バクーオリンピアード後半戦が始まりました。R6 の相手は少し各上のルクセンブルクです。私の相手であるIM Wiedenkeller は、直前でフィンランドのGM Nyback を破るなど、ここまで絶好調でレイティングを大きく上げています。
この2年間、1. c4 e5 を再び研究し始め、いくつかの実戦経験も積んできました。このラインは青嶋くん、野口さんと指していますが、その際は8. Nf3 でした。h3 に飛んだナイトは、Nh3-Nf4 からd5 の孤立ポーンを攻撃できるのであれば良いですが、黒がd5 にナイトを置けるとなれば、良い働きをするか疑問です。
かつて野口さんとの試合では、f3 にナイトがいるにも関わらずこの手を指し、d5 に弱いポーンを作ってひどい目にあいました。h3 にナイトが飛んだ形のポイントは、d4 のクイーンが守られていないため、黒はd5 のポーンをすぐに取りかえさず、Na6-Nb4 ができることです。
Nb4-Nc2 のフォークと、Nb4-Nxd5 を避けるために、白はクイーンを交換することにしますが、これで黒は序盤、満足な形になりました。ここからは、e2 のポーンを狙いにきいます。14. Bf4 Bf8!=/+ ならば、白はh3 のナイトの行き場に困るでしょう。
ここは相手の誘いに乗り、ビショップナイトの交換からポーンをもらいに行きます。
当然の1手で、b1 のマスを抑え、b7 を攻撃されにくくします。これでポーンの代償は十分ではないと思いますが、まだまだダブルビショップの力は侮れません。
a2-a4-a5-a6 の構想は当然考えていました。それに対し、f4 のナイトをh3 に戻し、そのナイトを負担にすることで対抗します。g2 のビショップは、h3 に戻ってきたナイトを守っていなければいけないため、a4-a5-a6 から、すぐにc6 を取れないことがポイントです。
少し迷いましたが、まだ動いていないピースをアクティブにして、ポーンを取りあうことにします。相手はh3 のナイトが使えておらず、バックランクが弱いため、ここは間違いなく押していると感じていました。
ここでルークをどこに置くか迷いました。選んだ手は少し無難すぎるので、大胆に7段目に飛び込む29... Rd2 か、a5 のポーンを狙う29... Ra8 の、どちらが良かったでしょう。
ここはb7-b6 ができなかったのが予想外でしたが、慌てずにピースのポジションを良くして、プレッシャーをかけ続けることを心がけます。Nc3-Ne2-Ned4 までいければ黒は大きなチャンスを掴みますが、白は当然それを防ぎます。
ここは時間も少なく、37... Rc2! と指すのを躊躇ってしまいました。7段目にルークを残すことが客観的に考えて良いことは分かっていますが、c2 のルークは一時的に動けるマスが全くなく、読み落としでトラップなどがあったら大事なマッチで負けになる危険が高いと思ってしまったのです。実際にはc2 のルークをアタックにしにいける駒は、白には一つもありません。ここでドローかと思いきや、白から手を変えてきます!
時間が増える40手直前で、これを仕掛けます。黒はポーンを返してしまっても、自分にだけ価値のチャンスがある、ルーク+異色ビショップのエンドゲームに持ち込もうとします。
ここでWiedenkeller からドローオファーがありました。今大会、ドローオファーは互いに1回ずつしかできないという新ルールが採用されています。私がこれを蹴った場合、私から改めてしたドローオファーを彼が受けるか、3回同一か、ブックドローしかドローにはなりえないことになります。私は少し考え、ここで受ける理由はないと判断してゲームを続けます。
異色ビショップはドローのチャンスが多いとされますが、ルークが残っており、白はh2 のポーンが弱いとなれば、黒にだけチャンスがあるでしょう。ここはピースを残したほうが、白にとっては良かったかもしれません。
しかし、私にも緩手が出ます。確実に7段目にルークを入れるためには、44... Rc8! と指し、c2 への侵入を伺うべきでした。
45. Be3! Rc8 46. Rb2 ならば、白はしっかりと7段目を守り、黒に簡単にチャンスを与えなかったでしょう。
ルークは1つ交換しましたが、黒はルークを7段目に入れ、Rd2-Rg2+ から、h2 のポーンを取ることをスレットにしています。これでまだ先は長くとも、勝ちチャンスがきたと思いました。
指した直後に、大事な試合で何をやっているのだろうと落ち込みました。h2 はいつでも取れるため、キングを先にクイーンサイドに寄せていく構想は良いでしょう。h2 を取った際に、Bb6-Bf2 で一時的にルークが閉じ込められることを気にしましたが、キングでa5 のポーンをアタックすれば、ビショップはa5 の守りに戻らないといけないことに気付いたのです。しかし、キングの寄るマスが当然間違っています... 51... Rg2+ 52. Kf1 Rxh2 53. Rh7 Kd6 54. Bf2 Kc6 55. Be1 Kc5-/+ このエンドゲーム、白は頑張ってディフェンスに奔走するでしょうが、おそらく黒が勝てるでしょう。
b7 を失った以上、黒からのパペチュアルチェックでドローにするしかないでしょう。
このマッチでは、南條くんが連勝できたのは良かったのですが、4B では唐堂くんが相手の美しい指しまわしにより短手数で負け。Alex もパペチュアルチェックのチャンスを蹴って勝負にいき、負けになってしまいました。2.5-1.5 の惜敗ですので、私がひどい手を指さず、勝っていればという気持ちが強いです。各自、反省をもってまた次のラウンドに臨みたいと思います。
女子もスリナム相手に1P 取ったのみで、敗れてしまいました。後半戦、オープン女子そろっての負けの嫌な流れを変えるために、今日のR7 はしっかりと星を取ってきたいと思います。オープンはチュニジア、女子はザンビアと、ともにアフリカの国との対戦になります。
Wiedenkeller, M (IM, LUX, 2458) - Kojima, S (IM, JPN, 2398)
Baku Chess Olympiad (6)
1. c4 e5 2. g3 Nf6 3. Nc3 c6 4. d4 exd4 5. Qxd4 Na6 6. Bg2 Bc5 7. Qe5+ Be7 8. Nh3!?
Baku Chess Olympiad (6)
この2年間、1. c4 e5 を再び研究し始め、いくつかの実戦経験も積んできました。このラインは青嶋くん、野口さんと指していますが、その際は8. Nf3 でした。h3 に飛んだナイトは、Nh3-Nf4 からd5 の孤立ポーンを攻撃できるのであれば良いですが、黒がd5 にナイトを置けるとなれば、良い働きをするか疑問です。
8... O-O 9. O-O Re8 10. Qd4 d5!
かつて野口さんとの試合では、f3 にナイトがいるにも関わらずこの手を指し、d5 に弱いポーンを作ってひどい目にあいました。h3 にナイトが飛んだ形のポイントは、d4 のクイーンが守られていないため、黒はd5 のポーンをすぐに取りかえさず、Na6-Nb4 ができることです。
11. cxd5 Nb4! 12. d6 Qxd6 13. Qxd6 Bxd6 14. Rd1
Nb4-Nc2 のフォークと、Nb4-Nxd5 を避けるために、白はクイーンを交換することにしますが、これで黒は序盤、満足な形になりました。ここからは、e2 のポーンを狙いにきいます。14. Bf4 Bf8!=/+ ならば、白はh3 のナイトの行き場に困るでしょう。
14... Be5 15. Bf4 Bxc3
ここは相手の誘いに乗り、ビショップナイトの交換からポーンをもらいに行きます。
16. bxc3 Nbd5 17. Bd2 Rxe218. c4 Nb6 19. Nf4 Re8 20. Rdc1 Bf5
当然の1手で、b1 のマスを抑え、b7 を攻撃されにくくします。これでポーンの代償は十分ではないと思いますが、まだまだダブルビショップの力は侮れません。
21. a4 g5!?
a2-a4-a5-a6 の構想は当然考えていました。それに対し、f4 のナイトをh3 に戻し、そのナイトを負担にすることで対抗します。g2 のビショップは、h3 に戻ってきたナイトを守っていなければいけないため、a4-a5-a6 から、すぐにc6 を取れないことがポイントです。
22. Nh3 h6 23. a5 Nbd7 24. Ra3 Rad8
少し迷いましたが、まだ動いていないピースをアクティブにして、ポーンを取りあうことにします。相手はh3 のナイトが使えておらず、バックランクが弱いため、ここは間違いなく押していると感じていました。
25. Be3 Ne5 26. Bxa7 Nxc4 27. Rf3 Nd6 28. Rb3 Nb5 29. Bb6 Rd7
ここでルークをどこに置くか迷いました。選んだ手は少し無難すぎるので、大胆に7段目に飛び込む29... Rd2 か、a5 のポーンを狙う29... Ra8 の、どちらが良かったでしょう。
30. f4 g4 31. Nf2 Nd5 32. Bc5 Ra8 33. Ra1 Ndc3
ここはb7-b6 ができなかったのが予想外でしたが、慌てずにピースのポジションを良くして、プレッシャーをかけ続けることを心がけます。Nc3-Ne2-Ned4 までいければ黒は大きなチャンスを掴みますが、白は当然それを防ぎます。
34. Bf1 Rd2 35. Be3 Rd7 36. Bb6 Rd2 37. Be3 Rd7
ここは時間も少なく、37... Rc2! と指すのを躊躇ってしまいました。7段目にルークを残すことが客観的に考えて良いことは分かっていますが、c2 のルークは一時的に動けるマスが全くなく、読み落としでトラップなどがあったら大事なマッチで負けになる危険が高いと思ってしまったのです。実際にはc2 のルークをアタックにしにいける駒は、白には一つもありません。ここでドローかと思いきや、白から手を変えてきます!
38. Rb2 Re8 39. Bc5 Ne4!?
時間が増える40手直前で、これを仕掛けます。黒はポーンを返してしまっても、自分にだけ価値のチャンスがある、ルーク+異色ビショップのエンドゲームに持ち込もうとします。
40. Nxe4 Bxe4 41. Re1
ここでWiedenkeller からドローオファーがありました。今大会、ドローオファーは互いに1回ずつしかできないという新ルールが採用されています。私がこれを蹴った場合、私から改めてしたドローオファーを彼が受けるか、3回同一か、ブックドローしかドローにはなりえないことになります。私は少し考え、ここで受ける理由はないと判断してゲームを続けます。
41... f5 42. Bc4+ Kg7 43. Bxb5?!
異色ビショップはドローのチャンスが多いとされますが、ルークが残っており、白はh2 のポーンが弱いとなれば、黒にだけチャンスがあるでしょう。ここはピースを残したほうが、白にとっては良かったかもしれません。
43... cxb5 44. Rxb5 Red8?!
しかし、私にも緩手が出ます。確実に7段目にルークを入れるためには、44... Rc8! と指し、c2 への侵入を伺うべきでした。
45. Bb4?!
45. Be3! Rc8 46. Rb2 ならば、白はしっかりと7段目を守り、黒に簡単にチャンスを与えなかったでしょう。
45... Rc8! 46. Rc5 Rxc5 47. Bxc5 Rd2
ルークは1つ交換しましたが、黒はルークを7段目に入れ、Rd2-Rg2+ から、h2 のポーンを取ることをスレットにしています。これでまだ先は長くとも、勝ちチャンスがきたと思いました。
48. Rc1 Kf7 49. Bf2 Ra2 50. Rc7+ Ke6 51. Bb6 Kd5?
指した直後に、大事な試合で何をやっているのだろうと落ち込みました。h2 はいつでも取れるため、キングを先にクイーンサイドに寄せていく構想は良いでしょう。h2 を取った際に、Bb6-Bf2 で一時的にルークが閉じ込められることを気にしましたが、キングでa5 のポーンをアタックすれば、ビショップはa5 の守りに戻らないといけないことに気付いたのです。しかし、キングの寄るマスが当然間違っています... 51... Rg2+ 52. Kf1 Rxh2 53. Rh7 Kd6 54. Bf2 Kc6 55. Be1 Kc5-/+ このエンドゲーム、白は頑張ってディフェンスに奔走するでしょうが、おそらく黒が勝てるでしょう。
52. Rxb7 Kc4 53. Rd7 Ra1+ 54. Kf2 Ra2+ 55. Ke3 Ra3+ 56. Kf2 Ra2+ 57. Ke3 Ra3+ 58. Ke2 Bf3+
b7 を失った以上、黒からのパペチュアルチェックでドローにするしかないでしょう。
59. Kf2 Ra2+ 60. Ke1 Ra1+ 61. Kf2 Ra2+ 1/2-1/2
このマッチでは、南條くんが連勝できたのは良かったのですが、4B では唐堂くんが相手の美しい指しまわしにより短手数で負け。Alex もパペチュアルチェックのチャンスを蹴って勝負にいき、負けになってしまいました。2.5-1.5 の惜敗ですので、私がひどい手を指さず、勝っていればという気持ちが強いです。各自、反省をもってまた次のラウンドに臨みたいと思います。
Luxembourg - Japan 2.5-1.5
Wiedenkeller, M (IM, LUX, 2458) - Kojima, S (IM, JPN, 2398) 1/2-1/2
Berend, F (IM, LUX, 2328) - Nanjo, R (IM, JPN, 2340) 0-1
Linster, P (LUX, 2233) - Averbukh, A (JPN, 2223) 1-0
Mertens, M (LUX, 2181) - Tang Tang (JPN, 2108) 1-0
Japan - Surinam 1-3
Ishizuka, M (JPN, 1778) - dos Ramos, R (WFM, SUR, 1821) 0-1
Hoshino, K (WCM, JPN, 1802) - Adhin, A (WCM, SUR, 1616) 1/2-1/2
Sakai, A (JPN, 1703) - Kaslan, C (WCM, SUR, 1665) 0-1
Fukuya, N (JPN, 1636) - Frijde, R (WCM, SUR, 1605) 1/2-1/2
Wiedenkeller, M (IM, LUX, 2458) - Kojima, S (IM, JPN, 2398) 1/2-1/2
Berend, F (IM, LUX, 2328) - Nanjo, R (IM, JPN, 2340) 0-1
Linster, P (LUX, 2233) - Averbukh, A (JPN, 2223) 1-0
Mertens, M (LUX, 2181) - Tang Tang (JPN, 2108) 1-0
Japan - Surinam 1-3
Ishizuka, M (JPN, 1778) - dos Ramos, R (WFM, SUR, 1821) 0-1
Hoshino, K (WCM, JPN, 1802) - Adhin, A (WCM, SUR, 1616) 1/2-1/2
Sakai, A (JPN, 1703) - Kaslan, C (WCM, SUR, 1665) 0-1
Fukuya, N (JPN, 1636) - Frijde, R (WCM, SUR, 1605) 1/2-1/2
女子もスリナム相手に1P 取ったのみで、敗れてしまいました。後半戦、オープン女子そろっての負けの嫌な流れを変えるために、今日のR7 はしっかりと星を取ってきたいと思います。オープンはチュニジア、女子はザンビアと、ともにアフリカの国との対戦になります。
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