2018/05/14

Tokai Open 2018 Tournament Report


昨日は東海オープンに参加するため、名古屋へと足を運んできました。今年は東海地区にチェスクラブが誕生してから50年の記念の年ということで、例年以上に名古屋チェスクラブ主催のイベントが豪華になり、開催頻度も上がっています。

東海オープンは私にとって、昨年に続いて2回目の参加。前回は1日4試合のスケジュールですが、今年からは持ち時間を減らし、代わりに1日5試合に試合数が増えています。開始直前のエントリーキャンセルもありましたが、2000オーバーが7人、全体で21名の参加者で大会がスタートしました。

私はスタートから、阿部くん、鈴木さん、横尾くん、Yamaguiharaくんに勝って単独4連勝。しかし、4Rで古谷くんに勝ったScottさんも0.5P差の3.5/4で追ってきているため、最終戦まで優勝の行方は分かりません。最後は当然Scottさんとの直接対決で、奇しくも全日本最終戦と同じペアリングになりました。

Scott, T - Kojima, S
Tokai Open 2018 (5)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 Qc7!?



過去、4... h54... h6 は試したことがありましたが、昨年の新潟で中国のChen, Q に敗れて以来、他の可能性も模索していました。他のラインにもありますが、将来的なg2-g4に対して、ビショップをd7に退くのが黒の狙いです。

5. Nc3 a6 6. g4 Bd7 7. Be3 e6 8. Qd2 c5 9. dxc5 Bxc5 10. O-O-O Ne7


指した直後に10... Bxe3 11. Qxe3 Nc6 12. Nf3 Nge7 と進めていれば、本譜と違ってf2-f4を突かせておらず、白のキングサイドアタックのチャンスを制限できたことに気付きました。それでも、本譜のようなポーンストラクチャーはオンラインで何回も試しており、ある程度は経験のある形です。

11. f4 Bxe3 12. Qxe3 Nbc6 13. Nf3 h5!?



g4のポーンを崩すことで、f5のマスを手に入れ、白のf4-f5のアイディアを遅らせる作戦です。この手を嫌い、白からh4-h5を早めに入れるアイディアも時々見られます。

14. Bh3 O-O-O


コンピュータは早めに14... hxg4を推しますが、私は少し様子を見ることにしました。いずれにせよ黒はクイーンサイドにキャスリングをし、cファイルから手を作ります。

15. Ne2 Kb8 16. Kb1 Rc8 17. Rc1 Na5 18. b3 Bb5!?



ややパッシヴな白マスビショップをどう捌くかが黒の課題です。私のアイディアは一度ナイトとの交換を見せておき、タイミングを見て退きます。

19. Ned4 Qb6 20. Qd2 Bd7 21. Ka1 Rc7 22. Rhg1 hxg4 23. Bxg4 g6


本当はこの手を入れず、すぐにcファイルにルークを重ねたかったのですが、それだと24. h5からg7のポーンを固定されて困ると考えました。

24. Rh1 Rhc8 25. h5 gxh5 26. Bxh5 Be8



私もキングサイドとクイーンサイドで逆ですが、King's Indian でこうした端のファイルを突破し、7段目のポーンを攻撃するアイディアを使ったことがあります。ここではf7のポーンはターゲットになりますが、c7のルークの横利きもディフェンスに使えるので大きな問題は無いと考えました。

27. c3 Nec6 28. Bg4 Nxd4 29. cxd4


ここはc3のポーンを捌いたほうがターゲットが消えるとScottさんは考えたようですが、私はcファイルがすぐに開き、何かしらのチャンスが作れるほうがありがたいと思いました。29. Nxd4 Nc6 30. Kb2 Nxd4 31. Qxd4 Qxd4 32. cxd4 ならば、おそらくドローになると思います。

29... Nc6 30. f5 Nb4 31. Rxc7 Rxc7 32. Rc1 Rxc1+ 33. Qxc1 Qb5!?



互いに時間のほとんど無い中、勝負にいくことを決めました。もちろん、33... Bd7 などとしてe6を守るほうが安全なことは分かっていましたが、それよりもクイーンを素早く侵入させるほうが白にとってもディフェンスに気を遣わなければならず、間違いも起こりやすいと考えたのです。トーナメントで優勝することを優先するのであれば、ここは安全策でドロー狙いのほうが良かったかもしれませんが、全日本の最終戦で勝ち切れなかった悔しいが胸にあり、この試合はなんとしても勝ちたいと思っていました。

34. fxe6 Qe2 35. Qd2 Qf1+ 36. Kb2


当然キングが上がるこの1手しかないと思っていましたが、コンピュータは違う手も示し目を丸くします。36. Ne1 fxe6= (36... Qxe1+ 37. Qxe1 Nc2+ 38. Kb2 Nxe1 39. Bh5! これは時間のない中、見つけづらい1手です。39... fxe6 40. Bxe8 Ng2 41. Kc3 Kc7=) ナイトをe1で捨てても、白はピースを取り換えることは見落としていました。

36... Nd3+ 37. Kc2



ここはキングをどちらに動かすか、白は悩むところだと思います。c2であれば、将来的なBe8-Bg6のターゲットとなり、c3ならば、Nd3-Nf2-Ne4のターゲットとなるためです。37. Kc3 Nf2 38. exf7 Bxf7 39. e6! Ne4+ 40. Kc2 Bg6 41. Qh2+ Ka7 42. Kb2 Nf6 43. Qc7 Nxg4 44. Qc5+ Ka8 45. Qf8+ Ka7 46. Qc5+= ピースを捨ててパペチュアルチェックに持ち込むこうした変化を、時間のない中正確に読むのは大変です。

37... fxe6 38. Nh2


38. Qxd3 Qg2+ 39. Nd2 Qxg4 40. Qf3 Bg6+ 41. Kc3 Qg1 42. Qf8+ Ka7 43. Qc5+= ビショップvs. ナイトの構図になるのは黒にとってありがたいと思っていましたが、白はクイーン交換の催促や、パペチュアルチェックのアイディアがあるので大丈夫なようです。

38... Ne1+ 39. Kd1 Qg1 40. Qxe1 Qxh2



こうして勝負にいったポジションから、クイーンの侵入とピースの交換を行い、一息ついたのがこのポジションです。全日本と違い、40手で時間も増えませんので、まだまだ互いに時間切迫で、素早く正確な判断が求められる状況です。

41. Qe2?


試合後、Scottさんが悔やんだのがこの1手です。黒はリスクなくd4を取ることができるため、これで勝ちのチャンスとなります。代わりに41. Bxe6 Qxa2 42. Qc3 Bh5+ 43. Kc1 Qa3+ 44. Kd2 Qa2+ 45. Qc2 Qa5+ 46. Qc3 Qa2+ ならば、黒からパペチュアルチェックを入れるしかなく、ドローでゲームは終わっていたでしょう。しかし、e6を取った瞬間、白の白マスビショップは浮いているため、これが落ちないかを心配しなければいけません。時間があれば、クイーンによるダブルアタックはないと読めますが、時間切迫の状況ではe6を取ることをためらう気持ちもよく理解できます。

41... Qg1+! 42. Kc2 Qxd4


ここはぎりぎりまで考え、早めにd4を取るべきか悩みました。42... Bg6+ 43. Kb2 (43. Kc3 Qc1+ 44. Kb4 a5+! この手が見えず、ビショップチェックを諦めました。45. Kxa5 Qa3+ 46. Kb5 Be8+ 47. Kb6 Qa7#) 43... Qxd4+ 44. Ka3 b5 45. Qe1 Qxg4-+ こうしてビショップまで取れれば、簡単に黒勝ちでした。

43. Bxe6 Bg6+ 44. Kc1 Qa1+ 45. Kd2 Qxa2+ 46. Ke1 Qxb3



それでも、こうしてポーンを立て続けに取ってしまえば黒の勝勢です。この先は互いにパスポーンの進めあいになりますが、白のポーンはe8のマスを抑えられているのに対し、黒のポーンはクイーンをアタックするテンポを得ながら順調に前進できそうです。

47. Bg8 Qc3+ 48. Kf2 d4 49. e6 d3 50. Qf3 Qd2+


最後はQf3-Qf8-Qc5といったパペチュアルチェックを防げば黒勝ちですが、クイーンのベストのマスがどこなのか、短い残り時間ではすぐには分かりませんでした。50... Qc2+ 51. Kg3 d2 52. Qf8+ Ka7 53. Qf2+ b6-+ ならば、f7も抑えているので問題なく黒勝ちです。

51. Kg3 Qe1+ 52. Kg4 d2 53. Qf8+ Be8!



代わりに私が見つけ、面白いと思ったのはビショップを捨てるアイディアです。白はクイーンでこのビショップを取ってしまうと、c5-a7のダイアゴナルを使うことができず、チェックがすぐに途絶えてしまいます。

54. Qd6+ Ka8 55. Qd8+ Ka7 56. Qd4+ b6


今度はe8に退いたビショップが、見事にd7のマスを抑えており、7段目のチェックも問題ありません。

57. Qg7+ Kb8 0-1



最後まで気の抜けない試合でしたが、無事に終わってほっと胸をなでおろします。これで2年連続全勝での東海オープン優勝を決めることができました。


1st Place Kojima Shinya 5/5
2nd Place Suzuki Masateru 4/5
3rd Place Yanaguihara Vitor Kiyoshi 3.5/5
4th Place Scott Tyler 3.5/5


昨年は私とScottさんだけでしたが、今年はA,Bクラスの入賞者とも記念撮影となり、賑やかな最後となりました。一つ前の愛知県選手権から、名古屋チェスクラブ主催の大会はSwiss Manager ペアリングが組まれ、Chess Results でエントリー状況や結果が公開されるようになりました。最終結果については、こちらもご確認ください。

東海オープン2018 最終結果



今回の名古屋遠征は全日本の始める少し前に決めたものですが、久々に泊りではなく日帰りでした。そこで利用したのがJR東海ツアーズの、日帰り1day 行っトクか!名古屋というプランです。往復の新幹線(のぞみの指定)に、名古屋駅の指定の売店で使える1500円分のチケット、名古屋駅の指定のレストランで使える1500円分のチケットがついて、合計16000円でした。普通に新幹線のチケットを買えば往復で20000円を超えるため、これはかなり割安です。ただし1500円分の食事券は名古屋駅の指定のレストランの指定のメニューにしか適応されないため、何か別に食べたい目当てのものがある人にとっては、もったいなく感じるかもしれません。私はかなり迷った挙句、鶏肉の専門店で名古屋コーチンの親子丼セットを頂きました。

名古屋のチェスクラブには、1月の同時対局イベントに続いてお世話になりました。7月の中部快速オープンも参加しようかと考えておりますので、引き続きよろしくお願い致します。また本格的に暑くなるころ、名古屋のメンバーとお会いできることを楽しみにしています!

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