Welcome Olympiad!よりも1日長かったプレミアムも、無事に最終日を迎えました。私は4日目も連勝し、パラグアイのGM Delgado Ramirezを抑えて優勝することができました。3Rでの彼との直接対決で敗れた際は優勝は難しいと思いましたが、残り試合を粘り強く指せたことが良い結果に繋がったと思います。入賞者の皆さん、おめでとうございます!
午前に指したIM Nomin-Erdeneとの試合は、少し判断を間違えてアドバンテージを手放してしまいましたが、相手のキャスリングできないキングに対して積極的に攻め、なんとか白星を手にしました。続く午後のラウンドはパラグアイのAlmironだと思っていましたが、ハンガリーのHorvathが相手だと発表されました。今日はこちらの最終戦をお届けします。
黒はaポーンをa4まで伸ばすことでNd2-Nb3を防ぎますが、それに対して白はナイトを組み替えて伸びすぎaポーンを狙います。この組み換えをしなければ、黒はNe7-Nc6, Bf8-Be7と組めて満足でしょう。
黒は一時的にポーンを失いましたが、白のポーンストラクチャーを乱せており、c4のマスが将来的に活用しやすいアウトポストになっています。本譜のナイトを退く手は、g2-g4,f2-f4-f5を狙う典型的なアイディアですが、14. Bd3! Bxd3 15. Qxd3 Nb6が私のメインの準備でした。
白マスビショップの交換は、b1のマスを奪い返してRa1-Rb1をできるようにする自然なアイディアで、私も予想の範疇でした。しかし実際にはこれが悪手で、試合後に相手から、18... Nxd4! 19. Qxd4 (19. Nxd4 Nxe5 20. Qe3 Qxd4!-+) 19... Qxb5-+ ができたと指摘されました。e5からナイトを捨てる手は考えていたのですが、d4からは盲点でした。やはり白は中途半端にgポーンだけを進めたことがマイナスになっています。
c4のナイトは捌かれましたが、代わりに強力なパスポーンが生まれ、d5が新しいアウトポストになっています。そこに残ったナイトを向かわせるのは自然なアイディアに思えます。
白キングの危うさを踏まえれば、クイーンは残しておきたい気持ちもありました。しかし、白のバラバラなポーンをどんどんと狙え、e2のフォークのチャンスもあるならば、ナイトを早めにf4に入れておく判断は良かったと思います。
白のナイトは難しい決断を迫られます。c3に退いてe2のマスをカバーするのが自然に思えますが、c4に反撃するタイミングが遅れるうえ、ナイト自体がターゲットになります。33. Nc3 Rxa3 34. Kf1 fxe5 35. dxe5 Nd3-+ 黒はエクスチェンジを取れずとも、ばらばらな白のポーンを早く落として勝勢でしょう。
e4のナイトをピンしたことで、f2のポーンを落とすことができました。これで1段目に縛り付けたキングをメイトするチャンスも増え、かなり黒が楽になります。
46. Nxc6 Rxd8 47. Nxd8 Re4-+と進んでも、ルークを切ってeポーンとナイトを消してしまえば黒は残ったgポーンのみで勝てます。
09/05 16:00 R1 Salamon, L (HUN, 2001) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/06 09:30 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nandin-Erdene, D (HUN, 2039) 1-0
09/06 15:00 R3 Delgado Ramirez, D (GM, PAR, 2484) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 1-0
09/07 09:30 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Minga-Nagy, A (HUN, 2054) 1-0
09/07 15:00 R5 Miszler, L (FM, HUN, 2262) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/08 09:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nomin-Erdene, D (IM, MGL, 2319) 1-0
09/08 14:00 R7 Horvath, K (HUN, 2154) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
ブダペストは良い天気の日が多いです。ドナウ川の向かいには左手に王宮、右手に漁夫の砦が見えます。
1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2299) 6/7
2nd Place Delgado Ramirez Neuris (GM, PAR, 2484) 5.5/7
3rd Place Almiron Antonio (FM, PAR, 2312) 5/7
4th Place Miszler Levente (FM, HUN, 2262) 5/7
5th Place Latorre Matias (FM, PAR, 2264) 5/7
XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest Final Standings
2nd Place Delgado Ramirez Neuris (GM, PAR, 2484) 5.5/7
3rd Place Almiron Antonio (FM, PAR, 2312) 5/7
4th Place Miszler Levente (FM, HUN, 2262) 5/7
5th Place Latorre Matias (FM, PAR, 2264) 5/7
XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest Final Standings
午前に指したIM Nomin-Erdeneとの試合は、少し判断を間違えてアドバンテージを手放してしまいましたが、相手のキャスリングできないキングに対して積極的に攻め、なんとか白星を手にしました。続く午後のラウンドはパラグアイのAlmironだと思っていましたが、ハンガリーのHorvathが相手だと発表されました。今日はこちらの最終戦をお届けします。
Horvath, K (HUN, 2154) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest (7)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. O-O a5 7. Nbd2 a4 8. c4 h6 9. cxd5 cxd5 10. Nb1!?
黒はaポーンをa4まで伸ばすことでNd2-Nb3を防ぎますが、それに対して白はナイトを組み替えて伸びすぎaポーンを狙います。この組み換えをしなければ、黒はNe7-Nc6, Bf8-Be7と組めて満足でしょう。 XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest (7)
10... Ne7 11. Nc3 a3 12. Nb5 Nc6 13. bxa3 Be7 14. Ne1
黒は一時的にポーンを失いましたが、白のポーンストラクチャーを乱せており、c4のマスが将来的に活用しやすいアウトポストになっています。本譜のナイトを退く手は、g2-g4,f2-f4-f5を狙う典型的なアイディアですが、14. Bd3! Bxd3 15. Qxd3 Nb6が私のメインの準備でした。
14... O-O 15. g4 Bh7 16. Ng2 Qb6!
先述のようにf2-f4が普通だと思いましたが、ナイトをe3、またはf4に跳ぶ準備をされるとどうするか少し悩みました。f7-f6から開こうとする手はe6を弱め、Ng2-Nf4で困っています。そこで考えたのはb6にクイーンを出してa7-g1ダイアゴナルを抑え、f2-f4を牽制すると同時に、b5のナイトとd4のポーンをターゲットにするアイディアです。b5のナイトは好位置に見えますが、実際はあまり狙う駒もマスもありません。17. Bd3? Bxd3 18. Qxd3 Na5?!
白マスビショップの交換は、b1のマスを奪い返してRa1-Rb1をできるようにする自然なアイディアで、私も予想の範疇でした。しかし実際にはこれが悪手で、試合後に相手から、18... Nxd4! 19. Qxd4 (19. Nxd4 Nxe5 20. Qe3 Qxd4!-+) 19... Qxb5-+ ができたと指摘されました。e5からナイトを捨てる手は考えていたのですが、d4からは盲点でした。やはり白は中途半端にgポーンだけを進めたことがマイナスになっています。
19. Rb1 Nc4 20. Ne3 Qc6 21. Bd2 Bxa3
タクティクスのワンチャンスは見逃したものの、白マスビショップ交換後にc4のアウトポストにナイトを潜り込ませ、なおかつポーンも取り返せたのでこれで黒が良くなったと感じました。そしてこの辺りで隣のトップボード、パラグアイの代表対決がドローで終わりました。タイブレークで不利な私がDelgado Ramirezを上回るためには、1P必要なことがこの時点でほぼ決まり、この試合を勝ちにいく覚悟を決めます。22. Nxc4 dxc4 23. Qg3 Be7 24. a3 Nb6
c4のナイトは捌かれましたが、代わりに強力なパスポーンが生まれ、d5が新しいアウトポストになっています。そこに残ったナイトを向かわせるのは自然なアイディアに思えます。
25. Rfc1 Nd5 26. h4 Ra4 27. h5 Kh8 28. g5 hxg5 29. Bxg5 Bxg5 30. Qxg5 f6!
これはタイミングを図っていた手で、fファイルを開くことでf4のマスを抑え、Nd5-Nf4を実現します。d5のポーンがc4にずれたことでa8-h1ダイアゴナルが開いたことも黒としては大きな武器で、g2でのメイトやe2でのナイトをフォークを狙ってプレーを続けます。31. Qg2 Nf4!
白キングの危うさを踏まえれば、クイーンは残しておきたい気持ちもありました。しかし、白のバラバラなポーンをどんどんと狙え、e2のフォークのチャンスもあるならば、ナイトを早めにf4に入れておく判断は良かったと思います。
32. Qxc6 bxc6 33. Nd6
白のナイトは難しい決断を迫られます。c3に退いてe2のマスをカバーするのが自然に思えますが、c4に反撃するタイミングが遅れるうえ、ナイト自体がターゲットになります。33. Nc3 Rxa3 34. Kf1 fxe5 35. dxe5 Nd3-+ 黒はエクスチェンジを取れずとも、ばらばらな白のポーンを早く落として勝勢でしょう。
33... Ne2+ 34. Kf1 Nxc1 35. Rxc1
念願のナイトフォークで、この試合初めて黒が駒得になりました。はっきりと優勝が見えてきましたが、だからこそ細かなミスもできないと試合中は緊張しました。35... fxe5 36. dxe5 Rxa3 37. Rxc4 Ra2 38. Ne4 Rf4! 39. Rd4 Raxf2+
e4のナイトをピンしたことで、f2のポーンを落とすことができました。これで1段目に縛り付けたキングをメイトするチャンスも増え、かなり黒が楽になります。
40. Kg1 Rc2
しかし、相手も反撃のバックランクチェックを狙っているため油断は禁物です。ここで40... Re2? 41. Rd8+ Kh7 42. Ng5+ Kh6 43. Nxe6 Rg4+ 44. Kf1と進もうものなら、h8でのメイトとルーク取りがダブルスレットになり、大逆転です。これを防ぐためにルークは白キングから離しておき、何かあった時のためにcポーンを守っておきます。41. Rd8+ Kh7 42. Ng5+ Kh6 43. Nxe6 Rg4+ 44. Kf1 Kxh5 45. Nd4 Rd2 46. Rh8+
46. Nxc6 Rxd8 47. Nxd8 Re4-+と進んでも、ルークを切ってeポーンとナイトを消してしまえば黒は残ったgポーンのみで勝てます。
46... Kg6 47. Nf3 Rf4 48. Ke1 Rd3 49. Nh4+ Kg5 50. Ke2 Rh3 0-1
最後はナイトを捕まえて決着となりました。タクティクスのチャンスのは逃したものの、終始こちらのペースで指せたと思います。オリンピアード本番も、これくらいの安定度で星を積み重ねたいですね。今日1日休み、明日日本チームのメンバーと合流すれば、いよいよオリンピアード開幕です!09/05 16:00 R1 Salamon, L (HUN, 2001) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/06 09:30 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nandin-Erdene, D (HUN, 2039) 1-0
09/06 15:00 R3 Delgado Ramirez, D (GM, PAR, 2484) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 1-0
09/07 09:30 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Minga-Nagy, A (HUN, 2054) 1-0
09/07 15:00 R5 Miszler, L (FM, HUN, 2262) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/08 09:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nomin-Erdene, D (IM, MGL, 2319) 1-0
09/08 14:00 R7 Horvath, K (HUN, 2154) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
ブダペストは良い天気の日が多いです。ドナウ川の向かいには左手に王宮、右手に漁夫の砦が見えます。
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