今日はいきなり結果から書きます。Hou Qiang とのゲームは途中怪しい局面もありましたが、なんと勝ってしまいました!これで3つ勝ち越しとなり、残りは4試合です。そして遅くなりましたが、Chess Results のリンクも張っておきますので、結果詳細についてはこちらもチェックしてみてください。
この数年で急速に人気の高まっているPonno Variation 対策で、実戦投入は初めてです。アイディアはシンプルに... e5 を止め、素早くピースを展開することにあります。
ここまではほぼ準備どおりでしたが、この手を見てかなりの長考に入ります。白はセンターを開くべきか閉じるべきか、どちらが良いのか判断が難しいポジションです。
14. dxe5 Nxe5 15. Nxe5 dxe5 16. Bh6 Be6!= このビショップでルークをアタックする手に気づき、先にビショップをh6 に入れることを決めました。
13手目のポジションで40分考え、このポジションはやや白が指しやすいだろうと結論付けました。b2 へのプレッシャーをかわした白は、d、c のセミオープンファイルを掴むことでチャンスを得ようとします。
黒マスビショップの交換は、黒のいくつかのポーンやマス(d6、c5、d5 等)を弱め、白にわずかなアドバンテージを与えます。
しかし、この手が間違いでした。散々悩んで諦めたビショップ交換が正解です。20. Bxe5! Rxe5 (20... Bxc4 21. Bc3 Bxe2 22. Qh6 Re5 23. Re1+/=) 21. Re4 Rxe4 22. Bxe4+/= ポーンストラクチャーの良さから、白がわずかに優勢だと判断できます。
これで黒はポーンストラクチャーの悪さを改善できました。次に23... Rcd8 があるため、白はこのポーンを取ることができません。これで黒はイコアライズできています。
黒にセンターパスポーンを持たせるのは危険だと承知のうえ、勝負を仕掛けにいきます。しかし時間切迫で次の手を間違えてしまいました。
f7 へのアタックは有効ではありません!白はリスクを冒さず、ドローで満足すべきでした。27. Rc6 Qb7 28. Qf3 Re7 29. R6c2=
27手目の時点でこの手も受けがあると思っていましたが、全くの勘違いでした。残り時間10秒まで考え、最も粘れる手を探します。
Hou Qiang もかなり時間切迫でしたが、それにしてもこの間違いはひどい!私は白の30手目を指す以前に、黒のベストの筋に気づいていました。30... Kg7! 31. Rxd8 (31. Rc3 Qxf3+ 32. Kxf3 Rxc8 33. Rxc8 Rxa2 34. Rd8 d2 35. Ke3 Ra3 36. Rxd2 Rxb3+ 37. Kd4-/+ このエンドゲームのほうが、あるいは白にチャンスがあるか。) 31... Qxd8 32. Rc5 Re6 33. Rc1 d2 34. Rd1 f6-/+ 黒のパスポーンは落ちず、強力な武器として盤上に残ります。
クイーンとルークを交換すると、全く状況が変わってしまいました。黒のパスポーンは進み過ぎで、すぐに取られる運命にあります。ここから長い長いルークエンディングが始まります。
まずは無事にdポーンを回収し、時間の増加する40手目を目指します。
白のプランとしては、どこかのタイミングでクイーンサイドにパスポーンを作り、それをキングでサポートできればベストです。まずはキングをなるべく前に上げていきます。
キングを十分に進めた後は、クイーンサイドからキングサイドへ注意を移します。g4-g5 までポーンを進めることができれば、h7 のポーンが固定され、黒の弱点となります。
49. Rd5+! Ke7 (黒はルーク交換を避けなければいけないため、cファイルにキングを逃がすことができないのがポイント) 50. Rc5+- これでルーク交換と7段目のチェックがダブルスレットとなり、簡単に勝ちでした。
白はg5 までポーンを進め、g6 を弱点として固定しました。hポーンの交換を挟んでも、これはこれで十分に作戦成功です。黒は6段目に弱点が2つとなり、いよいよルークが6段目から離れられなくなります。白はここまで準備したうえで、クイーンサイドから仕掛けにいきます。
白はすでにcファイルで黒キングをカットオフしているため、キングとbポーンを進めるシンプルなプランに、g6 取りを絡めて、決着をつけます。
bポーンとキングだけでも勝つ方法はありますが、せっかくなので最後はgポーンに活躍してもらいます。
ルーク交換後は、gポーンをクイーンに変えるだけです。自分で言うのもなんですが、ルークエンディングをほぼミスなく、実に丁寧に指せました!おそらく森内さんからお借りした、Capablanca's Best Chess Endings と、馬場さんの勧めであったGrandmaster Chess Strategy を読んだ成果が出ているのではないかと思います。
Hou Qiang は先月IM ノームを取りましたが、今月のFS は四連敗の泥沼です。2200-2400 が揃うIM トーナメントでは、誰が沈み、誰が浮かぶかわからないのが恐ろしいところです!
そして今日は、前半戦で勝ったIM Szeberenyi と黒で対戦です。彼も一昨日、Nguyen Huynh Minh にエクスチェンジアップから勝てず、昨日はLengyel に敗れ、調子はかなり悪いようです。早めに4つ勝ち越し状態に持っていきたいところですが、あまり焦りすぎず、じっくりとしたチェスを指せればと思います。
Kojima, S (FM, JPN, 2307) - Hou, Q (FM, CHN, 2339)
First Saturday IM October (6)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. O-O d6 6. d4 Nc6 7. Nc3 a6 8. Bf4!?
First Saturday IM October (6)
この数年で急速に人気の高まっているPonno Variation 対策で、実戦投入は初めてです。アイディアはシンプルに... e5 を止め、素早くピースを展開することにあります。
8... Rb8 9. Rc1 Bd7 10. Qd2 b5 11. Nd5 bxc4 12. Nxf6+ Bxf6 13. Rxc4 e5!?
ここまではほぼ準備どおりでしたが、この手を見てかなりの長考に入ります。白はセンターを開くべきか閉じるべきか、どちらが良いのか判断が難しいポジションです。
14. Bh6
14. dxe5 Nxe5 15. Nxe5 dxe5 16. Bh6 Be6!= このビショップでルークをアタックする手に気づき、先にビショップをh6 に入れることを決めました。
14... Re8 15. dxe5 Nxe5 16. Nxe5 Bxe5 17. b3
13手目のポジションで40分考え、このポジションはやや白が指しやすいだろうと結論付けました。b2 へのプレッシャーをかわした白は、d、c のセミオープンファイルを掴むことでチャンスを得ようとします。
17... c5 18. Rd1 Qb6 19. Bf4!
黒マスビショップの交換は、黒のいくつかのポーンやマス(d6、c5、d5 等)を弱め、白にわずかなアドバンテージを与えます。
20... Bb5 20. Re4?!
しかし、この手が間違いでした。散々悩んで諦めたビショップ交換が正解です。20. Bxe5! Rxe5 (20... Bxc4 21. Bc3 Bxe2 22. Qh6 Re5 23. Re1+/=) 21. Re4 Rxe4 22. Bxe4+/= ポーンストラクチャーの良さから、白がわずかに優勢だと判断できます。
20... Bc6 21. Rc4 Bxg2 22. Kxg2 d5!
これで黒はポーンストラクチャーの悪さを改善できました。次に23... Rcd8 があるため、白はこのポーンを取ることができません。これで黒はイコアライズできています。
23. Rc2 Rbd8 24. Rdc1 Bxf4 25. Qxf4 d4 26. Rxc5!? Rxe2
黒にセンターパスポーンを持たせるのは危険だと承知のうえ、勝負を仕掛けにいきます。しかし時間切迫で次の手を間違えてしまいました。
27. Rc7?
f7 へのアタックは有効ではありません!白はリスクを冒さず、ドローで満足すべきでした。27. Rc6 Qb7 28. Qf3 Re7 29. R6c2=
27... Qe6 28. R1c6 Qd5+ 29. Qf3 d3!
27手目の時点でこの手も受けがあると思っていましたが、全くの勘違いでした。残り時間10秒まで考え、最も粘れる手を探します。
30. Rc8 Re5??
Hou Qiang もかなり時間切迫でしたが、それにしてもこの間違いはひどい!私は白の30手目を指す以前に、黒のベストの筋に気づいていました。30... Kg7! 31. Rxd8 (31. Rc3 Qxf3+ 32. Kxf3 Rxc8 33. Rxc8 Rxa2 34. Rd8 d2 35. Ke3 Ra3 36. Rxd2 Rxb3+ 37. Kd4-/+ このエンドゲームのほうが、あるいは白にチャンスがあるか。) 31... Qxd8 32. Rc5 Re6 33. Rc1 d2 34. Rd1 f6-/+ 黒のパスポーンは落ちず、強力な武器として盤上に残ります。
31. Qxd5 Rexd5 32. Rxd8+ Rxd8 33. Rc1+/-
クイーンとルークを交換すると、全く状況が変わってしまいました。黒のパスポーンは進み過ぎで、すぐに取られる運命にあります。ここから長い長いルークエンディングが始まります。
33... Kg7 34. Rd1 Kf6 35. Kf3 Kg5 36. h3 f5 37. Ke3 Re8+ 38. Kxd3 f4
まずは無事にdポーンを回収し、時間の増加する40手目を目指します。
39. Rc1 Rd8+ 40. Ke2 fxg3 41. fxg3 Rd5 42. b4 Rd6 43. Ke3
白のプランとしては、どこかのタイミングでクイーンサイドにパスポーンを作り、それをキングでサポートできればベストです。まずはキングをなるべく前に上げていきます。
43... Kf5 44. Rc5+ Ke6 45. Ke4 Rb6 46. a3 Kd7 47. g4!
キングを十分に進めた後は、クイーンサイドからキングサイドへ注意を移します。g4-g5 までポーンを進めることができれば、h7 のポーンが固定され、黒の弱点となります。
46... Re6+ 48. Re5 Rc6 49. Kd4
49. Rd5+! Ke7 (黒はルーク交換を避けなければいけないため、cファイルにキングを逃がすことができないのがポイント) 50. Rc5+- これでルーク交換と7段目のチェックがダブルスレットとなり、簡単に勝ちでした。
49... h6 50. h4 Rf6 51. g5 hxg5 52. hxg5 Rc6
白はg5 までポーンを進め、g6 を弱点として固定しました。hポーンの交換を挟んでも、これはこれで十分に作戦成功です。黒は6段目に弱点が2つとなり、いよいよルークが6段目から離れられなくなります。白はここまで準備したうえで、クイーンサイドから仕掛けにいきます。
53. a4! Rb6 54. Kc4 Rc6+ 55. Rc5 Re6 56. b5 Re4+ 57. Kb3 axb5 58. axb5+-
白はすでにcファイルで黒キングをカットオフしているため、キングとbポーンを進めるシンプルなプランに、g6 取りを絡めて、決着をつけます。
58... Re8 59. Kb4 Re6 60. Ka5 Re8 61. b6 Kd6 62. Kb5 Re1 63. Rc6+ Kd7 64. Rxg6 Rb1+ 65. Ka6 Ra1+ 66. Kb7 Re1 67. Rg8 Re7 68. g6 Kd6+ 69. Ka8!
bポーンとキングだけでも勝つ方法はありますが、せっかくなので最後はgポーンに活躍してもらいます。
69... Kc6 70. b7 Rxb7 71. Rc8+ Kb6 72. Rb8 1-0
ルーク交換後は、gポーンをクイーンに変えるだけです。自分で言うのもなんですが、ルークエンディングをほぼミスなく、実に丁寧に指せました!おそらく森内さんからお借りした、Capablanca's Best Chess Endings と、馬場さんの勧めであったGrandmaster Chess Strategy を読んだ成果が出ているのではないかと思います。
Hou Qiang は先月IM ノームを取りましたが、今月のFS は四連敗の泥沼です。2200-2400 が揃うIM トーナメントでは、誰が沈み、誰が浮かぶかわからないのが恐ろしいところです!
そして今日は、前半戦で勝ったIM Szeberenyi と黒で対戦です。彼も一昨日、Nguyen Huynh Minh にエクスチェンジアップから勝てず、昨日はLengyel に敗れ、調子はかなり悪いようです。早めに4つ勝ち越し状態に持っていきたいところですが、あまり焦りすぎず、じっくりとしたチェスを指せればと思います。
1 件のコメント:
お疲れ様です。難敵相手の大勝利おめでとうございます。棋譜と解説を拝見しておりますとエンドゲームの技もさることながら中盤の黒からの...e5や...d5といった捌きがとても勉強になります。m(_ _)m 後半も良いゲームを期待しています。油断禁物
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