5R のあったこの日は、お昼ご飯に新しいお店を開拓してみることにします。会場の先の通りにあるTea Junction というカフェレストランは、少し前に見つけて気になっており、実際に入ってみると、小さなシャンデリアや俳優の肖像画のあるオシャレな内装で、ゆったりとお茶を楽しめる専門店でした。
紅茶はこのように葉のサンプルを渡され、香りを確かめながら好みのものを注文することができます。フォートナム&メイソンのアフタヌーンティーも良かったですが、私はこちらのお店ほうが好きなお茶を選ぶことができて気に入りました。お茶とパニーニで、久々にゆっくりととした昼食の時間を過ごし、この日の試合に向かいます。
5R の相手はアイルランドから来ている18歳の少年です。レイティングは1900 ですが、直前のラウンドには2200 に勝っていますし、初戦も隣のボードでIM 相手にしっかりと指しているのを見ていました。絶対に勝ちたいラウンドですので、油断せずに試合に臨みます。
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Tirziman, R (IRL, 1923)
Chess.com Isle of Man International (5)
1. Nf3 e6 2. c4 Nf6 3. d4 c5 4. Nc3 cxd4 5. Nxd4 Bb4 6. g3 O-O 7. Bg2 d5 8. O-O!?
Chess.com Isle of Man International (5)
手順こそ一般的なものではないですが、Nimzo-Indian の一変化です。2012年にハンガリー留学を始めた当初、Nimzo-Indian を積極的に受けていたので、その頃の研究を思い出しながら指していきます。この変化では8. cxd5 と取るほうが多いですが、私はCatalan スタイルでc4 を一時的に取らせるラインを勉強していました。
8... dxc4 9. Qa4 Qa5!?
メインの手はどれだか思い出せませんでしたが、Qd1-Qa4 の直後でクイーンをぶつけられたらどうしようかと考え始めました。クイーンの交換後はピースの展開の早さと、黒のピースの働きの悪さを上手くつかなければ、ポーンの代償を得ることができないため、良い選択だと思います。
10. Qxa5 Bxa5 11. Ndb5 Rd8!
相手はこの手を指すのに、驚くべきことに50分近くも費やしてきました! 11... Nc6 12. Rd1 a6 13. Nd6 Bxc3 14. bxc3 Nd5 15. Nxc4!? このようにc3 を取らせ、黒マスの弱さで代償を取りにいくのは、今大会も参加しているベテランGM Romanishin のアイディアです。このラインに比べ、先にdファイルを取りにいくのは自然だと思います。
12. Bf4N
私としては、d6 を抑えなければb5 にナイトを跳んだ意味がないため、この手だろうと思って指しました。実戦では12. Rd1 Rxd1+ 13. Nxd1 というゲームが残っており、こちらのほうがe6-e5 でテンポを取られない点で良かったかもしれません。
12... Nc6 13. Rfd1 e5 14. Bg5 Be6 15. Bxf6?!
過去にa6 Slav を羽生さんと研究した際にも、似たポジションでこの交換を試して良くなかったことを、試合後の振り返りで思い出しました。私としては、ポーンストラクチャーを乱し、d5 とe4 のマスを使いやすくするプラスが大きいかと思いましたが、ダブルビショップを失うマイナスをもう少し考えるべきでした。15. Rxd8+ Rxd8 16. Bxc6 bxc6 17. Nxa7= ならば、イコールでゲームは続くでしょう。
15... Rxd1+?!
15... gxf6! 16. Ne4 Rab8! (16... f5 17. Nc5 e4 18. g4!) 17. Nxf6+ Kg7 18. Nd5 a6 19. Nbc3 Rd7=/+ 私が用意していたのは、Nc3-Ne4-Nc5 というアイディアでしたが、冷静に考えれば黒はf6 のポーンを返し、ダブルビショップで優位に試合を進めることができます。b7 にもう少しかけられると思っていたプレッシャーは、簡単にかわされてしまいます。
16. Rxd1 Bxc3 17. bxc3 gxf6
こうなってみて、ここからどうするか改めて作戦を立てます。Nb5-Nd6 はdファイルでピンにされてしまうため、もはや有効ではありません。Rd1-Rd6 とルークが侵入する手も、d8 でルークをぶつけられてしまい、ポーンを取りかえすことができません。すると勝てるかどうかわかりませんが、ピースを交換してルークエンディングに持ち込むくらいしか、白には手立てがないことがわかります。
18. Bxc6 bxc6 19. Nc7 Rb8 20. Nxe6 fxe6 21. Rd6
この時点で相手は10分を切っているのに対し、私は1時間10分ほど残っていました。経験の浅いプレーヤーであれば、このルークエンディングは十分に間違える可能性があると思いながらも、黒のベストディフェンスは私もよく分かっていませんでした。
21... Rb1+
21... Rb6 22. Rd8+ Kg7 23. Rd7+ Kg6 24. Rxa7 Rb1+ 25. Kg2 Rc1 26. Ra6 Rxc3 27. Rxc6 Ra3 28. Rxc4 Rxa2= このように進め、ダブルポーンは持ちながらもキングサイドで4対4 のポーンを持つ形に持ち込むのが、黒としては最も簡単にドローに持ち込む方法です。しかし、ルークを敵陣に飛び込みたくなる気持ちはよく理解でき、私もb1 かb2 のどちらかばかり読んでいました。
22. Kg2 Rc1?
これで白がはっきり有利になったと感じました。1ポーン足りていない白ですが、あっという間にポーンの数が逆転します。22... Kf7 23. Rxc6 Rb2 24. a4 Rxe2 25. Rxc4 Kg6 26. Rc7 a5 27. Rc5 e4 28. Kf1 Rc2 29. Rxa5 Rxc3 これならば白はもちろんゲームを続けますが、黒がきちんと指せばドローになるでしょう。
23. Rxe6 Rxc3 24. Rxf6 Ra3 25. Rxc6 Rxa2 26. Rxc4 Rxe2 27. Ra4 e4 28. Kf1! Rb2 29. Rxe4-+
aファイルのパスポーンはきちんとルークで止めにいけば怖くないため、消しにいくべきはe4 のポーンです。白が間違えて29. Rxa7? e3! と進めば、黒はドローに持ち込めるでしょう。
29... Rb6 30. Re7 Ra6 31. h4 Ra5 32. Kg2 h5 33. Kf3 Kf8 34. Rb7 Kg8 35. Kf4 Kf8 36. f3 Kg8 37. Re7 a6 38. Re5 Ra4+ 39. Kg5 Rb4 40. Ra5!
黒は最後にトラップを用意しています。40. Kxh5?? Rb5!-+ となれば、大逆転で黒の勝ちです。
40... Rb5+ 41. Rxb5 axb5 42. Kf5 1-0
上記のh5 を取ってしまった変化は、白キングがスクウェアに間に合いませんが、g5 からならばぴったり間に合っています。1900 相手にかなり怪しい試合をしてしまったことを反省しつつ、これで再び浮上できたことに胸をなでおろしています。そしてこの日は、マイナーセクションでプレーしていたなつみも、非常に内容の良いチェスでリスト1 のプレーヤーを下し、優勝争いにしっかりと残っています。
Fukuya, N (WCM, JPN, 1647) - Smith P (ENG, 1743)
Chess.com Isle of Man International (3)
1. e4 d5 2. exd5 Qxd5 3. Nc3 Qa5 4. d4 c6 5. Bd2 Qc7 6. Nf3 Nf6 7. Bc4 e6 8. Qe2 Be7 9. O-O-O Nbd7 10. g4 Nb6 11. Bd3 Bd7 12. Ne5 h6 13. h4 Rf8 14. g5 hxg5 15. hxg5 Ng8
Chess.com Isle of Man International (3)
16. Nxf7! Rxf7
ここはエクスチェンジを切る手が大正解で、逃げ遅れていた黒キングは大変な目にあいます。16... Kxf7?? 17. Qh5+ g6 18. Qxg6# ならば、即勝負ありです。
17. Bg6 Kf8 18. Bxf7 Kxf7 19. Qf3+ Ke8 20. Rh8 Kd8 21. Rxg8+ Be8 22. Ne4 Nc4 23. Nc5 Bxc5 24. dxc5 1-0
一番大事なポジションで決定的な手を見つけることができ、一気に勝ちを手繰り寄せました。残りは4試合ありますが、このまま私はU2400 での優勝を、彼女はマイナーセクションでの優勝を果たせればと思います。
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Dahl, B (ENG, 1921) 1-0
Donchenko, A (GM, GER, 2581) - Kojima, S (IM, JPN, 2399) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Lalith Babu M R (GM, IND, 2586) 1/2-1/2
Sunilduth Lyna, N (GM, IND, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2399) 1-0
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Tirziman R (IRL, 1923) 1-0
Shyam S (GM, IND, 2552) - Kojima, S (IM, JPN, 2399)
マン島のトーナメントも半分を消化し、今日からは後半戦に突入します。R6 は再びインドのGM で、Shyam との対戦です。彼は初戦で2200 に負け、その後も格下としか試合をしておらず、そこでもポイントを落としています。今大会絶不調な彼との対戦で、私もポイントを取らせてもらいたいところです。今日は再び中継のボードに戻りますので、日本時間の21時半からゲームをチェックしてみてください!
Chess.com Isle of Man International R6 Live Games
2 件のコメント:
ドローになりましたね▽o・~・o▽
https://chess24.com/en/watch/live-tournaments/isle-of-man-2016/6/1/24
中継ボードのCOM山先生いわく42手目あたりでは6点差でゴニョゴニョ・・・
▽o・~・o▽
また頑張ってください
グルメリポートもお待ちしております
▼o^~^o▼バリバリムシャムシャ
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