イギリスでは食事のことを多少なり心配していましたが、ここまでは特に問題なく過ごせています。会場近くには昼前からオープンしているカフェがあり、この3日間はそこで昼食を取り、13時半からの試合に向かうという流れが続いています。近くで昼から食事をできるところはさほど多くないため、ほかのマスターともよく顔を合わせます。この店のハンバーガーは美味しいのですが、ポテトとあわせるとかなり量が多く、試合前の食事としては大変です(笑)
Donchenko とドローになった翌日は、インドのLalith Babu との対戦です。私はCaro-Kann を研究している際に彼の名前を見つけ、たくさんのゲームを参考にしてきました。そんな彼が、2006年のAsia Junior で対戦したプレーヤーだと気付いたのは、実はつい最近のことです。10年も前の大会で対戦したプレーヤーが、現在でもチェスを続けており、互いに実力を伸ばして再戦できるということは、とても嬉しいことです。
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Lalith, B (GM, IND, 2586)
Chess.com Isle of Man International (3)
1. Nf3 Nf6 2. c4 b6 3. g3 c5 4. Bg2 Bb7 5. Nc3 g6 6. O-O Bg7 7. d4 cxd4 8. Qxd4 d6 9. Rd1 Nbd7 10. Be3 Rc8 11. Rac1 O-O 12. Qh4 a6 13. b3 Re8!?
Chess.com Isle of Man International (3)
過去にこのポジションを持った際、黒は13... Rc7 と指してきました。Lalith が選んだ13... Re8 のアイディアは、先にe7 のポーンを守っておくと同時に、c8 のルークは動かさないでおくことで、Rc8-Rc5 をテンポロスすることなく指すことだろうと考えました。そこでe3 のビショップを動かすのは遅らせることにします。
14. Bh3 Ba8 15. Bh6 Bxf3!?
このラインではときどき見かける手ですが、ビショップを下げた直後に、もう一度動いて取ってきてのは予想外でした。白はポーンストラクチャーを乱しますが、その代わりにeファイルを開くことで、e7 にプレッシャーをかけやすくなります。
16. exf3 Rc5 17. Bxg7 Kxg7 18. Qd4 Kg8 19. f4 Qb8 20. a4
この時点では多少白が良いだろうという自覚はありましたが、どのように進めていくかは迷うところです。ビショップを返してでもd7 を取り、Nc3-Nd5 と入るプランや、eファイルにルークを回してe7 をアタックするプランも考えましたが、まずはb6-b5 を止め、黒のクイーンサイドのアクションを抑え込むことにします。
20... Qc7 21. Re1 Rh5 22. Bxd7
a2-a4 を突く際に危惧していたのは、c5 に跳ばれたナイトにb3 をアタックされることです。それを気にしてナイトを消しに行ったのですが、コンピュータは実に面白い変化を示します。22. Bg2 Nc5?! 23. Qxf6!! gxf6 24. Rxe8+ Kg7 25. Nd5 Qd7 26. Rg8+! Kh6 27. Nxf6+/- クイーンを捨てる変化は多少考えましたが、Nc3-Nd5 からエクスチェンジを取りかえせるところまでは読めず、断念しました。
22... Qxd7 23. Ne4 Nxe4 24. Qxe4 Rc5
マイナーピースをすべて消し、ポジションを単純化しました。ここから白はe7 にプレッシャーをかけつつ、あわよくばf4-f5 を仕掛けるのに対し、黒はb6-b5 のブレイクのタイミングを伺うという展開になります。クイーンを交換したうえでのRh5-Rc5 は少し自信がありませんでしたが、問題はなさそうです。24... Qh3 25. Qg2 Qxg2+ 26. Kxg2 Rc5 27. Rcd1 Kf8 28. g4! b5 29. cxb5 axb5 30. Rc1 Ra8 31. Rxc5 dxc5 32. axb5 Rb8 33. f5 gxf5 34. Re5 Rxb5 35. Rxf5=
25. Rcd1 Qc7 26. Rd5 e6 27. Rd3 b5!?
黒は念願のb6-b5 を仕掛けますが、この時点であれば白はaファイルにできるパスポーンを武器に、黒が少し嫌がるような展開にできるのではないかと考えました。ポーンを単純にさばいてしまい、黒にdファイルのパスポーン、白にb3 の弱点となる孤立ポーンになってしまっては、もちろん白はダメです。
28. cxb5 axb5 29. a5! d5 30. Qb4!
a5 を守りつつ、b5 をアタックできるマスにクイーンを置きます。c4 を弱めるため、b3-b4 はなるべく突かないようにしようと思ったため、b4 のマスを埋めてしまうことは問題ではありません。
30... Ra8 31. Ra1 h5
31... Rc1+ 32. Rxc1 Qxc1+ 33. Kg2 Qc7 34. Rc3 Qd8 (34... Qxa5?? 35. Rc8+! Kg7 36. Qf8++-) 35. Qxb5 d4 36. Rd3 Rxa5 37. Qc6 Rd5= これはおそらくドローにするチャンスが十分あるでしょう。Lalith はピースを残し、難しいポジションを保ちます。
32. Rdd1 Rc2 33. h4 Qc6 34. Qd4 Ra6 35. f5!?
時間が増えるまであと5手、残り時間は2分という状況で、この手を仕掛けることを決断しました。黒キングの前が開けば、パペチュアルチェックのチャンスが生まれますし、h5 も取ることができそうです。
35... gxf5 36. Qf6 Qc3 37. Qg5+ Qg7 38. Qxh5 f4 39. Rac1!
h5 を取る前から、このようにルークを交換することは頭にありました。バックランクの弱い黒は、オープンファイルをルークにとられるわけにはいきません。
39... Rac6 40. Rxc2 Rxc2 41. g4 b4
白からのb3-b4 を防いだ手をなるほどと見ながら、ここからどうするか考えます。g4-g5 からクイーンを退くプランは、42. g5 Qe5 と進み、g5 でクイーンのチェックができなくなることを嫌いました。もう一つ、思いついて指したのは、aファイルのパスポーンを餌にして、cファイルのオープンファイルを取りにいくプランですが、これは黒が上手く対処すればすぐドローになることが分かりました。時間の増えた直後で余裕があり、しばらく考えて白で勝ちにいくアイディアをひねり出そうとしましたが、結局は思いつかず、ドローの変化を選ぶことにしました。
42. a6 Ra2 43. Rc1 Ra1 1/2-1/2
相手から早々にドローオファーがきたのは意外でしたが、ルーク交換後は互いにパペチュアルチェックの狙いを持ち、それを外しにいくこともできなさそうなので、ドローを受けることにしました。昨日の記事で、2600近くから久々のドローと書きましたが、この日もそれが続きました。ここまでは上手く指せていますので、残りの2/3 のラウンドもこの調子で続けていきたいですね。
今日は昨日に続き、インドのGM との対戦です。Sunilduth Lyna はまだ18歳になったばかりの少年で、この数年はWorld Junior での活躍を続けています。この大会には彼のような若者も含め、インドからマスターが大挙して押し寄せています。若い才能に負けないよう、このラウンドもしっかり指してこようと思います!
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Dahl, B (ENG, 1921) 1-0
Donchenko, A (GM, GER, 2581) - Kojima, S (IM, JPN, 2399) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Lalith Babu M R (GM, IND, 2586) 1/2-1/2
Sunilduth Lyna, N (GM, IND, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2399)
1 件のコメント:
小島さんの画像がstandingの表の上に載っています ▼o$~$o▼
https://www.chess.com/news/view/shirov-wins-takes-day-off-leads-by-full-point-in-isle-of-man-4596
コメントを投稿