2018/09/25

Batumi Olympiad R1 Japan - Armenia


会場前の日本チーム

開会式翌日の24日から、オリンピアード初戦がスタートしました。すでにお伝えしていた通り、オープンがアルメニア、女子がイスラエルとの対戦です。思い返せば、私が初めて参加した2006年のトリノオリンピアードで、当時13R だったために全体で52試合し、たった1敗しかせずに優勝したのが、Aronian 率いるアルメニアでした。(1敗はAronian がKramnik に負け) 私がこの日対戦したSaegissian は、そんな超強豪国アルメニアでも代表に入り続けるGMで、アルメニアのトップGM Aronian の右腕とも呼べる存在です。
4年前は隣のボードで南條くんが敗れているのを見ていますので、今度は私がなんとかポイントを取る番だと信じてゲームに臨みました。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sargissian, G (GM, ARM, 2691)
Batumi Olympiad (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 e6 4. g3 b6 5. Bg2 Bb7 6. O-O a6!?



この手から入る手順もあるとは知っていましたが、あまり大差はないだろうと考えていました。しかし、よくよく考えてメインの6... Be7 と比べると、私の得意としている変化に入れないことがわかります。6... Be7 7. d4 cxd4 8. Qxd4 d6 9. Bg5 a6 10. Bxf6 Bxf6 11. Qf4 という変化が私のお気に入りです。

7. d4 cxd4 8. Qxd4 d6 9. Bg5!?


まだ上記の変化に手順前後する可能性があるため、この手を選びました。最もよく指されるのは、9. Rd1 Be7 10. b3 という変化ですが、以前この組み方を試していて上手く指せなかったため、最近ではこのセットアップをあきらめていました。ただし、今調べ直してチャレンジしてみれば、全く問題なく指せるような気もします。

9... Nbd7



Sargissian は当然のごとくナイトから展開し、上記の変化を避けます。ナイトでf6 を早く守られてしまうようであれば、Bxf6 のアイディアは使えません。

10. Rfd1 Be7 11. Qd2 O-O 12. Bf4


しかし、こちらの変化も以前調べていて使ったことがあります。f6 を取らずとも、白はd6 へのプレッシャーでチャンスを作ることができます。

12... Ne8 13. Rac1 Rc8 14. b3 Nc5!



こうして先にナイトに跳ばれる変化は少し嫌でした。7年前にアメリカで指した試合では、14... Qc7 15. Qe3! Nef6 16. Nd5! exd5 17. Qxe7 Rfe8 18. Qxd6 Qxd6 19. Bxd6 Rxe2 20. Nd4! と進んで、カナダのFM に勝ちました。この変化を避けてナイトが跳ぶほうが、黒にとっては安全だと思います。

15. Ng5


少し考えてこの手を選びましたが、試合後に調べてメインの手であることを確認しました。白のアイディアは白マスビショップを交換したうえで、e4 にナイトを組み替えてd6 へのプレッシャーを増やすことです。

15... Bxg2 16. Kxg2 Rc6!?



なるほどと思いました。単純なようですが、こうして早めにb6、d6 を守ってしまえば、白にポーンを狙う隙を与えません。それでも白はf3 にナイトを退くのはつまらないため、予定通りe4 で勝負です。

17. Nge4 Nxe4 18. Nxe4 f5


このポーンを進めることも、私から見れば大きな決断です。黒はe4 のマスを奪い返す代わりに、e6 のポーンやa2-g8 のダイアゴナルを弱めます。しかし、弱点を抱えてもe8 に退いたパッシヴなナイトをプレーに戻さなければいけないという考えも理解できます。

19. Nc3 Nf6 20. Bg5



黒がf7-f5 を突いたことで、白はNc3-Nd5 と跳び込むチャンスが生まれました。c6 のルークが浮いているうちに、f6 のナイトを捌くことができればナイトの跳び込みが実現します。しかし、もちろん黒はそれを許しません。

20... Qe8 21. Qe3 Qf7 22. Qf3 Rfc8 23. a4


黒は理想的なcファイルのルーク並びを実現し、b7-b5d6-d5 のブレイクチャンスを作ります。ここでどう指すかはかなり迷いましたが、b5 のマスをひとまず抑えておくことにします。a2-a4 はb3 を弱めるために正直さほど好みの形ではないのですが、今はナイトがc5 まできてもさほど問題ではないですし、なにより白のもう1つの狙いが生まれるためにこの手を選びました。

23... h6 24. Bd2 Nd7 25. Na2!



お互いにナイトを組み替えて勝負です。私がa2-a4 と指したのは、a2 のマスを使えるようにするのが狙いでした。b4 までナイトが到達すれば、c6 のルークとa6 のポーンがダブルアタックとなり、白が駒得になります。

25...Ne5 26. Qe3 Ng4 27. Qf3 Ne5 28. Qe3 Ng4 29. Qf3 Ne5 1/2-1/2


ここは3回同一局面でドローを受け入れるほかないと思いました。白のクイーンは他に逃げ場もないですし、黒はNa2-Nb4 を上手く防ぐ方法がありません。黒がa6-a5 と突いてb4 を抑えるようであれば、当然Na2-Nc3-Nb5 とナイトを戻して、d6 のポーンを攻撃します。Sargissian はこのリスクを背負ってもゲームを続ける気は無いようで、自然な判断だと思いました。

こうして1Bはドローになりましたが、他の3つのボードは形勢が苦しく、そのまま負けてしまいました。2Bの南條くんは終盤までドローチャンスがあっただけにもったいなかったですね。

Open R1 Japan - Armenia 0.5-3.5

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sargissian, G (GM, ARM, 2691) 1/2-1/2
Nanjo, R (IM, JPN, 2324) - Melkumyan, H (GM, ARM, 2660) 0-1
Yamada, K (FM, JPN, 2128) - Hovhannisyan, R (GM, ARM, 2621) 0-1
Matsuo, T (CM, JPN, 2170) - Martirosyan, H (GM, ARM, 2597) 0-1

Women R1 Japan - Israel 1-3

Hoshino, K (WFM, JPN, 1945) - Shvayger, Y (IM, ISR, 2375) 0-1
Sakai, A (JPN, 1713) - Efroimski, M (WGM, ISR, 2313) 0-1
Kojima, N (WCM, JPN, 1655) - Gutmakher, O (WIM, ISR, 2258) 0-1
Shibata, M (JPN, 1605) - Lahav, M (WFM, ISR, 2151) 1-0


女子は強豪イスラエルとの対戦で、4Bの柴田さんのみが白星を挙げました。イスラエルの1Bに座るYuliyaさんは、アゼルバイジャンのGM Naidischの奥さんで、2年前に来日してから交流があります。彼女もGMタイトルを狙って各地で試合をしていますが、2300台に落ちているところを見ると苦戦しているようですね。なにはともあれ、男女ともに格上相手にシャットアウト負けを防ぎ、初戦を乗り切っています。

続く2Rは、オープンがガーナ、女子がオランダ領アンティルとの対戦です。アフリカのGhana はともかく、Netherlands Antilles は聞き覚えの無い人も多いかと思います。ここはカリブ海に浮かぶオランダ領の諸島で、オリンピアードでは常連のチームです。どちらも日本よりもリストは下ですので、ここは勝って3Rにつなげたいですね。2日目も応援よろしくお願い致します!

Batumi Olympiad R2 Pairings

ちなみにゲーム観戦ですが、Chess24 はiPhone アプリでは相変わらずエラーが出て、ChessBobm は試合が見づらいとのことで、Follow Chess というアプリが良さそうです。小林くん、情報ありがとう。ジョージアでも、このアプリを使って観戦をしています。


アルメニアはAronian、Movsesian を抜いても全員GM の超強豪国です。

2018/09/24

Batumi Olympiad Arrival and Opening Ceremony


日本から16時間かけ、オリンピアードの開催地であるバツミへと到着しました。今日はオリンピアード出発日とオープニングセレモニーまでを振り返ろうと思います。

成田空港を出たのは、22日の22時半頃です。日本からは別便の南條夫妻、星野一家を除き、7人がこの便を使いイスタンブール経由でバツミへと向かいます。イスタンブールに到着したのは午前4時で、眠い目をこすりながら各国のオリンピアード参加者と挨拶をかわしました。


空港にもオリンピアードの告知がありました。

バツミには朝の9時半に到着し、バスで待機しながら他の便の参加者を待ちます。日本チームの滞在ホテルであるHotel Euphoria は、バツミ中心地からは離れているものの、空港からはかなり近い場所にありました。しかし、午前中にホテルに到着してもチェックインはできず、ここからの待ち時間が長い... 隣接するショップイングモールがあったのは幸いで、チェックインまでの待ち時間に両替や食事を済ませることにしました。


昼食は出ないかと思われましたが、14時からホテルで出してくれました。オリンピアードでは最も多い、ビュッフェ形式の食事です。ジョージア料理は魚も出ますが、肉料理のほうが多いのでしょうかね。トルコのイメージが強いケバブもこれからたくさん食べる機会がありそうです。


一休みしてから早めの優勝を取り、19時半のバスでオープニングセレモニーへと向かいます。セレモニーの会場は試合会場と違い、かなりホテルから遠い場所にありました。1時間ほどかけて会場に着いたのは20時50分と、セレモニー開始の10分前です!


オープニングセレモニー自体は定刻通りに始まりました。ジョージアの歴史や文化を表現するダンスから、チェスをモチーフにした演出まで、様々なパフォーマンスがステージで繰り広げられました。様々なイベントでこうしたパフォーマンスを見ていますが、プロのダンサーでの動きの統一感というものは、いつでも驚かされますね。会場自体はここ何回かのオリンピアードであった、中央のステージを観客席が一周して囲む形式ではなく、客席が180度ほどに設置された劇場型でした。


ダンスや挨拶に続いては、オリンピアード恒例となる参加国の紹介です。アルファベット順に参加チームが紹介され、自国が呼ばれると観客席のチームは立ち上がって国旗を掲げたり、歓声を上げたりします。この点、日本チームは少し控えめですね。


参加チーム紹介の後はオープン、女子セクションそれぞれの色決めです。今回は巨大な貝の中から白真珠、黒真珠のどちらを引くかで色が決められました。男子はインドのAnand、女子はジョージアのDzagnidze が引き、オープンのリスト1が白、逆に女子はリスト1が黒になりました。


最後は参加チームの国旗がステージ下に集合し


会場外でたくさんの花火が打ち上げられて、オープニングセレモニーは終了です。往復2時間半、式自体が1時間半と時間のかかったイベントでしたが、参加して良かったと思える内容でした。

そして一夜明けた今朝、オリンピアード初戦はオープンがアルメニア、女子がイスラエルと発表されました。4年前、私はアルメニア戦でMovsesian に勝利まであと一歩というところでメイト筋が見えず、逆転負けを許したのでした。その雪辱を晴らすため、今大会では一矢報いることができればと思います!

Open R1 Japan - Armenia

Women R1 Japan - Israel


ボードペアリングは公開が遅れているので、初日の更新はひとまずここまで。アルメニアはおそらくAronian を外してくるので、私はSargissian との対戦になるでしょう。頑張ってきます!

2018/09/15

Batumi Olympiad Tournament Information


黒海を臨むバツミの街並み wikipedia より

いよいよ、オリンピアード開催地のバツミに出発するまで1週間となりました。日本代表は22日の夜に成田を発ち、イスタンブールのアタチュルク空港経由でジョージアのバツミに向かう予定です。今夜は日本代表の情報や、バツミのスケジュールなどを確認しておこうと思います。

Open

Kojima Shinya (IM, JPN, 2408)
Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324)
Yamada Kohei (FM, JPN, 2128)
Matsuo Tomohiko (CM, JPN, 2170)
Otawa Yuto (JPN, 2161)

Women

Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945)
Sakai Azumi (JPN, 1713)
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655)
Shibata Misaki (JPN, 1605)
Hoshino Meilin (JPN, 1533)


オープン、女子チームのメンバー、レイティングはこのようになっています。おそらくですが、ボード順もこの並びの通りになると思います。私にとってはトリノから数えて7回目のオリンピアード、レイティングとGMノーム獲得を目指して頑張ってきます!

そして他国の情報ですが、ChessResults には、9月のレイティング更新を反映させたリストが公開されています。是非、興味のある国をチェックしてみてください。オープンは、前回優勝のアメリカがリスト1。さらにロシア、中国と続き、日本はリスト99です。一方女子は、ロシア、ウクライナ、中国の順で、日本は男子とほぼ同じリスト97スタートです。ともに11試合を戦い、スタート順位よりも上の順位を狙いたいですね。

個人的にはオープンで注目しているのはイランです。数か月前のアジアのチーム戦では、中国、インドを抑えて若いメンバー中心のイランが優勝しました。イランの現No.1 Maghsoodloo は、今日終わったばかりの世界ジュニアで、9.5/11 という驚きの戦績で優勝を果たしました。今回でのオリンピアードでも、Maghsoodloo を中心に組まれた平均年齢19歳のフレッシュなチームで、過去最高の戦績を狙うでしょう。

9/23 Arrival, 21:00 Opening Ceremony
9/24 15:00 R1
9/25 15:00 R2
9/26 15:00 R3
9/27 15:00 R4
9/28 15:00 R5, 22:00 Bermuda Party
9/29 Rest Day
9/30 15:00 R6
10/01 15:00 R7
10/02 15:00 R8
10/03 15:00 R9
10/04 15:00 R10
10/05 11:00 R11, 20:00 Closing Ceremony
10/06 Departure

大会全体のスケジュールはこの通りです。前半5R試合をしてから1日休み、そして最終戦だけ早い時間のスタートは通常通りです。ジョージアと日本の時差は5時間ですので、日本で観戦する皆さんは20時からオリンピアードのゲームがチェックできるということです。遅すぎず、観戦するには良い時間帯ですね。私もブログで現地の様子をなるべく麻一日お届けするつもりですので、日本からの応援、よろしくお願い致します。

Batumi Chess Olympiad Official HP

2018/09/07

NHK大河ドラマ『西郷どん』チェスシーン


NHKの許可を得て、チェスシーンをちらっとだけ公開します。

今日の夕方、Twitter では情報を流しましたが、明後日9月9日放送のNHK大河ドラマ『西郷どん』の第34回に、チェスを指すシーンが流れる予定です。放送はNHK総合で20時から、BSプレミアムでは18時からです。今回、このシーンの局面作成や撮影中の指導として、僭越ながら私が監修を務めさせていただきました。監修の話がきて、実際に撮影が行われたのは結構前のことですので、こうしていよいよ放送日が迫ってきて、皆さんにお知らせできることを嬉しく思います。

放送当日、私はいっぷくでレッスンをしている最中ですので、すぐに見ることができないのが残念です。その分、大河ドラマ、そしてチェスファンの皆さんに、松田翔太さん演じる徳川慶喜のチェスシーンと、その前後のやり取り等を楽しんでいただければと思います。これまで西郷どんをご覧になっていないかたは、下のリンクからあらすじや登場人物をチェックしてみてください。それでは明後日の西郷どんを、よろしくお願い致します。

NHK大河ドラマ『西郷どん』公式HP

2018/09/05

42. Harkányi Tenkes Kupa Tournament Information


ハルカーニの温泉, wikipedia より

オリンピアードを皮切りに始まる新しい遠征ですが、11月のトーナメントをどうするか、少し考え直しています。当初の予定は、ハンガリーとモンテネグロのGMトーナメントを往復することでしたが、モンテネグロのヘルツェグノビへの移動は大変です。そのため、他にこの期間中に参加できるトーナメントが無いかを調べ直しました。そこで見つけたのが、ハンガリー南部の村、ハルカーニ(ハルカーニャとも)で開催されるオープントーナメントです。

ハルカーニで毎年トーナメントが開催されているのは知っていましたが、以前のハンガリー滞在中は、ブダペストとケチケメートを試合で往復するのがほとんどで、他の地方都市に足を運ぶことはほとんどありませんでした。大会のレベル自体はそれほど高くありませんが、同じハンガリー国内での移動ならば大変ではないですし、条件もかなり良さそうです。まだ時間はあるので、もう少し検討してみることにします。

Date: 2018/11/23-30
Venue: Hotel Baranya
System: 9 Rounds Swiss
Time Control: (90-90 min/40 moves + 30-30 min/all) + 30sec/move

大会の公式HP はハンガリー語ですが、リンク先の画面中央付近から詳しいスケジュールなどを記した大会要項が、英語でダウンロードできます。これによると、会場のホテルは1泊2食付きで4900フォリント(約2000円)と格安で、IM は参加費が無料です。オリンピアードから11月のFirst Saturday まで4大会連続でハードな試合が続くのであれば、ノームチャンスは無くとも、こうした気楽に臨めるトーナメントを入れるのもありだと思っています。参加するかどうか決まり次第、またお知らせ致します。ちなみにFirst Saturday のオーガナイザーからは、是非行くべきだとプッシュされています(笑)

2018/09/03

国内レイティング S120

本日、新しい国内レイティングの情報が届きました。夏のシーズンは、ジュニア、小学生、シニア等の世代で区切ったトーナメントから、サマーオープン、中部快速オープン、ジャパンリーグといったオープントーナメントまで幅広く開催されています。変動のあったプレーヤーは、一年の中でも特に多かったのではないでしょうか。いつものように上位勢の変動からお知らせします。

Tran Thanh Tu 2535 +7
小島慎也 2494 -3
南條遼介 2436 +1
馬場雅裕 2436 +37
青嶋未来 2423 +-0
Averbukh Alexander 2356 +35


Tuさんはジャパンリーグの結果にがっくり、といった感じでしたが、サマーオープンと中部快速オープンの分でプラスになり、ベストを更新しています。馬場さんも、中部の6試合全部プラスで大きくレイティングを伸ばし、南條くんにぴったり並びました。一方で私は14勝2敗3ドローでマイナスです。厳しい...

いつもレイティングの公開の早い松戸チェスサークルは、3日夜の時点でまだのようですので、レイティングをチェックしたい人はチェス協会のHP をご覧ください。私は年内の国内公式戦はおそらくもうありませんが、クラブ選手権、東京オープン、ジャパンオープンと秋のシーズンも大事な試合が続きます。これらの大会に参加予定の皆さんは、新しいレイティングでのプレーを頑張ってください。

2018/09/01

FIDE Rating List September 2018


結果が最新レイティングに反映されたジャパンリーグ Photo by Yamada, A

本来であれば国内レイティングの変動からお伝えしたかったのですが、どうやら公開が遅れているようですので、FIDEレイティング更新の記事から9月はスタートです。8月には東京で、FIDE公式戦のジャパンリーグが開催されたため、日本のプレーヤーも大勢レイティングの変動がありました。ランキング上位のプレーヤーのうち、変動があったメンバーは以下の通りです。

Kojima Shinya 2408 +-0
Nanjo Ryosuke 2324 +1
Baba Masahiro 2303 -3
Aoshima Mirai 2280 -15
Matsuo Tomohiko 2170 -46


ジャパンリーグ終了時から分かっていたことですが、概ね上位は下がっています。ジャパンリーグを蹴って、ベルギーのトーナメントに参加した馬場さんも微減でした。レイティングがまだ低くとも、力のあるプレーヤーは増えていると思いますので、そんなプレーヤーたちとの対戦でレイティングを落とさないということは、日本の上位勢にとって課題になってきそうですね。今月はオリンピアードも開催されますので、代表メンバーはそこで稼ぐチャンスです。

そして日本のレイティングリストをチェックすると、ジャパンリーグ、そしてその他の海外大会で新しくレイティングがついたプレーヤーが、9人確認できました。新しくレイティングを獲得した皆さん、おめでとうございます! まだ国内のみで試合をしているプレーヤーは、是非海外の大会への参加も検討してみてください。

さらに9月のレイティングが公開されたということは、これでオリンピアードの代表のレイティングが確定し、各国のリストも確定したということです。日本男子のメンバーはレイティングを落として、少しリストも下がりそうですが、女子は逆に5人中4人がレイティングを上げ、リストも上がる可能性があります。こちらもChessresults での登録が変更され次第、また別記事でお伝えしようと思います。皆さん、また次の大会に向け、引き続き頑張りましょう!

2018/08/31

麻布学園チェス部夏合宿 2018


3月の春合宿に続き、麻布学園チェス部の夏合宿で、コーチとして指導をしてきました。今回の合宿地は山梨県の河口湖。中学高校の部活動の合宿や、大学のサークル合宿でも人気の地です。私が河口湖を訪れるのは、数年前の暁星の夏合宿以来で、とても懐かしい気持ちになりました。


河口湖は東側の温泉街が人気エリアですが、今回の宿は西側にあるホテルです。近年の合宿としてはかなり多い、22人の参加者がありました。(春は13人) 中学1年生も複数入部し、初の合宿にも参加しており、OB としては嬉しい限りです。

初日はレクチャーがメインとなり、昼食後から夕飯までみっちりと6時間ほどチェスに取り組みます。前半では発想力を試す課題やチェスの知識を問う質問に答えさせ、その後で実際のゲームを見せて、どのような考え方、ピースの働きが登場するかを確認します。最近見つけて面白かったポジションは、以下のものでしょうか。


Debray, C - Kvashyna, T
Syre Memorial Open 2013 (3)
Black to move

ピースを捨てた直のこの局面、黒が正しい手を指せば勝ちですが、それを見つけられなければピースアップで白勝ちになります。実際のゲームでは、黒は正解を見つけられずに負け... 自分がこうなったらと思うと悔しいですね。


手を考えてもらっている間、22人11ボードを回って生徒の意見に耳を傾けます。「これでどうか」「それに対して、こうならどうするか」「そうかー」とみんな真剣です。上級生と下級生では当然レベルに差はありますが、完全に下に合わせてしまうと上の子たちは退屈です。上手く課題のレベルを調整しながら、難しくとも面白いと感じてもらえる局面、ゲームはどんなものか、私も毎回の悩みですね。

夕飯後は恒例の同時対局を翌日に回し、ブリッツにしました。私と指したい人はどうぞ、と声をかけたところ、次々と挑戦者が現れ1時間半はブリッツタイムが続きました。いつものこの時間は同時対局をしていることを考えれば、私の負担は多少軽いですが、河口湖までの移動もあって終わる頃にはへとへとです。


2日目は私にとっても人生最多となる22面同時対局です。午前中の3時間ほどしか時間がないため、事前に相談して通常の同時対局ではなく、22個の対局時計を使ったクロックサイマルにすることにしました。私が回ってきたら1手指すスタイルの同時対局では、おそらく22面で3時間半~4時間ほどかかりますが、60分+1手30秒の持ち時間であれば、おそらく3時間以内に全て決着はつくと判断しました。しかし、普通はこれほど多い同時対局で時計を使うことはありえないですね(笑)


Kojima, S - Nagataki, K
Azabu Summer 2018 Clock Simul
Position After 33. Qxh6

長瀧くんとのゲームはクイーンを取って勝勢になったはずが、ちょっとした緩手で黒に反撃を許してしまい、形勢をおかしくしてしまいました。

33... Rb8!


ルークがクイーンサイドにまわる手を完全に見落としていて、ここからかなり焦ります。ルークのバックランクの侵入を許すことになれば、g2 のポーンが突如として脅威になって黒勝ちになるでしょう。

34. Bd1 Rb1 35. Qd2 Nd5! 36. f3??



ここが一番難しい局面で、他のゲームも回らなければいけない状況では正解を見つけることができませんでした。36. Qg5+! Ke6 37. Kh2!! Nxc3 (37... Rxd1?? 38. Qg4++-) 38. Bg4+ f5 39 Bxf5+! Bxf5 40. Kxg2= こうしてビショップを捨ててもg2 のポーンを消せば、白はドローに持ち込めるというのがコンピュータ評価です。

36... Bxf3 37. Qg5+ f6??


しかし、ここで黒に痛恨のミスが出てゲームは終わりました。37... Kf8 38. Qd8+ Kg7 39. Qg5+= ならばドロー。しかし、37... Ke6!-+ ならば白クイーンに有効なチェックは無く、Nd5-Nxc3 があるため、白はビショップを守ることができません。

38. Qg7+ Kd8 39. Qh8+ 1-0



長瀧くんはh7 でのチェックから、ルークが取られてしまうことを見落としていました。ビショップがe4 にいる時点ではルークは守られていたため、そのままだと勘違いしてしまったのでしょう。完全に拾わせてもらったゲームでした。

同時対局は21勝1敗で、新部長の松山くんにだけ敗れました。このゲームは30分私が持ち時間を残していましたが、簡単なタクティクスの見落としでどうしようもない駒損となり、リザインです。クロックサイマルの難しい点として気付いたことですが、通常の試合であれば30分残り時間があれば10分でも、15分でもベストの手を考えられますが、この形式ではそうしてると他のゲームの持ち時間も考えた分だけ減り、どこも時間切迫となってしまいます。どのボードのどこで時間を使い考えるか、もしくは指さずに考えたままで他のボードに移るか、なかなか判断が難しいことを実感しました。それでも良い経験でしたので、また機会があればやってみたいですね。


2日目の昼食後、私は後輩たちに別れを告げて宿を後にしました。移動先は駅ではなく、河口湖の北側に位置する大石公園です。ここでは季節の草花と、目の前の雄大な河口湖を楽しむことができます。この日も海外からの多くの観光客でにぎわっていました。


ちなみに私の目的は大石公園に隣接するハナテラスという場所です。ここには河口湖のお土産を売るショップや、山梨の特産品をメインとしたカフェが集まっています。山梨にせっかく来たので桃か葡萄を食べたいと思い、葡萄屋 Kofu の葡萄ソフトクリームをいただいたのでした。見た目の色の通りの味の濃さで、足を運んだ甲斐がありました!


大石公園を後にしてからは、猫のダヤン作品が展示されている木の花美術館までバスで移動し、そこからオルゴール美術館、河口湖美術館と湖畔に沿って歩き、河口湖大橋も渡って駅まで戻りました。このルートは数年前の合宿でも歩いており、そこを久々に歩きたかったことも、この帰り道を選んだ理由でした。どこかでも書いたかもしれませんが、私は海や川、湖などの水辺でゆっくりするのが好きなようです。

後輩たちの合宿は金曜日が最終日でしょうかね。これが最初、もしくは現役最後の合宿になるメンバーもいることでしょう。皆さん、最後まで楽しんだくださいね。また来年の春合宿でもよろしくお願いします。

2018/08/27

Penguin Highway


今月から全国で公開されている噂のチェス(?)映画、ペンギンハイウェイを見てきました。原作者の森見登美彦は、どこかで聞いたことのある名前だと思っていましたが、10年ちょっと前に話題になった『夜は短し歩けよ乙女』の作者でした。ペンギンハイウェイの原作小説は読んだことがありませんでしたが、チェスがちょこちょこ出てくるアニメ映画が近く公開されると聞いて、今月17日を楽しみにしていました。

ネタバレになるためにあまり内容には触れられませんが、私は十分に楽しめました。ちょっと生意気な少年アオヤマくんと、不思議なお姉さん(名前は出てこない) が、街に突然現れたペンギンの謎を探るという、ひと夏のファンタジーです。中心人物となる少年とお姉さん、そして彼らを取り囲む子供たちも魅力的なキャラクターですが、個人的にはアオヤマくんのお父さんの、息子へのかかわり方が素敵だなと感じました。

そしてチェスは思ったよりは登場しましたが、これまで紹介してきたポーンサクリファイスや、クイーンオブカトワに比べれば、もちろん登場回数は少ないですし、作品の中でもそこまで重要なキーアイテムではありません。それでもちょくちょくでてくる少年とお姉さんのチェスシーンは微笑ましく見ることができました。作品の面白さが損なわれるわけではないので、時々間違っている盤の向きには目をつぶります(笑)

興味を持ってくださったかたは、是非映画館に足を運んでみてください。この夏の思い出として、ペンギンハイウェイをどうぞ!

ペンギンハイウェイ公式サイト

2018/08/26

第9回七盤初心者のためのチェスレッスン


Black to move

昨年12月から続けてきたどうぶつしょうcafe いっぷくでのチェス講座も、ひとまず9月が最終回となります。皆さん、奮ってご参加ください。

【日時】 2018年9月9日(日) 18:30~20:30
【会場】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく(最寄駅:清澄白河駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答+対局
【テーマ】 コンビネーション
【参加費】 2000円
【申し込み】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく ご予約フォーム

チェスの面白さは多岐にわたりますが、複数の駒の連携によって決まる攻撃の美しさは、いつの時代も観衆を魅了するものです。今回はそうしたピースのコンビネーションをテーマに、チェスの魅力の一面をご紹介したいと思います。

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