昨日の6日目で、CAISSA も2/3 が終わることになります。6R は7月に敗れたIM Sarosi、色もその時と同じ白番です。今大会、ここで勝ちを逃したら1勝もできない覚悟で、地元のベテランマスターに挑みました。
5月に指して以来の、白番でのNimzo-Indian です。Ragozin をメインで用意していましたが、久々にこれも悪くないでしょう。
黒は黒マスビショップを早々に放棄する代わりに、e4 のナイトを強めて戦おうとします。Nimzo-Indian ではスタンダードなプランです。
白の駒組みの基礎となるアイディアです。白はダブルビショップをキープし、c5 にプレッシャーをかけつつ、dファイルのコントロールを強めようとします。10... Nxc3? 11. Qc2 だとナイトが帰るマスがなくなるため、c3 のポーンをもう守らなくても良いのが、この手が成立するポイントとなります。
11... f5 12. dxc5 bxc5 13. Rab1+/= このような展開でも、白はbファイルとdファイルをコントロールすることで、優位に試合を進めることができます。
ビショップを追い返すためとはいえ、やや危険に見えます。しかし、15... Rac8 16. Bh3! も黒としては面白くないので、正しい手を見つけにくいポジションです。
15... g5 を見たときから、この1ポーンサクリファイスの構想があったので、思わずこの手を指してしまいました。実際には黒の16手目は大ブランダーで、すでに白は即勝勢になります。17. Bxg5! Nxg5 18. Nxg5+- このタクティクスが見えなかったのは、正直恥ずかしいです。
ポーンをかすめ取るタクティクスを見逃したとは言え、白はすでに大きなポジショナルアドバンテージを持っています。d5 のポーンは孤立しており、白のダブルビショップは強靭です。
ポーンを押し進めてa1-h8 のダイアゴナルを抑えたことで、すでに勝利が近いと確信しました。ところがこの先、ちょっとした緩手からおかしなことになってしまいます。
シンプルですが、黒のヘビーピースがクイーンサイドに固まったタイミングを見て、クイーンをキングサイドに振ります。f5 のポーンを守る方法は、すでにかなり限定されています。
ここまでは良かったはずでしたが、この謎の一手により、黒に盛り返すチャンスを与えてしまいます。24. Bh3+- ならば、完全に白勝勢でした。(g5-g4 は単純に取ることができます。)
この手を見て凍りつきます。黒はg5 を守りつつ、e6 のポーンを攻撃しており、白には決定的な攻め手がありません。24手目が全く働かない手だったことに、このポジションになって初めて気が付きました。とは言え、まだ白が良いのは間違いないため、時間を使ってベストの手を探します。
黒マスビショップのダイアゴナルを閉じるアイディアはもちろん考えられますが、25... Bc8! から即e6 をアタックされるほうが嫌でした。
e6 のポーンが落ち、ポジションが落ち着いたところで私もプランを練り直します。28. Qxg6+ hxg6 29. hxg5+/= ならば、間違いなく白にアドバンテージがありますが、クイーンを交換することは、白のダイレクトアタックのチャンスを消してしまうことになります。ここは難しい決断ですが、クイーンを残して黒キングにプレッシャーを掛け続けるほうが、実戦的には黒が困る選択肢ではないかと考えました。
29. Qf4 と迷いましたが、まずはルークを使えるようにするため、dファイルを開いておくことにします。
お互いに時間切迫で、間違ったアタックとディフェンスの応酬が続きます。ここは32. Qa3! Qxg3 33. Rf8+ Ke6 34. Rf6++- で白勝ちでした。最後の一手は見つけるのが難しいと思います。
32... Qxg3?! 33. Qxf5+ Ke7 34. Qf8+ Ke6 35. Rd3!+/- ならば、白の攻めが続きます。
32... Qg5! 33. Qb8 Qe7 34. Rc8+/= こうなれば、黒もディフェンスが十分でき、白のイニシアチブはわずかでしょう。
33. Bf3!+- 最後のピースがアタックに参加すれば、勝負ありでした。
33... Kg6!! (このようにキングが上がる手の決断は難しいですが、ここはオンリーディフェンスです。) 34. Bc1 Kg7 35. Bb2+ Kg6= g6 のキングは意外とアタックしづらく、白がポジションを改善できるかは疑問です。
残り時間10秒ほどでこの手を指し、ようやく勝利が間近に迫ってきたことを悟りました。黒は次のRh8-Rf8+ を防ぐことができません。
35. Qf8+ Kd7 36. Qd8# 2手メイトでした...
あの勝勢のポジションから勝てなかったらどうしようかとハラハラしながらも、なんとか最後はメイトにできました。ようやく嬉しい嬉しい今大会初勝利です。残りの3戦で勝ち越しにし、出来ればレイティングを+にして、今月を終えたいところです。
明日は遅れてきたFM Csala を相手に、黒番を持ちます。5日目にようやく登場したお爺さんは、昨日、Hou Qiang 相手に何もない1ポーンダウンから逆転勝利。果たして何が起こったのか... そして2つ勝ち越し対決のBodo - Liu は、黒に軍配が上がりました。17歳のチャイニーズボーイは、おそらくIM ノームを今大会で取るでしょう。 最終ラウンドで、私が責任の重いゲームを任されるかもしれません...
Kojima, S (FM, JPN, 2307) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2272)
CAISSA IM October (6)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. d4 c5 5. g3
CAISSA IM October (6)
5月に指して以来の、白番でのNimzo-Indian です。Ragozin をメインで用意していましたが、久々にこれも悪くないでしょう。
5... Ne4 6. Bd2 Bxc3 7. bxc3 b6!?
黒は黒マスビショップを早々に放棄する代わりに、e4 のナイトを強めて戦おうとします。Nimzo-Indian ではスタンダードなプランです。
8. Bg2 Bb7 9. O-O Nc6 10. Be3!
白の駒組みの基礎となるアイディアです。白はダブルビショップをキープし、c5 にプレッシャーをかけつつ、dファイルのコントロールを強めようとします。10... Nxc3? 11. Qc2 だとナイトが帰るマスがなくなるため、c3 のポーンをもう守らなくても良いのが、この手が成立するポイントとなります。
10... O-O 11. Qd3 cxd4
11... f5 12. dxc5 bxc5 13. Rab1+/= このような展開でも、白はbファイルとdファイルをコントロールすることで、優位に試合を進めることができます。
12. cxd4 d5 13. cxd5 exd5 14. Rac1 Qe7 15. Bf4 g5?!
ビショップを追い返すためとはいえ、やや危険に見えます。しかし、15... Rac8 16. Bh3! も黒としては面白くないので、正しい手を見つけにくいポジションです。
16. Be3 f5?? 17. Ne5?!
15... g5 を見たときから、この1ポーンサクリファイスの構想があったので、思わずこの手を指してしまいました。実際には黒の16手目は大ブランダーで、すでに白は即勝勢になります。17. Bxg5! Nxg5 18. Nxg5+- このタクティクスが見えなかったのは、正直恥ずかしいです。
17... Nxe5 18. dxe5 Rac8 19. Bd4+/-
ポーンをかすめ取るタクティクスを見逃したとは言え、白はすでに大きなポジショナルアドバンテージを持っています。d5 のポーンは孤立しており、白のダブルビショップは強靭です。
19... Qb4 20. Ba1! Rc4 21. e6!
ポーンを押し進めてa1-h8 のダイアゴナルを抑えたことで、すでに勝利が近いと確信しました。ところがこの先、ちょっとした緩手からおかしなことになってしまいます。
21... Rfc8 22. Rxc4 Rxc4 23. Qf3!
シンプルですが、黒のヘビーピースがクイーンサイドに固まったタイミングを見て、クイーンをキングサイドに振ります。f5 のポーンを守る方法は、すでにかなり限定されています。
23... Qf8 24. Qh5?
ここまでは良かったはずでしたが、この謎の一手により、黒に盛り返すチャンスを与えてしまいます。24. Bh3+- ならば、完全に白勝勢でした。(g5-g4 は単純に取ることができます。)
24... Qe7
この手を見て凍りつきます。黒はg5 を守りつつ、e6 のポーンを攻撃しており、白には決定的な攻め手がありません。24手目が全く働かない手だったことに、このポジションになって初めて気が付きました。とは言え、まだ白が良いのは間違いないため、時間を使ってベストの手を探します。
25. h4 d4
黒マスビショップのダイアゴナルを閉じるアイディアはもちろん考えられますが、25... Bc8! から即e6 をアタックされるほうが嫌でした。
26. Rd1 Qxe6 27. Bxd4 Qg6 28. Qf3!?
e6 のポーンが落ち、ポジションが落ち着いたところで私もプランを練り直します。28. Qxg6+ hxg6 29. hxg5+/= ならば、間違いなく白にアドバンテージがありますが、クイーンを交換することは、白のダイレクトアタックのチャンスを消してしまうことになります。ここは難しい決断ですが、クイーンを残して黒キングにプレッシャーを掛け続けるほうが、実戦的には黒が困る選択肢ではないかと考えました。
28... gxh4 29. Bb2!?
29. Qf4 と迷いましたが、まずはルークを使えるようにするため、dファイルを開いておくことにします。
29... hxg3 30. fxg3 Bc6 31. Rd8+ Kf7 32. Qf4?!
お互いに時間切迫で、間違ったアタックとディフェンスの応酬が続きます。ここは32. Qa3! Qxg3 33. Rf8+ Ke6 34. Rf6++- で白勝ちでした。最後の一手は見つけるのが難しいと思います。
32... Qe6?
32... Qxg3?! 33. Qxf5+ Ke7 34. Qf8+ Ke6 35. Rd3!+/- ならば、白の攻めが続きます。
32... Qg5! 33. Qb8 Qe7 34. Rc8+/= こうなれば、黒もディフェンスが十分でき、白のイニシアチブはわずかでしょう。
33. Rh8?
33. Bf3!+- 最後のピースがアタックに参加すれば、勝負ありでした。
33... Nf6?
33... Kg6!! (このようにキングが上がる手の決断は難しいですが、ここはオンリーディフェンスです。) 34. Bc1 Kg7 35. Bb2+ Kg6= g6 のキングは意外とアタックしづらく、白がポジションを改善できるかは疑問です。
34. Qh6+-
残り時間10秒ほどでこの手を指し、ようやく勝利が間近に迫ってきたことを悟りました。黒は次のRh8-Rf8+ を防ぐことができません。
24... Ke7 35. Qg7+
35. Qf8+ Kd7 36. Qd8# 2手メイトでした...
35... Kd6 36. Ba3+ Rc5 37. Qf8+ Kc7 38. Qb8+ Kd7 39. Qd8# 1-0
あの勝勢のポジションから勝てなかったらどうしようかとハラハラしながらも、なんとか最後はメイトにできました。ようやく嬉しい嬉しい今大会初勝利です。残りの3戦で勝ち越しにし、出来ればレイティングを+にして、今月を終えたいところです。
明日は遅れてきたFM Csala を相手に、黒番を持ちます。5日目にようやく登場したお爺さんは、昨日、Hou Qiang 相手に何もない1ポーンダウンから逆転勝利。果たして何が起こったのか... そして2つ勝ち越し対決のBodo - Liu は、黒に軍配が上がりました。17歳のチャイニーズボーイは、おそらくIM ノームを今大会で取るでしょう。 最終ラウンドで、私が責任の重いゲームを任されるかもしれません...
6 件のコメント:
おめでとうございます‼ 最後の盤、格好いいです‼
風邪がひどくならないように、バナナの他にレモンでもかじってビタミンいれてくださいね。
明日も頑張ってください‼
ありがとうございます。私もかなり試合数をこなしていますが、メイトで終わるのは珍しいですね。
外の八百屋で見かけたので、レモン買ってくるか来るかどうか、真面目に検討します!
お疲れさまです。指し手に現れない部分で王手〇〇取りがブイブイかかる派手さと地味~に位置取りを変えつつ恐ろしいワナを張る深~い読みが書かれた解説がとても参考になります。外国を転戦して勝てば天国負ければ地獄。とか言うと昔のアメリカ横断ウルトラクイズを思い出します。(歳がばれる)
本当に、そこまで相手もresignしなかったのも驚きでしたが、メイト勝ちを見るのはやっぱり気持ちがいいですね‼
7R、そういうこともそれだけのレベルでもあるとは…
試合内容は、小島さんの有利だったのでしょうね。
勝ちは勝ちですね! タイムブランダーもブランダーですから(^^)
だから自信をもって、おめでとうございます‼
25.Qh6はどう?△26.Bxe4-27.Bf6。たぶん 25.Qh6 Qf8 26.Qh5で戻るか、黒マス止めに来たら25...d5 26.e3?!+=(だと思う)。黒にリピテイションしか手が無いなら、指して見る価値は有りそうだけど。
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