昨日、一昨日の記事で百傑戦での私の棋譜は全て公開してありますが、それに詳しい解説を付けていこうと思います。今夜は前半3試合から。
Game1
黒が早めにc6-d5-e6 のトライアングルを築く形は、Dutch にも Semi-Slav にも変化させることができ、黒としては柔軟な変化だと考えられます。昨年の秋には、森内さんとVachier-Lagrave 対策として共に研究しました。そこ中で黒マスビショップをポーンストラクチャーの外に出す可能性を残す、4.Qc2! が白として面白いことを発見しました。
4.e3 f5!? ならばOK だと思いますが、白が5.Bf4 と指せる状況では、黒マスを弱めることは得策だと言えません。私であれば4...Nf6 と指してCatalan か、QGD の変化にトランスポーズさせます。
このアイディアはウクライナのGM Ivanchuk のゲームで学びました。白にとってはクイーンサイドキャスリングも、センターにキングを残す選択肢も悪くないので、キングサイドは攻撃のために開きます。
リスキーなアイディアです。黒は自身のキング周辺を弱め、白の攻撃を呼び込んでしまいます。
hファイルを開くことに成功した白は、ピースを捨てて黒のキングへ一直線に攻撃を仕掛けます。
すでに白の勝勢は揺るぎないものになっています。マテリアルだけを見れば黒がリードしていますが、キングが危険なこととクイーンサイドのピースが使えていないことを合わせれば、黒にとっては苦しい状況です。
17... Qa5+ 18. Ke2 Qxe5 19. Bxf7 Kxf7 20. Rh7+ Kf8 21. Rah1+- でもゲームオーバーです。
18. Ke2 Rg7 19. Rh8+ Rg8 20. Rah1 Qe7 21. R1h7 Qc5 22. Rf7+ 1-0
French Defence Poisoned Pawn Variation! 実戦投入は実に9年ぶりとなります。
通常、黒はc3 のポーンを捨てて戦いますが、私はd ポーンを捨てる流行ラインを研究してきました。Moskalenko のThe Wonderful Winawer にもサイドラインとして載っています。
内田さんはこの一手と決めていたそうですが、クイーンでのチェックを許すのは、なかなか勇気のいる決断です。
17.Bd3-Rb1-Rb3-Rxc3 とポーンを取りにいくのが、白にとって安全なプランです。
長考の末、黒に流れを引き渡してしまう疑問手。黒のアタックを過小評価しています。
19...Nxe3 と比較すると、クイーンの位置を改善でき、f4,g1 を狙えるのでベターです。
このエクスチェンジサクリファイスは、読みよりも感覚で行いました。黒のパスポーンと白マスビショップは、完全に白のキングの行き場を奪い、ルークの働きを抑え込みます。
黒は当然、残ったルークを攻めに参加させます。
綺麗なフィニッシュとなりました。バックランク とc2 の両方でメイトスレットがあるため、白はここで降参です。
Game3
Slav Defence のサイドライン、研究をしたことはありましたが、実戦で目にするのは初めてです。
a6 にナイトを出した以上、b4 のマスにはナイトを置くのが自然だと思いましたが、この手もあるようです。展開は早まりますが、a6 のナイトを将来的にどうするか、考える必要があります。
黒はアグレッシブに指しているように見えますが、白のキングはさほど危険ではなく、むしろ開いたgファイルは白の攻撃の起点となります。
15.Rg5 を嫌う手ですが、キングの前が弱まります。そこで私はセンターを無視しても、シンプルにgファイルにルークを重ねるプランが強力だと考えました。
ここはc5 を取るよりも、d4 を守っておきます。c3 のナイトをもはや、e4 を守る仕事をしなくても良いので、Nb5-Nd4 と組み変えて使います。
このエクスチェンジサクリファイスは全くの予想外でした。黒には十分な代償がありません。
21...Nh5-Nf4 が厄介なので、ポーンを返してf4 のマスをビショップで埋めてしまいます。三段目を開いて最後のピースを活用させるところも、この手のポイントです。
クイーンを交換した後は、特に恐れるような黒からの狙いはありません。丁寧にクイーンサイドでパスポーンを作れば勝利です。
この日は試合内容も良かったのですが、翌日はひどいものでした・・・後半の3ゲームの記事は、おそらく2日後になります。
Game1
Kojima, S - Osawa, T
Hyakketsu (1)
1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 e6 4. Qc2!
黒が早めにc6-d5-e6 のトライアングルを築く形は、Dutch にも Semi-Slav にも変化させることができ、黒としては柔軟な変化だと考えられます。昨年の秋には、森内さんとVachier-Lagrave 対策として共に研究しました。そこ中で黒マスビショップをポーンストラクチャーの外に出す可能性を残す、4.Qc2! が白として面白いことを発見しました。
4...f5?!
4.e3 f5!? ならばOK だと思いますが、白が5.Bf4 と指せる状況では、黒マスを弱めることは得策だと言えません。私であれば4...Nf6 と指してCatalan か、QGD の変化にトランスポーズさせます。
5. Bf4! Nf6 6. e3 Be7 7. h3 O-O 8. Nc3 Ne4 9. Bd3 Nd7 10. g4!
このアイディアはウクライナのGM Ivanchuk のゲームで学びました。白にとってはクイーンサイドキャスリングも、センターにキングを残す選択肢も悪くないので、キングサイドは攻撃のために開きます。
10...g5?!
リスキーなアイディアです。黒は自身のキング周辺を弱め、白の攻撃を呼び込んでしまいます。
11. Be5 fxg4 12. hxg4!
hファイルを開くことに成功した白は、ピースを捨てて黒のキングへ一直線に攻撃を仕掛けます。
12...Rxf3 13. Nxe4 dxe4 14. Bxe4 Nxe5 15. dxe5 Rf7 16. Bxh7+ Kf8 17. Bg6 +-
すでに白の勝勢は揺るぎないものになっています。マテリアルだけを見れば黒がリードしていますが、キングが危険なこととクイーンサイドのピースが使えていないことを合わせれば、黒にとっては苦しい状況です。
17...Bb4+
17... Qa5+ 18. Ke2 Qxe5 19. Bxf7 Kxf7 20. Rh7+ Kf8 21. Rah1+- でもゲームオーバーです。
18. Ke2 Rg7 19. Rh8+ Rg8 20. Rah1 Qe7 21. R1h7 Qc5 22. Rf7+ 1-0
Game2
Uchida, N - Kojima, S
Hyakketsu (2)
1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 4. e5 c5 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 Ne7 7. Qg4 Qc7!?
French Defence Poisoned Pawn Variation! 実戦投入は実に9年ぶりとなります。
8. Qxg7 Rg8 9. Qxh7 cxd4 10. Ne2 Nbc6 11. f4 dxc3 12. Qd3 d4!?
通常、黒はc3 のポーンを捨てて戦いますが、私はd ポーンを捨てる流行ラインを研究してきました。Moskalenko のThe Wonderful Winawer にもサイドラインとして載っています。
13. Nxd4 Nxd4 14. Qxd4 Bd7! 15. Qf2 Qc6 16. Rg1 Nf5 17. g4!?
内田さんはこの一手と決めていたそうですが、クイーンでのチェックを許すのは、なかなか勇気のいる決断です。
17.Bd3-Rb1-Rb3-Rxc3 とポーンを取りにいくのが、白にとって安全なプランです。
17...Qe4+ 18. Qe2 Qa4 19. Be3?
長考の末、黒に流れを引き渡してしまう疑問手。黒のアタックを過小評価しています。
19...Nd4!
19...Nxe3 と比較すると、クイーンの位置を改善でき、f4,g1 を狙えるのでベターです。
20. Bxd4 Qxd4 21. Qf2 Qe4+ 22. Kd1 Ba4 23. Kc1 Rd8 24. Bd3 Rxd3!
このエクスチェンジサクリファイスは、読みよりも感覚で行いました。黒のパスポーンと白マスビショップは、完全に白のキングの行き場を奪い、ルークの働きを抑え込みます。
25. cxd3 Qxd3 26. g5 Rh8!
黒は当然、残ったルークを攻めに参加させます。
27. Re1 Rh3 28. Qe2 Re3! 0-1
綺麗なフィニッシュとなりました。バックランク とc2 の両方でメイトスレットがあるため、白はここで降参です。
Game3
Kojima, S - Gonda, G
Hyakketsu (3)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Na6!?
Slav Defence のサイドライン、研究をしたことはありましたが、実戦で目にするのは初めてです。
6. e4 Bg4 7. Bxc4 e6 8. Be3 Bb4!?
a6 にナイトを出した以上、b4 のマスにはナイトを置くのが自然だと思いましたが、この手もあるようです。展開は早まりますが、a6 のナイトを将来的にどうするか、考える必要があります。
9. O-O O-O 10. Qd3 Bxf3 11. gxf3 Qa5 12. Kh1 Qh5
黒はアグレッシブに指しているように見えますが、白のキングはさほど危険ではなく、むしろ開いたgファイルは白の攻撃の起点となります。
13. Qe2 c5 14. Rg1 h6
15.Rg5 を嫌う手ですが、キングの前が弱まります。そこで私はセンターを無視しても、シンプルにgファイルにルークを重ねるプランが強力だと考えました。
15. Rg3 Rad8 16. Nb5!
ここはc5 を取るよりも、d4 を守っておきます。c3 のナイトをもはや、e4 を守る仕事をしなくても良いので、Nb5-Nd4 と組み変えて使います。
16...cxd4 17. Bxd4 Rxd4?
このエクスチェンジサクリファイスは全くの予想外でした。黒には十分な代償がありません。
18. Nxd4 Bd6 19. Rg2 Be5 20. Nb5 Qh3 21. f4!?
21...Nh5-Nf4 が厄介なので、ポーンを返してf4 のマスをビショップで埋めてしまいます。三段目を開いて最後のピースを活用させるところも、この手のポイントです。
21...Bxf4 22. Ra3! Qh5 23. Qxh5 Nxh5 24. Nxa7 Nc5 25. Be2 Nf6 26. f3 Rd8 27. b4 Ncd7 28. a5
クイーンを交換した後は、特に恐れるような黒からの狙いはありません。丁寧にクイーンサイドでパスポーンを作れば勝利です。
28...Ra8 29. Nb5 Nb8 30. Nd4 Be5 31. Nb3 Ne8 32. Bf1 Bd6 33. Ra4 Nc6 34. b5 Ne7 35. Rd2 Kf8 36. a6 bxa6 37. bxa6 Ra7 38. Bb5 Bf4 39. Rd8 1-0
この日は試合内容も良かったのですが、翌日はひどいものでした・・・後半の3ゲームの記事は、おそらく2日後になります。
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