2018/08/31

麻布学園チェス部夏合宿 2018


3月の春合宿に続き、麻布学園チェス部の夏合宿で、コーチとして指導をしてきました。今回の合宿地は山梨県の河口湖。中学高校の部活動の合宿や、大学のサークル合宿でも人気の地です。私が河口湖を訪れるのは、数年前の暁星の夏合宿以来で、とても懐かしい気持ちになりました。


河口湖は東側の温泉街が人気エリアですが、今回の宿は西側にあるホテルです。近年の合宿としてはかなり多い、22人の参加者がありました。(春は13人) 中学1年生も複数入部し、初の合宿にも参加しており、OB としては嬉しい限りです。

初日はレクチャーがメインとなり、昼食後から夕飯までみっちりと6時間ほどチェスに取り組みます。前半では発想力を試す課題やチェスの知識を問う質問に答えさせ、その後で実際のゲームを見せて、どのような考え方、ピースの働きが登場するかを確認します。最近見つけて面白かったポジションは、以下のものでしょうか。


Debray, C - Kvashyna, T
Syre Memorial Open 2013 (3)
Black to move

ピースを捨てた直のこの局面、黒が正しい手を指せば勝ちですが、それを見つけられなければピースアップで白勝ちになります。実際のゲームでは、黒は正解を見つけられずに負け... 自分がこうなったらと思うと悔しいですね。


手を考えてもらっている間、22人11ボードを回って生徒の意見に耳を傾けます。「これでどうか」「それに対して、こうならどうするか」「そうかー」とみんな真剣です。上級生と下級生では当然レベルに差はありますが、完全に下に合わせてしまうと上の子たちは退屈です。上手く課題のレベルを調整しながら、難しくとも面白いと感じてもらえる局面、ゲームはどんなものか、私も毎回の悩みですね。

夕飯後は恒例の同時対局を翌日に回し、ブリッツにしました。私と指したい人はどうぞ、と声をかけたところ、次々と挑戦者が現れ1時間半はブリッツタイムが続きました。いつものこの時間は同時対局をしていることを考えれば、私の負担は多少軽いですが、河口湖までの移動もあって終わる頃にはへとへとです。


2日目は私にとっても人生最多となる22面同時対局です。午前中の3時間ほどしか時間がないため、事前に相談して通常の同時対局ではなく、22個の対局時計を使ったクロックサイマルにすることにしました。私が回ってきたら1手指すスタイルの同時対局では、おそらく22面で3時間半~4時間ほどかかりますが、60分+1手30秒の持ち時間であれば、おそらく3時間以内に全て決着はつくと判断しました。しかし、普通はこれほど多い同時対局で時計を使うことはありえないですね(笑)


Kojima, S - Nagataki, K
Azabu Summer 2018 Clock Simul
Position After 33. Qxh6

長瀧くんとのゲームはクイーンを取って勝勢になったはずが、ちょっとした緩手で黒に反撃を許してしまい、形勢をおかしくしてしまいました。

33... Rb8!


ルークがクイーンサイドにまわる手を完全に見落としていて、ここからかなり焦ります。ルークのバックランクの侵入を許すことになれば、g2 のポーンが突如として脅威になって黒勝ちになるでしょう。

34. Bd1 Rb1 35. Qd2 Nd5! 36. f3??



ここが一番難しい局面で、他のゲームも回らなければいけない状況では正解を見つけることができませんでした。36. Qg5+! Ke6 37. Kh2!! Nxc3 (37... Rxd1?? 38. Qg4++-) 38. Bg4+ f5 39 Bxf5+! Bxf5 40. Kxg2= こうしてビショップを捨ててもg2 のポーンを消せば、白はドローに持ち込めるというのがコンピュータ評価です。

36... Bxf3 37. Qg5+ f6??


しかし、ここで黒に痛恨のミスが出てゲームは終わりました。37... Kf8 38. Qd8+ Kg7 39. Qg5+= ならばドロー。しかし、37... Ke6!-+ ならば白クイーンに有効なチェックは無く、Nd5-Nxc3 があるため、白はビショップを守ることができません。

38. Qg7+ Kd8 39. Qh8+ 1-0



長瀧くんはh7 でのチェックから、ルークが取られてしまうことを見落としていました。ビショップがe4 にいる時点ではルークは守られていたため、そのままだと勘違いしてしまったのでしょう。完全に拾わせてもらったゲームでした。

同時対局は21勝1敗で、新部長の松山くんにだけ敗れました。このゲームは30分私が持ち時間を残していましたが、簡単なタクティクスの見落としでどうしようもない駒損となり、リザインです。クロックサイマルの難しい点として気付いたことですが、通常の試合であれば30分残り時間があれば10分でも、15分でもベストの手を考えられますが、この形式ではそうしてると他のゲームの持ち時間も考えた分だけ減り、どこも時間切迫となってしまいます。どのボードのどこで時間を使い考えるか、もしくは指さずに考えたままで他のボードに移るか、なかなか判断が難しいことを実感しました。それでも良い経験でしたので、また機会があればやってみたいですね。


2日目の昼食後、私は後輩たちに別れを告げて宿を後にしました。移動先は駅ではなく、河口湖の北側に位置する大石公園です。ここでは季節の草花と、目の前の雄大な河口湖を楽しむことができます。この日も海外からの多くの観光客でにぎわっていました。


ちなみに私の目的は大石公園に隣接するハナテラスという場所です。ここには河口湖のお土産を売るショップや、山梨の特産品をメインとしたカフェが集まっています。山梨にせっかく来たので桃か葡萄を食べたいと思い、葡萄屋 Kofu の葡萄ソフトクリームをいただいたのでした。見た目の色の通りの味の濃さで、足を運んだ甲斐がありました!


大石公園を後にしてからは、猫のダヤン作品が展示されている木の花美術館までバスで移動し、そこからオルゴール美術館、河口湖美術館と湖畔に沿って歩き、河口湖大橋も渡って駅まで戻りました。このルートは数年前の合宿でも歩いており、そこを久々に歩きたかったことも、この帰り道を選んだ理由でした。どこかでも書いたかもしれませんが、私は海や川、湖などの水辺でゆっくりするのが好きなようです。

後輩たちの合宿は金曜日が最終日でしょうかね。これが最初、もしくは現役最後の合宿になるメンバーもいることでしょう。皆さん、最後まで楽しんだくださいね。また来年の春合宿でもよろしくお願いします。

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