2023/04/15

Tokai Open 2023 Tournament Preview


あと3週間ほどで全日本選手権の開催を迎えますが、その先の大会の予告をしておきます。名古屋チェスクラブが主催する東海オープンに今年は参加することを決めました。最後に参加した2020年には無事に優勝することができましたが、2021年、2022年はコロナの影響を考慮して参加を見送りました。名古屋オープン、中部快速オープンは参加していますが、それとは別に3年ぶりの東海オープンを楽しみにしています。

【日時】 2023年5月28日(日)
【会場】 名古屋市芸術創造センター (地下鉄東山線、新栄町駅)
【形式】 スイス式4R、30分+1手30秒
【参加費】 5000円、U18 4000円
【主催】 名古屋チェスクラブ

その他大会詳細は名古屋チェスクラブの大会ページをご確認ください。

エントリーリストを見ると、こちらの記事公開時点で残り参加枠は10名弱になっているようです。参加をご検討のかたは定員に達しないうちにお申し込みください。来月、名古屋でお会いできることを楽しみにしています。

2023/04/14

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第18回予告

4月のOPENREC での講座案内です。今月は今週末の日曜日、4/16 20時からスタートです。白熱中の世界選手権と一緒にお楽しみください。

4月のOPENREC の講座テーマは『Flexibility』 です。チェスでは攻め合いのスピード勝負になることもありますが、方向性をすぐに決めず、相手の手を見てから柔軟に自身の作戦を決めるほうが、選択の幅が広く残っており有効な場合も多々あります。どのような手がFlexibility(柔軟性)があり、自身のチャンスを広げるのか、逆に相手の選択の幅を狭める手はどのようなものか。これらを中心にゲームを見ていこうと思います。冒頭30分の無料視聴は可能ですので、サブスク登録がまたのかたはこの機会にぜひよろしくお願いいたします。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第18回『Flexibility』| 2023.04.16
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2023/04/04

麻布学園チェス部春合宿2023

報告が遅くなりましたが、先月末に母校、麻布学園のチェス部春合宿にコーチとして参加してきました。2020年からの新型コロナ流行により、春合宿の開催は4年ぶりのこと。当然ながら私の参加も4年ぶりとなります。懐かしい気持ちで、2018年の夏合宿と同じ、山梨県の河口湖駅に降り立ちました。帰りはバスですが、行きは京王線、JR、富士急行線などを乗り継いで昼前に到着しました。
合宿所で前日から来ていたチェス部の現役部員たちと合流し、昼食後からチェスを始めます。初めて合宿に参加するメンバーもいる中で、久々の合宿メニューをどうするか悩みましたが、最初は「チェスは○○ゲーム」 というテーマで、○○に入るものを自由に考えてもらいました。(相手キングを追い詰める、だけは一番出やすそうなので無しにします) チェスがどんなゲームかまずは皆でイメージし、様々なアイディアを出しあうことで、その後の講座を進めやすくする狙いでしたが、「チェスは戦略立てるゲーム」 「チェスは違う特性の駒を使うゲーム」 「チェスは駒の連携が大事なゲーム」など様々な意見を出してくれて、私自身このミニゲームを楽しめました。

その後、Nimzowitsch の試合を解説し、途中途中でどう指すか質問しながら、チェスの局面の考え方、手の作り方などを説明していきました。時間が少し余ったときには、有名なスタディを2人1組で解いてもらいます。先輩、後輩が力を合わせながら、ああでもない、こうでもないとアイディアを出し合うのは、過去の合宿でもOBたちが繰り返してきたことです。夕飯前には私の講座を中断し、12人の部員同士で試合をする時間設けます。私は全6試合を見回りましたが、ちょっとした面白いポジションが現れました。
Position after 7. Bg5

白がf2-f3 と突いたのがすでに変ですが、それとBc1-Bg5 の悪さを咎めるアイディアが分かるでしょうか?

7... Nxe4! 8. Bxd8??


8. fxe4 Qxg5 9. Nf3 Qd8-+ と進めてもポーンを失った白は敗勢ですが、粘るならばメイトされる本譜ではなく、こちらを選ばなくてはいけません。

8... Bf2+ 0-1


以下、9. Ke2 Nd4# がぴったりチェックメイトになっています。色が逆ですが、Legal's Mate と呼ばれる200年以上前からあるメイトの1つです。実戦で目の当たりにするとは思いませんでした。黒もよく見逃しませんでしたね。
初日の夜はもう1つNimzowitsch の試合を見てからメニューは終了。2日目を迎えます。いつもはのんびり起きて朝食から合流していましたが、この日は集合時間を確認しておらず、早めに外に出て部員たちを探すと、ちょうどチェス部合宿伝統のゲーム、灯台守をやっているところでした。このゲームを簡単に説明すると、鬼を中心において円形で行う、だるまさんがころんだです。鬼は動いた人の名前を呼ばなければいけないため、部員同士、先輩後輩同士が顔と名前を一致させるのにもってこいのゲームとして、私が現役当初からありました。
また到着初日は曇り空で気づきませんでしたが、合宿所のすぐ裏には富士山が顔を覗かせていました。凄い迫力!

その後、2日目の午前中は恒例の同時対局を行いました。私にとってもかなり久々の対面での多面指しでしたが、なんとか12面全てを勝ち切って、コーチといての面目を保ちました。今回はそこまで部員数が多くなかったことも要因だと思います。過去の合宿では、歴代部長に結構ポイントを落としており、この合宿での同時対局は私にとってハードなメニューです。2日間で教えた内容をすぐに実戦に活かすのは難しいですが、「説明されたのはこういうことだったのか」 と腑に落ちるようなゲームがあったならば幸いです。

次はまたスケジュールが合えば、8月の夏合宿にお邪魔させていただきたいと思います。新年度を迎え、新入部員を増やして賑やかなチェス部になっていくことを願っています。また大会でも後輩たちが活躍するのを楽しみにしています!

2023/03/25

Slav Defence Glasgow Kiss Variation


昨晩、ウルグアイのGM と幸運なことにオンラインで試合をすることができたので、今日はそちらのゲームを紹介しようと思います。ウルグアイのGM Alejandro Hoffman はウルグアイの代表として、昨年のチェンナイオリンピアードにも参加しています。

AHoffman (2544) - imsk (2511)
Lichess Blitz

1. d4 d5 2. c4 c6 3. e3 Nf6 4. Nc3 Bf5!?

Slav Defence に対しての白のセットアップは3手目、4手目の組み合わせがポイントとなります。e2-e3, Nb1-Nc3 はSemi-Slav Meran に持ち込みやすく、白側の準備が少なくてすむと長年考えられてきましたが、近年はこのBc8-Bf5 からb7 を捨てる変化が注目されています。

5. cxd5 cxd5 6. Qb3 Nc6!


黒はb7 を捨て展開の早さで勝負します。私はBoris Avrukh のThe Classical Slav (Grandmaster Repertoire) でこの変化の基本を学びましたが、実戦投入はためらっていました。しかし、最近学び直して黒側で試してみようという気になったので、せっかくのGM戦で指してみることにします。

7. Qxb7 Bd7 8. Qb3 Rb8 9. Qd1 e5

白がポーンを取ったクイーンを安全な初期位置まで逃がす間に、黒はbファイルをコントロールしてb2 を攻撃し、d5 の弱さを気にせずセンターを大胆に開きます。この変化がAvrukh の本ではGlasgow Kiss Variation という名で紹介されています。

10. dxe5 Nxe5 11. Be2 Bd6 12. Nf3 Nxf3+ 13. Bxf3 Qc7 14. h3 O-O 15. O-O Rfd8 16. Nxd5!?


黒がBd7-Be6 と組み直してd5 を守る前にポーンを取りにいきますが、これには黒に少し気づきづらい返し技があります。

16... Nxd5 17. Bxd5 Bb5! 18. e4 Bxf1 19. Qxf1 Kh8!?

黒は2つ目のポーンを捨てる代わりにエクスチェンジを取ります。18. Re1?! Bb4 でも黒はしつこくルークを追いかけます。黒の19手目はf7-f5 の準備で、e4 を崩すことでd5 のビショップを不安定にする狙いがあります。

20. b3 f5 21. Bg5 Rf8 22. Rc1 Qa5 23. Qe2 Rbe8?!


ここは指した直後に、単にe4 を取ったほうが良かったと感じました。23... fxe4 24. Qxe4? Rbe8! 25. Qd3 Re1+ 26. Rxe1 Qxe1+ 27. Qf1 Bh2+-+ ならばクイーンを落として黒の勝ちです。

24. Bc6 Re6 25. Qc4?!

黒のキングサイドアタックチャンスを過小したこの手で白は崩れました。白は25. Qd2 からクイーン交換をして黒のダイレクトアタックチャンスを削り、ビショップペアを持つエンドゲームを戦うべきです。

25... Rg6 26. Be3 f4 27. Bd4 f3 28. g4?


28. g3 Bxg3 29. fxg3 Rxg3+ 30. Kf1 Qd2 31. Bf2 Rxh3-+ もメイトまで一直線です。28. e5 が白が生き延びる唯一の手でしたがが、g2 もe5 も捨てれば黒の駒得での優位は明らかです。

28... Qh5! 0-1

29. Qf1 Rg4+! 以下メイトであるため、白はここでリザインしました。あまり経験のない変化でしたが、上手く指せて良かったです。

2023/03/08

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第17回予告

3月のOPENREC での講座案内です。今月は今週末の日曜日、3/12 20時からスタートです。

3月のOPENREC の講座テーマは『スナイパー』 です。自陣の奥に低く隠れ、センターや敵陣深くを狙うフィアンケットビショップのことを、ときにスナイパーと呼びます。初めて聞いた際はいい得て妙だと思いました。3月の講座ではそのスナイパーに焦点を当て、その特徴や働かせ方を見ていきたいと思います。冒頭30分の無料視聴は可能ですので、サブスク登録がまたのかたはこの機会にぜひよろしくお願いいたします。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第17回『スナイパー』| 2023.03.12
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2023/03/06

Tokyo Chess Championship 2023 Day2 Tournament Report

1日遅れましたが、東京チェス選手権2日目のレポートです。大会2日目の昨日は私は中継ボードに残りながらも1勝2敗と崩れ、トータルで4勝2敗の入賞圏外でした。4R と6R で私が敗れた長瀧くんとTonyくんはそれぞれ1位、3位の入賞でした。オープン2位の野口さんと各セクションを含め、入賞者の皆さん、おめでとうございます。

1st Place Nagataki Kota 6/6
2nd Place Noguchi Koji 5.5/6
3rd Place Wijaya Tony 5/6

Tokyo Chess Championship 2023 Final Standings


今大会は誰もストップをかけることができず、長瀧くんの全勝優勝となりました。レイティングも初の2000台に乗るでしょうし、実力はすでに十分すぎるほどあったと思います。5月の全日本選手権に出場するのであれば、そちらでの活躍も楽しみです。私は長瀧くん、Tonyくんには上手く指したと思った局面もありましたが、肝心なところで間違えて白番ながら2つの黒星を喫してしまいました。最終戦のゲームをご紹介します。

Kojima, S - Wijaya, T
Tokyo Chess Championship 2023 (6)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Nd7 4. a4

Sicilian Moscow Variation 3... Nd7 に対しては、この1年でいくつかの手を試していますが、昨年の東京チェス選手権で優勝を決めた青嶋くんとの試合もこの4. a4 でした。この試合は黒がDragon のセットアップを採用します。

4... a6 5. Be2 Ngf6 6. Nc3 g6 7. O-O Bg7 8. Re1!?


いくつか候補はありますが、私はClassical Dragon のRf1-Re1, Be2-Bf1 のラインと同じアイディアにすることを決めました。Bf1-Bb5-Be2-Bf1 の組み直しに時間がかかっていますが、黒もa7-a6 が必要なのかと、ナイトの位置がベストなのかが疑問です。

8... O-O 9. d4 cxd4 10. Nxd4 Ne5 11. Bf1 Bd7 12. Nb3 Rc8 13. a5 Nc4 14. Ra2!?

不思議な手ですが、a5 まで伸びたポーンは守りを続けたまま、b2 を守ることでNc3-Nd5 の跳びこみのタイミングを計ります。

14... Re8 15. f3 Nh5 16. Nd5 Be6?!


試合後にTonyくんはe7-e6 ができないのが見落としで、Nf6-Nh5 と跳んだ手がミスになってしまったと話してくれましたが、ここは実はポーンを突く手がありえました。16... e6! 17. Bxc4 exd5! 18. Bxd5 Qh4! と進んだ場合、黒はBg7-Be5 も組み合わせた黒マスの反撃でポーンの代償を伴ってプレーできます。

17. c3 Nf6 18. Ra4

この手でナイトをc4 からどかし、白が有利になったと感じました。しかし、ここでの黒の進め方が上手く、私が期待したような優位が築けませんでした。Ra2-Ra4 のルーク上りは上手く手だと思いましたが、他の候補として18. Bxc4 Rxc4 19. Nb6 Rc6 20. Be3+/= もありえます。

18... Bxd5 19. exd5 b5! 20. axb6 Nxb6!


ルークが4段目に上がる前はb7-b5 の際、クイーンで取る手ばかりを読んで白は問題ないと考えていました。実際にこうしてナイトで取られてみると、d5 のポーンへの反撃が厄介です。

21. Rd4 Nfd7 22. Bxa6!

ここでルークを避けてもNd7-Nf6 と戻られてd5 を狙われ、ドローになる可能性がでてきます。勝負にいくにはエクスチェンジを捨ててa6 を落とし、d5 のセンタポーンはなるべくキープするようにします。

22... Bxd4+ 23. Qxd4 Rb8 24. Bh6?!


d4 にせっかくクイーンが上がれましたが、黒キングへの直接攻撃がさほど有効ではないことは計算外でした。ビショップがh6 にいくことで、b2 のポーンが弱くなって反撃されてしまうことも問題です。代わりにプランはクイーンサイドの白マスを利用するものですが、24. Bb5 Nf6!? 25. Bxe8 Qxe8 26. Na5 Nbxd5 27. b4+/= と進んも白の優位はわずかです。白はクイーンサイドにパスポーンがありますが、黒もセンタポーンの厚みがあり、実際には難しい形勢だと思います。

24... Nf6 25. Na5 Nbxd5 26. Nc6 Qb6

ナイトフォークでエクスチェンジは取り返せますが、なるべく残したかったd5 のポーンを消され、クイーン交換の際にポーンがバラバラになるため、ダブルビショップでも白の優位は期待できません。

27. Nxb8 Qxd4+ 28. cxd4 Rxb8 29. Re2?


ここはバックランクの弱さを利用し、29. Rc1! が正しい手です。e7 に長く当てているほうが得かと思いましたが、d5 のナイトを消すことはできず、e7 へのプレッシャーはあまり意味がありません。

29... Ne8?


29... Nb4! 30. Bc4 d5 31. Bb3 Nc6-/+ とされるとバラバラにされたb,dポーンを同時に狙われ、ポーンが落ちてしまいます。

30. Rc2 Nec7 31. Bc4 f6 32. Ba2 e6 33. Rc6 Kf7 34. Bxd5?

試合中、Ra2-Ra4 の切り替えから優位になったと思ったので、その後の進行でさほど良くないと気づいた時はショックでした。それでもこのエンドゲームなった以上、ビショップを使って上手くポーンの弱さをカバーして戦えば、まだ何が起こるか分かりません。ここで白マスビショップを放棄したのは時間切迫にしてもひどいミスで、ビショップが一色にしか利かないという弱点が出てしまいます。a2 に残した白マスビショップはすぐにターゲットになってしまうだけだと思っていましたが、34. Rxd6 Ke7 (34... g5 35. Rd7+ Kg6 36. Bg7 Rxb2 37. Bc4! という白マスビショップを残すアイディアは驚きです。g6 に逃げた黒キングに多少なりプレッシャーをかけられるようにします) 35. Rc6 Rxb2 36. Bxd5 Nxd5 37. h4 Rd2 38. Rc8 Rxd4 39. g3= くらいで互角の展開で、ビショップナイトの交換をするとしても、もう少し後のタイミングであるべきでした。

34... Nxd5 35. Rxd6 g5!


これは見落としていた手で、一時的にh6 の黒マスビショップを閉じ込めると同時に、白が白マスビショップを手放してコントロールできなくなったg6 にキングを逃げられるようにするアイディアです。ここまで進んで初めて、私は白がかなり悪い局面になっていることを感じました。しかも、かなり挽回が難しい悪さです。

36. h4 gxh4 37. Rd7+ Kg6 38. Bc1 Rc8 39. Bd2 Rc2 40. Be1 Nf4 41. Bxh4 Rxg2+ 42. Kf1 Rxb2

ポーンダウンであるだけでなく、キングを完全に1段目で抑え込まれていることが大きな痛手です。なんとか黒に決定打を与えないようルークで抵抗します。

43. Re7 h5 44. Bg3 Ne2 45. Bf2 Kf5 46. Rh7 Nf4 47. Bg3 Rd2!


ナイトビショップの交換を許し、hポーンを失っても、黒は他のポーンを落としつつ、アクティブなキングで十分勝勢です。

48. Bxf4 Kxf4 49. Rxh5 Kxf3 50. Rh3+ Ke4 51. Rh6 Kf5 52. Rh4 Kg5 53. Re4 Kf5 54. Rh4 Kg6 55. Re4 Kf7 56. Rh4 Ke7 57. Rh7+ Kd6 58. Rh6 f5 0-1

ポーンを交換できればフィリドールポジションを目指せましたが、d4 のポーンも落ちることが確定したのでここで負けを認めました。悔しくはありますが、途中の形勢判断は勉強になるものでした。この反省は次の大会に活かしたいと思います。

大会運営と参加者の皆さん、お疲れ様でした。そして今大会の結果で全日本選手権の参加資格を得た皆さん、おめでとうございます。次は別の予選か、全日本選手権の会場でお会いできることを楽しみにしています。

2023/03/04

Tokyo Chess Championship 2023 Day1 Tournament Report

今日から2日間、東京チェス選手権に参加しています。この大会は昨年、5勝1ドローで優勝しており、今年は連覇がかかっています。初日は中継されるトップボードで3連勝でしたが、無事にとは言いがたい内容でした。

Saito. H - Kojima, S
Tokyo Chess Championship 2023 (3)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5

1R の岡山くんとの試合では初めて4... Nf6!? を試してみましたが、この試合では指しなれた4... Bf5 のClassical Variation を選びます。今年は数年ぶりのCaro-Kann イヤーなのですが、その中でも多少マイナーチェンジを試します。

5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Qb6!?


このタイミングでのQd8-Qb6 は、ウズベキスタンのGM Saltaev が10年以上前に成功してたくさんの白星を稼いでいるのですが、自身で試すのは初めてです。ここからの白の数手で、12... Be7 の変化に手順前後する可能性もあります。

13. Ne4 Be7 14. Ne5 Rd8 15. f4??

シンプルなブランダーで白はポーンが落ちます。15. Nc4 Qc7 16. g3!? を読んでいましたが、Bd2-Bf4 にはNf6-Nd5 が受けになるので、d6 への侵入はストップして黒は満足な展開でしょう。キャスリングを遅らせてもルークをd8 に早く回したことで、c6-c5 の楽しみもあります。

15... Nxe5 16. Nxf6+ Bxf6 17. fxe5 Bxe5!


17... Rxd4 18. Qg3 Rxd2 19. fxg7! の切り返しがあるため、取るポーンはe5 からです。

18. Be3 c5! 19. Rh4 cxd4 20. Bxd4 Bxd4 21. Rxd4 Rxd4 22. Qxd4 Qxd4 23. Rxd4 Ke7

1ポーンを取った黒はピースをほとんど交換し、ルークエンディングに持ち込みます。センターにすでにパスポーンができており、白のクイーンサイドでの反撃も遅いのでこれを勝てないのはまずいと思いました。

24. Rb4 b6 25. a4 Rd8 26. a5 bxa5 27. Rb5 Rd5 28. Rb7+ Kf6 29. Rxa7


29. g4 Rd4 30. Rxa7 Rxg4 31. Rxa5 g5! (31... Rg5? 32. b4!=) 32. fxg6 fxg6-+ このルークエンディングはhポーンを進めて勝ちですが、試合中は31... Rg5? を少し考えていたので、間違えうる怖い形です。

29... Rxh5 30. c4 Rg5 31. g3 Rg4 32. Rxa5 Rxc4+ 33. Kd2 Rg4 34. Ra3 h5 35. Rf3+ Kg6?!

今見返しても、なぜgファイルに逃げたのが分かりません。白のbポーンを警戒すればクイーンサイドに戻るべきですし、f7-f5, e6-e5 をサポートするためにも、35... Ke7 と指すべきです。

36. Kc3 f5 37. b4 Kf6 38 b5 h4?


オリンピアードのネパール戦でも、相手のパスポーンが単に進む手を見落として負けたことを思い出しました。h4 でポーン交換をして3コネクテッドパスポーンを決め、hファイルからルークが下がるというのは黒の都合の良い想像です。 38... Ra4 39. Kb3 Rd4-+ からルークを8段目に下げる準備をし、パスポーンを押し進めていけば簡単に勝ちでした。

39. b6! Rxg3 40. b7 Rxf3+ 41. Kc4 Rf4+ 42. Kc5 Kg5

うっかり白のプロモーションを止められなくなってしまったので、ルークを取りf-hファイルの3つのパスポーンに期待します。キングが前進することで後ろからのパペチュアルチェックをかわし、パスポーンのサポートすることも重要です。

43. b8=Q Kg4 44. Qg8 g5 45. Qxe6 h3 46. Qe1 Rf3 47. Kd4?


白キングはポーンに寄れないため、この1手は無駄になってしまいます。白がドローにするためにはチェックをすぐに入れてh3-h2 を止めるしかありませんでした。47. Qe2 f4 48. Kd5 Kg3 49. Qe1+ Rf2 50. Qg1+ Rg2 51. Qe1+ Kg4 52. Qe6+= これでチェックが止まらずドローです。しかし、黒としてはルークを変な場所に置かなければポーン、キング、ルークがそれぞれ協力して守り合っており、フォートレスでドローは確定しています。正しくチェックを入れてドローに持ち込まなければいけないのは白なので、実戦的には黒にチャンスのあるエンドゲームだとずっと思っていました。

47... h2-+

試合中確信はありませんでしたが、このポーンが7段目まで到達したことで黒の勝勢となりました。g1 のマスを抑え、ここでクイーンのチェックができなくなったことがポイントです。

48. Qh1 Kg3 49. Ke5 g4 50. Kd4 Kh3 51. Ke5 Rf2 52. Qa8 Rf1


チェックが続かないことを確認し、プロモーションの準備をします。

53. Qa3+ g3 54. Qa8 h1=Q 55. Qh8+ Kg2 0-1

余計な反撃を与えずに勝つべきゲームでしたが、貴重なエンドゲームの体験ができたので良しとします。明日は終始安全に指したいです。

数名のキャンセルで67名の参加となった今年の東京チェス選手権ですが、初日3連勝は6人います。明日の後半戦で全勝者も絞られますので、きっちり残って優勝争いをしてきたいと思います。

Tokyo Chess Championship 2023 R4 Pairings
Tokyo Chess Championship 2023 R4 Live Games (chess.com)
Tokyo Chess Championship 2023 R4 実況中継(Youtube)

初日の夜はずっと行ってみたかった大井町の老舗洋食屋、ブルドックに足を運びました。こちらは350gある巨大メンチカツが名物です。

2023/02/16

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第16回予告

2月のOPENREC での講座案内です。今月は今週末の日曜日、2/19 20時からスタートです。

2月のOPENREC の講座テーマは『運命の選択』 です。チェスは初手で何を動かすかから始まり、常に選択の連続です。最近の講座の中では、ピースが逃げる際にどこに逃げるか、キャスリングはどちら側にするかなどのアイディアも紹介しましたが、これも1つの選択です。そんなチェスの試合の中で現れる選択には、1手で結果を左右してしまうような、大きな運命の選択があります。駒を取るか取らないか、取るならば何から取るか、キングをどのマスに逃がすか、手番はどちらが良いか。そんな1つの判断が勝負を分ける、運命の選択をご紹介します。冒頭30分の無料視聴は可能ですので、サブスク登録がまたのかたはこの機会にぜひよろしくお願いいたします。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第16回『運命の選択』| 2023.02.19
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2023/02/09

Caro-Kann Advance Tal Variation


今夜は再び白番に戻し、Caro-Kann Defence のゲームをご紹介しようと思います。私のレイティング帯ではCaro-Kann を使うプレーヤーと当たる頻度はかなり高く、毎試合勉強させてもらっています。

imsk (2520) - lamadestr (2514)
Lichess Blitz

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4!?

昨年のジャパンチェスクラシックではCaro-Kann に対してはTwo Knights Variation を指していましたが、少し前から4. h4 のTal Variation を研究しています。黒番でも対策は苦労してきた変化で、2018年にはオリンピアード最終戦でチュニジアのFM Amdouni に勝ったものの、その直後のFirst Saturday ではギリシャのGM Kotronias に敗れています。それ以降も盛んにトップクラスで指され、今後も人気のCaro-Kann 対策であると考えています。

4... h5 5. Bd3 Bxd3 6. Qxd3 Qa5+


6... e6 7. Bg5 Be7 8. Nf3 という進行を避けるための早いチェックです。g5 のマスを弱めて使うチャンスを得るのが、h2-h4,h7-h5 を挟んだ白のメリットであり、Tal Variation の1つの狙いと言えます。

7. Nd2 e6 8. Ngf3 Nh6 9. O-O Nf5 10. Nb3

クイーンをアタックしておくと同時にc6-c5 を牽制しておきます。黒がこのポーンブレイクをいつするか、白がそれにどう備えるか、された際にどう対応するかは、Caro-Kann Advance の様々なラインで重要なトピックとなります。

10... Qa6 11. Qd1 Be7 12. g3 Nd7 13. a4!


クイーンサイドでスペースを取り、黒クイーンの行き場を減らす、ルーク活用のチャンスを作るなどを効果を生む手です。

13... c5 14. c3

コンピュータが白唯一の緩手と指摘した手で、14. dxc5 Nxc5 15. Nbd4! からf5 のナイトを捌きにいくのがベターのようです。確かにf5 のナイトがキングサイドを守るキーピースで、本譜でもそこがポイントとなります。

14... Rc8 15. Re1 b6 16. Bg5!


上記の変化のように白は黒マスビショップを交換し、黒の黒マスの弱体化とNf3-Ng5 のチャンスを作ります。

16... Bxg5 17. Nxg5 Qc4 18. a5 b5 19. a6!

黒クイーンは狭いa6 のマスから脱出しましたが、代わりに白のポーンがa6 まで刺さり、Nb3-Na5 がクイーントラップのスレットになっています。a6 のポーンはa7 を固定し、ここが落ちた際に強力なパスポーンにもなりえます。すると黒はa7 を落とした際の負担が大きく、これを守るためにピースの動きが制限されることになります。

19... cxd4 20. Nxd4 Nxd4?


ナイト交換に応じるのは白の思うつぼです。f5 のナイトが消えるとQd1-Qf3 からf7 を狙われる手が厳しくなります。いずれにせよ白が優勢ですが、20... g6 としてナイト交換はf5 のマスでするべきでした。

21. cxd4 g6 22. Rc1! Qxc1 23. Qxc1 Rxc1 24. Rxc1+-

本譜の進行を避けるため、21... Nb6 22. Qf3 Qc7 のようにすべきですが、それでも黒はh8 のルークをゲームに参加させることが難しく、白の勝勢です。本譜では白のルークがcファイルから容易に侵入できるため、a7 のポーンが落ちて白の勝ちとなります。

24... Ke7 25. Rc7 Rb8 26. Rxa7 Rb6 27. Nxf7!


もう1つのポーンもいただいてしまい、ついでにナイトをセンターに戻します。

27... b4 28. Nd6 Kd8 29. Ra8+ 1-0

最後はメイトかプロモーションのいずれかが止められない形となって決着です。今年は黒番でCaro-Kann を使おうと思っているので、自身もこのTal Variation に対策が必要です。

2023/02/07

QGD Exchange Variation


二夜連続のゲーム解説記事の更新です。ここ二回は連続でFrench, Sicilain と白番でのゲームをご紹介してきたため、今夜は黒番でついさきほど指した試合を振り返ろうと思います。

xyz1981 (2610) - imsk (2531)
Lichess Blitz

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 e6 5. Bg5 Nbd7

Semi-Slav をメインの戻してから、5. Bg5 に何を指すかは悩み続けています。一昨年はCambridge Springs をメインに据えていましたが、去年からはシャープな5... dxc4 のBotvinnik Variation なども少し試しています。

6. e3 h6!?


Cambridge Springs は黒マスビショップの位置を決めずにNb8-Nd7 で待っておき、6... Qa5 とすれば基本形が完成します。6... h6 の変化は昨年の名古屋の大会で、7. Bh4 g5!? 8. Bg3 Nh5 としてナイトビショップ交換を仕掛け、局面の均衡を崩す難しい変化を試してみました。この試合ではもう少し手堅く、分かりやすい変化を求めて初めての手を指してみます。

7. Bh4 Be7 8. Qc2 O-O 9. cxd5!?

大人しくキャスリングした黒に対して、白がExchange Variation にしてきたのは少し意外でした。d5 でポーンを交換せずにQd1-Qc2 と上がる変化は、偉大なるポーランドのプレーヤーの名前を取り、Rubinstein Variation と呼ばれ、9. Rd1 と指して黒のdxc4 を待つのが一般的なアイディアです。一方で本譜のように白がExchange Variation にしてきたのは、黒がh7-h6 を指したのを見ての判断でしょう。私がチェスを始めた頃は、Exchange Variation においてh7-h6 のポーン突きはg6 のマスを弱めるために良くないという意見が強かったですが、近年の試合では一概にそうとは言えないと評価が変わっています。

9... exd5 10. O-O-O?!


クイーンサイドキャスリングが効果を発揮しやすいのは、早めにh2-h3 を入れてビショップをf4 に退き、白からg2-g4 と仕掛けられる時です。本譜ではシンプルにピースを捌き、黒のアタックチャンスを限定します。

10... Ne4 11. Bg3 Ndf6 12. Bd3 Bf5!

一時的でもe4 にナイトが残せると、最も厄介な白マスビショップまで捌くことができます。これで黒の序盤の問題はほぼ解決できたので、あとはクイーンサイドをいかに攻撃するかを考えます。

13. Kb1 Nxc3+ 14. Qxc3 Bxd3+ 15. Qxd3 Ne4 16. Nd2 Nxd2+ 17. Rxd2 Bd6 18. a3 Re8 19. Ka2 a5!


QGD Exchange ではb2-b4 からのマイノリティアタックへの備えとしてa7-a5 とすることが多いですが、ここでは白がa2-a3 とポーンを伸ばしたのを見て、a4 までポーンを刺し、ルークをaファイルから出陣させるアイディアです。

20. Qf5 a4 21. Rc2 Ra5 22. Bxd6 Qxd6 23. g4 Rb5 24. g5 g6 25. Qf3 h5

こうしてキングサイドを固めてしまえば、白からの有効なアタックは封じることができます。クイーンサイドの突破は簡単ではないものの、これで自分の攻撃に集中でき、だいぶ楽になったと感じました。

26. h4 Re4 27. Qh3 Qe6 28. Qg3 Qc8 29. Rc3 Qd8 30. f3 Re6 31. Rd1 Qb6 32. Rd2?


b2 を守る自然な1手に見えますが、f2-f3 と突いてe3 のポーンを弱めてしまったことが痛手となります。32... Qf2 がb2 とe3 をカバーする唯一の手でした。

32... Rb3!

e3 とb3 を守る最重要ピースを消してしまえば、黒は駒得と白キングへのアタックを容易に実現します。

33. Rdc2 Rxe3 34. Rxe3 Rxe3 35. Kb1 Qb3!


d4 のポーンを落とすことよりも、a2 のマスを抑えて白キングを逃がさないようにし、f3 とb2 へのプレッシャーを残すようにします。

36. Qb8+ Kg7 37. Qf4 Re1+ 38. Rc1 Re2 0-1

白はb2 を守ることができず、39. Qf6+ Kg8 40. Qd8+ Kh7 でチェックも続きません。派手さはありませんが、丁寧に指せた好ゲームだと思います。

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