2015/08/17

Simultaneous Event at Google


Google の一室にて Photo by Mizutani

ジャパンリーグ明けの今日は、都内でのレッスンを一つこなした後で、六本木ヒルズにあるGoogle のオフィスへと向かいました。目的はGoogle でのチャリティーイベントとして、チェスの同時対局を行うことです。今年の春頃、Google に勤める、麻布チェス部の先輩である水谷さんから話を持ちかけられ、ようやく今日、実現となりました。

参加者は、Google の社員9人と聞いていましたが、当日の病欠やキャンセルがあり、5人との対局になりました。前日のNi Hua の同時対局に比べればずっと小規模だったものの、その分、2時間弱の枠内で、それぞれの人とゆっくり1局ずつを指し、終わった後は面白かったゲームのポジションをピックアップして、解説もできました。今回のイベントのためにルールを覚えられた人も、久々にチェスを指したという人も、皆さん楽しかったというメッセージをくれましたので、私としても大満足です。今年は福岡と松戸でそれぞれ一回ずつ、同時対局イベントを開催していますが、今回のイベントはまた趣が異なり、私自身もとても楽しかったです。普段、チェスにさほど馴染みがない人でも、こうして楽しんでいただけるようなイベントの企画、協力は、今後も行っていきたいですね。


イベント後は、水谷さんと2人でゆっくりと食事をしながら、日本のチェスの現状や、今後の展望について話をしてきました。10年前、すぐ近くの高校に通うチェス好きの高校生だった私たちが、道は違えど、こうして協力して一緒に何かができるというのは、不思議なことだと思います。今回の企画を担当してくださった水谷さん、そして今日の参加者の皆さん、ありがとうございました。また来年以降も機会があれば、よろしくお願い致します。

2015/08/16

Japan League 2015 Day4 Tournament Report


青嶋くんとの初公式戦, Photo by Hasegawa

とうとうジャパンリーグも最終日。単独優勝をかけた大事な最終戦は、今年から頭角を現してきたプロ棋士の青嶋くんとの対戦です。先月のIVL と同じ黒ですが、公式戦での対戦は今回が初めてです。

Aoshima, M (JPN, UR) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Japan League 2015 (7)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. e4 b5 6. Be2!?



以前、オンラインで対戦した際もこの形だと記憶していますが、今回は色々と調べてきたようです。珍しいラインですが、進めてみると白はさほど悪くありません。

6... e6 7. O-O Be7 8. a4 b4 9. e5 bxc3 10. exf6 Bxf6 11. bxc3 Ba6


白の早い仕掛けを食らい、少し間違えたかなとも思いましたが、ここから黒の方針を丁寧に考えていきます。c4 のポーンはいずれ回収され、マテリアルはイコールになったとしても、遅れていたピースの展開を完了し、c6-c5 から弱点のcポーンを捌いてしまえば、黒は問題ないでしょう。

12. Nd2



この手はc4 を取りにいく手として、非常に素直です。しかし、私が試合後に青嶋くんに指摘したのは、12. Ne5!? と跳びこむ変化でした。12. Ne5!? Bxe5 13. dxe5 Qxd1 14. Rxd1 Nd7 15. f4 こうなれば、白はすぐにポーンを取り返せずとも、黒マスやdファイルのコントロールで代償を持ち、面白味のあるポジションで戦うことができるでしょう。黒がe5 のナイトを取らなければ、b8 のナイトを展開することができないため、本譜より明確に良いと言えます。

12... Nd7 13. Nxc4 O-O 14. Ba3 Be7 15. Bxe7 Qxe7 16. Ne5


白がピースを捌く単純化を嫌うのであれば、16. Na5!? と跳ぶ手も面白いでしょう。

16... Bxe2 17. Qxe2 c5!?



17... Nxe5 18. Qxe5 Rad8 でもOK ですが、私はあくまでc6-c5 のブレイクから、孤立ポーンを消すプランを選択しました。ここで一度目のドローオファーです。

18. Rab1


18. Nxd7 Qxd7 19. dxc5 Qc7 と進む変化は、黒がc5 のポーンを取り返した後、c3 にさらにプレッシャーをかけることができるため、黒としては満足です。

18... Nxe5 19. dxe5 Rab8 20. Rb5 Qc7 21. Rfb1 Rxb5 22. Rxb5 Rd8 1/2-1/2



狙い通り、c6-c5 から弱点を消し、ピースを捌いて完全にイコアライズに成功しています。この試合をドローで終え、6/7 という戦績でフィニッシュ。最終戦で勝ったZhao Xue と南條くんを半歩リードし、単独優勝を決めました。


今年のジャパンリーグ入賞者たち, Photo by Hasegawa

1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2389)
2nd Place Zhao, X (GM, CHN, 2533)
3rd Place Nanjo, R (IM, JPN, 2330)


終わってみれば、リスト上位のタイトルホルダーが入賞を占めました。今回、こうしてZhao Xue のような強豪GM を相手に、大会で競り勝てたことは素直に嬉しく思います。全日本では思ったようなプレーができず、レイティングを落として少し落ち込みもしました。最近はチェスを教える仕事が増え、自分の研究時間があまり割けずに、実力が落ちたのではないかと考えることもありました。しかし今回の結果で、そうした不安を消すことができ、自分のやっていることが間違いではないと思えたことは、私にとって大きな収穫です。多くの人のチェスを見ることで、自分の得意なチェスのスタイルを見直せたことが、良い結果に繋がったと考えています。


大会後は予定通り、GM Ni Hua によるレクチャーと同時対局イベントが開催されました。同時対局には、世界に50人しかいない2700クラスのGM との対戦を求め、34名ものプレーヤーが参加。会場を確保している時間ぎりぎりまで、4時間半ゲームが続けられましたが、半数以上は終わりませんでした。そこで、Zhao Xue の形勢判断で結果を決め、見事に三阪さんと青嶋くんが勝利! どちらも、続けていれば間違いなく勝てるポジションだったでしょう。2人とも、おめでとうございます!


Ni Hua との同時対局には参加しなかった南條くんは、裏でこっそりとZhao Xue とブリッツをしていました。勝てた試合もあり、満足だった様子。ジャパンリーグのメインの試合では、運悪くZhao Xue と対戦できませんでしたからね。

最後になりましたが、今回の参加者と運営陣、そして中国からきてくれた2人のGM たち、皆さん4日間、本当にお疲れ様でした。また次のトーナメントで、お会いしましょう。私は今月末、名古屋に遠征して名古屋オープンに参加する予定です。東京からの遠征者は、そちらでもよろしくお願い致します。

2015/08/15

Japan League 2015 Day3 Tournament Report


中国女子代表GM Zhao Xue との対戦, Photo by Hasegawa

今日は時間がないので、2つのゲームをサクッとご紹介しておきます。まずは午前中の桑田くんとのゲームからです。


Kuwata, S (JPN, 2135) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Japan League 2015(5)
Position After 21... Ra7

桑田くんとのゲームは、予想通りにCaro-Kann Advanced で、互いに逆サイドで手を作り合う展開に。2ピースを捌いている黒は、さほど白のキングサイドアタックは脅威にならないだろうと考えていました。ここで桑田くんは絶対に指してはいけない手をチョイスします。

22. f4? Nxc3!


桑田くんらしくないタクティクスの見落としてです。b4, d4 を支えるc3 のポーンは白のディフェンスの要であり、ここが崩れてしまっては勝負になりません。

23. Nd6 Kg8 24. Rf3 g6 25. Qh6 f6



こうしてe5 のポーンを崩しつつ、7段目に利きを開いてh7 さえ守ってしまえば、黒は全く問題なく勝ちです。

26. Bxf6 Bxf6


試合中、自信がなかったのは以下のような変化です。26... Rxf6 27. Rxc3 axb4 28. Rcc1 Bxd6 29. exf6 Qxf6-+ このように進めてみれば、黒はエクスチェンジを捨てても勝てることが分かりますが、本譜ではもう少し安全に指します。

27. Rxc3 axb4 28. Rh3 b3 29. Rd1 b2 30. Ne4 Qxd4+ 31. Rxd4 b1=Q+ 32. Kf2 Bxe5



こうしてe5 のポーンまで落ちてしまっては、白に抵抗する方法は残されていません。

33. Qxf8+ Kxf8 34. fxe5 Qb2+ 35. Rd2 Rf7+ 36. Ke3 Qxe5 37. Rh4 g5 38. Rg4 h5 0-1


ここをきっちり勝って、連勝を5まで伸ばしました。この時点で2位とは1P 差がつき、5R で青嶋くんとドローだった、Zhao Xue を迎え撃ちます。


Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Zhao X (GM, CHN, 2533)
Japan League 2015(6)
Position After 38... Rc2

時間が増える寸前、私は確かにZhao Xue をロープ際まで追い詰めていました。残り時間もこちらが多く、これは6連勝になったとすら思っていました。

39. h4!


e2 のポーンを無視して、Kg2-Kh3 と上がるメイトスレットを作れば勝ちだろうと読みました。実際にこれで黒は困っています。

39... Bc5 40. Rc6?


しかし時間が増える40手目で、私は決め手を逃しました。このピンにする手でNf5-Ne3 の狙いも作り、白の勝ちだと思いましたが、実際には別の手でメイト受けなしです。40. Rf6! (狙いは、Nf5-Ng7+ の後の、Rf6-Rf4#) 40... Kg4 41. Nh6+ Kh5 42. Kh3! Rc3 43. Nf5+-


Analysis Diagram

これでメイトです。 ルークをfファイルに切り替えるアイディアは、時間の無くなるぎりぎりまで考えて見つけるべきでした。

40... Rc1


こうした当たり前の手で黒はメイトを防ぎ、まだまだ粘ります。

41. Nd4 a5 42. Rc7 Kg6 43. g4 Kf6 44. g5+ Kg6 45. e3 Rc3 46. Nb5



40... Rc1 に対して、増えた30分をほとんど使ってしまった私は、時間切迫で勝ちのアイディアを見つけることができませんでした。46. Rc6+ Kf7 (46... Kh5 47. Kg3! Rxe3+ 48. Kf4+- こうしてキングが上がるアイディアが分からず、チェックをためらってしまいました。) 47. Nf5 Bb4 48. Rxc3 Bxc3 49. Nd6++- これでe4 のポーンを取れば、もちろん白の勝ちです。

46... Rc1 47. Nd4 Rc3 48. Nb5 Rc1 1/2-1/2


こうして日本でのGM との初公式戦は、ドローに終わりました。勝ちを拾えなかったことは残念ですが、この時点で5.5/6 で2位に1P 差をつけ、最低でも同時優勝を確定させました。また、最終戦はFIDE レイティングの無い青嶋くんとの対戦ですので、FIDE 公式戦は6試合で終了し、レイティングは+11 となります。これで次回の更新で2400ジャストに戻り、3か月ぶりに羽生さんを抜いて日本ランキング一位に返り咲きます。それだけで満足することなく、ここまできたからには最終戦もきっちりとポイントを取って、単独優勝を決めたいですね。皆さん、明日の最終日もよろしくお願い致します。

2015/08/14

Japan League 2015 Day2 Tournament Report

ジャパンリーグ2日目のレポートです。予想通り、前夜のペアリング発表に誤りがあり、私は桑田くんではなく、三ツ矢さんと対戦することに。オリンピアードのチームメイトでもある三ツ矢さんとは、この2年間、国内のFIDE 公式戦ではよく当たります。オープニングはSlav Exchange となり、丁寧に押していって勝ち。

このラウンド、トップボードの桑田-Zhao Xue はドローとなり、日本の公式戦で私が知る限り、初めてGM がポイントを落としました。桑田くんはこの調子を維持し、4R では、黒を持って馬場さんを下し、全日本選手権最終ラウンドの雪辱を晴らしました。一方で私は、トップボードに上がって、同じく3連勝の南條くんとの対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Nanjo, R (IM, JPN, 2330)
Japan League 2015 (4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 c6 9. h3 Qb6 10. c5!?



10. Re1 がAverukh の勧めで、私も何回か指したことがありましたが、たまたま先週、このc4-c5 Gambit を調べる機会があり、この大事な一戦で投入してみることにしました。

10... dxc5 11. dxe5 Ne8 12. e6 fxe6 13. Ng5 Ne5 14. f4 Nf7 15. Nxf7 Bd4+ 16. Kh2 Rxf7 17. e5 Nc7


私が先日、黒を持って自身で指してみた感触では、クイーンを早めに退き、ナイトはg7 へ運ぶセットアップのほうがしっくりきました。17... Qc7 18. Ne4 b6 19. Ng5 Re7 20. Qc2 Ba6 21. Re1 Rd8 22. Be4 こうして黒のキングサイドにプレッシャーをかけるのが白のアイディアで、これは本譜でも出てきます。

18. Ne4 Nd5 19. a4 Bd7!?



通常であれば、このビショップはb7-b6, Bc8-Ba6 と使うものです。ポーンストラクチャーの内側に閉じこもっている状態では、やや働きに不満があるでしょう。19... a5 20. Ra3 Qc7 21. h4 b6 22. h5 といった展開を予想していました。

20. a5 Qc7 21. Ra3


c1 のビショップが動きづらい以上、a1 のルークはこのように3段目からゲームに参加するものです。

21... Raf8 22. h4 Kh8 23. Ng5 Rg7 24. Be4 h6



ルークを3段目に展開してから、黒のキングサイドにアタックを仕掛ける準備をさらに整えますが、これに対して南條くんは、h7-h6 とナイトを追い払ってきました。白からのh4-h5 や、g5 に居座るナイトが厄介ですが、g6, h6 が将来的に弱くなる点が少し気になります。

25. Nf3 Qd8 26. Kg2!?


コンピュータは、26. Nxd4 cxd4 27. Qxd4 とビショップを取って、ポーンも取り返してしまうべきだと主張しますが、私はd4 のビショップが働いているかどうかが疑問で、あえて早めにナイトとの交換を決めなくても良いのではないかと考えました。あくまでピースを残し、キングサイドでのアタックを画策します。

26... Be8 27. Nh2 Ne7 28. Nf3 Nf5 29. Rh1



Nf3-Nh2-Ng4 はあまり効果的ではないと考えを改め、g,h ポーンを押し進める作戦に切り替えます。

29... Rd7 30. Qe2 Kg7 31. Rh3 Bf7 32. g4 Ne7 33. Bb1!?


この手は、e4 のマスを空けておくことで、Qe2-Qe4 のチャンスを作ることや、f4-f5 を仕掛けた際に、e4 のビショップがターゲットにならないようにすることを目的としています。

33... Be8 34. Rg3 b5 35. axb6 axb6 36. h5 Nd5 37. f5!



時間が増える40手間際、私から仕掛けます。この先はかなり難解ですが、最終的に間違えたのは南條くんでした。

37... g5 38. Qe4 Kh8 39. fxe6?


私はRa3-Rf3 で白がはっきり良くなると読み、f5-f6 と押し込むのではなく、fファイルを開くことにしました。しかし、これには読み抜けがあり、先にビショップを取っておく手が正確でした。ただしその変化も複雑です。39. Nxd4! Nf4+ 40. Bxf4 Rxd4 41. Rgd3!!


この手以外は、白が良くならないというコンピュータの指摘ですが、見えません! 41... exf5 42. Rxd4 cxd4 43. gxf5 gxf4 44. f6 Qd5 45. Qxd5 cxd5 46. Bg6+- こうして2コネクテッドパスポーンができれば、クイーンを捌いてしまっても白勝ちでしょう。私はNd5-Nf4+ のアイディアを軽視していました。

39... Rg7 40. Nxd4 cxd4?


時間の増える40手目、南條くんに致命的なミスが出ました。ここは先述のアイディアである、ナイトのチェックを入れておくべきです。40... Nf4+! 41. Kh2 Qxd4! こうしてクイーンで取る手が指せれば、黒キングへのプレッシャーはほとんどなくなり、黒は本譜に比べてぐっと楽になります。

41. Raf3!+-



これが39手目でfファイルを開いた狙いで、ルークをfファイルから突入するアイディアを使えば、h7 やh6 をを守っていけない黒にとって苦しい展開となります。

41... Rxf3 42. Rxf3 Kg8 43. Qxd4


もちろん、ポーンを回収しておきます。Nd5-Nf4+ のディスカバードアタックに対しては、ルークで取る手があるので問題ありません。

43... c5 44. Qc4 Bc6 45. Be4 Qa8 46. Kg1



ここは少し時間を使い、慎重に手を進めることにします。今度こそ、Nd5-Nf4+ を警戒しなければいけない白は、シンプルにキングをチェックにならない位置に逃がしておきます。

46... Kh8 47. Qf1!


これは自信を持って指すことができました。fファイルにヘビーピースを重ねた白は、f8 とf7 両方にルークの侵入を見せ、勝負を決定づけます。

47... Nf4 48. Bxc6 Qxc6 49. Bxf4 gxf4 50. Rxf4 Qxe6 51. Rf8+ Rg8 52. Qf5!



これが見えたうえでの、47. Qf1! です。それでも駒を置く瞬間まで、しっかりと読み抜けが無いことを確認しました。

52... Qe7


52... Qxf5 53. Rxg8+ Kxg8 54. gxf5+- このポーンエンディングは問題なく白勝ちです。

53. Rf7 Rxg4+ 54. Kf1 1-0



最後も少し面白い形です。Qe7-Qh4 がチェックになってしまうと大逆転負けなので、キングを逃がすマスはf1 以外にありません。こうして互いにIM になってから初の公式戦は私に軍配が上がり、単独4連勝を決めたのでした。


試合後、南條くんからは「やるじゃん」という、彼なりの最高の賛辞をいただきました(笑)`Photo by Yumiko Hiebert

明日は桑田くんとトップボードでの対戦になります。さらに2B では、プロ棋士の青嶋くんとGM Zhao Xue という好カードも組まれています。後半戦残り3試合も、皆さん悔いの無いようにしっかり指してきましょう!

2015/08/13

Japan League 2015 Day1 Tournament Report


今日からいよいよ、今年のジャパンリーグが開幕です。今年は中国からGM のZhao Xue がトップシードで参加となり、彼女との対戦を求めて48名のプレーヤーが集まりました。Zhao Xue 以下は、プロ棋士の青嶋くん、私と南條くんのIM コンビ、日本チャンピオンの馬場さんと続きます。私は初日、後藤さんとGaryくんに勝ち。ジュニアチャンピオンになったばかりの、Gary くんとのゲームをご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Gary, L (JPN, 2005)
Japan League 2015 (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. Bf4!?



ここ数日の研究で、かつてハンガリーで一度だけ指したこのラインを復活させることにしました。おそらく、全日本選手権で指した8. h3 はある程度調べてきているでしょう。

8... Nh5 9. Be3 e5?!


私はすでにこの何気ない手が、黒にとって大きなミスだと考えています。ポジションを開ければ、ピースの展開が早い白に分があります。

10. dxe5 dxe5 11. Qxd8 Rxd8 12. Nd5!



これですでに黒は困っています。私は8. Qd3!? e5 9. dxe5 dxe5 10. Qxd8 Rxd8 11. Bg5 のラインと比較して、このポジションを評価していましたが、早々にd5 にナイトを運ぶことができ、c7 をアタックしている白に大きなポジショナルアドバンテージがることは疑いようがありません。

12... Rd7 13. Rfd1 f5 14. Ng5!


Ng5-Ne6 を見せ、さらにc7 にプレッシャーをかけます。

14... e4 15. f3!?



ここは慎重に考えつつも、大胆にポーンを捨ててみることにしました。白はe4 のポーンを崩せば、再びh1-a8 のダイアゴナルを強力に抑え、黒陣にプレッシャーをかけ続けることができます。白マスビショップの復活は、b2 を捨てても行うべきだと考えました。

15... Bxb2?!


これはストレートすぎて、白は何事もなくマテリアルを取り返し、優勢が明らかになります。15... exf3 16. exf3 (16. Bxf3!? Bxb2 17. Rab1 Be5 18. Bxh5 gxh5 19. Nf3 Bg7 20. Bf4+/= こちらは検討でGary くんと考えた変化です。) 16... Bxb2 17. Rab1 Bg7 18. f4+/- こうなれば、白はポーンを捨てても全てのピースがアクティブで、c8 のビショップの展開に困っている黒は、苦しいポジションが続くでしょう。

16. Rab1 Bg7 17. fxe4


白はポーンを取り返したうえで、ビショップのダイアゴナルを開くことに成功しました。

17... Ne5 18. exf5 gxf5 19. Bc5! Nc6 20. Nxc7!



少し見えづらいタクティクスですが、バックランクメイトを絡めることで、捨てたピースを取り返すことができます。

20... Rxc7 21. Bxc6 Bf6


この手は実は見えておらず、黒が生き残るのは計算外でした。それでも1ポーンアップですし、b7 へのプレッシャーが続くので、白は慌てずにベストムーブを探します。

22. Bd5+ Kh8 23. Bb6 Re7 24. Nf7+ Kg7 25. Nd6



ここはかなり時間を使って、どう手を作っていくか考えました。2手かけてナイトがたどり着いたd6 は、b7 とf5 を狙える好位置です。

25... Be5 26. Bf3 Nf6 27. Bd8 Rd7 28. Nxf5+ Kf7 29. Ne3


この手が見えて間違いなく勝ちを確信しました。2ポーンアップの白は、ナイトをさらに安定した位置に戻し、フィニッシュの準備を進めます。

29... Bd4 30. Bb6 Bxb6 31. Rxb6 Re7 32. Rxf6+ Kxf6 33. Nd5+ Kf7 34. Bh5+ Kf8 35. Rf1+ 1-0



こうして完勝と言える内容でGary くんを下し、初日連勝を決めました。連勝は最初に書いた5人と、桑田くん、三ツ矢さん、唐堂くん、小林くんをあわせた9人ですが、次のペアリングには若干の疑問があるため、非公開にしておきます。2日目も頑張って、良い試合をしてきたいですね。Zhao Xue との対戦も、楽しみにしています。


試合後はGM Ni Hua のレクチャーも予定通りに開催されました。世界に50人程しかいない、2700台のGM です!

2015/08/07

Weekly Chess Puzzle Vol.10


Kojima, S (FM, JPN, 2329) - Takahashi, R (JPN, 2099)
Thailand Open Chess Championship 2011(2)
White to move and win


Kojima, S (JPN, 2277) - Nakamura, R (JPN, 2183)
Japan Chess Championship 2009(4)
White to move and win

最近更新をサボり気味で、全くWeekly ではなくなってしまいましたが、あまり気にしないことにしましょう。久々のパズル2問出題です。タイまで遠征に行って、なぜかルームメイトの礼二さんと当たったゲームから一つ、IM Sam Collins が優勝した、懐かしの全日本選手権のゲームから一つです。答えはコメント欄にご自由にどうぞ。

2015/08/06

Japan League 2015 Tournament Information


2013年のJapan League より

今年も夏のチェス界の祭典、Japan League の時期が近づいてきました。昨年はオリンピアードと被ったために不参加で、今年は2年ぶりの参加となります。2年前はどんな大会だったかと写真を振り返ると、惇多くんのいた年だったことを思い出しました。あの年、優勝を争った私、南條くん、惇多くんは全員IM になっており、2年という月日の流れを感じます。ちなみに盾の取り違え問題もありましたね(笑)

そして今年は2年ぶりの優勝を狙うと宣言したいところですが、海外から強力なゲストがやってくるため、そう簡単ではないでしょう。すでにJCA のHP で公開されていますが、その2人とは中国のGM Ni Hua とZao Xue です。Ni Hua はレイティング2700オーバーで、中国の現役代表メンバー、Zao Xue も女子で貴重なGM のタイトルを持つプレーヤーで、当然中国女子の代表です。


Chinese GM Ni Hua, chessdom より


Chinese GM Zhao Xue, chessbase news より

私は2007年のマカオでNi Hua を、2006年のトリノでZao Xue を知り、隣国のトッププレーヤーとして、その活躍を追ってきました。今回、そんな2人が来日することをとても嬉しく思います。ちなみにJapan League の試合に参加するのは、Zhao Xue のみ、Ni Hua は2日目以降のレッスンと同時対局を担当するそうです。(ここを紛らわしく書いてしまったこと、お詫び申し上げます。)2日目と3日目の夜にはNi Hua による無料のレクチャー、4日目の午後に有料のレクチャーと同時対局イベントがありますので、Japan League に参加しないプレーヤーも楽しめそうですね。しかも、4日目のレクチャー+同時対局の参加費は、どちらも参加して2000円という格安です。

GM が2人来日しての大会参加、およびイベントは私の知る限り、初めてのことです。皆さん、是非この機会に中国のトッププレーヤーたちとの交流を楽しんでください! 今年のJapan League は、8/13(木)-8/16(日) の4日間の日程での開催です。来週、蒲田で皆さんとお会いできることを楽しみにしています。

2015/08/05

My Memorable 2000 Games


16th IVL より Photo by Hasegawa

今週の月曜日、イングランドの元U14 チャンピオン、大山彰人くんと久々に会ってきました。2012年のロンドン遠征で会い、IVL にもゲストとして一度参加した彼も、もう高校生になるそうです。時の流れは早いですね。彼とはブリッツやポジション研究のほか、ラピッドを1試合指してきました。そのゲームを自分のChess Baseに入力したところ、それがちょうど2000試合目でした。2005、2006年頃の試合の棋譜を紛失しているので、実際にはもっと多いのですが、これを一つの節目として記事を書こうと思います。

私が自分のデータベースに入力しているゲームは、公式戦、非公式戦に関わらず、ラピッド以上の棋譜を取った試合が基本ですが、時には面白かったオンラインのゲームや、ブリッツもあります。公式戦を全くしない月もあれば、年末年始のハンガリーのように、マスタークラスと月に30試合をこなす月もあるので、頻度はまちまちですが、15年目で2000試合というのは、結構なハイペースかもしれません。15年の間にチェスから離れていた、いわゆるブランクの期間が全く無いのも、私のチェス歴の特徴でしょう。

2000試合の中には思い出深いゲームも多く、それらを見ると当時のことを懐かしく思い出します。初めての公式戦で勝ったゲーム、先輩に勝ったゲーム、クイーンを取って勝勢だったのに、大逆転で負けて悔しい思いをしたゲーム、全日本選手権での初優勝を決めたゲーム、初めてIM, GM に勝ったゲーム、IM ノームやIM タイトルを確定させたゲームなど、挙げていけばきりがありません。その1つ1つが重なって、2000という大台に到達したことを、とても嬉しく思います。これらのゲームは、私がどうやってこの15年を生きてきたかという軌跡だと思っています。

今月のジャパンリーグでは、2001試合目から2007試合目をすることになるでしょう。2000という数字はただの通過点で、今後も試合を1つ1つこなしていくことになります。最近はコーチ業が忙しいですが、プレーヤーとしてもまだまだこれからですので、あらためて皆さん、よろしくお願い致します。

2015/08/04

Saturday Lecture on August 22nd 2015


Sato, K - Kojima, S / Japan Junior Championship 2006(6)

【日時】 2015年8月22日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Good and Bad Piece Exchange
【テーマ詳細】

一般的にナイトとビショップ、ルーク同士、クイーン同士など、同じ価値の駒を交換することに大きな損得はないはずです。しかし、交換して消えた駒がどのように働いていたかや、残った駒の働きによっては、白黒いずれかに有利な交換だと判断できるケースがあります。今回はそのような、良いピースの交換と悪いピースの交換について扱います。どちらかに有利なピース交換には、どのような例があり、どのように判断すべきかを一緒に考えていきましょう。

【参加費】 一律1200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

予定していた人数制限は無しとなり、予約も不要となりましたので、お気軽にお越しください。今月もよろしくお願い致します。2015/08/11 追記

2015/08/03

Japan Women Chess Championship 2015 Tournament Report


最終戦の1B 橋本 - 石塚戦

先週末は日本の女子チャンピオンを決める全日本女子選手権が開催されました。この夏のシーズン、第1週のサマーオープン、第2週のジュニア、小学生、シニア選手権に続き、3週連続での大会です。今年の女子選手権は、来年、アゼルバイジャンの首都、バクーで開催されるチェスオリンピアードの、女子代表選手選考会も兼ねている重要な試合となります。14名の女子選手が集まり、5つの代表枠を競い合いました。

初日は前年度女子チャンピオンの内田さんが、ブラジルの星野華怜に負ける波乱があり、3連勝の華怜を2.5P の石塚さんと橋本さんが追う展開となりました。5R 終了時点では、石塚さんと華怜が4P で並び、チャンピオンをかけた最終戦を迎えます。


Hashimoto, A - Ishizuka, M
Japan Women Chess Championship 2015(6)

QGD での典型的な、c5, d5 のHanging Pawns から、石塚さんはc5-c4 と仕掛けました。d4 をアウトポストにし、d5 のポーンを弱めるリスクのあるプレーではありますが、こうしてbファイルを突破し、b2 の白ポーンとd5 の黒ポーンを交換してしまえば、黒がcファイルにパスポーンを持つ有利なエンドゲームとなります。

33... Rxc2 34. Rxc2 Rd2


もちろん黒はルークを交換し、パスポーンをブロックする邪魔者を消しにいきます。クイーンの位置も最高で、パスポーンを守りながら、f2 をアタックしています。

35. Rxd2 cxd2 36. f3


36. Qd1 Qc3 37. Kf1 Qc4+! 38. Kg1 Qc1-+ こうした変化もチェックしておくべきでしょう。黒はクイーンをチェックを1回挟むことで、白キングがパスポーンに寄ることを許しません。

36... Qc3 0-1



これで白は、次のQc3-Qc1 からのプロモーションを防ぐことができません。石塚さんはこの貴重な白星により、最終戦でドローになった華怜を半歩リードして、単独優勝を決めました。この10年間、オリンピアードに2回、その他の海外大会も多数一緒に参加してきた石塚さんでしたが、女子選手権の優勝は今回が初めてです。石塚さん、おめでとうございます!


1st Place Ishizuka Mirai (JPN, 1674)
2nd Place Hoshino Karen (WCM, JPN, 1626)
3rd Place Uchida Narumi (WFM, JPN, 1970)


最終的に上位3名に入ったのは、オリンピアード代表経験のあるメンバーでした。ジュニア選手権に引き続いて奮闘した華怜は、優勝には一歩届かなかったものの、負けなしで終始安定したプレーを見せてくれました。また来年の夏、ジュニア選手権と併せ、タイトルを狙って来日してくれることを楽しみにしています。レイティングトップの内田さんは、今年こそ女王の座を逃してしまいましたが、並の男子プレーヤーでは歯が立たない実力者であることは間違いありません。今後も腕を磨き、日本の女子プレーヤーを牽引してもらいたいと思います。

また、入賞の3人を含め、4位と5位の福谷さん、橋本さんまでが、来年のオリンピアード代表権を獲得しています。5人とも、おめでとうございます! 最終的にオリンピアードに参加するかどうかの決定時期はまだ先なので、6位以下にも代表権が繰り下がる可能性があります。来年にかけて、男子、女子のどちらも代表メンバーが気になるところですね。ちなみに、今年の全日本選手権で2位になった私は、当然ながら参加を希望します。

それでは、今年の全日本女子選手権に参加されたプレーヤーの皆さん、運営と見学の皆さん、2日間お疲れ様でした。私はこの3週間、大会のレポーターと化していましたが、来週のジャパンリーグからは、プレーメインに戻ります。ジャパンリーグについての記事は、早ければ明後日にでも公開しようと思いますので、そちらもよろしくお願い致します。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.