判断できず、残り数秒で弱気な手を指してしまいました。36... Kf5! 37. Rxg7 Ke4! 38. h5 Rh2 39. h6 b5 40. h7 b4 41. Rb7 b3 42. Bf6 b2-+ 白がh8を抑える速度に、十分bポーンが対抗できるのは意外でした。d2でのフォークがあり、b1でのプロモーションは有効です。

37. Ke2 Ne4+ 38. Kd3 Ra3+ 39. Ke2 Nxg5 40. hxg5 Kxg5 41. Rxe6 Kf5 42. Rd6??


ここは42. Rxb6= でドローでしたが、おそらく黒キングの動きを見誤ったのでしょう。黒はd5を守りつつ、d4を取りにいく余裕があります。

42... Ke4! 43. e6 Kxd4 44. Rxb6 Re3+?

私もここはひどいミスでした。44. e7?? Re3+ がeポーンを止めるアイディアだったのですが、それが頭にあったために本譜でもパスポーンをe3から止めに行ってしまいました。パスポーンに対応するのは当然ですが、g7を生かさなければフィリドールポジションになってしまいます。44... Ra7! ならばeポーンを止めつつ、自身のgポーンを守ることができて黒の勝勢です。

45. Kd2 Re5 46. Rb4+ Kc5 47. Rg4 g5 48. e7 Kd6 49. e8=Q Rxe8 50. Rxg5 Kc5


互いのポーンを取り合い、黒のdポーンだけが残るルークエンディングになりました。白キングはすでにポーンをブロックする位置にいるため、理論的にはドローですが、実戦ではこうした局面でも間違えて決着がつくことも少なくはないため、当然黒は最後まで指します。

51. Rg7 Rh8 52. Kd3 Rh3+ 53. Kd2 Kc4 54. Rg4+ d4 55. Rg8 Rh2+ 56. Kd1 Kc3 57. Rc8+??

フィリドールポジションの必修局面が現れました。このオフェンス側キングが6段目、ポーンが5段目の状況ではディフェンス側がドローに持ち込める手は1つしかありません。57. Rd8! Kd3 58. Kc1 Rh1+ 59. Kb2 Ke3 60. Kc2!= ここでキングを寄り、d4-d3のポーンの前進を止めるのが必須です。それを実現するためには、白は早い段階でルークをポーンの後ろに回すしかないのです。

57... Kd3 58. Ke1 Rh1+ 59. Kf2 Kd2


白キングを追い出し、黒キングが逆に潜り込めばルセナポジションになります。

60. Ra8 d3 61. Ra2+ Kc3 62. Ra3+ Kc2 63. Ra2+ Kb3 64. Rd2 Kc3 0-1

なんとかこの試合を勝ち、4連勝となりました。最終戦は同じ4連勝の野田くんとの優勝争いを制し、9回目の中部快速オープン優勝を決めています。0.5Pでも落とせばレイティングマイナスだったため、プレッシャーはありましたが、なんとか結果を残すことができて安心です。来年も10回目の優勝を目指して頑張ります! 参加者、運営の皆さん、今年もありがとうございました。
大会後は久々にひつまぶしをいただきました。週末は鰻屋を含めどこも混む名古屋ですが、事前に予約しておけば楽に入れるようです。

2025/06/14

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.2


2つ目はトレーニングのゲームです。都内で開催されているトレーニングでは、毎回オープニングを決めて白黒1試合ずつを目安に指しています。メンバーのレベルは回によって異なり、フランスのIM Song Julienを招いたりと、ゲストで強豪が登場することもあります。昨年1月に集まったこの日はSicilian Moscowがテーマで、米満くんに黒を持ちました。

Yonemitsu, K - Kojima, S
Training

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Bd7

GMレベルではピースを残すか、ビショップナイトの交換から局面の複雑化を図りやすい3... Nd7が多いと思います。実際、私も白番ではその対策に苦労してきました。しかし、ビショップ交換をするシンプルな3... Bd7変化も、黒から様々な可能性があって面白いと考えています。

4. c4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bxd7+ Nbxd7!?


d4のマス争いをするのであればd7はクイーンで取り返し、Nb8-Nc6と展開するほうが自然で、将来的なキングサイドのフィアンケットビショップとも相性が良いでしょう。一方で本譜のナイトでd7を取り返す変化は、クイーンをa5に出したり、cファイルからの反撃を作りやすいのがポイントです。

7. d4 cxd4 8. Nxd4 g6

自然な手はありますが、ここは8... Rc8! を先に挟むほうがより正確でした。 c3のナイトが浮くとb7-b5からポーンを崩されてしまうため、白は9. Qe2とするしかありません。e2がクイーンの位置として悪いわけではないですが、白のセットアップを限定しておくことができます。

9. O-O Bg7 10. Bg5?!


Dragon Pawn Structureにおいては、Nc3-Nd5の跳びこみからe7ポーンにプレッシャーをかけるのがよく見られるプランで、その際にBc1-Bg5も登場することはあります。しかし、ここでは黒のナイトは連携されており、Bxf6はあまり脅威になりません。白の理想的なビショップの使い方は、c4を守ることも踏まえてb2-b3,Bc1-Bb2だったのではないと思います。

10... O-O 11. Qd2 Qa5! 12. Rfe1 Rfc8 13. Nb3 Qb4 14. Bxf6?

黒は理想的なピースのセットアップでcファイルからの反撃を作っています。本譜の白の構想はそれに十分対抗できるものではなく、黒に黒マスの支配を与えて苦しい展開になります。14. Nd5 Nxd5 15. exd5 Rxc4 16. Rxe7 Ne5=/+ 先述のe7を狙う構想ならばこう進めるでしょうが、これでも黒はやや有利だと考えられます。

14... Nxf6 15. c5 dxc5 16. e5 Rd8!


f6のナイトをどかしてNc3-Nd5を狙いたかった白ですが、このIntermediate Moveがありました。クイーンに反撃を作りつつ、d5のマスをカバーしてナイトの侵入を防ぎます。

17. Qg5 Qg4!?

本譜でも良いですが、17... Nd5 18. Nxd5 Rxd5 19. Qxe7 Bf8! 20. Qf6 Re8!-+ 一時的にポーンを返しても、e5をターゲットにすれば黒の勝勢でした。

18. Qxg4 Nxg4 19. e6?


ここは19. f4 で我慢し、g7のビショップを止めつつ、g4のナイトを追い返して耐えるしかありませんでした。ゲームの手順では、黒のナイト、ビショップがいずれも強く、白は抵抗が難しいでしょう。

19... c4! 20. Na5 Rac8 21. Re4 Ne5 22. exf7+ Kxf7 23. Rae1 b6 24. f4 Nd3!-+

e7のポーンを取られても継続の攻めはなく、黒は駒得が確定しています。

25. Rxe7+ Kf8 26. R1e2 bxa5 27. g3 Re8 28. R7e6 Rxe6 29. Rxe6 Nxb2 30. Nd5 c3 0-1


しばらくこちらのトレーニングも参加できていないため、また機会を見て参加したいですね。

2025/06/13

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.1


大会参加時以外に棋譜の解説はおろか記事もあまり書かなくなっているため、リハビリがてらシリーズものを始めてみようと思います。このシリーズでは去年から今年にかけ、ブログで取り上げてこなかったゲームの中で、面白かったものをご紹介していきたいと思います。まずは昨年最初の大会、東海オープンの一試合です。

Kojima, S (IM, JPN, 2298) - Bhatia, P (JPN, 1724)
Tokai Open 2024 (2)

1. Nf3 Nf6 2. g3 g6 3. Bg2 c5 4. c4 d5 5. cxd5 Nxd5 6. Nc3 Bg7 7. O-O O-O 8. Nxd5!?

この当時は新しい1. c4のレパートリーや、古くから慣れ親しんだ1. Nf3の少し違う可能性を模索していました。Symmetrical Englishのこちらの変化では、白からd5のナイト交換を行い、d5に出てきたクイーンをターゲットにするセットアップを試します。

8... Qxd5 9. d3 Nc6 10. Be3 Qd6


昔調べたKarpovの試合では、10... Bd7 11. Nd4 Qd6 12. Nxc6 Bxc6 13. Bxc6 Qxc6 14. Rc1 Qe6 15. Rxc5 Qxa2 16. Rb5 b6 17. Qa1 Qe6 18. Qa6+/= という進行で、a7をターゲットににした白がやや優勢となりました。本譜ではc5とb2の交換になるため、黒がセンターを抑える力を弱めたうえで、bファイルからの反撃に期待できます。

11. Rc1 Bxb2 12. Bxc5 Qd7 13. Rc2 Bf6 14. Ba3 Rd8 15. Qd2 e5 16. Rfc1 Qf5 17. Qh6?!

クイーンの位置を改善するベストのプランが分からず、直接的な手を選びました。ここではクイーンはd2に残しておき、e5を狙うプランが良かったようです。17. Bb2! Be6 18. Rc5! こうして5段目にルークを上げ、e5、b7を狙えば白が優勢です。

17... Be6 18. h4 Rab8?


この手は白の直接的な攻撃を軽視しています。18... Bg7 19. Qe3+/= こうして一度白クイーンを黒キングから遠ざけておくべきでした。

19. Ng5! Bxg5 20. hxg5 Nd4 21. Be7!

おそらく黒が見落としていた手がこれです。エクスチェンジ取りではなく、Be7-Bf6からのメイトが狙いで、黒はクイーンを遠ざけておかなかったこと、黒マスビショップを失ったことで黒マスが弱くなっていることが痛手となります。

21... Qg4 22. Be4! Qh5 23. Qxh5 gxh5 24. Bxd8 Nxc2 25. Bf6!


黒はクイーンを交換することでメイトの危機こそ脱しましたが、白のダブルビショップに対抗するのは苦しい状況です。

25... Nd4 26. Rc7 Bxa2 27. Bxe5 Nxe2+ 28. Kf1+-

e2のナイトはトラップされており、白の勝勢です。

28... Nxg3+ 29. fxg3 Re8 30. Bf6 a5 31. Rxb7 a4 32. Ra7 Bb3 33. Kf2 Bd1 34. Ke3 Bb3 35. Kf4 Be6 36. d4 Bb3 37. d5 a3 38. d6 a2 39. d7 Rb8 40. d8=Q+ Rxd8 41. Bxd8 1-0


この大会は結局4勝1ドローで優勝できたものの、Bhatiaさんにはこの2か月後の東京チェス選手権の最終戦で敗れ、ここまで1勝1敗となっています。三度目の対戦の機会も楽しみにしています。
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