全日本も4日目に入り、終わりが近づいてきました。私は午前のラウンドで、日本のジュニアチャンピオンに何度かなった大多和くんとの対戦です。大多和くんは、3月のオーストラリアとこの全日本で大幅にレイティングを上げ、6月のFIDE レイティング更新では日本のトップ10 に入るかもしれません。
Otawa, Y (JPN, 1895) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Japan Chess Championship 2018 (7)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 a6 5. Qc2 g6 6. Bd3 Bg7 7. Nf3 O-O 8. O-O Bg4 9. Ne5 Be6 10. b3 c5 11. Ne2
Japan Chess Championship 2018 (7)
大多和くんが3. Nc3 4. e3 の手順でSlav に対応することは分かっていたので、この変化に対しては何を指すかぎりぎりまで悩みました。4... Bf5!? 5. cxd5 cxd5 6. Qb3 Nc6 7. Qxb7 Bd7 8. Qb3 Rb8 のGlasgow Kiss Variation も一通り勉強しましたが、ポーンの代償はあっても黒がドローを目指す感じが否めません。4... a6 5. Qc2 e6 のAccelerated Meran もAnand の研究で、手堅いですがドロー模様。そこで初めてa6 g6 のミックスを指してみることにします。11. Ne2 は多い手でしたが、手持ちの本ではメインとして紹介されていなかったため、ほとんど調べていませんでした。
11... Nfd7!? 12. Nxd7 Nxd7 13. cxd5
13. Bb2 cxd4 14. Nxd4 dxc4 15. bxc4 Nc5 16. Nxe6 Nxe6 17. Bxg7 Kxg7 という筋はゲーム中に見えましたが、黒は問題ないでしょう。試合後にデータベースの解説をチェックしても、大丈夫だラインとして紹介されていました。
13... Bxd5 14. e4 Bc6 15. Bb2 e6 16. Rac1 Rc8 17. Ba3
私はもう1つの手として、ルークをセンターに回す手を読んでいましたが、17. Rfd1?! cxd4! 18. Nxd4 Bh6! 19. Bc4 (19. Rb1 Bxe4! ) 19... Bxc1 20. Qxc1 このようにエクスチェンジを捨てなければいけないのは、白にとって面白くないでしょう。
17... cxd4!
ここは黒がエクスチェンジを捨てる1手です。強力なパスポーンがd4 にでき、黒マスビショップも残るのであれば、代償は十分だと考えました。白はルークを活かす場所がありません。
18. Bxf8 Qxf8
18... Bxf8! 19. Qd2 (19. f4 Ba3!-/+) (19. Nxd4?! Ne5 20. Nxc6 Rxc6 21. Bc4 b5-/+) 19... Nc5!=/+ d4 のポーンを取らせても大丈夫であることには気づかず、ビショップで取る手は考えていませんでした。確かにc5 のマスが早めに使えるのはビショップ取りの魅力です。
19. f4 e5 20. f5?!
f7 をターゲットにする作戦は悪くありませんが、20. Bc4 Qd8 のようにゆっくり指して様子を見るべきでした。h6-c1 のダイアゴナルを開けてしまうと、強力な反撃を食らってしまいます。
20... Bh6!
20... b5 と指し、Bd3-Bc4 を止める手も考えましたが、本譜が成立することに気付いてそちらを採用します。大多和くんは黒の最も重要なディフェンスである23手目を見落としていました。
21. fxg6 hxg6 22. Bc4 Bxc1 23. Qxc1
23. Bxf7+ Qxf7 24. Rxf7 Be3+ 25. Rf2 Rf8-+ これではクイーンを取っても、駒が全く足りていません。
23... Bd5!
私も自分で見つけておきながら、このディフェンスのアイディアに驚きました。この手でf7 を守ることができるところまで読めて、初めて20... Bh6 を指すことができます。
24. exd5 b5 25. Ng3 bxc4 26. bxc4 Qe7?!
黒は駒数を互角に戻し、ポーンの位置で優位に立ちますが、白の反撃を完全に抑え込むアイディアが見つけられませんでした。正解は26... d3! 27. Qg5 Rxc4 28. Nf5 Qc5+ 29. Kh1 Rf4-+ で、これならば白の攻撃を受け切って完全に黒勝勢です。
27. Ne4?
27. d6! Qxd6 28. Qg5! Rxc4 29. Nf5 Qb6 30. Ne7+ Kg7 31. Nf5+= 私はg5 のマスを守るつもりでクイーンをe7 に置きましたが、ポーンを捨ててもこのクイーンを逸らせば、Qc1-Qg5 からドローにできるところまで読めませんでした。
27... f5 28. Qh6 Qg7 29. Qxg7+ 29... Kxg7 30. Nd6 Rb8
クイーンを交換して一息つくことができました。お互いに駒数は同じで2コネクテッドパスポーンを持ちますが、c5 のマスをしっかりナイトで抑えているため、黒は白のポーンの前進はあまり恐れる必要はありません。あとは上手くd,e ポーンを進めて勝負を決めるのみです。
31. g4 e4
31... f4 32. Ne4 ではポーンの前進が遅れてしまいます。そこで本譜ではポーンを取らせても、パスポーンを前進させることにします。31... Nc5! 32. gxf5 Rd8-+ このようにナイトをトラップするアイディアもありました。
32. Rd1
32. gxf5 e3 33. fxg6 e2 34. Re1 d3 35. Ne4 Ne5 36. Kg2 Nxc4-+ f5, g6 を取らせても黒はなんら危なくありません。
32... d3 33. gxf5 33... e3 34. Ne4
34. Rxd3 Rb1+ 35. Kg2 e2-+ はプロモーションを止めるために白はルークを捨てるしかなく、ゲーム終了です。
34... e2 35. Re1 gxf5 36. Nf2 Ne5 37. Nxd3 Nxd3 38. Rxe2 Rb1+ 39. Kg2 Nf4+ 0-1
最後はナイトではなく、ルークアップとなって黒の勝利です。途中、エクスチェンジを捨てる強気な決断から、最後まで気を抜かずに上手く指せたと思います。
続く8R でも松尾さんに勝ち。初日以来の連勝となりました。しかし、トップを並走するTuさんも、小林くん、山田くんに勝ってぴったりとついてきています。この均衡がいつ崩れるのか、それとも崩れずに2人で走り切るのか。今年の全日本も残りは3試合です。
R1 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Kanda, D (JPN, 1859) 1-0
R2 Kobayashi, A (JPN, 2061) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 0-1
R3 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Shiomi, R (JPN, 2085) 1-0
R4 Aoshima, M (JPN, 2280) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 1/2-1/2
R5 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Higashino, T (JPN, 1978) 1-0
R6 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Tran, T T (CM, VIE, 2319) 1/2-1/2
R7 Otawa, Y (JPN, 1895) - Kojima, S (IM, JPN, 2400) 0-1
R8 Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Matsuo, T (CM, JPN, 2242) 1-0
R9 Manabe, H (JPN, 2071) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
明日は1日休みとなり、明けた9R は真鍋さんとの対戦と発表されています。Tuさんは私に敗れながらも、5.5P ここまで取っている松尾さんですので、まだまだ優勝の行方はわからないと思います。皆さん、明日はゆっくり休んで、また明後日池上でお会いしましょう!
Japan Chess Championship 2018 R9 Pairings
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