2026/06/10

Don't create problems for yourself!


今日は「自分で問題を作らないで!」 というテーマで、棋譜解説を行おうと思います。先日名古屋で参加した、中部快速オープンの1局をご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2282) - Araki, D (JPN, 1786)
Chubu Rapid Open 2026 (2)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. g3 d5 4. Bg2 c6 5. Nf3 Bg7 6. O-O O-O 7. Nc3!?

c6-d5型のGrunfeldに対しては、これまで7.Qb3と指すことが多かったのですが、初めてこちらの手を試してみることにします。白のアイディアはc4をギャンビットして、センターにポーンの厚みを得ることです。

7... e6?!


時折、キングサイドフィアンケットとe7-e6の組み合わせを見ますが、多くの場合はsolid but passiveと評されます。d5を守るという目的には沿いますが、c8のビショップの働きを制限してしまうという問題が発生します。先述の通り7... dxc4 8. e4 b5 9. Qe2 と進めるのが自然だと思います。また白がポーンを捨てるというリスクを取ったのであれば、黒がそれに乗らないことは、白の7. Nc3!? がリスクなくできてしまったことを意味します。白がポーンを捨てて難しい局面にするリスクを取ったのであれば、黒もそれに乗るリスクを取らなければいけません。

8. Qb3 Nbd7 9. Rd1 Qb6 10. Bf4 Qxb3?!

このクイーン交換も黒から仕掛ける必要があるのか疑問です。白はc4をポーンで守ることができ、開いたaファイルからルークでa7を狙うことができます。この後で黒がa7-a6とポーンをかわしても、b6のマスという余計な黒マスの弱点を作ることになるため、Nc3-Na4-Nb6のような手を警戒しなければいけなくなります。c8のビショップの問題解決が見えない段階で、a1とa8のルークのアクティビティに差を作ってしまうことも、黒から余計な問題を増やしていると考えられるでしょう。

11. axb3 Re8 12. h3!?


最近、ロシアのGM Dreevの試合解説を見ていて、Lavirovanie という知らないチェス用語が出てきました。古いソビエトチェススクールでは戦略的に重要とされる考えで、「自身の局面を強められずとも、弱くすることなく待ち、相手の様子を窺う手」 とでも説明しましょうか。確かに強いGMの試合ほどこうした手が出てきます。私の指した12.h3がそれにあたるかの判定は難しいですが、様子を見てg3-g4と突き、h2-b8ダイアゴナルでビショップをキープできるようにと考えました。クイーンが消えた状態であれば、キング前のポーンを進めることのリスクはそれほどないはずです。

11...Nh5?!

f4のビショップを追い払うために、Catalanなどではよく見る手ですが、ここではc7やd6にビショップの潜り込むマスがある(不要なクイーン交換やe7-e6により)ため、白の黒マスビショップは困っていません。すると直前のh2-h3が必要だったのかという疑問もありますが、白陣が弱くなっていないのであれば、Lavirovanie の考えには沿っています。ビショップをh2-b8ダイアゴナルから追い払う目的を果たせないのであれば、端のh5にナイトが跳ぶ手は良い手とは言えないでしょう。

13. Bc7! dxc4?


このポーン交換は白のセンターを強めるだけですが、すでに黒には多くの問題を解決する手段がありません。

14. bxc4 e5??


最初に抱えたc8のビショップ問題を解決するためには、c8-h3のダイアゴナルを強引に開くほかありませんが、展開の遅い黒が局面を開くことは、新たな問題を生み出すことになります。d1にルークをすでにまわしている白は、センターを喜んで開きます。

15. dxe5 Nxe5 16. Nxe5 Bxe5 17. Bxe5 Rxe5 18. Rd8+ Kg7 19. Ne4!+-

白はバックランクにルークを潜り込ませ、c8のビショップの動きを縛ったうえで、Nc3-Ne4-Nd6からビショップを取りにいきます。ここでもf6からh5に跳んだナイトが、e4のマスの利きを失っている問題を利用しています。

19... Re7 20. Nd6 Rxe2 21. Rxc8 Rxc8 22. Nxc8 Rxb2 23. Rxa7 1-0


c8のビショップを落として、あっさりと試合は終わりました。黒としては力を出し切れず悔いが残るゲームだと思いますが、自分で作り出した問題が新たな問題を招き、自身を苦しめる例として取り上げさせてもらいました。

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