ブダペストで5月のFirst Saturday が始まりました。私はIM ノームを目指してIM セクションに参加。11人で10R のラウンドロビンです。メンバーは若干の変更があり、以下の通り。
1. Dolgener,Tobias (GER, 2215)
2. Gledura, Benjamin (FM, HUN, 2312)
3. Lengyel, Bela (IM, HUN, 2260)
4. Wang, Xinyue (CHN,2041)
5. Farago, Sandor (IM, HUN, 2270)
6. Gupta, Bhaskar (IND, 2096)
7. Petran, Pal (IM, HUN, 2365)
8. Kojima, Shinya (FM, JPN, 2264)
9. Tesik, Csaba (FM, HUN, 2339)
10. Galyas, Miklos (IM, HUN, 2403)
11. Korpa, Bence (HUN, 2297)
Average: 2260,2
First Saturday では、最初にくじを引いてリストを決め、その場で全ラウンドのペアリングと色が確定します。私はリスト8で、初戦の相手は地元のIM Fragao,S でした。一昨年は白で綺麗に勝ちましたが、(そのゲームはCheck Mate Lounge の公式HP にて、私のベストゲームとして公開されています。)今度は黒です。途中で大きな勘違いをしてピースが落ちましたが、相手のブランダーで大逆転、辛くも勝利を収めました。
Farago, S (IM, HUN, 2270) - Kojima, S (FM, JPN, 2264)
Sveshnikov のサイドラインの一つ。Dresden Olympiad のニカラグア戦で経験があります。白は黒のb7-b5 を防ぎますが、その代わりにd5 のアウトポストのコントロールが弱くなります。
f3 を突かせておくことで、g1-a7 のダイアゴナルや、キングの守りを弱めます。
ここまではKramnik の実戦にあり、研究手順でした。ここからどう指していくか考え始めます。
ナイトを活用し直すには、このようにセンターに戻すのが自然に見えますが、私は自分のビショップをアクティブにし、さらにはダブルビショップを得るチャンスだと感じました。
評価の難しいポジションです。白はビショップを取らせましたが、b6 にナイトを固定し、クイーンサイドのポーンマジョリティーで勝負できます(将来的にc4-c5 と突いてパスポーンを作る)。一方、黒にはダブルビショップとキングサイドのポーンの厚みがあるので、逆サイドから仕掛けて白キングを脅かすことができます。
ここは25... Bd2!=/+ が良い手でした。a5 のポーンを狙いつつ、クイーンが動けばBd2-Bb4-Bc5 と、さらなる好位置に切り替えることができます。私はBg5-Bf4 でキングにプレッシャーをかけた後に、Bd2 と潜り込む手ばかりを考えていました。
この地味な一手が私の狙いを砕くことになるとは、全く予想していませんでした。
今振り返れば、なぜこの冷静なディフェンスを見落としていたのでしょうか。キングの動く場所はこれ以外の二ヶ所ばかりを読んでいました。d2 にはクイーンが、e3 にはルークが利いています。
ビショップは諦めて、キングを攻めるプランを選びます。28... Bd2 29. f4 Bxf4 30. gxf4 Qxf4+ 31. Kg1 Qg5+ 32. Rg3 Qh6 33. Rg2+/= で、白良しながら黒が戦えるというコンピュータの評価には、疑問を抱かずにはいられません。
ポーンストラクチャーの良さでは勝負できないので、eファイルを開いてアタックを仕掛けます。
ビショップを捨てた時点では、ここでe2 が取れると思っていました。キングで取り返されて何もありません。
冷静な一手です。ポーンを一時的に捨ててもdファイルに強力なパスポーンを作れば、黒のアタックは緩和されます。
f5 を取らせても、クイーンを戦場に戻すことが唯一希望に繋がると信じました。次の持ち時間が増える手で(相手は時間切迫ではありませんでしたが)初めて相手に悪手らしい悪手が出ます。
残り時間2分ほどまで考えて、これは悪手だと確信できました。黒クイーンがクイーンサイドに回り、a5 のポーンを脅かせれば黒にチャンスが出てきます。検討で出た変化は40. Be4+- で白勝勢。41...Bb3?? 42.Rxb3! Rxb3 43.Bd5++- がダメなので、黒に望みはないでしょう。試合中、42.Rxb3! には気づいていませんでした。
42. Qxd4 Rxc2+ 43. Kxc2 cxd4 -/+ ならば、黒がかなり有利なエンドゲームです。
d8 と h7 のダブルスレット(d8 だけでも十分ですが)で勝負ありと読んだのでしょうか。黒からはパペチュアルチャックがあり、なんかドローに逃げられたと思ったのも一瞬で、ゲームは意外な展開を迎えます。
相手がキングを手にして止まりました。a5 を取られた際にチェックであることに、ようやく気付いたのでしょう。当然ベストは44. Bb1 Qc3+ 45. Bc2 Qa1+= です。
45. Kc1! が黒が勝ちを見つける最も難しい手で、45...Qxb6 46. Qxh7+ Kf8 47. Qh8+ Bg8 48. Re1 Rxd7 49. Bf5 Qb3 50. Bxd7 Qc3+ 51. Kd1 Qd3+ 52. Kc1 Qxd7 53. Re4 ならば、まだ勝負は分かりません。
完全にラッキーで拾ったゲームでしたが、1pは1p です。残り9試合で6.5p以上ならIM ノームですが、前半戦はそこまで気負わずにやろうと思います。
記事がさらに長くなってしまいますが、2R 以降のペアリングも公開しておきます。日曜の今日は休みで、月曜はインドの子供と試合です。
R2(Mon) Kojima, Shinya - Gupta, Bhaskar
R3(Tue) Petran, Pal - Kojima, Shinya
R4(Wed) Free Day
R5(Thu) Kojima, Shinya - Tesik, Csaba
R6(Fri) Galyas, Miklos - Kojima, Shinya
R7(Sat) Kojima, Shinya - Korpa, Bence
R8(Sun) Dolgener,Tobias - Kojima, Shinya
R9(Mon) Kojima, Shinya - Gledura, Benjamin
R10(Tue) Lengyel, Bela - Kojima, Shinya
R11(Wed) Kojima, Shinya - Wang, Xinyue
最後は写真を少し貼っておきます。
1. Dolgener,Tobias (GER, 2215)
2. Gledura, Benjamin (FM, HUN, 2312)
3. Lengyel, Bela (IM, HUN, 2260)
4. Wang, Xinyue (CHN,2041)
5. Farago, Sandor (IM, HUN, 2270)
6. Gupta, Bhaskar (IND, 2096)
7. Petran, Pal (IM, HUN, 2365)
8. Kojima, Shinya (FM, JPN, 2264)
9. Tesik, Csaba (FM, HUN, 2339)
10. Galyas, Miklos (IM, HUN, 2403)
11. Korpa, Bence (HUN, 2297)
Average: 2260,2
First Saturday では、最初にくじを引いてリストを決め、その場で全ラウンドのペアリングと色が確定します。私はリスト8で、初戦の相手は地元のIM Fragao,S でした。一昨年は白で綺麗に勝ちましたが、(そのゲームはCheck Mate Lounge の公式HP にて、私のベストゲームとして公開されています。)今度は黒です。途中で大きな勘違いをしてピースが落ちましたが、相手のブランダーで大逆転、辛くも勝利を収めました。
Farago, S (IM, HUN, 2270) - Kojima, S (FM, JPN, 2264)
First Saturday 2012 May IM (1)
1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. a4!?
Sveshnikov のサイドラインの一つ。Dresden Olympiad のニカラグア戦で経験があります。白は黒のb7-b5 を防ぎますが、その代わりにd5 のアウトポストのコントロールが弱くなります。
7...a6 8. Na3 Bg4!?
f3 を突かせておくことで、g1-a7 のダイアゴナルや、キングの守りを弱めます。
9. f3 Be6 10. Bc4 Nb4 11. O-O Rc8 12. Nd5 Nbxd5 13. exd5 Bd7
ここまではKramnik の実戦にあり、研究手順でした。ここからどう指していくか考え始めます。
14. c3 Be7 15. Be3 O-O 16. Qb3 Qc7 17. Bb6 Qb8 18. Nc2
ナイトを活用し直すには、このようにセンターに戻すのが自然に見えますが、私は自分のビショップをアクティブにし、さらにはダブルビショップを得るチャンスだと感じました。
18...Bf5! 19. Ne3 Bg6 20. Be2 Nd7 21. Nc4 Nxb6
評価の難しいポジションです。白はビショップを取らせましたが、b6 にナイトを固定し、クイーンサイドのポーンマジョリティーで勝負できます(将来的にc4-c5 と突いてパスポーンを作る)。一方、黒にはダブルビショップとキングサイドのポーンの厚みがあるので、逆サイドから仕掛けて白キングを脅かすことができます。
22. Nxb6 Rc7 23. a5 Qd8 24. c4 Bg5 25. Ra3 f5
ここは25... Bd2!=/+ が良い手でした。a5 のポーンを狙いつつ、クイーンが動けばBd2-Bb4-Bc5 と、さらなる好位置に切り替えることができます。私はBg5-Bf4 でキングにプレッシャーをかけた後に、Bd2 と潜り込む手ばかりを考えていました。
26. Qd1
この地味な一手が私の狙いを砕くことになるとは、全く予想していませんでした。
26...Bf4 27. g3 Qg5?! 28. Kf2!
今振り返れば、なぜこの冷静なディフェンスを見落としていたのでしょうか。キングの動く場所はこれ以外の二ヶ所ばかりを読んでいました。d2 にはクイーンが、e3 にはルークが利いています。
28...Qh6
ビショップは諦めて、キングを攻めるプランを選びます。28... Bd2 29. f4 Bxf4 30. gxf4 Qxf4+ 31. Kg1 Qg5+ 32. Rg3 Qh6 33. Rg2+/= で、白良しながら黒が戦えるというコンピュータの評価には、疑問を抱かずにはいられません。
29. gxf4 Qxh2+ 30. Ke1 exf4
ポーンストラクチャーの良さでは勝負できないので、eファイルを開いてアタックを仕掛けます。
31. Qd4 Re7 32. Qf2 Qh3
ビショップを捨てた時点では、ここでe2 が取れると思っていました。キングで取り返されて何もありません。
33. Kd2 Rfe8 34. Bd3 Re3 35. c5!
冷静な一手です。ポーンを一時的に捨ててもdファイルに強力なパスポーンを作れば、黒のアタックは緩和されます。
35...dxc5 36. d6 Bf7 37. d7 Rd8 38. Rc3 Qh6 39. Bxf5 Qf6
f5 を取らせても、クイーンを戦場に戻すことが唯一希望に繋がると信じました。次の持ち時間が増える手で(相手は時間切迫ではありませんでしたが)初めて相手に悪手らしい悪手が出ます。
40. Bc2?
残り時間2分ほどまで考えて、これは悪手だと確信できました。黒クイーンがクイーンサイドに回り、a5 のポーンを脅かせれば黒にチャンスが出てきます。検討で出た変化は40. Be4+- で白勝勢。41...Bb3?? 42.Rxb3! Rxb3 43.Bd5++- がダメなので、黒に望みはないでしょう。試合中、42.Rxb3! には気づいていませんでした。
40... Qd4+ 41. Kc1 Rxc3 42. bxc3
42. Qxd4 Rxc2+ 43. Kxc2 cxd4 -/+ ならば、黒がかなり有利なエンドゲームです。
42... Qxc3 43. Qh4
d8 と h7 のダブルスレット(d8 だけでも十分ですが)で勝負ありと読んだのでしょうか。黒からはパペチュアルチャックがあり、なんかドローに逃げられたと思ったのも一瞬で、ゲームは意外な展開を迎えます。
43... Qa1+ 44. Kd2?
相手がキングを手にして止まりました。a5 を取られた際にチェックであることに、ようやく気付いたのでしょう。当然ベストは44. Bb1 Qc3+ 45. Bc2 Qa1+= です。
44... Qxa5+ 45. Kd1?
45. Kc1! が黒が勝ちを見つける最も難しい手で、45...Qxb6 46. Qxh7+ Kf8 47. Qh8+ Bg8 48. Re1 Rxd7 49. Bf5 Qb3 50. Bxd7 Qc3+ 51. Kd1 Qd3+ 52. Kc1 Qxd7 53. Re4 ならば、まだ勝負は分かりません。
45... Qxb6 46. Qxh7+ Kf8 47. Qh8+ Bg8 48. Re1 Rxd7+ 49. Kc1 Qf6 50. Kb1 Qf7 51. Re4 Qa2+ 52. Kc1 Qa1+ 53. Bb1 Qa3+ 54. Kc2 Qb3+ 0-1
完全にラッキーで拾ったゲームでしたが、1pは1p です。残り9試合で6.5p以上ならIM ノームですが、前半戦はそこまで気負わずにやろうと思います。
記事がさらに長くなってしまいますが、2R 以降のペアリングも公開しておきます。日曜の今日は休みで、月曜はインドの子供と試合です。
R2(Mon) Kojima, Shinya - Gupta, Bhaskar
R3(Tue) Petran, Pal - Kojima, Shinya
R4(Wed) Free Day
R5(Thu) Kojima, Shinya - Tesik, Csaba
R6(Fri) Galyas, Miklos - Kojima, Shinya
R7(Sat) Kojima, Shinya - Korpa, Bence
R8(Sun) Dolgener,Tobias - Kojima, Shinya
R9(Mon) Kojima, Shinya - Gledura, Benjamin
R10(Tue) Lengyel, Bela - Kojima, Shinya
R11(Wed) Kojima, Shinya - Wang, Xinyue
最後は写真を少し貼っておきます。
試合会場のHotel Medosz。宿泊先から徒歩5分でした。
本屋さん
写真屋さん
マネキン怖い
会場の前では演奏とダンスのイベントが行われていました。
夕飯は同じ宿の日本人たちと。
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