2026/06/19

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第55回予告

2026年6月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、5/21(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『ナイトのマヌーバリング』です。ナイトは白マス黒マスの両方を移動できる代わりに、一度に動ける距離が短いという弱点を持ちます。そのためナイトの活用においては、今どこに動けるかだけでなく、数手後にどこに移動しているのが理想的かという、先を見据えたプレーが重要です。今月の講座ではそんなナイトを主役に、理想的なマスやそこに至るルートの探し方を見ていきましょう。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第55回『ナイトのマヌーバリング』|2026.6.21

2026/06/18

帝王賞CM「帝王賞STAR☆T」篇


昨日、xの投稿ではお伝えしましたが、7月1日に大井競馬場で開催される帝王賞のテレビCMに、チェスが登場しています。こちらはテレビCMとして以外、東京シティ競馬のYoutubeチャンネルでもご覧いただけます。


こちらに登場するチェスの局面の作成、およびチェスシーンの監修は私が担当しました。局面が映るのは11-13秒あたりの数秒ですが、チェスブログらしく、どういった局面になっているかを解説をしようと思います。
Position after 1. Ke4

白がキングをe4に置いて黒番になり、白勝ちが決まったという状況です。白はオポジションを取って楽に勝てそうに見えますが、ここから間違えて勝ちを逃す人は一定数いると思います。

1... Kf6 2. Kd5! Kf7 3. Ke5!


ここですぐにaポーンを取りにいくのは、十分に起こりうる間違いです。3. Kc6? Ke6! 4. Kb7 Kd7 5. Kxa7 Kc7!= aポーンを取らせても、白キングをaファイルに閉じ込めてしまえば白はプロモーションができずにドローになります。

3... Kg6 4. Ke6 Kg7 5. Kf5 Kh6 6. Kf6 Kh7 7. Kxg5

白は勝つためには、手間を惜しまずにg5のポーンを取りにいくのが必須です。

7... Kg7 8. Kf5 Kf7 9. Ke5!


gポーンを多少進めても良いですが、gポーンをプロモーションすることはできません。黒のgポーンを取ったのは、白のgポーンをプロモーションするためではなく、黒キングに白のgポーンを取らせて時間を稼ぐためです。

9... Kg6 10. Kd6 Kg5 11. Kc7 Kxg4 12. Kb7+-

今度は白キングがaポーンを取った際、黒キングは遠すぎてなにもできません。すぐにaポーンを取りにいくと勝てなくなってしまうのは、しばしば見落としてしまう形です。ポーンが3個ずつで単純に見えても、面白い終盤の局面を作れたと思います。

2026/06/10

Don't create problems for yourself!


今日は「自分で問題を作らないで!」 というテーマで、棋譜解説を行おうと思います。先日名古屋で参加した、中部快速オープンの1局をご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2282) - Araki, D (JPN, 1786)
Chubu Rapid Open 2026 (2)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. g3 d5 4. Bg2 c6 5. Nf3 Bg7 6. O-O O-O 7. Nc3!?

c6-d5型のGrunfeldに対しては、これまで7.Qb3と指すことが多かったのですが、初めてこちらの手を試してみることにします。白のアイディアはc4をギャンビットして、センターにポーンの厚みを得ることです。

7... e6?!


時折、キングサイドフィアンケットとe7-e6の組み合わせを見ますが、多くの場合はsolid but passiveと評されます。d5を守るという目的には沿いますが、c8のビショップの働きを制限してしまうという問題が発生します。先述の通り7... dxc4 8. e4 b5 9. Qe2 と進めるのが自然だと思います。また白がポーンを捨てるというリスクを取ったのであれば、黒がそれに乗らないことは、白の7. Nc3!? がリスクなくできてしまったことを意味します。白がポーンを捨てて難しい局面にするリスクを取ったのであれば、黒もそれに乗るリスクを取らなければいけません。

8. Qb3 Nbd7 9. Rd1 Qb6 10. Bf4 Qxb3?!

このクイーン交換も黒から仕掛ける必要があるのか疑問です。白はc4をポーンで守ることができ、開いたaファイルからルークでa7を狙うことができます。この後で黒がa7-a6とポーンをかわしても、b6のマスという余計な黒マスの弱点を作ることになるため、Nc3-Na4-Nb6のような手を警戒しなければいけなくなります。c8のビショップの問題解決が見えない段階で、a1とa8のルークのアクティビティに差を作ってしまうことも、黒から余計な問題を増やしていると考えられるでしょう。

11. axb3 Re8 12. h3!?


最近、ロシアのGM Dreevの試合解説を見ていて、Lavirovanie という知らないチェス用語が出てきました。古いソビエトチェススクールでは戦略的に重要とされる考えで、「自身の局面を強められずとも、弱くすることなく待ち、相手の様子を窺う手」 とでも説明しましょうか。確かに強いGMの試合ほどこうした手が出てきます。私の指した12.h3がそれにあたるかの判定は難しいですが、様子を見てg3-g4と突き、h2-b8ダイアゴナルでビショップをキープできるようにと考えました。クイーンが消えた状態であれば、キング前のポーンを進めることのリスクはそれほどないはずです。

11...Nh5?!

f4のビショップを追い払うために、Catalanなどではよく見る手ですが、ここではc7やd6にビショップの潜り込むマスがある(不要なクイーン交換やe7-e6により)ため、白の黒マスビショップは困っていません。すると直前のh2-h3が必要だったのかという疑問もありますが、白陣が弱くなっていないのであれば、Lavirovanie の考えには沿っています。ビショップをh2-b8ダイアゴナルから追い払う目的を果たせないのであれば、端のh5にナイトが跳ぶ手は良い手とは言えないでしょう。

13. Bc7! dxc4?


このポーン交換は白のセンターを強めるだけですが、すでに黒には多くの問題を解決する手段がありません。

14. bxc4 e5??


最初に抱えたc8のビショップ問題を解決するためには、c8-h3のダイアゴナルを強引に開くほかありませんが、展開の遅い黒が局面を開くことは、新たな問題を生み出すことになります。d1にルークをすでにまわしている白は、センターを喜んで開きます。

15. dxe5 Nxe5 16. Nxe5 Bxe5 17. Bxe5 Rxe5 18. Rd8+ Kg7 19. Ne4!+-

白はバックランクにルークを潜り込ませ、c8のビショップの動きを縛ったうえで、Nc3-Ne4-Nd6からビショップを取りにいきます。ここでもf6からh5に跳んだナイトが、e4のマスの利きを失っている問題を利用しています。

19... Re7 20. Nd6 Rxe2 21. Rxc8 Rxc8 22. Nxc8 Rxb2 23. Rxa7 1-0


c8のビショップを落として、あっさりと試合は終わりました。黒としては力を出し切れず悔いが残るゲームだと思いますが、自分で作り出した問題が新たな問題を招き、自身を苦しめる例として取り上げさせてもらいました。

2026/06/01

Chubu Rapid Open 2026

今年の中部快速オープン入賞たち

昨日は名古屋で開催された中部快速オープンに参加してきました。私は4連勝後からの最終戦ドロー、4/5/5での単独優勝でした。2010年から参加している中部快速オープンは、これで通算10回目の優勝です。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2282)
2nd Place Tanaka Satoshi (JPN, 2016)
3rd Place Shinoda Taro (JPN, 1966)
4th Place Higashishiba Teruomi (JPN, 1929)
Chubu Rapid Open 2026 Final Standings


トップボードの試合は中継されていたようですが、エラーなく最後まで棋譜を見ることができたのは最終戦くらいのようです。今夜は単独トップに立った4Rの試合をご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2282) - Shinoda, T (JPN, 1966)
Chubu Rapid Open 2026 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 c5 4. e3!?

少し悩みましたが、この日はBenoni Defenceを避け、指しなれているSemi-TarraschやPanov Botvinnikを目指すことにします。

4... d5 5. cxd5 exd5 6. Bb5+ Bd7 7. Bxd7+ Qxd7!?


この変化では7... Nbxd7 から将来的にc5はナイトで取り返し、Nc5-Ne4 or Nc5-Ne6 のようなナイトのマヌーバリングを見せるのが一般的だと思います。

8. O-O Nc6 9. b3 Be7 10. dxc5 Bxc5 11. Bb2 O-O 12. Nc3

似た局面で、f6のナイトを取ってポーンストラクチャーを崩したこともありますが、ここはa1-h8ダイアゴナルを抑える強力なビショップを残すことにしました。ただ白マスビショップの交換が済んでいることを考えれば、ここはf6を取っても良かったでしょう。12. Bxf6 gxf6 13. Nc3 Rad8 14. Rc1 d4?! 15. Ne4 Be7 16. Nxd4 Nxd4 17. exd4 Qxd4 18. Qf3! 単純な手ですが、d5-d4を許しても、ピースを交換しすぎなければ白の優位が大きいことを見落としていました。

12... a6 13. Rc1 Ba7 14. Ne2 Ne4 15. Ned4 Rac8 16. Qe2 Nxd4 17. Nxd4 Bb8


ここはさらにd4での交換を進めても良かったでしょう。17... Bxd4 18. Bxd4 Rxc1 19. Rxc1 Rc8= d4のビショップは強そうに見えますが、ここまでピース交換を進めればg7だけ気を付けておけば黒は大丈夫です。どこかでf7-f6と突いて対応しても良いでしょう。

18. Rfd1 Rxc1 19. Rxc1 Qd6 20. g3 Qg6 21. Qf3!

ここはチャンスが来たと感じました。白マスビショップがいないため、白キングへの攻撃チャンスは限定されており、g3へのサクリファイスに気を配ればひとまずは大丈夫でそうです。f3にクイーンを置くと次のNd4-Nf5が嫌な狙いとなり、それを防ぐ本譜もf5のポーン自体と、a2-g8ダイアゴナルが弱点になります。

21... f5 22. Ne2


f4にナイトを切り替える構想はよくあるのでぱっと指してしまいましたが、直後にf8のルークに揺さぶりをかけるほうが良いことに気づきました。22. Ba3! Bd6 23. Bxd6 Qxd6 24. Kg2+/- 黒マスビショップも交換してしまえば、黒のアタックチャンスはほとんどなくなり、d5、f5のポーンの負担が大きくなります。

22... Qg4! 23. Nd4 Be5 24. Qd1 Qg6?!

24... Qxd1+ 25. Rxd1 Bxd4 26. Rxd4 Rc8 上記の変化にもありましたが、黒が思い切ってビショップを手放してしまい、ビショップvs.ナイトにする構想は私も過小評価していました。確かに白のマイナーピースがビショップになれば、d5、f5は直接狙われづらくなります。

25. Rc2! f4 26. exf4 Bxf4 27. Ne2?!


この手がビショップを当てつつ、クイーンの前を開いてd5を狙う絶好の手になっていると試合中は思いましたが、黒に生き延びるチャンスを与える緩手でした。代わりに27. Nf3! Rd8 28. Nh4 Qg5 29. Qd4 としてd5、g7へのプレッシャーをためるくらいで白は十分なアドバンテージです。

27... Bb8?

27... Nxf2! 28. Nxf4 Nxd1 29. Nxg6 hxg6 30. Bd4 Rf3!= クイーンを取り合う変化は読んでいましたが、Bb2-Bd4がd1ナイトを閉じ込める手になるかと思いきや、f3から横利きのサポートを得て、e3に脱出する手がありました。g7へのプレッシャーは気になりますが、この変化ならば黒は戦えそうです。

28. Qxd5+ Kh8 29. Qxb7 Ng5


ここではf2を取る手は本譜と同じナイトを挟む手でバックランクの反撃を止め、白勝ちです。29... Nxf2 30. Rc8 Qb1+ 31. Nc1+-

30. Rc8 Nf3+ 31. Kh1 Qb1+ 32. Nc1 Bd6 33. Qxg7# 1-0

最後はバックランクとg7での二つの狙いに対応できず、メイトになりました。綺麗なフィニッシュになったのは良かったですが、複数の見落としは反省です。

今年は名古屋オープンがオリンピアードとかぶっているため、これで名古屋の大会参加は終わりになると思います。今年も東海オープン、中部快速オープンのどちらも優勝することができ、嬉しく思います。いつも良い運営をして、また次も来たいと思わせてくれる名古屋チェスクラブのメンバーには感謝しています。
夜は名古屋コーチンのお店にしました。週末の夜はどこも混み合うので、お店選びが大変です。
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