2016/09/10

Baku Chess Olympiad R7 Tunisia - Japan


クリスタルホール内の試合会場 Photo by Alex


後半戦から会場内へのカメラ持ち込み、および写真撮影が許可されるようになりましたので、ようやく写真で会場の様子をお伝えできます。残り5試合となったR7 は、アフリカのチュニジアとの対戦です。上2人は2100、下2人はは1900ですので、マッチに勝つのはもちろん、なるべくポイントを取りたいラウンドです。

Mabrouk, F (TUN, 2145) - Kojima, S (IM, JPN, 2398)
Baku Chess Olympiad (7)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. g3 Bb4+ 5. Bd2 Be7 6. Bg2 O-O 7. Qc2 c6 8. O-O b6 9. Bf4 Bb7 10. Nbd2 Nbd7 11. e4 Rc8 12. e5 Ne8 13. h4 c5 14. Ng5 g6 15. cxd5 cxd4 16. Qd1 Bxg5 17. Bxg5 f6 18. exf6 Ndxf6 19. dxe6 Bxg2 20. Kxg2 Qd5+ 21. Kg1 Qxe6 22. Nf3 Ne4 23. Nxd4 Qf7 24. Qb3 Rc4 25. Be3 N8d6 26. Rac1 Nc5 27. Qd1 Rxc1 28. Qxc1 Qxa2 29. Bh6 Re8 30. b4 Nce4 31. Qa1 Qf7 32. Bf4 Nc4 33. Re1 Qd5 34. Nf3 Ned6 35. Rxe8+ Nxe8 36. Ne5 Nxe5 37. Qxe5 Qxe5 38. Bxe5 Kf7



序盤はお粗末なので、このゲームをエンドゲームを取り上げようと思います。苦しい展開からなんとか挽回した黒は、このビショップvs. ナイトのエンドゲームを勝ちにいくことにします。検討でも話題の中心になったのは、黒はキングを早くセンターに上げるべきか、それともaポーンを進め、早めにアウトサイドパスポーンを確定させるかということです。コンピュータはパスポーンの価値を高く評価しますが、私は黒マスビショップが抑えるa1 のマスを取りに行くのは容易ではなく、黒が勝つという自信がありませんでした。実際に、38... a5 39. bxa5 bxa5 40. Kf1 Kf7 41. Ke2 Ke6 42. Ba1 と進めてみたポジションを考えましたが、黒が勝ちなのかよくわかりません。そこで私はキングを先に上げ、白のbポーンをターゲットとして残す作戦を選びました。もちろん、白が次に指す可能性がある、b4-b5 に対してもある程度読んだうえの結論です。

39. b5 Ke6 40. Bb8 Kd7


時間の増える40手目、相手はこれでどうだとばかりに固定したa7 を狙いますが、私は落ち着いてキングを寄せます。白がa7 を取ろうものなら、Kd7-Kc7 からビショップはトラップされてしまいます。これで次にNe8-Nd6 からb5 のポーンを取りにいけば、黒が勝てると読んで相手の手を待ちますが...

41. g4?



結論から言えば、この手は悪手で黒の勝ちになります。しかし、私は自分の読み間違いに気付いて愕然とします。勝ちだと思ったポーンエンディングは負けだったのです! 41... Nd6? 42. Bxd6 Kxd6 43. f4! Kc5 44. g5! Kxb5 45. f5! gxf5 46. h5+- これでブレイクスルーを成功させた白は、先にクイーンを作って勝ちとなります。38... a5 のほうが良かったかと後悔もしましたが、私はナイトを上手く使い、チャンスを作れる可能性に気付きました。ちなみに白の正解は、41. f4! Nf6 42. Kg2 Nd5 43. Be5 Nb4 44. Kf3 a5 45. bxa6 Nxa6 46. Kg4= と進めることで、本譜の指し方を黒に許さず、ドローに持ち込むことができます。

41... Nf6! 42. f3 Nd5!


ナイトがb5 のポーンを狙えるマスが、d6 とc7 だけだと決めつけていたのが私の間違いで、もっと広く盤を使い、d4,c3.a3 も利用すればb5 を取れるようになることに気付いたのです。

43. Be5 Ke6 44. Bb8 Kd7 45. Be5 Ne3!



このマスがポイントで、次にc2,c4 に行けるようになります。c2,c4 からはそれぞれ、d4,a3 とa3,d6 にナイトが飛ぶチャンスがあり、いずれもb5 のポーンをアタックできます。これらのマスをビショップ一つでカバーし、ナイトのジャンプを封じることは不可能です!

46. Bb8 Kc8! 47. Bd6 Nc2 48. f4 Nd4?


望んだ通り、b5 のポーンを取れる位置にナイトを運びましたが、これが早すぎたため、白にドローチャンスを与えてしまうことになります。相手がこの手筋に気付かなかったのは、ラッキーでした。正しくは48... Kd7!1 49. Be5 Na3!-+ と指し、キングを1歩キングサイドに近づけておけば勝勢でした。

49. Kf2?



このポジションで白がドローに持ち込む手筋を探すのは簡単ではないでしょう。白の望みはたった一つ、キングサイドのブレイクスルーしかありません。49. Be5! Nxb5 50. f5 gxf5 51. g5 Kd7 52. h5 Ke7 53. g6 hxg6 54. h6 Nd6 55. Bxd6+ Kf7 56. Bb8 a6 57. Bf4= このように2つのポーンを犠牲にしても、hファイルのパスポーンを進めれば、黒はそれを止めるためにナイトを捨てざるをえません。そうなればドローは間違いないでしょう。

49... Nxb5 50. Be5 Kd7 51. f5 gxf5 52. g5 Ke6


黒がキングをセンターに戻している状況では、すでにブレイクスルーは遅すぎます。後はクイーンサイドにできたコネクテッドパスポーンを進めつつ、ブレイクスルーに気を付けていれば黒の勝ちです。

53. Bb2 Nd6 54. Kf3 a5 55. Bc3 a4 56. Kf4 Ne4 57. Bb4 b5 58. h5 Nf2 59. Kf3 Nd3 60. Bc3 Kf7 0-1



このラウンドは南條くんのみドローで、他の3人は無事に勝ちました。これでチュニジアを破り、次のラウンドではまた強豪とぶつかります。

Tunisia - Japan 0.5-3.5

Mabrouk, F (TUN, 2145) - Kojima, S (IM, JPN, 2398) 0-1
Meftahi, H (IM, TUN, 2119) - Nanjo, R (IM, JPN, 2340) 1/2-1/2
Ben Ammar, M (TUN, 1929) - Averbukh, A (JPN, 2223) 0-1
Ben Youssef, A (TUN, 1893) - Yamada, K (CM, JPN, 2100) 0-1


一方で女子もザンビアを下し、オープン、女子揃っての日本チーム白星となっています。坂井さんは今大会、待望の初白星ですね。

Zambia - Japan 1.5-2.5

Mwango, L (WFM, ZAM, 1935) - Ishizuka, M (JPN, 1778) 1-0
Hamoonga, L (WCM, ZAM, 1783) - Sakai, A (JPN, 1703) 0-1
Kabamba Mulwale Bwalya (ZAM, 1683) - Shibata, M (JPN, 1638) 1/2-1/2
Lubuuto Bwalya Mulwale (ZAM, 1529) - Fukuya, N (JPN, 1636) 0-1



そして一つ、嬉しいニュースです。女子の5B でプレーしていたなつみが、5試合中3.5P という戦績で、WCM のタイトルを獲得できることがこの時点で確定しました。WCM の規定は7試合以上で50%以上の勝率を挙げることですので、彼女はあと2試合プレーすれば、結果にかかわらずタイトル獲得となります。最短4試合で獲得が決まるWCM ですが、5試合でで確定は、私の知る限り日本の女子プレーヤーで最短の記録です! この1年半以上、二人三脚で頑張ってきましたので、私としてもとても嬉しいです。この日、Mamedyarov のサインも貰えてご満悦の彼女は、残り4試合で2.5P 以上を挙げれば、WFM のタイトルも獲得することになります!

さて、バクーのオリンピアードも残りは4試合となり、ゴールがおぼろげながら見えてきました。日本チームは、オープンがここまで3勝3敗1ドロー (スリランカ、サントメ・プリンシペ、チュニジアに勝ち)、女子は2勝4敗1ドロー (パレスチナ、ザンビア勝ち) という結果になっています。少しでも上の順位を目指すため、残り試合も勝ち星を積み重ねたいですね。R8 はオープンが女子に続いてザンビア、女子がバルバドスとの対戦になります。ザンビアは6年前のオリンピーアドでも対戦し、その際はさほど強くなかったですが、今回は全員がIM というパワーアップを果たしています。特に私と対戦するKayonde Andrew は、当時は5B でUR ですが、今回は2422 のIM です。前半戦以来の白も引けたので、ここはガンガン行こうと思います!

Japan - Zambia

Kojima, S (IM, JPN, 2398) - Kayonde, A (IM, ZAM, 2422)
Nanjo, R (IM, JPN, 2340) - Phiri, R (IM, ZAM, 2342)
Averbukh, A (JPN, 2223) - Mwali, C (IM, ZAM, 2335)
Yamada, K (CM, JPN, 2100) - Chumfwa, K (IM, ZAM, 2240)

Japan - Barbados

Ishizuka, M (JPN, 1778) - Blackman, K (WCM, BAR, 1642)
Hoshino, K (WCM, JPN, 1802) - Murray, D (BAR, 1419)
Sakai, A (JPN, 1703) - Sandiford, S (BAR, 1226)
Fukuya, N (JPN, 1636) - Nurse, L (BAR, 1291)





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